FC2ブログ

年末の中古レコード・セールにて

  • J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3&2番、ソナタ第3番 ハーン (Vn) (Sony SICC 30087)
  • モーツァルト:教会ソナタ全集 ハーフォード (Org) アムステルダム・モーツァルト・プレイヤーズ (Decca UCCD-90052)
  • ノヴァーク:ピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲第1番 スークQ シュチェパーン (Pf) (Supraphon 33CO-2437)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7&14番 シュナイダーハンQ (Orfeo C 315 931 B)
  • シューマン:弦楽四重奏曲第1番、ブラームス:弦楽四重奏曲第3番、ヴォルフ:イタリアン・セレナード、コダーイ:弦楽四重奏曲第2番、スーク:弦楽四重奏曲第1番 ウィーン・ムジークフェラインQ (Tower Records PROC-1399/400)
  • レーガー:弦楽四重奏曲全集、クラリネット五重奏曲 ドロルツQ ライスター (Cl) (DG 00289 477 5518)
2018年末もまた、家の大掃除を一段落させてから阪神百貨店の「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」へ。その夜は忘年会が2件あったため、エサ箱を漁らずにCDの背表紙を眺めて目に留まった物をピックアップしただけ。その割には聴き応えのあるチョイスができたのではないか、と自画自賛。

なぜかハーンのデビュー盤であるバッハの無伴奏が、其処此処で目に付いた。安価なこともあって、手始めに確保。いかにも教科書的に感じられる部分もない訳ではないが、17歳時点で技術的にも音楽的にもこの完成度というだけで驚愕の一枚である。パルティータには舞曲的なリズムの面白味はあまりないものの、真摯かつスケールの大きな音楽が、若々しい清新さを保ちつつも格調高い佇まいをもって繰り広げられる辺り、並みの才能でないことを今さらながらに実感した。遅めのテンポでじっくりと精確に奏でられる音楽は、全てのヴァイオリン弾きにとってのお手本となり得る見事さ。さすがにソナタ第3番の長大なフーガでは退屈する瞬間もあるが、それは今現在のハーンの演奏で改めて聴いてみたいところ。


関心のあるキーワードで検索して購入、という手順ではヒットすることのないジャンルの音盤と出会えるのが、商品棚を眺める買い物の醍醐味。モーツァルトの教会ソナタは、これまで全く聴いたことがなかった。スコアはNMA オンライン 新モーツァルト全集:デジタル版で見たことはあるものの、語弊を恐れずに言えば、その単純な譜面にそれほどの関心を抱くこともなかった。全曲が1枚にまとまっているこのアルバムは、資料として手頃と思い、手に取った。

ところがこの教会ソナタ、たまらなく素晴らしい。ディヴェルティメントやセレナーデとは比較にならないほど小規模ではあるが、隅々まで漲る愉悦感が卓越している。オルガンの入った響きも魅力的だが、とにかく聴いていて楽しい。ヴィオラ無しのオルガン有りという編成ゆえに自分で弾く機会はまずないと思うが、それでもなお弾いてみたいと思う楽曲群である。アムステルダム・モーツァルト・プレイヤーズ他の演奏は、学術的な評価は分からないものの、作品の魅力を聴き手に味わせるという点において不足は一切ない。


チェコの作曲家ノヴァークの作品は、恐らく今まで一度も聴いたことがない。懐かしいSupraphonレーベルの国内盤ジャケットにも誘われて、初期の室内楽曲集を確保。旋律やリズム、そして緩急が入れ替わる緩徐楽章など、いかにもチェコの国民楽派といった感じだが、全体としてはドイツ風のロマン派の印象が強い。臆面もなく濃口の歌が溢れ出すピアノ五重奏曲の方が、素直かつ上品で私の好み。


シュナイダーハンQはその活動時期が大戦真っ只中であったこともあり、録音に恵まれない団体である。バリリの自伝などで生々しく語られる敗戦直前の混乱を極めた時期のセッション録音というだけでも、本盤の歴史的価値は明らかであろう。もちろん、そうした社会情勢が嘘のように、緊張感に貫かれながらも微笑みを絶やすことのない、真に音楽的な演奏であることを何よりも強調しておかねばならない。第7番の第3楽章の神々しさは、まさに絶品。第14番も万感迫る演奏なのだが、半音近く高いピッチには、どうにも我慢がならない。残念。


