ボロディーンQのハイドン&シェバリーン

  • ハイドン:弦楽四重奏曲第39番「鳥」、シェバリーン:弦楽四重奏曲第3番 ボロディーンQ (Melodiya D 06183-84 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの11月到着分。

ハイドンは、ドゥビーンスキイ時代のボロディーンQが到達していた境地を最良の形で聴かせてくれる快演。テンポをはじめ、楽曲解釈に際立って個性的な要素はないのだが、機能的に洗練されていながらもどこか野暮ったい、ボロディーンQにしか聴かれない魅力的な格好良さが全曲を通じて惜しみなく披露されている。これぞ一流のプロ、といった演奏。

シェバリーンの3番は、近代フランス音楽風の響きが印象的で、ミヨーの初期四重奏曲などを思い出す。響きの晴朗さとは対照的に、音楽の内容は必ずしも単純明快ではなく、師のミャスコーフスキイに通ずるものがある。そのバランスが最もよくとれているのが真に感動的な第3楽章で、長さにおいても内容においても全曲の中心と言ってよいだろう。今後も大衆的なレパートリーに定着するような作品とは思えないが、何とも忘れ難く印象的な佳品である。ボロディーンQの演奏は、非の打ちどころがない完成度。


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genre : 音楽

tag : 作曲家_Shebalin,V.Y.

シェバリーンとティーシチェンコの佳品

  • シェバリーン:舞踏組曲「ひばり」、映画音楽「グリーンカ」より アクーロフ/モスクワ放送SO (Melodiya 33 C 10-05167-8 [LP])
  • ティーシチェンコ:バレエ「ヤロスラーヴナ」 ドミトリエフ/マールイ劇場SO & cho (Melodiya C 10-07823-6 [LP])
  • ティーシチェンコ:ヴァイオリン協奏曲第2番 スタドレル (Vn) シナーイスキイ/レニングラードSO (Melodiya C10 25835 001 [LP])
  • モーツァルト:ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ、ラヴェル:ツィガーヌ、ショスタコーヴィチ(グリークマン編):3つの幻想的な舞曲、ハチャトゥリャーン:舞曲第1番、オフチニコフ:バラード G. フェイギン (Vn) スシャンスカヤ、D. サーハロフ (Pf) (Melodiya 33D 17593-594 [10"mono])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの1月到着分。雑事に追われていたのは事実だが、たかだか4枚程度の音盤を2ヶ月も放置してしまったことは恥ずかしい限り。

バレエ音楽と映画音楽がカップリングされたシェバリーンのアルバムは、この作曲家のメロディーメーカーとしての特質が発揮された内容である。どの曲も憂愁を湛えつつも親しみやすい、ロシア情緒に満ちた抒情美が印象的な小品ばかりである。さしづめグラズノーフの後継者とでもいったところか。和声や管弦楽の扱いに特筆すべき新しさは感じられないが、手堅くも優れた水準に達していることは確かだ。楽譜の入手さえ容易ならば、アマチュア・オーケストラがこぞって取り上げそうな曲だ。


「ヤロスラーヴナ」は「イーゴリ軍記」を題材にしたバレエで、ティーシチェンコの代表作の一つである。東洋風の音楽が、透けるように薄いテクスチャの中で合唱を効果的に使った。鋭くも訴求力の強い響きで繰り広げられる。全曲が大きな一つの流れの中に統一されているせいか、バレエ音楽らしい多彩さには欠けるが、いかにもポスト・ショスタコーヴィチ世代らしい色合いの音楽は、なかなか魅力的だ。


同じくティーシチェンコのヴァイオリン協奏曲第2番は、「ヴァイオリン交響曲」との副題(?別名?)に相応しく、独奏ヴァイオリンがオーケストラと一体となって協奏曲の域を超えた巨大な音楽を歌いあげる、傑作である。この曲は、本当に素晴らしい。ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の書法で交響曲第15番を書き直したような音楽だが、その響きや内容はショスタコーヴィチの単なる模倣ではない、ティーシチェンコ独自のものである。終楽章の終結に向かう音の流れは、交響曲第15番の終楽章の長大なクライマックスを思わせ、極めて感動的で強い印象を残す。


フェイギンの小品集は、一昔前のロシア流儀の模範生といった印象で、揺るぎのない安定感をもった左手、力強い切れ味で濃厚なロマンを歌いあげる右手のどちらも、十分以上の水準に達した演奏である。ただ、とりたてて強い個性が感じられる訳ではないので、古典的なレパートリーを収録したA面は平凡な出来である。ロシアの近代作品(ショスタコーヴィチもハチャトゥリャーンも最初期の作品なので、現代作品と括るべきではないだろう)が並んだB面も、当たり前のようにあっさりと弾き切っているのだが、それゆえに楽曲の雰囲気が自然に立ち上ってくるような、好感度の高い仕上がりになっているのが面白い。

