年末の中古市にて

  • モーツァルト:ディヴェルティメント第1~3番 スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ (Victor VIC-28116 [LP])
  • テレマン:組曲 ハ長調、3つのオーボエ、3つのヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲 変ロ長調、オーボエ協奏曲 ヘ短調 バルシャーイ/モスクワCO (EMI ALP 2084 [LP])
  • プロコーフィエフ:バレエ「石の花」 ロジデーストヴェンスキイ/ボリショイ劇場O (Victor VIC-4018~19 [LP])
  • ストラヴィーンスキイ(ドゥシキン編):田園曲、ストラヴィーンスキイ:兵士の物語、シュトックハウゼン:「十二宮」より(水瓶座、魚座、牡牛座、蟹座、獅子座、射手座、水瓶座)、シニートケ:ヴァイオリン協奏曲第3番 クレーメル (Vn) ベルリン・フィルハーモニーOの首席奏者達 (King K28C-164 [LP])
  • R. シュトラウス:クレメンス・ブレンターノの詩による6つの歌、プフィッツナー:歌曲集(マルクに寄せて、子守歌、すっぱ抜き、菩提樹の葉陰で、私とあなた、そのかみの日) モーザー (S) ヴェルバ (Pf) (EMI EAC-80075 [LP])
年末は専ら自宅の大掃除に明け暮れていたのだが、一日だけ街に出る用事があったので、年末恒例となっている「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」を覗きに、阪神百貨店へと立ち寄ってみた。

掃除で疲れていたこともあって、文字通り覗くだけで済まそうと思っていたのだが、思いの外に混雑していた会場の熱気にあてられて、ついついエサ箱を順にチェックし始めてしまった。時間もあまりなかったので、たまたま割り込むことのできた名曲堂阪急東通店の出品物に限定してエサ箱を漁ること小一時間。5枚のLPをレジへ。

モスクワ・ヴィルトゥオージのモーツァルトは、嫌味なまでに磨き上げられた完璧なアンサンブルの妙を堪能できる一枚。スピヴァコーフ独特の癖のある節回しも、ここでは特に気にならない。ピリオド奏法に影響される前の、旧き佳きモダン流儀の歌が心地よい。LPの帯には「深々とした情感、心ゆくまでの歌。完璧な反復によって曲想を的確にとらえ深くほりさげた、美しくチャーミングな名演。」という煽り文句があったので、間違いなく宇野巧芳氏の解説だと思いきや、意外にも壱岐邦雄氏であった。形容詞の選択に加えて、繰り返しを楽譜通り行う“だけ”で楽曲の真正な解釈になるかのようなこのコピーは、やはり旧き佳き時代の遺物と言ってよいだろう。


この種のアンサンブルといえば、やはりバルシャーイ/モスクワ室内管が僕にとって永遠のスタンダードである。彼らのテレマンは初めて聴いたが、壮麗でありながらも引き締まった響きを通して、幾分泥臭いロマンの萌芽が立ち上ってくるような、期待通りの素晴らしい演奏である。これもまた、旧き佳き時代の遺産である。


プロコーフィエフ晩年の傑作「石の花」は、恥ずかしながら今まで全曲を聴いたことがなかった。輝かしい響きに彩られた美しい旋律の数々は、まさに天才的な音楽としか形容のしようがない。ロジデーストヴェンスキイの演奏には、不満のあろうはずもない。


イニシャルが「S」の作曲家を集めたクレーメルのアルバム(別にそういう意図があったとは思わないが)には、絶頂期のクレーメルの至芸が惜しげもなく詰め込まれている。「兵士の物語」における変幻自在の表現力など、未だにこれを超える才能は現れていないと言ってよいのではないだろうか。シニートケの協奏曲には初演者であるカガーンの見事な録音もあるが、内省的なカガーンの音楽に比べて、時にきらびやかなアピール力を持つクレーメルの音楽の方が、シニートケという作曲家を世に出す上で大きな力を持ったのは、至極当然のことであろう。


R. シュトラウスとプフィッツナーの歌曲集は、聴いたことのない作品ばかりが収録されていることに惹かれて確保したもの。手堅くまとめられた地味な歌唱であるが、濃厚なロマンの香りがじっくりと全身に沁み入るような空気感が心地よい。とりわけプフィッツナーの渋い美しさは、癖になる。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Prokofiev,S.S. 作曲家_Stravinsky,I.F. 作曲家_Schnittke,A.G. 作曲家_Pfitzner,H. 演奏家_Barshai,R.B.

