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年末の中古レコード・セールにて

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第14番、第12番「四重奏曲断章」(未完の第2楽章付き) ジュリアードQ (CBS/SONY 30DC 799)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第14&4番 東京Q (RCA BVCC-29)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 東京Q (RCA BVCC-7)
  • パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第1番、ヴァイオリンとギターのためのソナタ Op.3-6、協奏的ソナタ、カンタービレ、ジュリアーニ:ヴァイオリンとギターのためのソナタ パールマン (Vn) J. ウィリアムズ (G) (CBS MK 34508)
2017年末もまた、家の大掃除を一段落させてから阪神百貨店の「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」へ。年を追う毎に掃除の肉体的負担が大きくなってきて、音盤漁りの意欲が極端に減少してきている。今回も、CDのみをざっと眺める程度で終了。結果として、シューベルトの弦楽四重奏曲が3枚と偏った選択になってしまった。

まずはジュリアードQによる「死と乙女」。いわゆる名盤の類だと思うが、かつては“即物的”とか“鋭利”など形容されることの多かった彼らの演奏スタイルが、実は随所でかなり自由なルバートも厭わない、非常にロマンティックなものであることの典型的な録音である。録音上の響きのせいもあって硬派な印象に違いはないが、いかにも往年の演奏といった感じ。本盤を手に取った最大の理由は、「断章」の第2楽章が収録されていること。ベーレンライター版の総譜などで見ることのできるこの未完の断片は、実際に音で聴いてみると想像以上に美しく薫り高い音楽であった。文字通り途中で作曲が止められているために、実演で取り上げるには終止の処理がどうしようもないのが、少し残念。


ウンジャンが第1Vnを務めた第3期の東京Qが、この団体の絶頂期であったことに疑いの余地はない。1980年代末に彼らが録音したシューベルトの3枚も名盤の誉れ高いものだが、私は第13&9番の1枚しか架蔵していなかった(大学2回生の時に、ロザムンデの第1楽章を演奏した時に購入したと記憶している)。「死と乙女」と第15番の2枚が揃っていたので、この機会に確保。“巧さ”が前面に押し出されているわけではなく、むしろ、たとえば第15番の第1Vnなどにはもたつきが感じられる箇所すらあるのだが、この極めて音楽的な一体感、音楽のどの一瞬からもどこのパートからも同じ歌が溢れ出てくる、最良の意味での均質さは、幾多の歴史的な名四重奏団の中でも一際傑出した完成度である。演奏頻度の低い第4番が、この水準で録音されていることも貴重だ(現在入手容易な「後期弦楽四重奏曲集」と題された2枚組には収録されていない)。


シューベルトのみ、というのも物足りなく、若きパールマンによるギターとの二重奏曲集が運良く目についたので、これも確保。中学生か高校生の頃、NHK FMのパガニーニ特集をエアチェックしたことがあり、「協奏的ソナタ」のこの演奏もカセットテープに収めて聴いていたことを懐かしく思い出した。ヴァイオリンもギターも、とにかく綺麗な音がしている。甘美な歌とヴィルトゥオージックな華やかさとが見事に両立した、これらの楽曲の理想的な演奏と言ってよいだろう。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Schubert,F.P. 演奏家_東京Quartet

ネット通販2件

  • ベートーヴェン:交響曲第3番、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 M. ザンデルリンク/ドレスデンPO (Sony 88985408842)
  • フォーレ:パヴァーヌ、ウォシャウスキ:オイフン・プリペチク、イタリア民謡:トスカーナの子守歌、宮城道雄:春の海、ショスタコーヴィチ:「M. スヴェトローフによる2つの歌」より「子守歌」、イングランド民謡:グリーンスリーヴス、リュランス:子守歌、オルフ:「カルミナ・ブラーナ」より第3部「愛の誘い」~「天秤棒に心をかけて」、中国民謡:山東省の子守歌、ジョン・レノン:イマジン、トルコ民謡:ウスクダラ、ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番よりアリア(カンティレーナ)、ガーシュウィン:サマータイム、スコットランド民謡:ケルトの子守歌、モーツァルト:きらきら星変奏曲 クトゥルエル (Fl) ブレイナー/ロイヤルPO (Gallo CD-1168)
  • ショスタコーヴィチ(バウムガルトナー編):弦楽四重奏曲第8番、コッコネン:…鏡をとおして…、マルタン:弦楽オーケストラのためのパッサカリア、シェック:夏の夜 バウムガルトナー/ルツェルン音楽祭弦楽合奏団 (Gallo CD-799)
数ヶ月前にHMV ONLINEで目についた音盤をオーダーしていたのだが、いずれも「入荷未定」となってしまったため、在庫があった1枚のみが先に配送されてきた。

