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ヴェイヤンのモーツァルトとシグナムQのシューベルト

  • ジャン=クロード・ヴェイヤン:モーツァルト録音全集 (pourpre PPR 18008)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第8、13番、シューベルト(ファン・デューク編):遠方からの歌、劇付随音楽「キプロスの女王ロザムンデ」より第6曲「羊飼いの旋律」、笑いと涙、ギリシアの神々、さすらい人の夜の歌、君はわが憩い シグナム四重奏団 (Pentatone PTC 5186 673)
アリアCDから、1点だけではあったが、入荷した商品が届いた。管楽器には明るくない上に、ピリオド楽器となると持ち合わせている知識は皆無に近いが、収録曲の多彩さに惹かれてオーダーしたもの。収録内容は、以下の通り:
DISC 1
クラリネット四重奏曲 Op. 79(1. ヴァイオリン・ソナタ第34番、2. ヴァイオリン・ソナタ第36番、3. ピアノ三重奏曲 第2番) ヴェイヤン (Cl)、シュタードラー・トリオ
DISC 2
5つのディヴェルティメント KV 439b トリオ・ディ・バセット
DISC 3
クラリネット五重奏曲 ヴェイヤン (Cl)、シュタードラー四重奏団
クラリネット協奏曲 ヴェイヤン (Cl)、マルゴワール/王室大厩舎・王宮付楽団
DISC 4
3本のバセット・ホルンと打楽器による「魔笛」 トリオ・ディ・バセット、クロード (Perc)
DISC 5
ディヴェルティメント「フィガロの結婚」 トリオ・ディ・バセット
アダージョ・カノニーク KV 484d トリオ・ディ・バセット
アダージョ KV 411 ドゥロネ、ジェルチ (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
アレグロ・アッサイ KV 484b ドゥロネ、ジェルチ (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
アダージョ KV 580a ドゥロネ、ジェルチ (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
アダージョ KV 484c ドゥロネ、ジェルチ (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
アダージョ KV 484c クロード (Perc)、ドゥ・デイン (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
偽りの世 KV 474 クロード (Perc)、ドゥ・デイン (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
歌劇「皇帝ティートの慈悲」よりアレグロ クロード (Perc)、ドゥ・デイン (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
歌劇「皇帝ティートの慈悲」より「私はあなたを残して行く、愛する人よさようなら」 マセ (S)、ドゥ・デイン (バセット・ホルン)、トリオ・ディ・バセット
夕べの想い KV 523 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
クローエに寄す KV 524 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
魔術師 KV 472 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
鳥よ、年ごとに KV 307 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
別れの歌 KV 519 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
老婆 KV 517 マセ (S)、トリオ・ディ・バセット
歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲 クロード (Perc)、トリオ・ディ・バセット
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より「奥さんこれが恋人のカタログ」 クロード (Perc)、トリオ・ディ・バセット
グラス・ハーモニカのためのアダージョ, K.617a ヴェイヤン (グラス・ハープ)
まずは、モーツァルト自身の手によるオリジナル作品の素晴らしさを再認識できる。DISC 3の五重奏曲と協奏曲は当然として、ディヴェルティメントや単一楽章の小品の高貴な美しさと愉しさは、どれも似たような味わいであるにもかかわらず、続けざまにまとめて聴いても全く飽きが来ない。クラリネットという楽器の特性なのかもしれないが、聴き慣れたモダン楽器と比べてあまり違和感もない。

編曲物(編曲者は不明)では、DISC 1に収録されたヴァイオリン・ソナタの編曲が非常に面白かった。これは楽譜も容易に入手できるので、いつか自分でも遊んでみたいと思わせられた。それに対してDISC 4の「魔笛」は、率直に言って編曲に無理があり、鑑賞には物足りない。自分で演奏して楽しむためのものだろう。

演奏は、総じて技術的にも音楽的にも傑出したもの。五重奏曲と協奏曲にはモダン楽器も含めて多数の録音があるので、これを唯一絶対的な名演とまでは言えないが、その他の曲については、いずれも筆頭に挙げることにそう大きな異論はないだろう。