【YouTube】シニートケ:電子楽器のアンサンブルのための協奏曲

シニートケ初期(1960年頃)の未完に終わった作品の動画が、YouTubeにアップされていた。

当時のソ連で電子楽器をクラシック音楽に用いることは、それだけで“前衛”だったと思われるが、作品自体は特に電子楽器の可能性を追求しているようには感じられず、数ある楽器の組み合わせの一つとしてこの編成が選択されただけなのだろう。シニートケの旋律線はテルミンなどによく合うので、シニートケにとってはごく自然なことだったのかもしれない。

もっとも、音楽自体は散漫でとりとめのない、平凡なもの。部分的に面白い箇所はあるものの、これでは未完に終わったのも仕方がないと納得する。終結の中途半端さから推測するに、この演奏は現存するスコアに忠実なのだろうが、実演にあたってイヴァーシキンが何らかの手を入れている可能性も否定はできない。

第1楽章第2楽章
第3楽章
シニートケ:電子楽器のアンサンブルのための協奏曲
イヴァーシキン(指揮)(2009年11月22日 サウス・バンク・センター)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Schnittke,A.G.

【YouTube】シニートケの室内楽曲など

フィラーモニカQの名は、初めて耳にした。彼らのHPを見ると、1985年に結成されたとあるから、ベテランと呼んでも差し障りはないだろう。ショスタコーヴィチの四重奏曲も第3番と第4番の録音をリリースしているようだが、不覚にも全く知らなかった。

シニートケの第1番は純粋に響きの可能性を追求しているような作品だけに、技術的に清潔な演奏でなければ聴くに堪えないと思われるが、フィラーモニカQはこの複雑で至難なスコアを見事なアンサンブルで弾きこなしている。一方で、若いエネルギーを叩きつけるような燃焼度にも不足せず、まずは模範的な演奏と言ってよいだろう。欲を言えば、デュナーミクの扱いに一層の精緻さを求めたいような気もする(たとえばmffのクレッシェンドなど)。

第1楽章第2~3楽章
シニートケ:弦楽四重奏曲第1番 フィラーモニカQ


シニートケの作品には異稿?(他編成への編曲)があるものも多いが、弦楽三重奏曲も後にピアノ三重奏曲に編曲され、むしろそちらが有名になっているような感がある。僕もピアノ三重奏曲は2種類の演奏を架蔵している一方で、弦楽三重奏曲はこの映像で初めて聴いた次第。響きの美しさという点では、僕はこの編成の方が好み。深く清らかで、それでいて情念の渦巻くようなシニートケの円熟した音楽世界を、腕達者の3人が鮮やかに描き出している。

シニートケ:弦楽三重奏曲
モロツ(Vn)、ウソフ (Va)、グートマン (Vc) (2009年12月1日 モスクワ音楽院大ホール)


『シュニトケとの対話』(春秋社, 2002)の中に、『ドクトル・ジバゴ』の「ジバゴの詩編」による歌曲の話題がある。シニートケはこの小説そのものに対してそれほど共感していないようだが、巻末の「ジバゴの詩編」だけは極めて高く評価している。「マグダラのマリア」という歌曲は、音楽がパステルナークの詩の水準に達していないと判断して、初演当日になって初演を撤回したものらしい。作曲者本人の判断は尊重されるべきだが、下の動画で視聴した限りでは、峻厳な美しさが印象的な佳品だと思う。少なくとも、埋もれさせておくには惜しい。

シニートケ:「マグダラのマリア」
E. Kichigina (S)、M. Haba (Pf) (2009年11月7日 モスクワ音楽院ラフマニノフ・ホール)


3月17日の記事以来、YouTubeで視聴することができるシニートケ作品の動画の中から気になったものを6回に渡って紹介してきたが、ひとまずこれで一段落とする。最後は、少し軽い感じの作品で楽しく終わってみたい。

1978年にモスクワのタガンカ劇場で上演された「検察官物語」(ゴーゴリを扱った劇)にシニートケが作曲した劇付随音楽を、ロジデーストヴェンスキイが8曲から成る組曲に編曲した「ゴーゴリ組曲」は、シニートケの作品の中でもわりと知名度が高いものの一つだろう。2台ピアノ用の編曲を誰がいつ行ったのかは知らないが、この編成での演奏頻度も決して低くはない。ゴーゴリの作品に関連のある曲名も楽しいが、引用?パロディ?だらけの音楽が、耳慣れた節が頻出することもあって素直に面白い。わが国でシニートケが紹介され始めた当初は“多様式主義”の一例として紹介されていたような気もするが(記憶違いかもしれない)、そうではなく、どちらかといえばショスタコーヴィチが映画音楽などで行っていた引用の延長上にあるように思える。

下の動画は、少々指回りに怪しい部分もあるが、まずは堅実な演奏と言ってよいだろう。ただ、生真面目な雰囲気が強く、作品の面白さを堪能するには至らないのが残念。もっとも、この編成では致し方のないところかもしれないが。

1.「序曲」・2.「チチコフの幼年時代」・3.「肖像」4.「外套」・5.「フェルディナンドVIII世」
6.「舞踏会」・7.「遺言」
シニートケ:修正主義者の物語
セレジェンコ、ダシャク (Pf)

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genre : 音楽

tag : 作曲家_Schnittke,A.G.

