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【楽曲解説】目次

本ブログを開設した目的の一つに、今まで書き溜めてきた音楽関連の文章を整理することがある。自分が出演した演奏会のプログラムに執筆した「曲目解説」も、HDDの片隅に保存しておくだけでなく、ここにまとめておくことにしたい。今となっては加筆・修正したい箇所も少なくないのだが、当時のものをそのまま掲載する。

かぶとやま交響楽団
京都大学音楽研究会
宝塚市交響楽団
シュペーテ弦楽四重奏団



【五十音順】

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theme : クラシック
genre : 音楽

地味ながら実力派の弦楽四重奏団3題

  • ショスタコーヴィチ:祝典序曲、ホエアー:カタルシス組曲、ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第8番、ネリベル:オーケストラのための協奏曲、ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」より「ハンガリー行進曲」、「マイ・フェア・レディ」メドレー、ブリテン:「マチネ・ミュージカル」より「行進曲」 ランツ、ホエアー/ヒューストン全市SO (Silver Crest HO-101569 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番、プロコーフィエフ:弦楽四重奏曲第2番 ファイン・アーツQ (Fine Arts Music Foundation FAMF 001 [LP])
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番 ディモフQ (Balkanton BKA 1068 [LP])
  • ベートーヴェン:弦楽五重奏曲、六重奏曲、弦楽五重奏のためのフーガ エルベンQ M. シューマン (Va) メイエル、ヘロルト (Hr) (eurodisc 80 353 LK [LP])
Mikrokosmos Mail Order Co.からの新規入荷分は、4枚。

以前(2017年1月8日のエントリー)、ヒューストン市の学生選抜オーケストラの1967年メキシコ・ツアーの記念アルバムを聴いたが、今回は1969年イングランド・ウェールズ・ツアーの記念アルバムを入手。どうもショスタコーヴィチの祝典序曲で幕開けを飾るのが恒例なようで、この団体(の国外公演)がいつまで続いたのか知らないが、他の年度の録音も残っていそうな気がするので、見つけてしまったが最後、祝典序曲目当てに入手することになるのだろう。全く迷惑な話だ。(笑)

演奏の水準は1967年盤と同様だが、編集が随分と雑で、ほとんどの曲の両端が耳障りである。


ファイン・アーツQは1946年に結成してから、幾多のメンバー交代を経て今なお活動を続けている団体である。75年を超えるその歴史の中で第1Vnはソルキン(1946~82)とエヴァンス(1982~)の2人だけであることは、彼らが四重奏団としてのキャラクターを維持し続けている一因なのだろう。

ショスタコーヴィチの第3番は、結成直後の1947年にアメリカ初演と録音を行った、彼らにとって重要な位置を占めるレパートリーである。結成30年を記念した本アルバムで取り上げるのに相応しい作品であろう。演奏もまた、30年という歳月を経たからこその熟成した音色と自在な表現力が際立つ貫禄の仕上がり。第1VnのソルキンとVcのソプキンという創立メンバーが健在だった時代を代表する優れた演奏である。プロコーフィエフも同様。

なお、Hulmeのカタログ(第4版)には1947年盤は載っているが、この1976年盤は載っていない。第3版では1947年盤の再発として1976年盤のディスク番号(Gasparo GS-203;今回入手した音盤とは別フォーマット)が記載されていたが、第4版ではこの誤りが解消された代わりに1976年盤の存在が無くなってしまった。また、1947年盤のメンバー構成は1976年盤のものが記されているが、この誤記は第4版でもそのままになっている。


ディモフQはベートーヴェンの全集を完成させているが、その第9巻(第14番)を入手した。BOXが出品されているのを見た記憶はないが、バラで揃えるのはさらに難易度が高いような気がする。武骨な音色と堅実なアンサンブルで十分に聴かせる演奏ではあるが、突き抜けた魅力までは感じられない。バルトークQの全集(Hungaroton)の下位互換といったところか。


エルベンQによるベートーヴェンの弦楽五重奏曲+αのアルバムは、先日(2022年7月12日のエントリー)聴いたスークQのアルバムと同様にEternaレーベルのベートーヴェン作品全集の1枚である。ただし今回入手したのは、作品全集盤とは別フォーマットである。いずれにせよ、ベートーヴェンの弦楽五重奏作品はこの2枚で揃う。

