菊池桃子~林哲司

- VANDA(編):林哲司全仕事, 音楽之友社, 2001.
1作品につき1演奏という原則で整理しているのだが、元来“狭く深い”蒐集傾向があるので、手持ちの音源については、ほぼ全部整理できている。でも、一度やりだすと次から次へと手を出したくなり、まずは自分の過去の演奏会録音(多くがカセットテープやMD)を取り込んだ後、さらに何かないかと思案していたところ、急に思いついたのが菊池桃子。
中1の終り頃、テレビのスポットCMで流れていた「青春のいじわる」。歌のサビは何となく印象に残ったが、まだその時はその歌い手には何の興味もなかった。その年の晩秋だろうか、「雪にかいたLOVE LETTER」を聴いた時なのか、ザ・ベストテンか何かで歌っているのを観た時なのか、今となっては何がきっかけだったか全く思い出せないが、とにかく気がついた時には、すっかり菊池桃子のファンだった。中学時代、一番仲の良かった友人も同じくファンだったことが拍車をかけたのかもしれない。もっとも、熱烈に追っかけたりするには、札幌は田舎だった。同級生の女子が読んでいた『明星』を回してもらうくらいが関の山で、基本的にはテレビとラジオで見聞きするのみのファンであった。高2のいつ頃だったろう、ラ・ムー結成を機に急速に熱が冷め、ちょうど大学受験の準備もあったことから、テレビ自体ほとんど見なくなってしまった。光GENJIなんかが活躍しだした頃だったと記憶している。
今考えるといささか不思議ではあるのだが、『冗談はやめて、まず菊池桃子』(学習研究社, 1985)というムック本があって、その巻末には、4thシングルの「卒業」までの全A面とB面、そして1stアルバム「Ocean Side」の全曲の楽譜がついていた。それを見て初めてギターを手に取り、我流でコードを覚えてすっかり暗譜してしまったことも、今となっては懐かしい思い出だ。テンションコードや分数コードだらけで、初心者用のコード本だけでは用が足らず、楽器屋で立ち読みして調べたり、仕方ないから理屈で考えて無理やりな指使いで掻き鳴らしたりしたものだった。
楽譜の作曲者欄に必ずあった「林哲司」という名は、だから嫌でも覚えてしまった。杉山清貴&オメガトライブの歌でも同じ名前を見かけたので、きっと事務所かレコード会社お抱えの作曲家なんだろう、といった程度の認識ではあったが。
『林哲司全仕事』という本があることを知ったのはわりと最近のことのはずだが、新聞?雑誌?ネット?どこで見かけたのかまったく思い出せない。それでもしっかり記憶に残っていたのは、やはり青春時代の思いの強さゆえだろうか。
先日、東京に足を運んだついでに富士レコード社に立ち寄り、持っていなかったシングルとかアルバムを大人買いして、iTunesに「菊池桃子」というプレイリストを作った。再生を始めると、自分でも驚くくらい曲を覚えている。レンタルレコード屋に行ってLPやドーナツ盤を借りて、カセットテープにダビングしてルーズリーフに歌詞を書き写していた、10代の日々を思い出したりもして。
ただ、かつて熱烈なファンだったというだけでは、20年近く放っておいたはずの曲を、こんなにも鮮明に覚えていることの理由にはならないだろう。そもそも、菊池桃子の歌唱そのものはどう贔屓目に評価したって上手いとは言えないわけで、それでもなお曲がこれだけ強く印象に残っているというのは、やはり林哲司の力に他ならない。『林哲司全仕事』を読み、彼にとって菊池桃子との仕事が非常に大きな位置を占めていることを知り、なるほどと納得した次第。もっとも、この本の中では、菊池桃子がまるでアーティスト扱いで、どうにも違和感が拭えないけど。
林哲司自身は、シングルの中では「SAY YES!」が一番好きなようだが、これはちょっと意外。僕は、そのB面の「18歳の秋」が一番良い曲だと思っている。A面でいうなら、やっぱり「雪にかいたLOVE LETTER」かな。「もう逢えないかもしれない」もいいけど。ちなみに『林哲司全仕事』では、「雪にかいたLOVE LETTER」が好きなのは“隠れ桃子フリーク”だと書いてある。僕には、隠れているつもりなんてまったくないのですがね。
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