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シェバリーン、ティーシチェンコ、タネーエフ

  • シェバリーン:組曲第2&3番 E. ハチャトゥリャーン/モスクワPO (Melodiya 33 D 020805-06 [LP])
  • ティーシチェンコ:フルート、ピアノと弦楽合奏のための協奏曲、無伴奏チェロ・ソナタ第1番 エヴェレフ (Fl) ナセドキン (Pf) フェイギン (Vc) セローフ/レニングラードCO (Melodiya 33 C 10-08193-4 [LP])
  • タネーエフ:弦楽四重奏曲第7番 タネーエフQ (Melodiya 33 C 10-10225-26 [LP])
  • タネーエフ:弦楽四重奏曲第9番 タネーエフQ (Melodiya 33 C 10-12333-34 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの8月到着分。

今月もシェバリーン作品の音盤を一枚。組曲第2番はデュマの「椿姫」の劇付随音楽から、第3番はプーシキンの「石の客」の劇付随音楽から再構成したもの。たとえば第3番にはスペイン風の音調を持つ曲もあったりするが、基本的には単なる「組曲」という表題の通り、原作のストーリー性は感じさせるようなものではない。比較的初期の作品である第2番に比べると、最晩年の作品である第3番は清澄で洗練された響きの一方で楽想そのものには晦渋さがある。グラズノーフの後裔とでもいったところか。E. ハチャトゥリャーンの溌剌とした演奏は、とりわけ第2番とは相性がよく、極めて魅力的で見事な出来である。


先月は見送ったティーシチェンコ作品の音盤が売れ残っていたので、これも縁だと思って入手。「フルート、ピアノと弦楽合奏のための協奏曲」は、“協奏曲”と言ってもバロックの「合奏協奏曲」の延長上にある作品だろう。1972年の作品だが、当時のショスタコーヴィチの作風からの影響も見受けられるものの、室内楽的な簡潔さを持ちながらも、ロシア的な重量感を持った響きにティーシチェンコの個性が強く感じられる。現代音楽風のとっつきにくさはないが、独特の幻想的な雰囲気には好き嫌いが分かれるだろう。むしろ初期作品の無伴奏チェロ・ソナタに聴かれる、荒削りな熱情の迸りの方が、一般受けするように思われる。


タネーエフの弦楽四重奏曲は番号付きのものが9曲あるのだが、作品番号のない第7~9番は第1番以前に作曲された習作である。とはいえ、対位法に凝りまくった衒学的な作品よりも、甘美な抒情を臆面もなく歌いあげた習作の方が耳に馴染みやすいのも事実。明らかにロシア音楽の音調ではあるのだが、ことさらに民族色を強調していないのは、いかにもタネーエフらしい。なお、第9番は既にCDで架蔵していた。番号の記憶が曖昧な程度にしか聴いていないのは、恥ずかしい限り。

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genre : 音楽

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ショスタコーヴィチ、ティーシチェンコ、シチェドリーン、シェバリーン

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ヴォディチコ/ワルシャワPO (Eterna 8 20 127 [LP])
  • ファーリク:ヴァイオリン協奏曲、ティーシチェンコ:ヴァイオリン協奏曲第1番(第2版) リーベルマン (Vn) セローフ/レニングラードCO、フェドートフ/レニングラードPO (Melodiya C10-08787-88 [LP])
  • シチェドリーン:オラトリオ「人民の心の中のレーニン」、パラシオ:カンタータ「レーニン」、エシパーイ:カンタータ「レーニンと私たち」、ホールミノフ:カンタータ「レーニンは生きている」 エイゼン (B) ムンチャン、タルナフスカヤ (Pf) ロジデーストヴェンスキイ/モスクワ放送SO & cho、ユルローフ/ロシア共和国cho.、グスマン/モスクワ放送SO & cho. 他 (Melodiya CM 02499-500 [LP])
  • シェバリーン:喜歌劇「じゃじゃ馬馴らし」 ヴィシネーフスカヤ (S) エイゼン (B) ハラバラ/ボリショイ劇場O & cho.他 (Melodiya D 04510/15 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの、7月到着分。今回は、いずれも聴き応えのあるアルバムばかりであった。