クルト・ザンデルリンクの三男ミヒャエルの録音は、チェリストとしてショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番を聴いたのみ。指揮者としては本盤が初めてとなる。ベートーヴェンとショスタコーヴィチとの組み合わせによる交響曲集は既に3枚がリリースされており、本盤はその第2弾にあたる。

ベートーヴェンは、当然ながらピリオド・スタイルによる演奏。アーティキュレイションだけでなく、金管楽器やティンパニの音色に至るまで、このスタイルが徹底されている。往年の(たとえば父クルトの)重厚なベートーヴェンとは全く異なるが、流麗な推進力を持ったスピード感溢れる音楽が演奏スタイルと密接に関係していて、刺激的でありながらも説得力のある立派な演奏に仕上がっている。

とはいえ、ショスタコーヴィチが鳴り始めるとどこかほっとしてしまうのは、私の耳が依然として古い世代のままであるからなのだろう。こちらは1950年代当時のピリオド・スタイルではなく、現代的なモダン奏法であるので、贅肉がそぎ落とされた、それでいて隅々までよく響く、しなやかに燃える演奏となっている。アンサンブルもよく整っており、スタンダードとして十分に堪え得る仕上がりである。


アリアCDからも、数ヶ月前にオーダーしていた音盤が2枚届いた。

一つは、「World of Lullabies」と題された、フルート独奏を軸にしたイージーリスニング風編曲のアルバム。収録曲に「ショスタコーヴィチ:子守歌」とあったので、何が取り上げられているのかという興味だけでオーダーしたもの。結局、「勝利の春(M. スヴェトローフによる2つの歌)」の1曲だったのだが、必ずしも「子守歌」というタイトルに固執した選曲ではないので、なぜこの決して有名とは言えない曲が選ばれたのかはよくわからない。

シェフィカ・クトゥルエルというトルコのフルート奏者は、その名を聞いたのも初めてだったが、明るく伸びやかな音色と歌はなかなかに魅力的。アルバム全体を通して聴くと、演奏にも編曲にも単調さが感じられるのは残念だが、アルバムの企画意図を汲むのならば、あまり目くじらを立てるようなものでもないだろう。


ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番といえば、バルシャーイによる弦楽合奏用編曲が有名だが、同編成用の編曲は他にもいくつかある。ルツェルン音楽祭弦楽合奏団を組織し、長らく指揮者として率いたバウムガルトナーも、この弦楽四重奏曲の編曲を残している。もっとも、コントラバスの使い方や各パートのソロとトゥッテイの割り振りに細かい違いがあるだけなので、編曲によって楽曲の印象が大きく異なることはない。

バウムガルトナー/ルツェルン音楽祭弦楽合奏団といえば、何となく古典派以前のレパートリーの印象が強いのだが、本盤は(当時の)現代曲を集めたもの。いずれも聴きやすい旋律を持つ楽曲ばかりではあるが、このコンビの手堅い演奏水準を再認識させてくれる内容となっている。ショスタコーヴィチは、鋭さや深刻さといった要素は強調されないながらも、美しい響きで切々と奏でられる悲痛な音楽は胸に迫る。

