プフィッツナーの室内楽曲/ボロディーンの弦楽五重奏曲

  • プフィッツナー:室内楽作品集(弦楽四重奏曲第1~3番、弦楽四重奏曲 ニ短調、ピアノ三重奏曲 ヘ長調、ピアノ三重奏曲 変ロ長調、ヴァイオリン・ソナタ、5つのピアノ曲、6つの練習曲) フランツ・シューベルトQ ロベルト・シューマン三重奏団 ヴァリーン (Vn) ペンティネン (Pf) (999 996-2)
  • ボロディーン:弦楽五重奏曲 タネーエフQ ゲラー (Vc) (Melodiya 33D 16579-80 [10"mono])
もともと最新情報の提供などという大したことを目指していない上に、最近は月一度の更新すらままならないこともあって、本ブログの閲覧数はごく微々たるもの。そんな中で比較的アクセス数の高いエントリーが、プフィッツナーの交響曲 作品46についての曲目解説である。確かに、プフィッツナーについて日本語で読める情報となると、ウェブで検索する限りではそれほど多くないので、通り一遍のことしか書いていない私の記事でも参照してもらう機会に恵まれるのだろう。

私は、プフィッツナーの音楽が好きだ。網羅的に知りたいと思うほどの作曲家ではないけれども、無視するには忍びない。学生時代にクラリネットを吹く先輩から、プフィッツナーの六重奏曲を教えてもらったのがきっかけである。当時は音盤の数も極めて少なく、演奏どうこう以前に曲を知ることすら一苦労だったのだが、浦川宜也の弾いたヴァイオリン・ソナタの録音がとりわけ気に入り、楽譜も取り寄せて自分で弾いたこともある。

大学時代に取り寄せた六重奏曲の楽譜(Johannes Oertel)には、弦楽四重奏曲第3番の楽譜の広告が載っていた。名著『クヮルテットのたのしみ』で、プフィッツナーについて好意的な評価がなされていることもあり、録音が見つからないのなら自分で弾いてみようと大阪の某有名楽譜屋に注文したところ、届いたのは未発表のニ短調の四重奏曲の楽譜…ということもあった。プフィッツナーの知らない曲には違いないし、クレームをつけるのも面倒だったので、その楽譜は今でも我が家の楽譜棚にある。結局、今に至るまで弾いたことはないのだが。

徒然にamazonを検索していたら、プフィッツナーの弦楽四重奏曲全集を含む4枚組を見つけた。cpoレーベルがプフィッツナーの作品を体系的にリリースしていることは知っていたが、長らく買いそびれていた(同じレーベルでは、ヒンデミットの弦楽四重奏曲全集も1枚買ったきりになっている)。マーケットプレイスに安価な中古品が出品されていたので、早速オーダー。

上述したニ短調の習作に加えてアルマ・マーラーに献呈されたという第1番も初めて聴いた。ピアノ三重奏曲は2曲とも初めて。いかにも後期ロマン派風の濃密なテンションで奏でられる仄暗く重厚な響きと、まるで古典派に回帰したかのような軽やかに澄み切った響きの魅力的な対比は、本セットに収録されたどの作品でも存分に味わうことができる。いずれも素敵な音楽なのだが、惜しむらくは尻切れトンボ風の終止パターン。途中がいくら良くても「え?これで終わり?」だと、実演ではなかなか取り上げられ難いだろう。中では、ピアノ三重奏曲が聴き映えのする作品で、これはもう少し演奏機会に恵まれてもよさそうな気がする。

演奏は、必ずしも楽譜に忠実とまでは言えないが、雰囲気のある演奏で、曲を知るという意味では十分以上の水準である。もっと暗くドロドロに…と思うところもあるが、それは現代の団体に望むべきではないのかも。

HMVジャパン

Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.は、最近めっきり出物が減ってしまった印象だが、たまたま目についた一枚をオーダー(実は二枚届いているのだが、もう一枚はまたもやダブり買い)。古めかしい録音から聴こえてくるのは、何とも懐かしさの漂うメロディー。ボロディーンらしい旋律美を期待して聴き進んだが、いかにも若書きの習作といった感じで、同じような旋律が延々と繰り返されるだけで単調。美しい箇所も少なくないのだが、残念ながら実演に供するには躊躇してしまう。少し思うところがあって、チェロ2本の五重奏曲を開拓したいところなのだが、結局シューベルトしかないのか。