ベートーヴェンのOp. 29は、アマデウスQ、バリリQ、東京Qなどの演奏を架蔵しているが、楽曲自体がそう傑出した内容を持っている訳でもないので、どれも帯に短し襷に長しといった感じで、結局のところ私がよく聴くのはベートーヴェンQ&ドルジーニンのライヴ録音だったりする。思い切りロマン派寄りの濃密な歌い口(第2楽章など)と闇雲に突き進んで際限なく盛り上がるような推進力(第1楽章展開部など)は、時代様式という観点からは色々と眉を顰められるだろうが、この曲はそれくらい羽目を外した方が楽しい。

そう思っていたのだが、エルベンQの演奏は純正のベートーヴェンといった感じで実に気持ちが良い。ややスケールが小さいのと、人工的な残響が耳につく録音といった欠点もないわけではないが、現時点でこの作品の最もしっくりくる演奏である。六重奏曲も悪くないが、ホルンがいかにも昔の水準で物足りない。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.作曲家_Beethoven,L.v.

小物、色物など穴埋め

  • ショスタコーヴィチ:祝典序曲、サン=サーンス:交響曲第3番、エルガー:「エニグマ変奏曲」より第9変奏「ニムロッド」、シューベルト:交響曲第7番「未完成」 秋山和慶/中部PO (中部フィルハーモニー交響楽団 CP20210807)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第67番「ひばり」より第4楽章、ラヴェル:「マ・メール・ロワ」より「パゴダの女王レドロネット」、バーンスタイン:ミュージカル「ウェスト・サイド物語」より「クール」、コダーイ:ガボット、ドビュッシー:「前奏曲集第1集」より第8曲「亜麻色の髪の乙女」、ショスタコーヴィチ:バレエ「黄金時代」より「ポルカ」、J. S. バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第1番より第2楽章「フーガ」、コープランド:バレエ「ロデオ」より「ホーダウン」、ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番より「アリア」、プロコーフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」より「少女ジュリエット」、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番より第1楽章、ブラームス:6つの小品 Op. 118より第2番「間奏曲」  モダン・マンドリン・クワルテット (Windham Hill WD-1091)
  • リームスキイ=コールサコフ:熊蜂の飛行、セレナード、ドヴァリョーナス:湖にて、序曲とロンディーノ、チャイコーフスキイ:「なつかしい土地の思い出」より「メロディー」、「6つの小品」より「夜想曲」、弦楽四重奏曲第1番より「アンダンテ・カンタビーレ」、A. ルビンシテーイン:メロディー、ダヴィドフ:バラード、泉のほとりで、タネーエフ:カンツォーナ、ショスタコーヴィチ(アトヴミャーン編):バレエ組曲第2番より第2曲「アダージョ」(バレエ「明るい小川」)、ラフマニノフ:ヴォカリーズ V. ソンデツキス (Vc) ゲリンガス/リトアニアCO (Naxos 8.554381)
  • LIKE THE MILK ミスター・マクフォールズ・チェンバー (Discipline Global Mobile DGM9809)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番、ティーシチェンコ:クラリネットとピアノ三重奏のための協奏曲、ウストヴォーリスカヤ:クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲 セント・ピータース三重奏団 (Beaux BEAUX 2023)
  • モーツァルト:交響曲第34、40番、セレナード第8番「ノットゥルノ」 ブリュッヘン/18世紀O (Philips PHCP-5295)
  • コルンゴルト:4つの別れの歌、ピアノ五重奏曲、道化の歌、簡単な歌、4つのシェイクスピアの歌、3つの歌、2つのヴァイオリン、チェロ、左手のピアノのための組曲、歌劇「死の都」より「マリエッタの歌」 オッター (MS) B. フォシュベリ (Pf) ライセル、U. フォシュベリ (Vn) スパルフ (Va) リドストリーム (Vc) (DG 459 631-2)
  • ブラームス:弦楽四重奏曲第1番、弦楽五重奏曲第2番 ベルチャQ カクシュカ (Va) (EMI 7243 5 57661 2 0)
ここのところ大きめの箱で届くことの多かったアリアCDからの荷物だが、今回は珍しく封筒の中に1枚だけ。

