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【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 14 G-dur KV 387
弦楽四重奏曲第14番 ト長調 KV 387



 ハイドンの「ロシア四重奏曲」作品33(1781)に影響を受けて書き始められた「ハイドン・セット」(全6曲)の第1曲目が、この第14番です。第1楽章の主題労作や終楽章にフーガを配置している(ハイドンが「太陽四重奏曲」作品20(1772)で既に試みています)ことなど、ハイドン・セットの中でも特にハイドンの影響が感じられる作品です。しかしながら、半音階を多用したモーツァルト独特の響きは、本日の1曲目であるハイドンの第72番の10年以上前(1782)に書かれているにもかかわらず、古典派の次の時代を予感させます。fpの対比が強調されていることも本作の特徴で、若々しい力感が印象的な傑作です。

シュペーテ弦楽四重奏団 第4回公演(2014年4月12, 26日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 19 C-dur KV 465
弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 KV 465



 冒頭の序奏部が半音進行を中心とした大胆な和声で満たされていることから、「不協和音」という愛称で親しまれているこの作品は、モーツァルトの「ハイドン・セット」を締めくくる6番目の曲です。あらゆる点においてウィーン古典派の弦楽四重奏曲の頂点に君臨する本作について、徒に言葉を費やす愚を犯すつもりはありません。この素晴らしい音楽を演奏できることの幸せと感謝を皆様と共有することができましたら、望外の喜びです。

シュペーテ弦楽四重奏団 第3回公演(2013年4月13, 20日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 16 Es-dur KV 428 (421b)
弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 KV 428 (421b)



 ハイドン(1732~1809)の「ロシア四重奏曲」作品33(全6曲)が1782年に出版されると、それに多大な感銘を受けたモーツァルトは、2年あまりの歳月をかけて第14番KV 387から第19番KV 465に至る弦楽四重奏曲を作曲しました。「ハイドン・セット」と呼ばれるこれらの6曲は、ハイドン自身が「まったく新しい特別の方法」と称した主題労作(主題を構成する動機を用いて楽曲を作り上げる作曲法)の技法を、自身の新たな作曲様式として昇華させた傑作群です。

 第16番は、動機の扱いや半音階を活用した斬新な和声、各楽章の変化に富んだ性格など、「ハイドン・セット」の中でも際立って実験的な作品といわれています。そのためか演奏頻度はあまり高くありませんが、ロマン派を先取りしたかのような濃密な音楽は、モーツァルトの天才が存分に発揮された、紛れもない名作です。とりわけ、音楽学者アンナ・アマーリエ・アーベルト(1906~1996)が「トリスタンの響き」と評した第2楽章の、夢幻の音楽世界が印象的です。

シュペーテ弦楽四重奏団 第1回公演(2011年9月19, 24日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

チェコ・フィルハーモニー木管アンサンブルのモーツァルト他

  • ショスタコーヴィチ:映画音楽「ミチューリン」、映画音楽「生涯のような一年」 M. ショスタコーヴィチ/モスクワ放送SO & Cho (Angel/Melodiya SR-40181 [LP])
  • J. S. バッハ:イギリス組曲第3番、ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガより第2番、スクリャービン:練習曲 Op. 8より第2、4、7、11、12番、ラフマニノフ:絵画的練習曲集「音の絵」よりOp. 39-2、33-3 ルガーンスキイ(Pf) (Melodiya C10 25787 002 [LP])
  • モーツァルト:ホルンのための12の二重奏曲、ホルン五重奏曲、オーボエ四重奏曲、5つのディヴェルティメント K.Anh.229より第1番(B-dur)、ディヴェルティメント第5番 チェコ・フィルハーモニー木管アンサンブル、チェコPO団員 (Supraphon 1 11 1671/2 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの6月到着分。

息子マクシームによるショスタコーヴィチの映画音楽は、定評のある名演。両曲共に既架蔵の録音だが、手元のLPには「生涯のような一年」の1箇所に針飛びのする傷があるため、他にめぼしい出品もなかったこともあってオーダーしたもの。見境なく昂奮するに任せたようなマクシームの音楽には、生理的な快感がある。


ルガーンスキイのアルバムは、14歳の誕生日を迎えて間もなくの演奏会のライヴ録音。彼が1994年のチャイコーフスキイ国際コンクールで第2位(最高位)を受賞する8年前である。A面は、バッハとショスタコーヴィチという選曲に師のニコラーエヴァの影が見えたり、颯爽と弾き飛ばす快楽に押し流されてしまう若々しさを感じなくもないが、B面のスクリャービンとラフマニノフは年齢を意識させない、文句無しに成熟した音楽である。


2006年2月10日のエントリーで紹介した、チェコ・フィルハーモニー木管アンサンブルによるモーツァルトのセレナード第10~12番を収録した2枚組CD(Supraphon COCQ-84088/9)の続編として制作された録音があったので、迷わずオーダー。同じく2枚組だが、こちらはマイナー曲が中心であり、弦楽器を交えた作品も収録されている。技術的には現代の奏者に及ばない箇所も少なくないが、ローカル色豊かな音は、残念ながら今では失われてしまったもの。明晰ではないが馥郁たる響きで端正に奏でられるモーツァルトは、隅々まで愉悦に満ちた音楽である。ホルン二重奏曲や2本のクラリネットとファゴットの三重奏曲のように演奏機会が少ない作品を、この音楽的水準で聴くことができるだけでもありがたい。また、現在では父レオポルドの作品と確定され、偽作としてケッヘル第6版からは除外されているディベルティメント第5番も、名奏者ケイマルをはじめとするチェコ・フィルのトランペット・セクションの魅力が存分に発揮された佳演。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Mozart,W.A.

【録画】アンドレ・プレヴィンとN響の仲間たち

  • モーツァルト:セレナード「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」、ピアノ四重奏曲第1&2番 プレヴィン (Pf) 堀 正文、松田拓之 (Vn) 佐々木亮 (Va) 藤森亮一 (Vc) 市川雅典 (Cb) (2010.11.2 録画 [NHK ETV(2011.1.7)])
NHK交響楽団の弦楽器奏者と同団首席客演指揮者のプレヴィンとの顔合わせによる、オール・モーツァルトの室内楽演奏会を、NHK教育テレビの芸術劇場で観た。プログラムに惹かれた訳でも、好きな奏者がいる訳でもなく、とりたてて何かを期待することのないまま、要は気まぐれで録画したものである。

ところが、嬉しい誤算とはまさにこのことで、上質で心地の好い音楽が繰り広げられた、とても素敵な演奏会であった。「アイネ・クライネ」といえば自分で弾く機会の方が多いくらいで、特に弦楽五重奏のような室内楽編成でのプロの演奏を改まって聴いたのは、もしかしたら実は初めてのことかもしれない。絶妙に肩の力が抜けた雰囲気は、気心の知れた名手の集まりならではのもの。「セレナード」という曲種に相応しい、寛いだ暖かみに満ちた演奏であった。

続く、プレヴィンが参加したピアノ四重奏曲を聴いて、この音楽がプレヴィンによって導かれたものだと気付かされた。技術的な精度とは別の次元で、全ての音が珠のように磨かれている。特別な表情付けは行われていないが、余裕のある音の流れの中から多彩な陰影が移ろう様は、まさに大人の音楽。モーツァルトの2曲のピアノ四重奏曲は、情熱の奔流を内に秘めたシンフォニックでドラマチックな演奏も良いが、こういう優しい温もりを湛えた演奏も良いものだ。そして、こういう演奏は、誰にでも真似ができるような類のものではない。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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