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genre : 音楽

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年末の中古市にて

  • モーツァルト:ディヴェルティメント第1~3番 スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ (Victor VIC-28116 [LP])
  • テレマン:組曲 ハ長調、3つのオーボエ、3つのヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲 変ロ長調、オーボエ協奏曲 ヘ短調 バルシャーイ/モスクワCO (EMI ALP 2084 [LP])
  • プロコーフィエフ:バレエ「石の花」 ロジデーストヴェンスキイ/ボリショイ劇場O (Victor VIC-4018~19 [LP])
  • ストラヴィーンスキイ(ドゥシキン編):田園曲、ストラヴィーンスキイ:兵士の物語、シュトックハウゼン:「十二宮」より(水瓶座、魚座、牡牛座、蟹座、獅子座、射手座、水瓶座)、シニートケ:ヴァイオリン協奏曲第3番 クレーメル (Vn) ベルリン・フィルハーモニーOの首席奏者達 (King K28C-164 [LP])
  • R. シュトラウス:クレメンス・ブレンターノの詩による6つの歌、プフィッツナー:歌曲集(マルクに寄せて、子守歌、すっぱ抜き、菩提樹の葉陰で、私とあなた、そのかみの日) モーザー (S) ヴェルバ (Pf) (EMI EAC-80075 [LP])
年末は専ら自宅の大掃除に明け暮れていたのだが、一日だけ街に出る用事があったので、年末恒例となっている「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」を覗きに、阪神百貨店へと立ち寄ってみた。

掃除で疲れていたこともあって、文字通り覗くだけで済まそうと思っていたのだが、思いの外に混雑していた会場の熱気にあてられて、ついついエサ箱を順にチェックし始めてしまった。時間もあまりなかったので、たまたま割り込むことのできた名曲堂阪急東通店の出品物に限定してエサ箱を漁ること小一時間。5枚のLPをレジへ。

モスクワ・ヴィルトゥオージのモーツァルトは、嫌味なまでに磨き上げられた完璧なアンサンブルの妙を堪能できる一枚。スピヴァコーフ独特の癖のある節回しも、ここでは特に気にならない。ピリオド奏法に影響される前の、旧き佳きモダン流儀の歌が心地よい。LPの帯には「深々とした情感、心ゆくまでの歌。完璧な反復によって曲想を的確にとらえ深くほりさげた、美しくチャーミングな名演。」という煽り文句があったので、間違いなく宇野巧芳氏の解説だと思いきや、意外にも壱岐邦雄氏であった。形容詞の選択に加えて、繰り返しを楽譜通り行う“だけ”で楽曲の真正な解釈になるかのようなこのコピーは、やはり旧き佳き時代の遺物と言ってよいだろう。


この種のアンサンブルといえば、やはりバルシャーイ/モスクワ室内管が僕にとって永遠のスタンダードである。彼らのテレマンは初めて聴いたが、壮麗でありながらも引き締まった響きを通して、幾分泥臭いロマンの萌芽が立ち上ってくるような、期待通りの素晴らしい演奏である。これもまた、旧き佳き時代の遺産である。


プロコーフィエフ晩年の傑作「石の花」は、恥ずかしながら今まで全曲を聴いたことがなかった。輝かしい響きに彩られた美しい旋律の数々は、まさに天才的な音楽としか形容のしようがない。ロジデーストヴェンスキイの演奏には、不満のあろうはずもない。


イニシャルが「S」の作曲家を集めたクレーメルのアルバム(別にそういう意図があったとは思わないが)には、絶頂期のクレーメルの至芸が惜しげもなく詰め込まれている。「兵士の物語」における変幻自在の表現力など、未だにこれを超える才能は現れていないと言ってよいのではないだろうか。シニートケの協奏曲には初演者であるカガーンの見事な録音もあるが、内省的なカガーンの音楽に比べて、時にきらびやかなアピール力を持つクレーメルの音楽の方が、シニートケという作曲家を世に出す上で大きな力を持ったのは、至極当然のことであろう。


R. シュトラウスとプフィッツナーの歌曲集は、聴いたことのない作品ばかりが収録されていることに惹かれて確保したもの。手堅くまとめられた地味な歌唱であるが、濃厚なロマンの香りがじっくりと全身に沁み入るような空気感が心地よい。とりわけプフィッツナーの渋い美しさは、癖になる。