3月19日のエントリーで紹介したHMV ONLINEからの入荷分には在庫切れのために含まれていなかった1枚が、ようやく届いた。この時は今回のコロナ禍のために延期となったシュペーテQの演奏会のメインが「死と乙女」だったこともあり、アンコールにシューベルトの歌曲の編曲を物色していたので、実は、このアルバムこそが目当てだったのだ。結局、これといった編曲は見つからず(というより、そもそも歌曲の弦楽四重奏用編曲自体が僅少だった)、演奏会自体も先送りになったので不都合はなかったのだが。

収録された編曲作品は、まず選曲が凝っていて興味を惹かれたのだが、演奏効果という点において、あまり訴えかけるものはなかった。ただ、編曲自体は自然なもので、是非とも自分で弾いて響きの美しさを体験したいと思わせるに十分な出来。出版されれば、一定の需要はあると思う。

シグナムQの演奏は、ベルチャQと同様に、弱音の繊細かつ緊張感のある美しさと爆発力のある強奏との対比が強烈な、表現意欲に満ちたもの。ただ、線の細さゆえか、強奏での音色には感心できない。また、細部の表現に傾倒し過ぎなのか、全体に音楽の流れが不自然で、シューベルトならではの和声の移ろいが十分に表出されているとは言い難い。

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tag : 作曲家_Mozart,W.A. 作曲家_Schubert,F.P.

バドゥラ=スコダのシューベルト

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 M. ザンデルリンク/ドレスデンPO(Euroarts 2067818 [DVD])
  • シューベルト:ピアノ・ソナタ全集 バドゥラ=スコダ (Pf)(ARCANA A 364)
またまたアリアCDからお届き物。

まずは、先日ショスタコーヴィチの交響曲全集を完成させたM. ザンデルリンク/ドレスデンPOによる、第15番のライヴ映像。2019年2月とつい最近であることに加え、2017年に改装されたばかりのクルトゥーアパラストでの収録ということもあり、何より映像が美しい。演奏も流麗でありながら張り詰めた緊張感と懐の深い情感が実に味わい深く、作品の真価を適正に表出したもの。父クルトの悠揚たる巨大さが異形の佇まいを呈している音楽に比べると遥かに常識的だが、均整の取れた構造美という点で息子ミヒャエルの音楽も極めて立派なもの。

収録された演奏会は第二次世界大戦末期のドレスデン爆撃の日に行われたことから、終演後の拍手はなく、静寂の中で聴衆が起立して黙祷しているところで映像は終わる。この趣旨はよく理解できるし、この作品の最後の音の後に猥雑な喧騒は相応しくないとはいえ、聴衆同士が周囲の様子を窺い合うような不自然で気まずい時間を映像で観せられるのは如何なものか。


これまでに弦楽四重奏曲を中心に自ら演奏する機会は少なからずあったが、最近になってようやくシューベルトの音楽が腑に落ちるようになってきた。さらに理解を深めるべく、セールに出ていたバドゥラ=スコダによるピアノ・ソナタ全集を注文。

バドゥラ=スコダ自身のコレクションという5台のフォルテピアノを曲毎に弾き分けているとのことで、ピリオド演奏に若干の苦手意識のある私がこの楽曲群を初めて聴くのに適しているか不安はあったが、いざ聴き始めてみると、楽器の音色こそモダン楽器とは異なるものの、演奏そのものは従来型の耳馴染みのある流儀で、特段の違和感もなく音楽を楽しむことができた。一方で、ならばなぜフォルテピアノを使うのか、という疑問が残らなくもないが。

好んで取り上げるに留まらず、自ら校訂や補筆なども手掛けているバドゥラ=スコダは、均整の取れた様式感を堅持しつつ、シューベルト特有の旋律が纏っている和声の陰影を気品のある美しい音色で描き出している。誰もが思い描くシューベルト像をこの上なく満足させてくれる、最良の意味で正統派の演奏である。ただ、シューベルトの音楽に潜む特異な“闇”の表出はかなり穏当で、保守的な演奏解釈であるのも事実。

第3番と第17番で、楽器に施された細工で打楽器音が文字通り炸裂するのは楽しかったが、通勤途中にイヤホンで聴いていたら、予測していなかったこととその強烈な響きとで、思わず全身が反応してしまった。同じような聴取スタイルの諸兄には注意されたい。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Schubert,F.P.