theme : クラシック
genre : 音楽

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中古盤漁り

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 テミルカーノフ/サンクト・ペテルブルグPO (Mirare MIR 196)
  • ハイドン:ピアノ三重奏曲第43番、シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 オーイストラフ三重奏団 (EMI TOCE-7862)
  • マーラー:ピアノ四重奏曲断章、シューベルト:弦楽四重奏曲第14番、ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 バブアゼ、梅原ひまり (Vn) 山本由美子 (Va) 林 裕 (Vc) 田隅靖子 (Pf) (LeavesHMO HMOC17834/5)
  • ガーシュウィン:子守歌、ハイドン:弦楽四重奏曲第83番、シューベルト:四重奏曲断章 D 103、メンデルスゾーン:弦楽四重奏のための4つの小品より変奏曲、スケルツォ、プッチーニ:菊、ヴォルフ:間奏曲 ジュリアードQ (Sony SICC 1527)
  • スメタナ:弦楽四重奏曲第1&2番 スメタナQ (Denon 33C37-7339)
  • バルトーク:弦楽四重奏曲第1&2番 ヴェーグQ (Tower Records TGR-1001)
仕事の帰りに、ディスクユニオン 大阪クラシック館にて寄り道。室内楽の棚をチェックし、予算に応じてショスタコーヴィチ関連を漁るという、いつものパターンだったが、あてもなく立ち寄ったわりに、なかなか満足度の高い買い物ができた。

まずはショスタコーヴィチ関連を3点。

テミルカーノフによる交響曲第5番は、4枚目となる。1981年のライヴ盤を除き、いずれも手兵サンクト・ペテルブルグPOとのコンビで、2枚目のRCA盤以降、ほぼ10年おきに録音されているのは、演奏者の思い入れというよりも、有名演奏家によるお国物の名曲の録音に対するニーズが高いということなのだろうと思う。若い頃の演奏は、いわゆる爆演として取り上げられることが多い指揮者だが、この曲に関しては流麗さの方が際立つ。一部、テンポの変わり目でアンサンブルが乱れる箇所はあるものの、オーケストラは無理なくコントロールされ、押し付けがましい個性的な解釈も見られない。RCA盤以降の3枚は、基本的に同一の演奏傾向と言ってよいだろう。こういう頑固さは、さすがムラヴィーンスキイの後継者、と言えるのかもしれない。


オーイストラフ・トリオの「プラハの春」音楽祭でのライヴ録音は、ショスタコーヴィチのみPraga盤で既架蔵済み。ソ連崩壊後、東欧圏の秘蔵音源が脈絡なく流出したが、「Vltava Classics」もそうした泡沫(?)レーベルの一つで、当時(1991年)の雑誌記事にはPantonとMultisonicの音源+αについて東芝EMIが契約したものと記されていた。このレーベルの全体像は詳らかにしないが、「プラハの春コレクション」というシリーズだけは、当時音盤屋で目にした記憶がある。興味のあるタイトル揃いではあったが、何せその頃は貧乏学生。国内盤フルプライスにはおいそれと手が出せなかった。そんな諸々を思い出しつつ、この盤を手に取った次第。

ショスタコーヴィチは、この三重奏団、あるいはオーイストラフが関わった全ての録音の中でも最高の出来である。Praga盤に比べると、より生音に近く感じられるものの、寸分の隙もない演奏の巨大で圧倒的な印象に変わりはない。ただ、この音圧でハイドンを聴くのは、現代の耳にはちょっと辛い。シューベルトも濃口のロマンティックな表現はたまらなく胸に響くが、音そのものはいかにも前時代的。


「関西の名手たちによるアンサンブルの妙技2011」と題された2枚組のアルバムは、私家盤に限りなく近い雰囲気だが、コンサート会場などの限定された場でなくても入手可能なようだ。演奏者は、関西地域のクラシック・ファンにはお馴染みの実力派ばかり。ソロだけでなくアンサンブルの経験も豊富な奏者揃いなので、いずれも聴き応えのある仕上がりになっている。マーラーの甘美な情緒に耽溺するような若々しい抒情、ショスタコーヴィチの堅実ながらも颯爽としたリズムの捌きと清冽な歌は、十分に魅力的。弦楽四重奏という形態だけはどうしても固定メンバーを要求するようで、「死と乙女」だけは技術的な破綻はないものの音楽的に散漫な箇所が散見されるのは惜しい。