その一枚は中部フィルハーモニー交響楽団の創立20周年記念コンサートを収録したアルバムで、メジャーな販売経路には乗っていない自主制作盤である模様。Amazon Musicなどでダウンロード販売はしているようだが、CDは楽団公式サイトで入手するしかなさそうだ。

非常に折り目正しい演奏で、隅々まで神経の行き届いていることがよく分かり、好感が持てる。ただ、安全運転で小ぢんまりとまとめられている感は否めない。「オルガン付き」はそれが一種の清潔感を醸し出していて悪くはないが、祝典序曲は物足りない。一方、「ニムロッド」の美しさはなかなかの物。

別の演奏会の録音である「未完成」は男性的な力強さを感じさせる演奏だが、そうであれば尚更、繊細な表現力を求めたいところ。オーケストラの一層の発展を祈念したい。


自分のショスタコーヴィチ・サイトにはウォント・リストを掲載しているのだが、リストを作ったことで満足してしまう悪癖のせいで、作成時からリストが一向に減らないでいる。そこで今回のAmazonでのオーダーは、いつもの穴埋めに加えて、リストにある音盤の中でリーズナブルな値付けがされているものを探してみた。

マンドリン四重奏によるクラシック小品集は、選曲のセンスの良さが光る。率直に言って、マンドリンの音では心許ない箇所も少なくないが、繊細な音色の魅力に加えて、各曲のツボを押さえた演奏は聴き手を惹きつけるに十分。ショスタコーヴィチの作品は2曲も取り上げられているが、ポルカの羽目の外し方も良いし、弦楽四重奏曲第1番の第1楽章の違和感なく響くマンドリンの音色も心地好い。


ヴィタウタス・ソンデツキスは、指揮者であったサウリュス・ソンデツキスの息子で、ゲリンガスに師事したチェリスト。ロシアの作曲家による小品の数々を管弦楽伴奏で演奏した本盤は、ジャケットの「Laureate Series」という記載を見る限り、何かのコンクールで受賞したことによる企画だと思われる。

旋律が内包するロシア情緒を品良く漂わせつつ、決して力任せにならない若々しくも渋い美しさを湛えたチェロの音色が非常に好ましい。選曲も含めて、この種のアルバムとしては傑出した内容である。隠れた名盤と言ってもよいだろう。


Mr McFall's Chamberは、ジャンルや編成などに囚われない音楽を志向するグループ。このアルバムの収録曲は以下の通り:
  • ピアソラ:フーガ9
  • リトル・フィート:ウィリン
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏のための2つの小品
  • ピンク・フロイド:Interstellar Overdrive
  • スコットランド民謡:ウィンズベリーのトーマス(ウィリー)
  • ダウランド:エッセクス伯ロバートのガリアード/ジョージ・ホワイトヘッド氏のアルマンド
  • ジミ・ヘンドリックス:リトル・ウィング
  • エルヴィス・コステロ:シップビルディング
  • ノーマ・ウォーターソン:Coal Not Dole
  • ピアソラ:孤独
  • ロバート・バーンズ:この国にはなんと多数の悪者がいることか
  • ロバート & トム・マクフォール:Cajun Comeback
  • ジャニス・ジョプリン:ベンツが欲しい

本盤ではVo、2Vn、Va、Vc、Cb、Pf、Drums、Sequencerという編成がクレジットされているが、曲毎に異なった組み合わせで演奏されている。いずれの曲も原曲の雰囲気を大きく逸脱することはなく、曲目を見た時点で期待したほどの面白味はなかった。

ショスタコーヴィチの「弦楽四重奏のための2つの小品」は、楽譜通りの編成で演奏されている。悪い意味でイージーリスニング風の微温的な仕上がりであり、作品の魅力は全く発揮されていない。技術的にも雑な演奏。