【楽曲解説】シューベルト:弦楽四重奏曲第12番「四重奏曲断章」

Franz Peter Schubert
フランツ・ペーター・シューベルト(1797~1828)


Streichquartett Nr. 12 c-moll, D 703 „Quartettsatz“
弦楽四重奏曲第12番 ハ短調 D 703「四重奏曲断章」



 シューベルトが弦楽四重奏曲第11番ホ長調D 353を書いた1816年は、彼が職業作曲家を自身の進路として自覚するに至った年です。この年以降、後にシューベルティアーデと呼ばれることになる友人達の集いの始まりや、自作の初の公開演奏、歌劇をはじめとする劇場作品への取組みなど、それまでとは一線を画す創作活動が展開されていくことになります。それはまた同時に、世間の評価との闘いの始まりでもありました。その結果、1819~23年頃のシューベルトは、特に器楽曲の分野において大きなスランプに陥ってしまいます。この第12番は、まさにこうした苦悩の最中の1820年に着手されました。
 第2楽章を41小節書いたところで放棄されてしまったために「断章」の名で呼ばれるこの作品は、緊迫感の漲る悲劇的な性格と、徹底して旋律的な動機、再現部を第2主題で開始するアーチ型の楽曲構造など、シューベルトの個性が存分に発揮されているだけでなく、古典派の枠を超えてロマン派の到来を告げる完成度の高い新しさを有しています。ベートーヴェンの第12番 作品127が1825年の作曲であることを考えると、この作品の斬新さは明らかでしょう。第1楽章しか完成されなかったことは、変イ長調で書かれた第2楽章の断片の美しさゆえにつくづく残念ですが、しかしこの単一楽章はシューベルト後期の独創的な音楽世界の嚆矢とするに相応しい充実した名曲です。


シュペーテ弦楽四重奏団 第8回公演(2018年4月14, 22日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Schubert,F.P. 演奏活動_DasSpäteQuartett

年末の中古レコード・セールにて

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第14番、第12番「四重奏曲断章」(未完の第2楽章付き) ジュリアードQ (CBS/SONY 30DC 799)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第14&4番 東京Q (RCA BVCC-29)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 東京Q (RCA BVCC-7)
  • パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第1番、ヴァイオリンとギターのためのソナタ Op.3-6、協奏的ソナタ、カンタービレ、ジュリアーニ:ヴァイオリンとギターのためのソナタ パールマン (Vn) J. ウィリアムズ (G) (CBS MK 34508)
2017年末もまた、家の大掃除を一段落させてから阪神百貨店の「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」へ。年を追う毎に掃除の肉体的負担が大きくなってきて、音盤漁りの意欲が極端に減少してきている。今回も、CDのみをざっと眺める程度で終了。結果として、シューベルトの弦楽四重奏曲が3枚と偏った選択になってしまった。

まずはジュリアードQによる「死と乙女」。いわゆる名盤の類だと思うが、かつては“即物的”とか“鋭利”など形容されることの多かった彼らの演奏スタイルが、実は随所でかなり自由なルバートも厭わない、非常にロマンティックなものであることの典型的な録音である。録音上の響きのせいもあって硬派な印象に違いはないが、いかにも往年の演奏といった感じ。本盤を手に取った最大の理由は、「断章」の第2楽章が収録されていること。ベーレンライター版の総譜などで見ることのできるこの未完の断片は、実際に音で聴いてみると想像以上に美しく薫り高い音楽であった。文字通り途中で作曲が止められているために、実演で取り上げるには終止の処理がどうしようもないのが、少し残念。