ジュリアードQが1968年にリリースした小品集は、日本ではこれまで特典盤の類でしか入手できなかったとのこと。この珍しいアルバムがCD化されていたことはおろか、アルバムの存在すら知らなかったので、「面白い選曲のアルバムだな」程度の認識で購入したのだが、これが思わぬ拾い物だった。4月のシュペーテQの演奏会でシューベルトの「断章」を取り上げることもあり、この曲が含まれていることが購入の動機の一つでもあったが、なんとこれは有名な第12番とは別物。これを除けば全て知っている曲ばかりながらも、いずれも演奏頻度は決して高くなく、しかも著名団体が取り上げる機会もそう多くはない。そんな小品の数々を、単に手堅い以上の充実した演奏で聴かせてくれるだけでも、このアルバムの価値は高いのだが、とりわけヴォルフの「間奏曲」の名演が、さらにその価値を揺るぎのないものにしている。断片的な旋律がやや支離滅裂に散りばめられたようなこの曲が、まるでヴェーベルンの作品のようにあらゆる旋律の断片が有機的に全体像を形成し、しかも後期ロマン派特有の高血圧な情緒を魅力的に織り成していく。この作品の魅力を初めて理解できた気がする。


スメタナQによる3度目のスメタナは、他の2種類を架蔵していたこともあって、長らく買いそびれたままになっていたもの。憧れの国内盤フルプライスが見る影もないほどの中古価格になっていたこともあり、気の赴くままに確保。彼らのキャリアとしては晩年に差し掛かった1976年の録音だが、最上の意味での円熟の極みであり、かつ、若い頃をはるかに凌駕する熱量の高さに圧倒される。アンサンブルの緊密な完成度は、これ以外の解釈を許したくなくなるほどで、40年以上経った今日においても決定盤の座は揺るがない。とりわけ第2番は演奏芸術の極致と言っても差し障りないだろう。


ヴェーグQによるバルトークとベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集が「タワーレコード オリジナル企画」として限定リリースされたのは、1996年のこと。その後、いくつかのレーベルからBOX化もされた音源であるが、気分の問題で、買い損なった分は同じフォーマットで入手したいと思ったまま20年が過ぎた。今回確保した音盤をレジに差し出そうとしたまさにその時、レジ前の新着音盤コーナーに、バルトークで唯一未架蔵だった第1巻(第1&2番)を発見。その場に他の客がいなかったにも関わらず、奪い取るように確保してしまった。現代音楽臭のない、穏やかでしっとりとした歌の美しさの光る、心からの共感に満ちた音楽は、ハンガリーQ、バルトークQといった同郷の団体に共通するバルトークの人懐っこい側面を強く意識させてくれる名演。

theme : クラシック
genre : 音楽

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ディスクユニオンのオンラインショップを初利用

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 アシケナージ/NHK SO (Decca UCCD-1191)
  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1&2番 G. カピュソン (Vc) ゲールギエフ/マリイーンスキイO (Erato 0825646069736)
  • シューマン:幻想小曲集、ブラームス:チェロ・ソナタ第1番、ドビュッシー:チェロ・ソナタ、ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ ガベッタ (Vc) グリモー (Pf) (DG 479 0090)
  • J.S.バッハ:フランス組曲第4番、トッカータ 嬰ヘ短調 BWV 910、平均律クラヴィーア曲集第1巻より前奏曲とフーガ第1~5番、ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガより第14、1、3、18番)、J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲より第18&19変奏、スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ハ長調 L.104、プロコーフィエフ:10の小品より前奏曲、 シューマン:「ウィーンの謝肉祭の道化」より間奏曲 ニコラーエヴァ (Pf) (Meloclassic MC 1019)
  • ラヴェル:弦楽四重奏曲集、ドビュッシー:弦楽四重奏曲集、ラヴェル:序奏とアレグロ 東京Q ゴールウェイ (Fl) ストルツマン (Cl) リッチャウアー (Hp) (RCA 09026 62552 2)
セールの案内メールが届いたので、初めてディスクユニオン・オンラインショップを利用してみた。以下、全て中古盤。