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【楽曲解説】プフィッツナー:交響曲

Hans Erich Pfitzner
ハンス・エーリッヒ・プフィッツナー(1869~1949)


Sinfonie Op. 46 für großes Orchester
交響曲(第2番)ハ長調 作品46



 十九世紀末から二十世紀前半(両大戦間)にかけてのドイツ音楽の動向は、決して単純ではない。加えて「第三帝国」時代のナチと音楽との関係が、問題を一層複雑にしている。ここでこの時代の音楽史を包括的に議論することは避けるが、十九世紀ロマン主義に対する批判と反動から出発した時代とされる二十世紀が、一方でロマン主義再評価の時代でもあったことを忘れてはならない。その“二十世紀のロマン主義”を代表する作曲家が、ハンス・プフィッツナーである。

 プフィッツナーの音楽は、当時のドイツで高く評価されていた。彼はナチ体制下のドイツ国内でリヒャルト・シュトラウスに次ぐ名声を受けており、戦前の日本においてもドイツ文化のいわば守護神として今では想像できないほどの知名度を持っていた(そこには、指揮者としての評価も含まれる)。ではなぜ、今日プフィッツナーの名が不当なまでに忘れられているのだろうか。それは彼の音楽が一つの時代思想であり、その背景を理解することなく解釈し得ないからである。徹底してロマン主義にこだわり、それをドイツの伝統的な文化の支柱においた独特の美学は、トーマス・マンにも熱烈に評価されていた。彼が護ろうとしていたものは、ベートーヴェンに始まりワーグナーへと至るドイツ音楽の歴史であり、“ドイツ的”なものそのものであった。彼の純粋すぎる国粋主義は必然的にナチ顔負けの反ユダヤ主義へともつながり、そのことがプフィッツナーに対する評価に大きく影響していることは否めない。もっともプフィッツナーはユダヤ性の本質を血筋におかなかったという点でナチズムとは無縁で、ヒトラーと個人的な面識があったにもかかわらず、そもそもナチ党員ですらなかったのだが。

 こうしたプフィッツナーの創作活動を代表するのは、歌劇「パレストリーナ」(1915年)や、カンタータ「ドイツ精神について」作品28(1921年)といった思想性が前面に押し出された作品である。しかしながら、本質的に内面的で形式的なプフィッツナーの美質は、むしろ絶対音楽の分野、中でも室内楽作品に発揮されている。最晩年の名作である六重奏曲作品55(1945年)や中期の傑作ヴァイオリン・ソナタ作品27(1918年)などは絶対に聴き逃せないし(録音が極めて少ないのは残念)、3曲ある弦楽四重奏曲はマーラー夫人アルマも愛好していたらしい。R. シュトラウスの音楽世界を豪華で華やかな鯛の活き造りに例えるとすれば、プフィッツナーのそれは海原雄山の壮大な薀蓄と共に食する鰯の塩焼きだと言えるだろう。ワタの苦味に舌鼓を打ちながら食材を通して世界を語る、これがプフィッツナーの音楽である。

 プフィッツナーの交響曲作品は全部で3曲あるが、第1番作品36aは弦楽四重奏曲第2番をオーケストレイションしたもの、小交響曲作品44はその名の通り小編成向けの作品であること(初演はフルトヴェングラー)を考えると、本日演奏される交響曲(第2番)ハ長調作品46が事実上プフィッツナー唯一の交響曲と言ってもよい。1940年10月11日、フランツ・コンヴィチュニーの指揮によって初演された。

 切れ目なく演奏される3つの楽章から成るこの作品には、晩年を迎えたプフィッツナーの音楽的特徴がしっかりと刻まれている。第1楽章冒頭で唐突に示される英雄的な第一主題ももちろん印象的だが、プフィッツナー独特のほの暗い抒情を存分に堪能できる第2楽章は非常に魅力的。両端楽章の経過句における曖昧な調性感や拍節感も、まさにロマン主義的な雰囲気そのものだ。そして、喧噪と混沌の中から冒頭の主題が輝かしく回帰する終楽章コーダでは、誰よりも真に純粋なドイツ精神を信じた彼の世界観が高らかに歌い上げられる。

かぶとやま交響楽団 第26回定期演奏会(2002年2月16日)

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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