ウンジャンが第1Vnを務めた第3期の東京Qが、この団体の絶頂期であったことに疑いの余地はない。1980年代末に彼らが録音したシューベルトの3枚も名盤の誉れ高いものだが、私は第13&9番の1枚しか架蔵していなかった(大学2回生の時に、ロザムンデの第1楽章を演奏した時に購入したと記憶している)。「死と乙女」と第15番の2枚が揃っていたので、この機会に確保。“巧さ”が前面に押し出されているわけではなく、むしろ、たとえば第15番の第1Vnなどにはもたつきが感じられる箇所すらあるのだが、この極めて音楽的な一体感、音楽のどの一瞬からもどこのパートからも同じ歌が溢れ出てくる、最良の意味での均質さは、幾多の歴史的な名四重奏団の中でも一際傑出した完成度である。演奏頻度の低い第4番が、この水準で録音されていることも貴重だ(現在入手容易な「後期弦楽四重奏曲集」と題された2枚組には収録されていない)。


シューベルトのみ、というのも物足りなく、若きパールマンによるギターとの二重奏曲集が運良く目についたので、これも確保。中学生か高校生の頃、NHK FMのパガニーニ特集をエアチェックしたことがあり、「協奏的ソナタ」のこの演奏もカセットテープに収めて聴いていたことを懐かしく思い出した。ヴァイオリンもギターも、とにかく綺麗な音がしている。甘美な歌とヴィルトゥオージックな華やかさとが見事に両立した、これらの楽曲の理想的な演奏と言ってよいだろう。

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genre : 音楽

tag : 作曲家_Schubert,F.P. 演奏家_東京Quartet

【楽曲解説】シューベルト:弦楽四重奏曲第15番

Franz Peter Schubert
フランツ・ペーター・シューベルト(1797~1828)


Streichquartett Nr. 15 G-dur, D 887 (Op. post. 161)
弦楽四重奏曲第15番 ト長調 D 887(作品161)



 シューベルトが残した15曲の弦楽四重奏曲は、いずれも特定のパトロンからの依頼によるものではありません。ほぼ同時に没したとはいえ、明らかにベートーヴェン(1770~1827)の次の世代であったシューベルトの作曲家としてのあり方が、このことにも象徴されているといえるでしょう。特に第12番以降の後期作品は、出版や公開演奏の機会とは関係なく、シューベルト自身の純粋な音楽的欲求から書かれたと考えられています。
 1824年に第13番「ロザムンデ」と第14番「死と乙女」の2曲の弦楽四重奏曲を書き上げたシューベルトは、おそらく交響曲第8番「ザ・グレート」D944(1825~6)のことと思われる「大きな交響曲」への準備として、弦楽四重奏曲をさらにもう一つ構想します。それが、1826年にわずか10日で書かれた第15番です。第1楽章だけは1928年に公開演奏されましたが、全曲の初演はシューベルトの死後、1850年になってようやくヘルメスベルガー四重奏団によって成し遂げられることになります。
 古典派の楽章構成を型通りに踏襲しつつも独創的な転調を駆使した詩的情緒あふれる音楽は、シューベルトならではのものです。しかし、この作品では歌謡性に満ちた旋律美は後退し、全曲を通じて鳴り続けるトレモロをはじめとする限られた動機の自在な組み合わせによって、濃密なロマンの香り漂う劇的な音楽が緻密に構成されているのが特徴です。また、執拗に反復される同じ音型に転調と楽器や伴奏音型の変化を加えることで繊細な色合いを織りなす手法は、後期ロマン派をも予感させる、時代を先取りしたシューベルトの新境地です。極めて長大な作品ですが、緊張感のある起伏と陰影に富んだ力感が漲る、シューベルト畢生の大作です。

シュペーテ弦楽四重奏団 第6回公演(2016年4月16, 23日)

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genre : 音楽

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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