「セント・ピータース三重奏団」という団体名については、彼ら自身が敢えて英語読みを名乗っているのか、それともこの音盤の制作者がこのように表記しただけで本来は「サンクト・ペテルブルグ三重奏団」なのか不明だが、ピアノのウルヤシュをはじめとするメンバーの全員がロシア人である。

クラリネットを含む2曲がメインのアルバムだが、それらの前座として収録されているショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第1番も、熱い情熱が迸る佳演である。細部に凝った繊細な演奏よりも、こういう大柄で勢いの良い演奏の方が、この作品には相応しい。

ティーシチェンコもウストヴォーリスカヤも作品の実験的な側面を感じさせない、情緒的な共感が前面に出た演奏で、ショスタコーヴィチの延長で味わうことができる。



ブリュッヘンによるモーツァルトの交響曲録音は、間もなく揃うところまで来た。本盤は2つのオーケストラの合同演奏である。ノットゥルノはそもそも複数(4つ)のオーケストラのために書かれた作品だが、交響曲の方は生前のモーツァルトも喜んだと言われる大編成を意図した合同演奏ということになる。

きびきびとしたテンポと推進力のあるアーティキュレイションは、いかにもブリュッヘン流だが、ノットゥルノはともかく、交響曲は2曲とも突き抜けた印象が残らなかった。低弦の存在感などに大編成ならではの響きはあるものの、それよりもむしろ機動性に劣るもっさりとした感じが気になってしまう。特に第40番は本盤の6年前に録音された旧盤(ブリュッヘン/18世紀オーケストラのデビュー盤)と基本的には同じ解釈の演奏だけに、短いサイクルでわざわざ再録したことの意味を感じ取ることはできなかった。


先日(2022年6月15日のエントリー)聴いてとても気に入ったコルンゴルトのピアノ五重奏曲について軽く検索してみた際に、オッターが歌う歌曲とピアノ入りの室内楽曲とを組み合わせた「Rendezvous with Korngold」というアルバムを知った。是非とも聴いてみたく調べてみたのだが、現時点では廃盤のようでAmazonでも非常識な値付けがされていて愕然とした。ところが検索ワードを変えて再検索してみると、極めて常識的な価格の出品がヒットしたのでオーダーした次第。Amazonマーケットプレイスの商品情報は、特に音盤に関しては整理されていないので、リーズナブルに買い物をするためには商品検索のスキルと根気とマメさが必要なことを改めて認識した。

さて、このアルバムのセールスポイントは、何と言っても選曲の良さだろう。幾多の名曲を凌駕する傑作とまでは言えないが、本盤に収録されている後期ロマン派の薫りを濃く纏った叙情的な作品の数々を知らずにいるのは、もったいない。オッターの歌唱は清明かつ気品のあるもので、ひたすら美しい。

一方、弦楽器陣には不満が残った。個々の技術水準は低くないのだが、響きの一体感が希薄に過ぎる。各人の音色の調整が不足していることもあるだろうが、内声がきちんと機能しておらず、心地好いメロディーラインを辿る分には問題ないが、楽曲が纏っている濃密で繊細な陰影を持つ色合いを味わうには不足する。現時点で私の唯一の比較対象であるコルンゴルトQ盤(2022年6月15日のエントリー)には及ばない。


ベルチャQは2014~5年にブラームスの弦楽四重奏曲全集(+ピアノ五重奏曲)を録音しているが、本盤は創立メンバーによる2003年の録音である。ABQのカクシュカが第2Vaとして参加しているが、2005年に亡くなった彼にとっては最晩年(と言ってもまだ65歳だったのだが)の録音の一つとなる。

全体に響きの線が細く、いかにも新進気鋭の団体らしい工夫を凝らした表現に神経質さを感じなくもないが、本盤の2曲については第1Vnのベルチャが伸び伸びとした歌心に溢れており、不自然な人工臭はほとんどない。最近聴いたアルテミスQ(2022年8月2日のエントリー)のアンサンブルの熟達度には及ばないものの、素直な叙情の魅力という点で本盤の方がよほど好ましい。この時点でブラームス全集とならなかったことは、カクシュカとの五重奏曲第1番が残されなかったことと併せて残念ではあるが、近い内に現メンバーによる全集で彼らの進境を聴いてみたいところだ。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.作曲家_Mozart,W.A.作曲家_Korngold,E.W.作曲家_Brahms,J.演奏家_BelceaQuartet

