ブーレーズ:四重奏のための書/黛敏郎:交響詩「立山」

- ブルーノ・ワルター/リハーサル風景(マーラー:交響曲第9番、ブラームス:交響曲第2番、ブラームス:交響曲第3番) ワルター/コロンビアSO、ニューヨークPO (CBS XBAC 91008 [LP])
- ブーレーズ:四重奏のための書(抜粋)、ブークールシュリエフ:弦楽四重奏のための作品≪群島II≫ パルナンQ (Erato OS-2545-RE [LP])
- 黛敏郎:交響詩「立山」 黛敏郎/東京SO (Victor JRZ-2538 [LP])
ワルターのリハーサル風景を収録した音源は少なくないようで、この盤にどれほどの価値があるのかは知らないが、何かの特典盤として頒布されたもののようである。どちらも短い断片しか収録されていないので、これでワルターの仕事の様子を推し量るには不足するが、それでも特にマーラーの執拗で丹念な指示は興味深い。何より、年齢を全く感じさせない(マーラーは死の前年、85歳の時である)声の張りには驚愕。
ブーレーズの作品は数えるほどしか知らないが、いずれも冷たくも煌びやかな硬質の音響世界が印象的である。ただ、論理的でありながらも複雑な独自の様式感は、単に漫然と聴いていて理解できるものでは到底なく、たとえば「主のない槌」の楽曲配列などはまさにちんぷんかんぷんである。この「四重奏のための書」も同様で、この抜粋の仕方(そもそも、全曲をそのまままとめて演奏する必要はないということらしいが)に何の意図があるのか、各曲にどういう関連があるのかなどは、現時点ではまだざっと聴き通しただけの僕には皆目見当がつかない。とはいえ、この美しさは只事ではない。いわゆる現代音楽の技法や作風の発展あるいは変遷について、歴史的に俯瞰するような知識は皆無だが、いずれにせよ音楽としてこの作品が名作であることに疑う余地はないだろう。カップリングのブークールシュリエフという作曲家は初耳だが、こちらもまた美しい作品。ただ、印象は薄い。
黛敏郎の顔は、それこそ毎週「題名のない音楽会」で見ていたわけだが、その作品となると、音盤の形で所有しているのはラサールQが演奏した「弦楽四重奏のための前奏曲」だけだったりする。なぜかエサ箱に2枚入っていたこの交響詩「立山」は、立山アルペンルートが全線開通した1971年に富山県からの依頼で制作された短編映画のための音楽である。旋律や全曲の雰囲気に前衛臭はなく、むしろ聴きやすい音楽と言ってよいだろう。しかし、聴き応えは相当なもので、とにかくよく鳴るオーケストレイションの下、壮大かつ深遠な音響が立山の峻厳な自然のあり様を見事に描き出している。広く聴かれて当然の名作だと思っていたら、2004年末にTower Recordsの企画で既にCD化(TWCL-1025)されていた。
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