【楽曲解説】ハイドン:弦楽四重奏曲第39番「鳥」

Franz Joseph Haydn
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)


Streichquartett Nr. 39 C-dur Op. 33-3 (Hob.III-39) „Vogelquartett“
弦楽四重奏曲第39番 ハ長調 作品33-3(Hob.III-39)「鳥」



 弦楽四重奏曲の分野でも多作家であったハイドンの凄さは、いずれの曲集においても工夫を凝らして新機軸を打ち出していることにあります。モーツァルトが「ハイドン・セット」を作曲するきっかけとなった曲集「ロシア四重奏曲」(1781)は、精緻な主題労作の技法と、第2楽章にスケルツォを導入した4楽章制という点で、同時代の音楽家達に大きな影響をもたらしました。
 この曲集の中でもとりわけ名高い本作は、第2楽章トリオで2台のヴァイオリンが奏でる装飾音が鳥のさえずりのように聴こえることから「鳥」の愛称で親しまれています。随所に印象的な音型が現れる、軽やかでハイドンらしい機知に富んだ作品です。


シュペーテ弦楽四重奏団 第5回公演(2015年4月18, 25日)

スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Haydn,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】ハイドン:弦楽四重奏曲第72番

Franz Joseph Haydn
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)


Streichquartett Nr. 72 C-dur Op. 74-1 (Hob.III-72)
弦楽四重奏曲第72番 ハ長調 作品74-1(Hob.III-72)



 還暦を迎えたハイドンがロンドンでの公開演奏を念頭に作曲した、「アポーニー四重奏曲」(1793)の1曲です。この曲集はいずれも短い序奏の後に楽曲が始まりますが、これはマナーが良くなかった当時のロンドンの聴衆の注意を喚起することが目的だったと言われています。またこの曲の第1楽章では、展開部と結尾部の前にごく短い楽節が挿入されていて、ソナタ形式の構成が聴いて分かるように工夫されています。これも、ロンドンの聴衆に対する啓発の意図があったのでしょう。

 副題がつけられていないこともあり、決して演奏頻度の高い曲ではありませんが、第1楽章のシンフォニックで豊かな響きやスケルツォと紙一重のメヌエットなど、意欲的かつ完成度の高い華やかな作品です。

シュペーテ弦楽四重奏団 第4回公演(2014年4月12, 26日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Haydn,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】ハイドン:弦楽四重奏曲第83番/老人

Franz Joseph Haydn
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)


Streichquartett Nr. 83 f-moll Op. 103 (Hob.III-83) / Der Greis Hob.XXVc-5
弦楽四重奏曲第83番 ニ短調 作品103(Hob.III-83)/老人 Hob.XXVc-5



 晩年のハイドンは、2曲のオラトリオ「天地創造」と「四季」に取り組みました。しかし、これらの仕事は成功をおさめたにも関わらず、ハイドンの心身を消耗し尽くしてしまいます。自分の精神が音符や音楽にかかりきりになることが、最大の苦痛だとまで言ったほどでした。1801年に「四季」の初演を終えた後、1803年になってようやく、1799年に2曲が完成していた作品77の弦楽四重奏曲の続編に着手します。文字通り最後の力を振り絞って緩徐楽章とメヌエットを書き上げたハイドンは、両端楽章も書こうと努力し続けていたようですが、ついに1806年、全曲の完成を断念し、この2つの楽章のみを出版社に渡しました。没するまでにまだ数年ありましたが、これが彼の仕上げた最後の作品となりました。

 ハイドンはこの曲を出版するにあたり、自分の名刺と称することもあった「老人」(1796)という歌の一節を印刷するように依頼しました。美しくも苦渋に満ちた、音楽に別れを告げる音楽です。本日は、この曲も続けて演奏します:「わが力は萎え、私は老い衰えた/ユーモアとワインのみに生かされて/わが力は萎え、私は老い衰えた/頬の赤みも消え、死が戸口に立っている/怖れることなく扉を開こう/天に感謝!/心地よい楽の音はわが人生」

シュペーテ弦楽四重奏団 第3回公演(2013年4月13, 20日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Haydn,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】ハイドン:弦楽四重奏曲第73番

Franz Joseph Haydn
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)


Streichquartett Nr. 73 F-dur Op. 74-2 (Hob.III-73)
弦楽四重奏曲第73番 ヘ長調 作品74-2(Hob.III-73)