Tower Recordsが復刻した、若きキュッヒル率いる結成後間もないムジークフェラインQの2枚組アルバムも確保。キュッヒルの本質がロマンティックなのか、ここに収録されたシューマンとブラームス、それにヴォルフは、いかにもキュッヒルらしい直線的で硬質な弾きぶりにも関わらず、清新なロマン派の薫りが心に響く。ただ、それ以上に印象に残ったのが、コダーイとスークの2曲。民俗性が排除されたというよりは、ハプスブルク帝国の辺境の地の音楽を帝都の音楽家があくまでも帝国の視点で解釈したというような感じ。極めて洗練された演奏で、特にコダーイは楽曲の仕組みや構造が明晰で、楽曲の理解にはうってつけの仕上がりと言ってもよい。こうしたスタンスには異論も多々あろうが、私は面白く聴いた。


1月9日のエントリーでも述べた「中古音盤屋でのルーティン」だが、その一つが、ドロルツQのレーガー全集を探すことであった。よく使うHMV ONLINEでは早々に販売終了となっており、店頭でも一切見かけることがなかった。改めてネットを調べてみたら“入手困難”というほどでもないようだが、特に新品に対するこだわりもなかったため、ルーティンとして一応チェックするに留まっていた。この度、めでたく確保に至った。私はレーガーの音楽を好んで聴く方だと思うが、それでもこの5曲の弦楽四重奏曲はいずれも晦渋で、たとえば自分自身で演奏してみたいと強く思うほどではない(技術的側面は度外視しても)。この絶え間ない転調のうねりの中に漂う濃厚で暗い抒情を、ドロルツQはあたかも自らの自然な言語であるかのように奏でている。技術的には若干野暮ったいところはあるものの、これらの楽曲がどんな音楽であるのかを理解する上で、この全集を無視するわけにはいかない。クラリネット五重奏曲は、ライスターに関しては後年の録音(Camerata)があるとはいえ、楽曲の素晴らしさは言うまでもなく、またドロルツQが紡ぐレーガーの響きも十二分に素晴らしい。

スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

リヴォーフ・プラーチの民謡集、他

  • Русские народные песни, собранные Николаем Львовым, положенные на музыку Иваном Прачем и опубликованные в 1790-1806 гг., Композитор・Санкт-Петербург, 2012.
  • バクスト, J.・森田 稔(訳):ロシア・ソヴィエト音楽史, 音楽之友社, 1971.
  • ヴィラ=ロボス:弦楽四重奏曲全集 ラテンアメリカQ (Brilliant 6634)
「リヴォーフ・プラーチのロシア民謡集」は、18世紀末から19世紀にかけて編纂・出版されたロシア民謡集の中でも最も有名な物。1987年にはファクシミリが出版されているものの、とても素人が手を出せるような値段ではなく、一度その内容を見てみたいと思いつつも全く機会がなかった。ところが先日、ふと思い立って色々と調べてみたところ、2012年に出版された入手容易な物があることを発見。ついに入手することができた。

第5版まであるようだが、今回入手したものは第2版のリプリントである。各版の違いだけでなく、このロシア民謡集の持つ意義については、下記の文献に詳しい(大学のリポジトリからPDFファイルをダウンロードできる)。
  • 安原雅之:19世紀のロシアで編纂されたロシア民謡集について, 愛知県立芸術大学音楽学部音楽学コース紀要, 12, pp.62-65, 2017.
  • 安原雅之:ロシア民謡集の研究 (1) : 18世紀末から19世紀にかけてロシアで刊行された民謡集について, 愛知県立芸術大学紀要, 45, pp.127-135, 2015.
ロシア民謡の形式や分類について詳しいことはわからないが、この民謡集では以下の章立てがなされている。
  1. Протяжные:延べ歌
  2. Плясовые:踊り(プリャースカ)
  3. Свадебные:婚礼歌
  4. Хороводные:輪舞
  5. Святочные:スヴャートキ
  6. Малороссийские:小ロシア