まずは、アシュケナージによる交響曲全集の購入漏れ分。これで、残すは第13番だけとなった。第4番にはロイヤルPOとの旧盤があったが、全集にはこの再録盤が収められている。旧盤はこの交響曲の旋律面を滑らかに浮かび上がらせた非常に聴きやすい演奏だったが、本盤はその路線をさらに究めたまろやかな音楽に仕上がっている。N響も世界水準の美しい音を出していて、この作品が持つ尖った支離滅裂さが受け入れられない聴き手にとっては、あるいはベストに推される演奏かもしれない。しかしながら、第4番をこのように奏でてしまうと、第3番と同種の冗長さが際立ってしまい(特に第3楽章)、曲の面白味が一方的に減じる結果となっているように、私には感じられる。聴き手の嗜好によって大きく評価が分かれるだろう。


G. カピュソンとゲールギエフによるショスタコーヴィチのチェロ協奏曲集は、第2番のみ初出で、第1番はゲールギエフの映像全集(2016年8月28日のエントリー)に収録されているものと同じ演奏である。第1番は、木の香りがするような男臭い音色の魅力を存分に披露しつつ、落ち着いた足取りながらも力強さと諧謔味に不足することのないバランスのとれた佳演。ツボを押さえたオーケストラの絡みも素晴らしい。一方の第2番は、まるで別人の演奏のように冴えない。技術的な破綻こそないものの、独奏はともかく、オーケストラには巧さを感じることがない。全体に集中力にも欠け、終始散漫な印象が否めない。第3楽章冒頭のホルンに象徴されるように、聴き手が期待するツボで悉く肩透かしを食らう感じ。


ガベッタとグリモーのデュオ・アルバムは、ややとりとめのない選曲だが、いずれも好きな作品ばかりである。冒頭のシューマンは、よく歌うガベッタの魅力が発揮された素敵な演奏。グリモーのピアノも清潔なロマン情緒に満ちていて好ましい。だが、次のブラームス以降は、低音の響きに広がりが感じられないチェロの音色に不満が募るばかり。おそらくは録音に問題があるのだろうが、この音ではチェロの魅力が全く伝わらず、ただただ薄味で耳ざわりの良い旋律が流れるだけ。ショスタコーヴィチのソナタは再録音だが、旧録に比する存在意義を見出すことはできない。


ライプツィヒで行われた1966年のバッハ音楽祭におけるニコラーエヴァのライヴ盤は、バッハとショスタコーヴィチという、彼女の得意とするプログラムである。状態がよほど良かったのか、技術面の瑕疵がほとんど感じられない上に、音楽的な密度の高さがずば抜けている。内なる熱気を孕んだ濃密な音楽は、ライヴならではのもの。冒頭のフランス組曲から、ノルシュテインのアニメーション「話の話」で印象的に流れるモーツァルトのピアノ協奏曲第4番のような濃厚なロマンティシズムに惹き込まれる。バッハとしては今や受け入れ難い演奏様式には違いないが、それでもなお、強い説得力を持つ魅力的な演奏である。ショスタコーヴィチにはこうした違和感は勿論なく、スケールの大きな造形と、繊細な音部の弾き分けとが両立した深い音楽に仕上がっている。4曲のアンコールでは、シューマンがとりわけ印象的だった。


意識している訳ではないのだが、ここのところ東京Qの録音を手に取る機会が多い。今回も、ドビュッシーの弦楽四重奏曲を漫然と検索していたら見つけたのが本盤。やはり、ウンジャン時代がこの団体の絶頂期だったのだろうとの感を新たにした。個々の楽曲の解釈等については好き嫌いはあるだろうが、個人の独奏であっても“カルテットの音”がする境地に達した団体は、技術的水準がめっぽう高い現在においても、そうはない。ラヴェルの序奏とアレグロで、煌びやかな管楽器に導かれて入ってくる弦楽四重奏の音は、身震いがするほど美しく、凄い。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