比較的近年の録音ばかり4枚

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 インバル/東京都SO (EXTON OVCL-00472)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 インバル/東京都SO (EXTON OVCL-00486)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 タバコフ/ブルガリア国立放送SO (Gega New GD 383)
  • ブラームス:弦楽四重奏曲第1、3番 アルテミスQ (Erato WPCS-13238)
積み上がっていた未聴盤が片付いたこともあり、梅田での空き時間にディスクユニオン 大阪クラシック館へ。

EXTONレーベルからは日本のオーケストラによるショスタコーヴィチの交響曲が何枚もリリースされているが、国内盤フルプライスを見ると「これなら安いのを3枚買った方が……」などと思ってしまって購入を見送ってばかり。中古市場に出ていない訳ではないのだが、中古でもそれなりの価格設定のことが多く、ひたすらウォントリストの肥やしとなり続けているのが実情である。

そんな中、インバルと都響のシリーズからの2枚が比較的安価で出品されているのを発見したので、確保してみた。

第4番の冒頭から、極めて機能性に優れたオーケストラのクリアな響きに感心させられる。技術的な難所も、それを感じさせない鮮やかさで軽々と通り過ぎていく。ピッチの精確さ故か全体に響きは明るめで、文学的な思い入れを廃した無機質で無色透明な音楽の運びには、ウィーン響との旧盤や他の演奏とも共通するインバルの個性も存分に発揮されている。

これを現代的な名演とするか、それとも表面的な音響に溺れた凡演とするか、聴き手によって評価は二分されるような気がする。たとえば第1楽章展開部のフーガなどは安全運転に過ぎて切迫感が皆無であり、いくら巧くても私には退屈で、こういう音楽をしたいのなら他の作曲家の作品を取り上げれば良いのに、とすら思ってしまう。一方で、この機能的な響きを純音楽の極致と受け取る聴き手も少なくはないだろう。


第10番も、基本的には第4番と同種の演奏である。ただ、第10番の方が楽曲に対して感情的に没入しやすいのか、オーケストラの燃焼度は非常に高い。機能的な響きにも凄みがあり、終楽章の結尾などはカラヤン盤に匹敵する盛り上がりである。


タバコフのショスタコーヴィチは、前時代的な野性味を残した武骨さが魅力でもあり、また弱点でもあるのだが、第11番はその特徴が全て長所に転化した秀演である。プロット自体は単純な作品だけに、素直に単純明快な物語として一気呵成に弾き切ったこの演奏は、作品の真正な姿を描出していて好ましい。


アルテミスQのブラームスはプリシェペンコをはじめとする第2期メンバーによる第2番の録音があり、第4期メンバーによる本盤の2曲と合わせて「全集」ということになるのだろう。また本盤は、病に斃れたヴィオラのヴァイグレにとっての最後の録音でもある。

彼ららしい繊細な表現と美音を味わうことはできるが、特に第1Vnが禁欲的に過ぎて微視的なフレーズの表現が巨視的な音楽の流れと乖離してしまい、終始ちぐはぐな感が否めない。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.作曲家_Brahms,J.演奏家_ArtemisQuartet

一気に入荷(DVD編)

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5、8、12番 ムラヴィーンスキイ/レニングラードPO (Parnassus PDVD 1204 [DVD])
  • J. S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番、カサド:無伴奏チェロ組曲、コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ シュタルケル (Vc) (Parnassus PDVD 1202 [DVD])
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第32、35、39、43、58、57、79番(Op.20-2、20-5、33-3、42、54-1、54-2、76-5) リンゼイQ (Opus Arte OA 0920 D [DVD])
  • ラフマニノフ: 歌劇「けちな騎士」 ユロフスキ/ロンドンPO他 (Opus Arte OA 0919 D [DVD])
  • ムーソルグスキイ(ショスタコーヴィチ編): 歌劇「ホヴァーンシチナ」 ボーダー/リセウ大歌劇場O他 (Opus Arte OA 0989 D [DVD])
6月15日のエントリーの続き。DVDはCDよりも1枚当たりの収録時間が長い上に、通勤などで移動しながら視聴するということもできず、全てを消化するのに随分と時間がかかってしまった。