様々な作曲家がこの民謡集から題材を採ったようだが、中でも有名なのはベートーヴェンの「ラズモフスキー四重奏曲」である。
  • 【9番】Ах! талан ли мой(ああ私の運命は)=ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番の第4楽章第1主題
  • 【132番】Уж как слава Тебе Боже на небеси, слава!(いと高きところには栄光、神にあれ)=ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番の第3楽章中間部主題
ショスタコーヴィチの楽曲で直接関係するのは、「10のロシア民謡 Sans op. Q」の第7~9曲。
  • 【97番】Ельник, мой ельник(私のモミの林よ)=第7曲
  • 【5番】Как у батюшки в зеленом саду(お父様の緑の庭で)=第8曲
  • 【14番】Говорила я другу милому(愛しい人に私は言いました)=第9曲
Музыка社の旧選集の解説(全音出版社の楽譜には、この邦訳が掲載されている)では、この民謡集の出版年が「1896年」と記されているが、これは第4版の出版年(初版:1790年、第2版:1806年、第3版:1815年)である。ショスタコーヴィチが参照したのが第4版だったのか、単に解説者が最新版の出版年を記したのか、その辺りは不明。

“元ネタ”探しの資料として重宝するのはもちろんだが、旋律線だけでなく、その歌詞も参照できることが何よりありがたい。もっとも、民謡の歌詞を理解するのは決して容易なことではないが。


1月9日のエントリーの最後で言及した、ディスクユニオン お茶の水クラシック館で入手した書籍は、ロシア=ソ連の音楽史。ショスタコーヴィチ存命中(晩年ではあるが)の出版のため、ソ連の代表的な作曲家として取り上げられているのはミャスコーフスキイ、プロコーフィエフ、カバレーフスキイ、ハチャトゥリャーン、そしてショスタコーヴィチだけである。

日本語で読めるロシア音楽の通史は、そう多くはなく、私が読んだのはマースの『ロシア音楽史 《カマーリンスカヤ》から《バービイ・ヤール》まで』(春秋社, 2006)の他に、園部四郎の『ロシア・ソビエト音楽史話』(創芸社, 1976)くらいしかないのだが、このバクストの本は、古代ルーシ国家の成立まで遡ってソ連時代の途中まで一通り触れられているという点で、個々の記述には古臭さがあるものの、ロシア音楽史の概要を手軽に知ることのできる一冊である。社会主義リアリズムの思想についても紙数を割いて論じられている。ただ、著者がどの程度ソ連共産党の理論を理解し、共感しているかはよくわからない。というのも、この本の記述を読んでも、私には何をもって“理論”と言っているのかがさっぱり理解できなかったから。それより、ソ連のオペラについて論じられた最終章は、聴いたことのない作品や作曲家の名前が目白押しで、非常に興味を惹かれた。



アリアCDのセールで、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲全集を購入。学生時代、ベスレル=レイスQによる国内盤(テイクオフ)で全集がリリースされたのだが、私は初回発売の3枚を入手したのみで、その後、残りがリリースされたのかどうかも知らない。中古音盤屋で同団の全集(輸入盤)を見かけることはあるが、何となく買いそびれたまま今に至る。今回、ラテンアメリカQの演奏で初めて全17曲を聴いたが、ミヨーの17曲と似たような多彩さを有する創作群と感じた。耳を惹く面白さや、シリアスな説得力など、興味深く聴くことができたが、連続して聴き通す中で退屈な瞬間がなかったとまでは言い難い。第5番のように民謡素材を活用した作品は特に気に入ったが、演奏会で取り上げるには、どの曲も全楽章通しての完成度に物足りなさが否めない。