【YouTube】シニートケ:室内オーケストラのための音楽/ピアノと弦楽のための協奏曲

1965年の東ドイツ訪問の際に初演された「室内オーケストラのための音楽」について、シニートケは『シュニトケとの対話』(春秋社, 2002)の中で、ごく簡単に「僕はすぐにそれを不良品として排除しました」とだけコメントしている。ウェーベルン風の凝縮された音楽だが、よくある現代作品といった風情で、個性的な要素には欠ける。“不良品”とまでは思わないが、シニートケ自身が満足できなかったとしても不思議ではない。

イヴァーシキンによる演奏は、作曲者に対する尊敬の念が感じられる誠実なもの。

シニートケ:室内オーケストラのための音楽
イヴァーシキン/Studio for New Music ensemble (2009年11月7日 モスクワ音楽院ラフマニノフ・ホール)


ピアノと弦楽のための協奏曲は、傑作が目白押しの1970年代後半の作品群の中でも、ひときわ美しい、そして演奏頻度も高い、名作である。クライマックスへと向かう息の長い盛り上がりは暴力的な狂気を感じさせるが、その狂気の怖いまでの美しさがとても印象的だ。

この作品を得意にしているリュビツカヤは、巨匠ソンデーツキスの名サポートを受けて、持てる表現力を存分に発揮している。聴き手を音楽に縛り付けてしまうような、とても立派な演奏である。

シニートケ:ピアノと弦楽のための協奏曲
リュビツカヤ (Pf)、ソンデーツキス/モスクワ音楽院SO (2009年12月1日 モスクワ音楽院大ホール)

theme : クラシック
genre : 音楽

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【YouTube】シニートケのチェロ曲

ロストロポーヴィチやグートマン、イヴァーシキンなどの名チェリスト達が周りにいたせいか、シニートケの作品リストの中にはチェロのための作品も少なくない。中でも演奏頻度が高いのは、中期の傑作チェロ・ソナタ第1番だろう。初期作品に顕著な、うねるような音響の暴力的なまでの力強さはやや後退し、鎮魂歌風の深く沈むような緊張感を持った独特の雰囲気が、この時期の作品群に共通する特徴である。

ショスタコーヴィチの後期作品に連なるロシア音楽の香りが強い楽曲だが、シフとP. グルダというウィーンの音楽家達の手にかかると、意味ありげな雰囲気よりもメロディアスな魅力の方が前面に出て、その美しさが際立つ。

第1楽章第2楽章
第3楽章
シニートケ:チェロ・ソナタ第1番
シフ (Vc)、P. グルダ (Pf)


1994年に、自身が主催するチェロ・コンクールの課題曲としてロストロポーヴィチがシニートケに委嘱して作曲されたのが、チェロ即興曲である。シニートケの健康状態もあって、この時期以降の作品は極めて数が少なく、この曲も実質的に最晩年の作品と言って構わないだろう。

技術的に至難であることは一聴してすぐ分かるが、音楽に技巧的な要素は皆無で、即興曲という名の通り自由な形式で書かれた楽曲だけに、ある種の捉えどころのなさを感じてしまう。何度も聴き重ねていく中で、その音楽世界に馴染んでいくことが必要なのかもしれない。若手奏者のI. ルビンシテーインは、見事な技術をもって端正に音楽を作っており、非常に立派で好感の持てる演奏を繰り広げている。

シニートケ:チェロ即興曲 I. ルビンシテーイン (Vc)


シニートケといえば「多様式主義」という言葉がすぐに連想されるが、「古風な形式による組曲」もそうした作品の一つとして、広く知られた楽曲と言ってよいだろう。ヴァイオリンとピアノの二重奏が当初の編成だったが、その後シニートケ自身の手で様々な編成用に編曲されている。僕はヴィオラ・ダモーレと室内アンサンブルのヴァージョンを好んでいる。

チェロとピアノの二重奏用編曲は、シニートケ自身ではなく、シャフラーンによるものである。YouTubeには、そのシャフラーン自身による演奏の映像がアップされていた。2種類の動画があるが、収録曲に重複はない。残念ながら、第1曲「牧歌」はなかった。僕は、シャフラーンの音色や弾き方があまり好きではないが、この曲を楽しむ上でさしたる不満はない。

シニートケ(シャフラーン編):「古風な形式による組曲」より「バレエ」
シャフラーン (Vc)、不明 (Pf)
シニートケ(シャフラーン編):「古風な形式による組曲」より「メヌエット」「フーガ」「パントマイム」
シャフラーン (Vc)、A. ギンスブルグ (Pf) (1982年 モスクワ音楽院大ホール)

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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