ムラヴィーンスキイのショスタコーヴィチは3曲とも、過去にVHSを含む別フォーマットで何度かリリースされたことのある映像。ジャケットや解説書などが簡素に過ぎる上に、画質等の向上もないので、既にDVD等を架蔵している場合は、それに加えて本盤を敢えて購入する必要は全くない。

ここに収録された第8番の映像は、私が学生の頃、日本ムラヴィンスキー協会が会員限定で頒布したVHSテープで観たのが最初であった。ムラヴィーンスキイの淡々とした一挙手一投足に、オーケストラ奏者以上に集中してのめり込んだことを懐かしく思い出しつつも、音楽の完成度の凄まじい高さに改めて、新鮮な気持ちで圧倒された。


シュタルケルの来日リサイタル(1988年)の映像は、かつて東芝EMIからLD(WV 060-3507;未架蔵)で発売されていた物と同一である。ぶっきらぼうな仕草からは想像もつかない精確無比かつ流麗で多彩な音楽の硬派な佇まいは、とにかく格好が良い。バッハは少し淡々とし過ぎているようにも感じるが、カサドとコダーイの2曲については圧巻としか言いようがない。画質はLDと同等のレベル。


1966年結成のリンゼイQが解散前年の2004年に収録したハイドンの弦楽四重奏曲集は、コンサート会場でのライヴ収録とスタジオ収録とが入り混じっていて、見た目のヴァリエーションにも富んでいる上に、各曲の前に演奏者による簡単な解説が入るという凝った構成で、全7曲というヴォリュームにも関わらず飽きが来ない。演奏スタイルは旧世代のそれだが、ハイドンを知り尽くしている様が手に取るように分かる堅実なアンサンブルと、第1Vnが良い感じで全体に埋没しているバランスが非常に心地好い。録音で聴く機会もそう多くはない楽曲群を映像で観ることができるというだけでも十分に価値はあるが、さらにこの水準の演奏を視聴できるとなれば、室内楽ファンならば見逃がすことのできないソフトと言えるだろう。

ボーナス映像のドキュメンタリーも、やや散漫で通り一遍の内容ではあるが、様々な団体のリハーサルなど弦楽四重奏好きには堪らない映像が目白押しである。


ラフマニノフの歌劇はアリアを幾つか聴いたことがあるだけで、全体を通して観た作品は一つもない。したがって私にこの舞台を正当に評価することはできないが、華やかになりようのない舞台の下で鳴り響くオーケストラの充実ぶりに耳を奪われる。レイフェルクス演じる男爵の醜悪な重厚さも素晴らしい。実際に歌劇場で観ると意図が伝わるのだろうかと思われるような演出もあるが、歌劇の内容を味わうに相応しい「聴かせる」映像である。


ショスタコーヴィチ版「ホヴァーンシチナ」全曲の映像は、ショスタコーヴィチのオーケストレイションを味わうに十分な音質であることが、まず嬉しい。この歌劇は未完であることもあって構成や補筆の問題が錯綜しており、本来ならばその辺りを丁寧に検討した上でこの演出の適否を論じるべきなのだろうが、私にはそのための十分な知識がない。

17世紀末の実際にあった事件を題材とした歴史劇なだけに、私は舞台や衣装に時代劇的な豪華絢爛さを期待するのだが、本演出では舞台をソ連時代に翻案しているためにそうした要素は皆無である。これはこれで説得力はあるのだが、「忠臣蔵」を観に行ったら「サラリーマン忠臣蔵」だった……みたいなコレジャナイ感は否めない。

演奏は、歌手もオーケストラも素晴らしい。これぞムーソルグスキイ、これぞロシア音楽、という満足感が存分に得られる。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.演奏家_Mravinsky,E.A.作曲家_Haydn,J.作曲家_Mussorgsky,M.P.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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