ラテンアメリカQの演奏は、技術的には野暮ったさが残るものの、決して弾きやすいとは言えないスコアを手堅くまとめあげており、この膨大な曲集のリファレンスとして十分な水準に達している。個々の楽曲の雰囲気においてはベスレル=レイスQの方が相応しいと思えるが、演奏技量の差が大きく、一般的にはラテンアメリカQ盤を採るべきだろう。

aa/m/27/5029365663427.jpg" width="100" border="0">

theme : クラシック
genre : 音楽

お茶の水でのささやかな収穫

  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ(第13~24番) パパドプーロス (Pf) (Oxford Philomusica OP006/7)
  • ショスタコーヴィチ:人形たちの踊り、格言集、ピアノ・ソナタ第1&2番 メルヴィン・チェン (Pf) (Bridge 9238)
  • ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集 スメタナQ (Denon 90CO-1975→77)
  • ピアノ・ソナタ第2番, Edition Peters, 4726.
所用で東京入りした際、30分弱の空き時間に無理やりディスクユニオン お茶の水クラシック館へ。中古音盤屋でのルーティンのみをこなし、確保したのはCD3点+楽譜1点+書籍1点。

「Shostakovich」の棚に、Kingdomレーベルからリリースされた「第1~12番」までのセットのみを架蔵している、パパドプーロスの「24の前奏曲とフーガ」の残りを発見。別レーベルからのリイシューではあるが、特にオリジナル盤にこだわるような蒐集をしているわけではないので、直ちに確保。この音盤がリリースされた1990年頃は、この作品の全曲盤自体が稀少で、ニコラーエヴァの初録音(Victor盤)と最新録音(Hyperion盤)の他にはキース・ジャレット盤(ECM)くらいしか入手容易な物はなかった。ヴァイケルト盤(Accord)やペトルシャンスキイ盤(Dynamic)などは、当時はまだ“どこにでも並んでいる”音盤ではなかったように記憶している。それゆえ、パパドプーロス盤の第1巻を入手できただけでもラッキーで、第2巻は本当にリリースされたの?程度の認識で今日に至ってしまった。

改めて第1巻から聴き直してみたが、極めて端正に楽譜が再現された、とても気持ちの良い演奏である。一方で、曲毎の特徴やショスタコーヴィチ固有の語法などは取り立てて強調されておらず、“現代”“ロシア/ソ連”といった要素を感じることはほとんどない。この点で評価は分かれるだろう。幅広い聴き手に受けるという意味では、今なお存在意義のある演奏と言ってよい。


パパドプーロス盤の隣にあった、チェンによるピアノ・ソナタ集が価格的にも手頃だったので、続けざまに確保。いささか堅苦しさを感じるほどに生真面目な演奏である。冒頭の「人形たちの踊り」は、まるでピアノのお稽古で使うお手本の録音のような雰囲気。悪いとは言わないが、愉しくはない。この生真面目さで隅々まで丹念に弾き込まれた「格言集」は、良い意味での模範的な仕上がりだが、もう少し八方破れな勢いが欲しいところ。ピアノ・ソナタ第1番も同様。一方、ピアノ・ソナタ第2番はチェンの生真面目な演奏スタイルとの相性が抜群で、雰囲気豊かな名演。


中古音盤屋での私のルーティンは専ら、不揃いのままになっているセット物の探索なのだが、最近ではさらに大きな単位でまとめられたセットが安価で出ていることがほとんどで、私が1990年代に買いそびれた組み合わせのセットを見かけることはまず滅多にない。

スメタナQによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、一気に全てを購入するのは学生の懐には厳しく、“とりあえず”後期のセット(これだけでも8千円近くしたと思う)だけ購入したところで、他を買い揃えるには至らなかった。今回、中期のセットが棚に並んでいるのを見つけ(しかも2組あった)、迷わず確保した次第。

スメタナQは決して嫌いな団体ではないのだが、DenonのPCM録音で聴く彼らの音色は、あまり好みではない。晩年の技術的な劣化も影響しているとは思うが、それ以上に、生々し過ぎる録音の質が苦手である。同じ後期の四重奏曲でも、Supraphonの旧盤を好んで聴くのは、まさにこの理由から。この中期の曲集においてもその印象が大きく変わることはない。ただ、ラズモフスキー第2番の第2楽章はとりわけ神々しく、諸々の否定的な要因を超えて、圧倒的に心に迫る傑出した素晴らしい名演として、特記しておきたい。