ヴォディチコは第二次世界大戦後のポーランドを代表する指揮者とのことだが、その名に恥じぬ、雰囲気のある演奏を聴かせてくれる。ショスタコーヴィチの第10交響曲には、東欧の演奏者の魂を揺り動かす何かがあるのかもしれない。オーケストラがその技術的な限界で格闘することでもたらされる凄みは、シルヴェストリ盤やカラヤン/ドレスデン・シュターツカペレのライヴ盤などに共通するものがある。この二者に比べると、古典的な佇まいを保とうとする節度が、ヴォディチコ盤の特徴ということになるだろう。それでも洗練には程遠いのだが、一聴の価値はある佳演と言ってよいだろう。


ティーシチェンコのヴァイオリン協奏曲は、師ショスタコーヴィチよりもプロコーフィエフの影響を感じさせる、独特の美感をもった響きと旋律線が印象的である。ただ、全曲を覆う内省的な抒情は単調さと紙一重でもあり、聴き手によって好き嫌いは分かれるだろう。その点で、カップリングされているファーリクの協奏曲は各楽章の性格が多彩で面白い。レニングラードPOの名コンサート・マスター、リーベルマンの独奏は、非の打ち所がない見事なもの。


レーニン賛美のカンタータ集は、シチェドリーンの「人民の心の中のレーニン」を聴くことが目的。いかにもな強奏で始まるのだが、シチェドリーン独特の硬質で透明感のある響きのせいで、常に醒めた風情がつきまとい、時に哀しさすら感じさせる個性的な作品と思った。合唱をはじめとする声楽の扱いが非凡で、前衛的な体制賛美という相反する要求に対して、独創的かつ立派に応えている。その題材ゆえに埋もれさせておくには惜しい、優れた音楽作品であろう。ソ連崩壊から20年が経ち、“あの時代”の残滓も辺境の国、日本で断末魔の醜態をさらすばかり(日本人にとっては迷惑このうえない話ではあるが)となった今なら、この作品を蘇演することも可能ではないだろうか。他の収録曲も面白いが、シチェドリーンに比べると常識的な範疇にとどまっている。


シェバリーンの代表作「じゃじゃ馬馴らし」の全曲盤も、入手することができた。シェイクスピアの原作は未読なので、付属の解説書に掲載されていたあらすじを記しておく:
【第1幕】
パドヴァの豪商バプティスタには、2人の娘がいる。長女がカタリーナで、次女がビアンカである。カタリーナは怒りっぽく口やかましい性格であり、一方のビアンカは柔和で無邪気であった。

ビアンカには、多くの求婚者がいたが、誰も彼女を手に入れることができないでいた。彼女の父バプティスタには、長女が結婚するまでは次女を結婚させないと誓う。しかし、カタリーナと結婚したいと望む者がいなかったので、ビアンカは独身のまま死んでしまうのではないかと怯える。彼女の求婚者達、元気なルーセンシオと素朴なホルテンシオが、突然ペトルーキオのところに駆け込んでくる。ペトルーキオは、儲け話を探しにパドヴァにやってきた貧しい貴族である。カタリーナの怒りっぽい気性は、剛胆なペトルーキオにとって恐れるに足らなかった。そこで彼は、一ヶ月の間にカタリーナを飼い馴らすという賭をする。

ペトルーキオはバプティスタを訪ねる。ホルテンシオとルーセンシオも一緒である。彼らは音楽教師と偽る。それが、愛しいビアンカに会うための唯一の方法だった。ペトルーキオはカタリーナに紹介さるものの彼女は彼のことを嘲笑する。しかし彼はひるむことなく、驚いているバプティスタに父親として祝福してくれるように頼む。カタリーナは結婚を誓い、翌日には式を挙げる運びとなる。
【第2幕】
奇妙な結婚式の参列者達が、バプティスタの家へと急いでいる。全てが喧噪に包まれていた。新郎のペトルーキオは現れず、カタリーナは面目を失い、ビアンカは失望する。ビアンカの結婚は、延期されることになるだろう。

ペトルーキオはぼろぼろのスーツに壊れた帽子を纏い、困惑してさまよっていた。カタリーナはこの衣装を受け入れないだけでなく、彼の祖母のみすぼらしい形見であるウェディングドレスを着ることもしないに違いない。式の後でペトルーキオは招待客を席に座らせ、直ちにここを出発し、カタリーナの反抗を馴らすために強制力を発揮するつもりだと語る。