カラヤンの「プロムナード・コンサート」

  • タネーエフ:日の出、セレナーダ、夜のヴェネツィア、山頂、松の木、混声合唱のための12の合唱曲より~プロメテウス(第8曲)、墓で(第1曲)、夕べ(第2曲)、ごらん、なんという霧(第4曲)、山に二つの暗い雲がかかり(第11曲) ユルロフ/国立アカデミーcho. (Melodiya 33CM 01941-42 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:革命詩人による10の詩 イルジン/スロヴァキア・フィルハーモニーcho. (Opus 91120787)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、ピアノ協奏曲第1番 ラディチ (Pf) セラク (Tp) ホルヴァート/ザグレブPO (Philips 835 318 AY [LP])
  • ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ、J. シュトラウスII:トリッチ・トラッチ・ポルカ、J. シュトラウス:ラデツキー行進曲、シャブリエ:狂詩曲「スペイン」、楽しい行進曲、J. シュトラウスII:ポルカ「雷鳴と稲妻」、スッペ:「軽騎兵」序曲、ヴァインベルゲル:歌劇「バグパイプ吹きのシュヴァンダ」よりポルカ、オッフェンバック:喜歌劇「地獄のオルフェ」序曲、 カラヤン/フィルハーモニアO (Columbia FCX 512)
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から。今回はちょっとトラブルがあって、いつも通りにサイトからオーダーしたにも関わらず、なぜかList No.違いの音盤が確認メールに記載されていた。すぐに修正を求めたところ、当初オーダーした音盤は加えられたのだが、一方で間違ってオーダーされた音盤については何度メールしてもキャンセルしてもらえなかった(というより、返信がなかった)。たかが1枚、それも稀少盤ではないので、あまりとやかく言うつもりはないのだが、何となくもやもやが残る。

タネーエフの合唱曲集は、ほとんどが初めて聴く楽曲である。ロシアのローカル色豊かな声と、やや暗めの甘い情緒に心を揺さぶられた。ただ、アレーンスキイなどとは異なり、どこか理屈っぽい硬さも感じられ、その美しさにもかかわらず、これらの作品がそれほど広く聴かれていないのも宜なるかなというところ。


ショスタコーヴィチの「10の詩」は、ジダーノフ批判期の作品80番台に特有な透明感が印象的な作品だが、この演奏は声そのものも表現も、いかにも力不足な感が否めない。ロシア風の鋭い女声や野太い男声が必須とは思わないが、小奇麗にまとめられているだけではあまりにも訴求力がない。


ホルヴァート指揮のショスタコーヴィチの交響曲第9番は、Radio-Televizije Beograd盤で既に架蔵済み(2010年5月18日のエントリー)。今回は、ラディチ独奏のピアノ協奏曲第1番目当て。手堅い演奏ではあるが、独奏もオーケストラも技術的な精度はそれほど高くない。全体に切れ味不足で、残念ながら印象に残らない。


さて、期せずして聴くことになったのが、カラヤンのアンコール集。初出時のアルバム・タイトルが何だったのか確たるところは知らないが、今回入手した音盤は収録曲も曲順もオリジナルの構成だと思われる。いささか雑駁な選曲ではあるが、「お楽しみ箱」的な名曲集としては十分以上に気が利いている。国も様式もまちまちで、本来ならば「それぞれを見事に描き分けている」ことが評価されるのだろうが、このアルバムの凄さは「徹頭徹尾カラヤン」であることだ。フィルハーモニア管とのコンビということもあるのか、颯爽とした機能性が前面に出た演奏で、鳴らすべきは鳴らし、歌うべきは歌う、といった爽快感は、カラヤン以外に望むべくもない。

聴くつもりのなかった音盤の満足度が最も高かったというのも皮肉だが、ここは素直に、守備範囲外の素晴らしい音楽との出会いを喜んでおこう。

theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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