入り口付近の音楽書&楽譜の棚からは、まずショスタコーヴィチのピアノ・ソナタ第2番の最初期の出版譜を確保。ペータース版だが、標題や作曲者名などを除き、モスクワで出版された初版譜のリプリントである。作品番号が「64」と記されているのが目を惹くが、これは自筆譜の記載に準拠しており、「61」の誤記ではないと思われる。この作品番号の混乱について検証した論文等を見たことはないが、おそらく「61」は歌劇「賭博師」(未完)のために予定されていた番号で、作曲順で「64」が予定されていたソナタが、「賭博師」の“穴埋め”に「61」となったのではないかと推察される。


残る書籍1点については、一度目を通してからまた後日。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

BBC Legendsの買い漏らし分

  • ブリス:祝典ファンファーレ、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番、チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲 D. オーイストラフ (Vn) オーマンディ/ロンドンSO M. ショスタコーヴィチ/ロンドンPO (BBC Legends BBCL 4267-2)
  • ドヴォルザーク:テルツェット、ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第14番 スメタナQ (BBC Legends BBCL 4180-2)
アリアCDで、BBC Legendsレーベルの在庫処分と思われるセールの告知があった。好みの演奏家や作曲家などに限って購入していたが、架蔵枚数だけでなく、愛聴盤となっているアルバムも少なくなく、文字通り質量共に私のコレクションの重要な位置を占めるレーベルの一つである。言われてみれば新規リリースもすっかりご無沙汰で、CDメディアでの新譜が減っている近年の情勢からしても、このセールが実質的に“最終”の意味合いを強く帯びているのは間違いのないところだろう。

私が是非とも入手しておきたいと、かねてからチェックしたまま買いそびれていたのは3枚。その全てを今回のセールでオーダーしたのだが、入荷したのは残念ながら2枚のみ。残る1枚は、1年以上前にHMV ONLINEでオーダーしたものの未だ手配中のまま。そう遠くない内に入手できることを願うのみ。

まず1枚目は、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第2番の西側初演ライヴ。さすがに無疵とは言えないものの、独奏・オーケストラ共に自らが奏する音の意味を的確に把握した、完成度の高い見事な演奏である。オーマンディの指揮ゆえか、オーケストラが協奏曲らしい華やかさを持っているのが面白く、オーイストラフの他の録音とは少し異なる盛り上がり方に興奮を禁じ得ない。

チャイコーフスキイの協奏曲は、さらに緊密かつ完璧な名演。こんな演奏を実演で目の当たりにしたら、もう二度とこの曲を聴かなくても良い……と言いたくなるほどの内容だが、録音状態がかなり悪いのがつくづく残念である。

ブリスのファンファーレは華麗な響きが素晴らしいが、あまりに短く、またオーイストラフ独奏の2曲との関連も感じられないので、アルバムの収録曲としての印象は極めて薄い。


スメタナQのライヴ盤は同レーベルにもう一枚ある(ベートーヴェン第1番、モーツァルト第20番、スメタナ第1番)が、ドヴォルザークとヤナーチェクという“お国物”のせいか、熱気も完成度も本盤はそのさらに上を行く出来。彼らの絶頂期のライヴがいかに凄かったかを余すところなく捉えた録音と言ってよいだろう。どの曲も優劣つけ難いが、敢えて言うならばテルツェットのシンフォニックなスケール感は特筆しておきたい。弦楽器の室内楽愛好家にはよく知られていながらも、そもそも音盤の種類が少ない作品であるが、この録音一つあれば十分だろう。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Oistrakh,D.F. 演奏家_SmetanaQuartet