 1790年末、30年の長きに渡ったエステルハージ家への宮仕えから解放されたハイドンは、ヴァイオリニストでもあった興行師ヨハン・ペーター・ザーロモン(1745~1815)の招聘に応じて新天地ロンドンへと旅立ちます。産業革命に沸き立つ大都市は、58歳の作曲家に新たな創作の意欲をもたらしました。

 その後一旦ウィーンに帰郷し、二度目の渡英を翌年に控えた1792年、ハイドンは作品71(3曲)と74(3曲)の弦楽四重奏曲を作曲しました。被献呈者の名をとって「アポーニー四重奏曲」と呼ばれるこの曲集は、大陸とは違って一般市民が中心であったロンドンの聴衆を念頭において作られています。フォルテの短い序奏は、演奏が始まってもなかなか静かにならない聴衆の注意を引くことを意図しています。主として第1ヴァイオリンに要求される技巧的なパッセージも、聴衆受けのする派手なものです。また、ロマン派に通じる濃い口の抒情と、年甲斐もなく全編に漲る活力は、大ホールでの演奏に相応しい骨太で大柄なものです。第2楽章と第4楽章は、それぞれ「アンダンテ・グラツィオーソ」「アレグロ」として編曲され、「ソナチネアルバム」第1巻に収録されていますので、旋律に聴き覚えのある方も少なくないかもしれません。

シュペーテ弦楽四重奏団 第2回公演(2012年4月14, 21日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Haydn,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

ムラヴィーンスキイの「1917年」初演ライヴ/クイケンQのハイドン

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第12番、アルテュニャーン:祝典序曲 ムラヴィーンスキイ/レニングラードPO (Venezia CDVE 04405)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第81~83番 クイケンQ (Denon COCO-70845)
2か月以上前のことになるが、HMV ONLINEで、新譜を中心に3点購入。ここのところブログを放置していたので、感想をアップするのをすっかり失念していた(^^;

同時代の演奏家による歴史的な録音の発掘にも一段落ついた感のあるショスタコーヴィチだが、ムラヴィーンスキイによる交響曲第12番の初演ライヴという大物がリリースされた。初演が作曲当時に作曲家の考えていた作品の姿を再現しているとは必ずしも言えないが、ショスタコーヴィチのように多くの聴衆が新作の初演を期待していた作曲家の場合は、初演ライヴが他の幾多の名演をもってしても置き換えることのできない独特の昂奮と緊張感とを孕んだ記録であることに異論はないだろう。

この第12番の異様に速く、猛烈なエネルギーが随所で暴発する演奏は、まさに初演ライヴの醍醐味を凝縮したかのような内容である。ライヴならではの技術的な瑕疵は決して少なくないが、当時の最高水準の演奏家が奏でる猟奇的な轟音の突進は、毀誉褒貶のあるこの曲の真価を聴き手に突きつけているかのようですらある。録音状態からしても今となってはヒストリカル音源であるが、近年の現代的な演奏解釈を好むファンの心も揺さぶるに違いはない、多くの聴き手にとって一聴の価値がある録音である。

アルテュニャーンはさらに録音状態が悪いので、さすがにムラヴィーンスキイ・マニア向けの歴史的な意義の方が上回ってしまう。演奏は、やはりムラヴィーンスキイとしか言いようのない引き締まった響きと振幅の大きな表現が素晴らしい。

HMVジャパン

私が参加しているシュペーテQの次回公演(9月の予定でしたが、諸般の事情で来年4月となりました)で、ハイドン最後の弦楽四重奏曲(未完)を演奏する予定になっている。既に複数の演奏を勉強しているが、まだ聴いたことのなかったクイケンQの演奏をオーダー。ピリオド楽器ならではのアーティキュレイションやデュナーミク、音の処理など、モダン楽器しか弾けない我々の直接的な参考にはならないことも少なくないものの、その鄙びた古風な響きが主張する、前衛的ですらある情熱の発露は、最晩年のハイドンが音楽史上に占める位置を再認識させてくれる。味わいのある素晴らしい演奏である。

HMVジャパン

もう一枚は、サロネンが指揮したショスタコーヴィチの「オランゴ」なのだが、こちらは楽曲の内容や背景についてもう少し勉強してから、感想をまとめたいと思っている。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Haydn,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
01 | 2017/02 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター