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ウィーン・ゾリステンによるモーツァルトのセレナーデ

  • モーツァルト:カッサシオン ニ長調(セレナーデ第1番)、4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)、セレナーデ第6番「セレナータ・ノットゥルナ」 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 858 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第4番 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 856 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第5番 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 857 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、6つのレントラー舞曲、ディヴェルティメント ヘ長調 、7つのメヌエットより ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201.800 [LP])
  • アーノルド:イギリス舞曲第5番(第2集)、ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーヴスによる幻想曲、ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より「鍛冶屋の合唱」、ヘンデル:オラトリオ「ソロモン」より「シバの女王の到着」、J. S. バッハ:カンタータ第147番「心と口と行いと生活で」より「イエスは変わらざるわが喜び(主よ、人の望みの喜びよ)」、マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「復活祭の合唱」、ヘンデル:オラトリオ「サムソン」より「輝けるセラフたちに」、J. S. バッハ:管弦楽組曲第3番より「アリア」、ショスタコーヴィチ(アトヴミャーン編):組曲「馬あぶ」より「ロマンス」、ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」より「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」、カントルーブ(編):「オーヴェルニュの歌」より「バイレロ 」、ロッシーニ:小荘厳ミサ曲より「聖霊とともに」 コバーン (S) ヒューズ/ハレO & cho(Classics For Pleasure CFP 41 4474 1 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.にて、ウィーン・ゾリステンによるモーツァルトのセレナーデをまとめ買い。恥ずかしながら、このジャンルは体系的に聴いたことがないので、ほとんどの収録曲を初めて聴いた。多くの曲でヴァイオリン独奏があるものの、全てがピヒラーという訳ではない。とはいえ、あらゆるフレーズの処理に至るまで細心の心配りがなされた丁寧でいて闊達なアンサンブルは、明らかにアルバン・ベルクQ以降の時代を予感させる。若い団体ならではの緻密さも傑出しているが、それでいて神経質にはならない潑剌さが何よりも魅力的な演奏である。


「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を収録した1枚は、ジャケットの体裁や品番などから察するに、上記の3枚に先立って録音されたものと思われる。と言うより、メンバー表記を見ると、ピヒラー、メッツェル、バイエルレの初代ABQメンバーに加えてカクシュカの名前がヴァイオリン奏者の一人としてクレジットされていることから、この団体初期の録音であることが明らかである。彼らの後の音楽人生に思いを馳せると、何とも感慨深い。演奏内容自体は、この団体の他の音盤と同様の清新さに満ちた清潔で健康なもの。

ウィーン・ゾリステンの全ディスコグラフィーは把握できていないが、ピヒラー在籍時の約10年分については、そこそこ蒐集できたような気がする。


ウェールズの指揮者オウェイン・アーウェル・ヒューズが自身で選曲した「管弦楽名曲集」は、その嗜好がいかにも英国圏らしくて面白い。ショスタコーヴィチの「馬あぶのロマンス」などを聴く限り、やや濃口の表情付けがされているものの、基本的には奇を衒うことのない真面目な演奏である。

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tag : 演奏家_DieWienerSolisten 作曲家_Mozart,W.A. 作曲家_Shostakovich,D.D.

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 17 B-dur, KV 458
弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 KV 458「狩」



 「ハイドン・セット」の前半(第14~16番)と後半(第17~19番)との間には、1年半近いブランクがあります。後半の3曲は、展開部とコーダの充実による大規模化、緩徐楽章の深い情感、対位法的な緻密さといった点で前半の3曲と区別され、これらの特徴はその最初の作品となった第17番にも明らかです。「狩」という愛称は、第1楽章の冒頭主題が狩猟時に用いる角笛の響きに似ていることから後世に付けられたものです。全曲の親しみやすい雰囲気や当時の聴衆の好みを意識したサービス精神に溢れた構成などから、「ハイドン・セット」の中で最もハイドン的な作品と言われています。
 「vivace assai(とても快活に)」という言葉の意味を余すところなく音楽で表現した第1楽章は、楽章全体を振り返り要約するような長大なコーダで閉じられます。第2楽章の優美なメヌエットを挟んで、モーツァルトの真面目で情熱的な特質が存分に発揮された深い感動を湛えた第3楽章が続きます。18世紀では「Adagio」という指示は速度よりも感情を表すものであり、それはモーツァルトにおいても同様でした。「ハイドン・セット」でアダージョが指定された緩徐楽章はこれが唯一で、「聖母マリアのためのリタニア」KV 195 (186d)の第5曲「Agnus Dei(神の子羊)」(この曲もAdagioと記されています)の動機が用いられています。ハイドン風の軽快さを持った第4楽章では、精緻な対位法が駆使された展開部の密度の高さが光りますが、同時にモーツァルトらしい疾走感が爽やかな余韻を残しつつ、全曲が締めくくられます。


シュペーテ弦楽四重奏団 第9回公演(2019年4月27, 29日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第3番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 3 G-dur, KV 156 (134b)
弦楽四重奏曲第3番 ト長調 KV 156 (134b)



 「あの子(ヴォルフガング)は今、退屈なので四重奏曲を書いています」(1772年10月28日)と父レオポルドが手紙に記しているように、3回目のイタリア旅行中であった16歳のモーツァルトが退屈しのぎに書いたとされる6曲の弦楽四重奏曲が、いわゆる「ミラノ四重奏曲」(第2~7番)です。いずれも「急・緩・急」の典型的なイタリア風の3楽章形式を採っていて、全体としては前古典派の雰囲気を色濃く残しています。当時はまだ四重奏=4人の奏者では必ずしもなく、各パートの人数は自由なものでした。しかし、この第3番でモーツァルトは初めてソロ編成、すなわち4人の奏者による演奏を指定しました。また、短調で書かれた中間楽章の暗く情熱的な感情表現は、時代を大きく先取りしたものです。なお、最初に書かれた中間楽章は父レオポルドによって「聴衆に合わない難しい曲」だとされ、書き直されました。本日演奏するのは、この「第2稿」です。


シュペーテ弦楽四重奏団 チャリティーコンサート2016(2016年10月22日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 23 F-dur, KV 590
弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 KV 590



 いわゆる三大交響曲(第39~41番)を書き上げた翌年(1789年)、モーツァルトはベルリンに向けて旅立ちました。晩年のモーツァルトが深刻な経済的困窮の中にあったことはよく知られていますが、その打開を図るべく、演奏会の興行収入や新作の注文を得ると同時に、プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世(1744~97)に謁見して名誉と名声を得ることが、このベルリン旅行の主たる目的でした。旅行後、モーツァルトは「王のために四重奏曲6曲を書いている」と手紙に記していますが、「プロイセン王のために」と明記された第21番(KV575)に続いて第22番(KV589)と第23番(KV590)を完成させたところで作業は中断してしまいました。このような経緯からこれら3曲の弦楽四重奏曲は「プロイセン(プロシア)王セット」と呼ばれていますが、結局王に献呈されることなく二束三文で出版社に売られてしまった(出版はモーツァルトの死後すぐ)こともあり、王からの依頼が本当にあったのかどうかについては疑問が残ります。
 「プロシア王セット」最大の特徴は、チェロに堪能であったヴィルヘルム2世を意図して、チェロ・パートに高い音域での独奏的な役割が与えられていることにあります。しかし、このセット最後の第23番ではこうした機会音楽的な要素は影を潜め、古典的で簡潔な構成の中にロマン派を予感させる陰影を湛えた、モーツァルト最晩年の様式が示されています。第1楽章冒頭やベートーヴェンのスケルツォを想起させる第3楽章のトリオ、第4楽章の展開部などの激しく情熱的な気分と、第3楽章や第4楽章の冒頭などの清澄かつ流麗な音の流れとの対比が織りなす複雑な情感は古典派の枠を逸脱したもので、天才モーツァルト最後の弦楽四重奏曲に相応しい音楽です。とりわけ、単一主題によるソナタ形式の第2楽章は、A. アインシュタインが「あらゆる室内楽文献のなかで最も感情の繊細な楽章の一つ」で「生への、至福と悲哀に満ちた告別」と美しい形容をしたことでも有名です。


シュペーテ弦楽四重奏団 第7回公演(2017年4月22, 29日)

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genre : 音楽

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モーツァルトの不明?曲

  • モーツァルト:フルート四重奏曲第1~4番、前奏曲とフーガKV404aより第1曲、オーボエ四重奏曲より第3楽章、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a) ランパル (Fl) 新パスキエ・トリオ (Philips 412 618-2)
  • モーツァルト:オーボエ四重奏曲、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a)、ディヴェルティメント第11番 ホリガー (Ob/Ehr) バウマン、ガシアリーノ (Hr) オルランドQ フルデモンド (Cb) (Philips 412 618-2)
  • モーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ、アダージョ(KV 411/KV 484a)、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a) ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル (Orfeo C 188 891 A)
この週末に、積年の疑問が解けた。といっても、モーツァルトのある作品の名前がようやく分かったというだけだし、そもそもモーツァルトに詳しい方々は星の数ほどいらっしゃるのでわざわざブログに書くほどの内容ではないのだが、「覚え書き」ということで。

ランパルと新パスキエ・トリオによるモーツァルトのフルート四重奏曲全曲のアルバム(1982年ライヴ)は、特にヴィオラのブルーノ・パスキエが大好きな奏者ということもあり、今なお、時々棚から出して聴くことがある。その最後に、おそらくは当日のアンコールで演奏されたものと思われる作品が収録されている。表記は「Adagio from Quartet in G Major KV 540」。当初は何の疑いもなく、そういう曲があるのだろうと思っていたのだが、ある時KV540は「アダージョ ロ短調」というピアノ曲だと知った。では、これは何なのだ?

ということで、「from Quartet」という言葉を頼りに色々探してみた(フルートという楽器にはこだわらなかった)のだが、全くわからない。伸びやかでとても美しい旋律なのだが、不思議なもので、素性がわからないというだけで落ち着いて聴く気にもなれない。

この曲を思い出しては、ネットでモーツァルトの作品一覧を眺めたり、YouTubeで色々と検索を試したりしたが、どうにもヒットせずに徒に時間だけが経った。このアルバムを購入したのは1999年なので、実に15年間かかったことになる。

週末、長年愛読している三省堂の『クラシック音楽作品名辞典』(手元にあるのは、学生時代に購入した初版)のページを徒然にめくっていると、「アダージョ ハ長調 KV580a (Anh.94)」という作品名が目に飛び込んできた。調性が違うのでダメ元で手持ちの音盤を探してみると、KV580aと表記されたホリガー&オルランドQ盤と、KV Anh.94と表記されたベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル盤が出てきた。

前者はハ長調、後者はヘ長調、不明盤はト長調。調性はどれも異なるのだが、スピーカーから流れてきたのは、長年私を悩ませ続けてきた、あの伸びやかで美しい旋律。自分の家に2種類も、しかもどちらもランパル盤よりも前に購入していた音盤があったという、間抜け極まりないオチではあったが、購入から15年目にして初めて、ランパルの明るく華麗な演奏を楽しむことができた。

さて、この作品、一応4声部のために書かれているものの、全声部が完成しているのは最初の28小節のみで、残りは旋律のみ。しかも、旋律を奏する楽器がコーラングレと指定されているだけで、残りのパートは2Vn&Vc(ケッヘル旧版)、2Hr&Fg(第6版)、そして新全集ではCl&Bst.Hr.×3という編成になっているという。

ランパル盤はケッヘル旧版に準じて、コーラングレとフルートとの違いを考慮して移調して演奏したということなのだろう(ちなみに、新全集に収録されている楽譜は、記譜上はト長調になっている)。フルートの華やかな音色も、コーラングレの鄙びた音色も、どちらも捨て難いが、ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル盤に収録された新全集の編成は、温かくも深い陰影の味わいが非常に印象的。

HMVジャパン
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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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