新婚の2人がペトルーキオの家に到着した時、外は嵐が吹き荒れていた。カタリーナはへとへとになるが、ペトルーキオは彼女に休息を与えない。彼の気まぐれには終わりがなかった。しかし、ペトルーキオの従者グレミオがカタリーナを嘲笑しようとすると、彼女は我慢がならず、嵐の寒い夜であるにもかかわらず、怒りにまかせて飛び出してしまう。

ペトルーキオは心の底から心配して、すぐに彼女を追いかける。彼は彼女を腕に抱えて家に戻る。しかし、彼女が意識を戻すとすぐに彼は素っ気ない振りをして、彼の若妻に背中を向けてしまう。
【第3幕】
一ヶ月が経った。カタリーナとペトルーキオは互いに愛し合っていたが、どちらも先に折れるつもりはなかった。

しかし、ペトルーキオは自分の悪ふざけを続けることはできなかった。彼はカタリーナに対する自分の愛を告白し、彼女の勇気、誇り、そして強さを賞賛する。彼女がまさに答えようとした時、突然の客がやって来る。

客は、バプティスタとビアンカ、そして彼女の夫となったルーセンシオであった。彼らは、ペトルーキオが自ら決めた期間の内に、自分の妻を手懐けることができたかどうかを確かめるために押しかけたのだ。ルーセンシオはペトルーキオに賭けをもちかける。自分の妻を呼びつけ、最初にやってきた方がより従順なのだから、その夫を賭けの勝者としようと提案した。

おとなしいビアンカが夫の呼び出しに応じず、気性の荒いカタリーナがすぐにやって来たのを見て、客人達はとても驚いた。これが、ペトルーキオの告白に対する彼女の答えであった。彼女は彼を愛しているのだ!

近代フランス音楽のような響きと民族音楽風の素朴なロシア情緒とがバランスよく両立した、シェバリーンの個性が存分に発揮された作品である。シェバリーンの代表作とされるのも当然だろう。

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シェバリーン、カバレーフスキイ、スヴィリードフ

  • シェバリーン:ヴァイオリン協奏曲、ホルンと管弦楽のためのコンチェルティーノ ジューク (Vn) アファナーシエフ (Hr) アラノーヴィチ、アノーソフ/モスクワ放送SO (Melodiya D 015389-15390(a) [LP])
  • カバレーフスキイ:ピアノ協奏曲第2&3番 フェーリツマン (Pf) カバレーフスキイ/ソヴィエト国立SO マンスーロフ/モスクワPO (Melodiya 33 C 10-08015-16(a) [LP])
  • スヴィリードフ:R. バーンズの詩による歌、シェイクスピア組曲より第4、1曲 ヴェデールニコフ (B) ナウーモヴァ (Pf) (Melodiya 33CM 02251-52 [LP])
久し振りにArs Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.で買い物をした。ここのところ、ショスタコーヴィチ関連の音盤にめぼしい出物を見つけることができず、カタログも雑に斜め読みする程度だったのだが、今回は不思議と目に留まる音盤が何枚かあり、しかもその全てを入手することができた。

まずは、シェバリーンの協奏曲集。どこか近代フランス音楽のような響きながらも、嫌味を感じさせない民族臭が漂う音楽は、なかなか魅力的である。大作ヴァイオリン協奏曲は、地味ながらも技巧的な聴かせどころに不足せず、奏者にとっては相当の難曲と思われる。ただ、幾分の冗長さは否めず、初演者ジュークの快演をもってしても途中で退屈する瞬間があるのは残念。その点で、簡潔にまとめられたホルン協奏曲には不満がない。アファナーシエフによる典型的なロシア流儀の吹奏も、哀愁を帯びた曲調に相応しい。


フェーリツマンによるカバレーフスキイのピアノ協奏曲集は、第3番はCDで架蔵済みだが、第2番が曲自体初めて聴くもの。これぞ社会主義リアリズムといった、わかりやすく歌謡的なメロディーラインが民族的な明るさを湛えたリズムにのって、華麗で技巧的なパッセージに彩られながら展開していく構成には、ある種の潔さすら感じる。こういう音楽は、余計なことを考えずに音の奔流を愉しむに限る。


ヴェデールニコフで聴くスヴィリードフには、これぞソヴィエト歌曲の真髄と呼ぶに相応しい貫禄がある。ネステレーンコのどこか気取った格好よさとは異なる、田舎臭い鈍重さがたまらなく魅力的。このアルバムに収録された歌曲はいずれも初期の明朗な曲調の作品だが、簡潔に並べられた音と音との間の雄弁さは、いかにもスヴィリードフらしい。


あと3枚届いているのだが、それはまた後日。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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