ミーニン合唱団のスヴィリードフ&ラフマニノフなど

  • リームスキイ=コールサコフ(カバニーヒン編):歌劇「雪娘」より「道化師の踊り」、グラズノーフ(チェルノフ編):バレエ「ライモーンダ」より間奏曲(第1幕)、ブラームス(チェルノフ編):ハンガリー舞曲第7番、ショスタコーヴィチ(チーホノフ編):バレエ「ボルト」より「ワルツ=スケルツォ」、ドヴォルザーク(チェルノフ編):スラヴ舞曲第10番、ファルカシュ(チェルノフ編):バレエ組曲「小賢しい学生たち」より「チャールダーシュ」、コニャーエフ:演奏会用小品、ゴロドフスカヤ:ロンド、クリコフ:即興曲、リヴォーフ=カンパニエーツ:会話、トゥリコフ:奇想曲 チーホノフ (balalaika) ヤーコヴレフ (domura) ドゥブローフスキイ/オーシポフ記念国立ロシア民族楽器O (Melodiya 33 CM 02849-50 [LP])
  • スクリャービン:5つの前奏曲 Op.15、4つの前奏曲 Op.22、ピアノ・ソナタ第5番、ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガより第3、5番、プロコーフィエフ:4つの小品 Op.32、4つの練習曲 Op.2より第3曲 アレクセーエフ (Pf) (Melodiya 33 C 10-11159-60 [LP])
  • スヴィリードフ:室内オーケストラのための音楽、ペイコー:挽歌形式の詩「ミャスコーフスキイの思い出に」、ドビュッシー:神聖な踊りと世俗の踊り スミルノーヴァ (Hp) アガルコフ/グネーシン記念音楽教育大学CO (Melodiya C10 20931 005 [LP])
  • スヴィリードフ:カンタータ「夜の雲」、ラフマニノフ:「聖金口イオアン聖体礼儀」より ミーニン/モスクワ室内cho (Melodiya C10-15907-08 [LP])
最近、めっきり利用することがなくなったArs Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.だが、気まぐれに4枚ほどオーダー。

まずは、オーシポフ民族楽器オーケストラのアルバム。ショスタコーヴィチの小品が収録されている未架蔵の音盤である。A面はクラシックの名曲の編曲、B面はマンドリン・オーケストラなどで取り上げられることの多い作曲家の作品、という構成。選曲も編曲もこの編成によく合った秀逸なもの。B面の作品群はバラライカやドムラのためのオリジナル作品なのか、元来はマンドリンなどの他の楽器のための物なのかは判然としないが、少なくとも違和感は全くない。

演奏は鮮やかで愉しく、ロシア情緒に満ちた響きを堪能するに十分な仕上がり。ショスタコーヴィチ作品は、まるでバラライカのために書かれたのではないかと錯覚するほど、楽器の音色と楽曲の雰囲気とが一致している。編曲者でもあるチーホノフの独奏も、バラライカの魅力を存分に伝える見事なもの。


アレクセーエフによる20世紀前半のロシア・ピアノ音楽集は、微妙に渋い選曲が素敵。和声の変化が織りなす多彩な色合いの表現が秀逸で、特にスクリャービンの前奏曲集は素晴らしく印象的な演奏。一方で第5ソナタのような大曲になると、楽曲の大局的な構成力に不足するのか、全体に散漫な印象が否めない。ショスタコーヴィチの2曲は比較的地味な印象の楽曲ながらも、アレクセーエフの多彩な音色が耳を惹くが、フーガの造形に物足りなさが残る。


グネーシン記念音楽教育大学の学生オーケストラのアルバムは、非常に意欲的な選曲である。いずれも前衛音楽ではないのだが、演奏効果が派手でない割にアンサンブルの精度が求められる作品ばかりで、(プロ音楽家の卵とはいえ)学生オケの水準をはるかに超えた聴き応えのある演奏に感心する。


ミーニン合唱団による、スヴィリードフとラフマニノフのややマイナーな合唱曲を収録したアルバムは、ロシア風の野性味と洗練とのバランスが素晴らしく、ロシアの合唱の神髄とまで言ってしまいたくなるような内容。スヴィリードフの「夜の雲」は、以前にラストヴォローヴァ/モスクワ新合唱団の音盤を紹介したことがあったが(2010年3月22日のエントリー)、アンサンブルの緻密さ、響きの豊かさ、表現の彫りの深さなど、あらゆる点で本盤の方が上である。ラフマニノフの「聖金口イオアン聖体礼儀」は全20曲中7曲の抜粋だが、こちらは更なる名演。ただひたすらに美しい。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Sviridov,G.V.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
01 | 2019/02 | 03
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター