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自粛期間の終りにまとめて届いた音盤

  • ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、ストラヴィーンスキイ:ヴァイオリン協奏曲 ハーン (Vn) マリナー/アカデミーCO (Sony SK 89649)
  • ブラームス:8つの小品 Op.76より第1曲「カプリッチョ」、6つの小品 Op.118より第2曲「間奏曲」、2つのラプソディ Op.79、3つの間奏曲 Op.117 ポゴレリチ (Pf) (DG 437 460-2)
  • モリト:チェロ協奏曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ストラール (Vc) ラソツキ (Vn) ブワシュチク/シロンスクCO、シロンスクPO (DUX 0534)
  • ボロディーン:ピアノ五重奏曲、マーラー:ピアノ四重奏曲、ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ミュンフ (Pf) カメラータQ (DUX 0629)
  • ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 クラコヴィア三重奏団 (DUX 0541)
  • ビルスマ・コレクション~室内楽 Vol. 1 ビルスマ (Vc) ラルキブデッリ スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズ (Sony 88846010482)
アリアCDから、最近オーダーした音盤がまとめて届いた。新型コロナ禍の外出自粛期間中、無意識ながら、いつもより丁寧にチェックしていたのだろう。予想外の分量と出費に動揺。

ハーンのブラームス&ストラヴィーンスキイは、言うまでもなく、既に評価の確立した旧譜。非の打ち所がないヴァイオリン、としか言いようがない。もっとふくよかな音色を好む聴き手も少なくはないだろうが、清潔さという点でこれを超える演奏は、ちょっと想像できない。ただ、この研ぎ澄まされた独奏に対し、オーケストラが手堅くも凡庸な伴奏に徹しているのは残念。


ポゴレリチのブラームスには、異端、という月並みな形容しか思い当たらない。点描のような音の離散的な配列から、不思議とブラームスの濃密な香りが断片的に立ち昇る。アファナーシェフと似て非なる独自の世界観。まるで歌を拒否しているかのような演奏は異様な美しさを湛えつつも、私はそれに浸り切ることはできなかった。


DUXというポーランドのレーベルのセールで、ショスタコーヴィチ作品を収録した3枚を入手。

ヴァイオリン協奏曲第1番は、とりたてて技術的な危なっかしさは感じないものの、たとえば、まるで譜読みしているかのような第2楽章など、全体にテンポ設定に首を傾げてしまう箇所が多い。

モリトのチェロ協奏曲は、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番のような曲想で、カップリングとしての納まりはよい。随所で緊張感や流れが途切れるのが気になったが、それが演奏のせいか楽曲のせいかは判断がつかない。


ピアノ五重奏曲が中心のアルバムは、選曲がいい感じ。直情型とでも言うべき勢いを持った、情熱的な演奏である。音量の振幅は大きいものの、弱奏部でも爆発的な盛り上がりの萌芽が常に燻っているよう。ボロディーンやマーラーではこの甘美な味わいがよくマッチしているが、ショスタコーヴィチに関してはもう少しクールな雰囲気を好む聴き手もいるだろう。


クラコヴィア三重奏団の演奏は、室内楽的な肌理の細かいアンサンブルと音楽の大柄な佇まいとが見事に両立した、聴き応えのある秀演。3人がソリスティックにぶつかり合うのではなく、緊密な一体感を持って音楽を構築しているのが、ベートーヴェンやショスタコーヴィチの作品に相応しい。


VIVARTE、DHM、SEONの3つのレーベルでビルスマが録音したアルバムをまとめた4つのBOXセットの内、室内楽作品を集めたセットも購入。収録内容は、以下の通り:
DISC 1
ボッケリーニ:弦楽五重奏曲 Op.11-5
ボッケリーニ:弦楽五重奏曲 Op.11-4
ボッケリーニ:弦楽五重奏曲 Op.11-6「鳥小屋」
DISC 2
M. ハイドン:弦楽五重奏曲 P.105
M. ハイドン:弦楽五重奏曲 P.108
M. ハイドン:弦楽五重奏曲 P.109
DISC 3
モーツァルト:ディヴェルティメント第17番
モーツァルト:弦楽五重奏曲第4番
DISC 4
モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番
モーツァルト:ホルン五重奏曲
シュポア:弦楽五重奏曲 Op.33
DISC 5
ドッツァウアー:弦楽五重奏曲 Op.134
ドッツァウアー:3つのチェロのための6つの小品 Op.104
ドッツァウアー:弦楽四重奏曲 Op.64
DISC 6
オンスロウ:弦楽五重奏曲 Op.38「弾丸」
オンスロウ:弦楽五重奏曲 Op.39
オンスロウ:弦楽五重奏曲 Op.40
DISC 7
ライヒャ:弦楽五重奏曲第3番
ライヒャ:弦楽五重奏曲第2番
ライヒャ:弦楽五重奏曲第1番
DISC 8
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲
ゲーゼ:弦楽八重奏曲ヘ長調
DISC 9
デュポール:2つのチェロとフォルテピアノのためのソナタ
デュポール:2つのチェロのための21の練習曲第11番
ベートーヴェン:「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲
デュポール:2つのチェロのための21の練習曲第9番
ロンベルク:チェロ・ソナタ第1番
ボッケリーニ:2つのチェロのためのソナタ G75
ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲

隙間産業のような選曲に惹かれ、架蔵済みの音盤が弦楽八重奏曲を収録した1枚(DISC 8)のみということもあり、オーダー。

個々の音盤、楽曲にコメントはしないが、手堅いアンサンブルでピリオド楽器の素朴な音色を愉しむことのできる、価値あるBOXである。ドッツァウアーやライヒャなどに聴かれる過度に技巧的なパッセージなどは、いかにも苦しい音がしているものの、シューベルトの八重奏曲の終楽章で1st Vnが弾き散らかすパッセージが、当時の流行りであったことを改めて確認できて面白かった。また、メンデルスゾーン辺りになると、ピリオド楽器を使う意義があまり感じられない、なぜかモーツァルトだけはピリオド楽器に物足りなさを強く感じてしまうなど、私個人の嗜好を再確認することもできた。

ボッケリーニやオンスロウについては、チェロ2台の弦楽五重奏曲の貴重なレパートリーでもあるので、いつかは一通り踏破してみたいと思うが、さて、いつになるのやら。



あと少し残っているが、それはまた後日。
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NHKでショスタコーヴィチ

  • ららら♪クラシック「ショスタコーヴィチの映画音楽」 (録画 [NHK ETV(2020.5.1)])
  • ショスタコーヴィチ:バレエ組曲第1番、チェロ協奏曲第2番、交響曲第5番 ワイラースタイン (Vc) パヤーレ/NHK SO (2019.4.24 録画 [NHK ETV(2020.5.17)])
緊急事態宣言が続く中、人民が抑圧されているとでも言いたいのか(笑)、NHKでショスタコーヴィチ関連の番組が続いた。

まずは、ららら♪クラシック。このようなテーマが、いわば初心者向けの番組で取り上げられたことにびっくり。内容も、個人的には気に入らない言い方や話の展開がなかったわけではないが、目くじらを立てるほどでもない。番組中で使われていた映像の中では、一度も観たことのなかった「第1軍用列車」の1シーンが目を惹いたが、それ以外にもオリジナルの映像がふんだんに使われていたのが嬉しい。

ただ、楽曲分析に時間を割くくらいなら、ジダーノフ批判後の“お仕事”にもう少し言及してもよかったかも。ショスタコーヴィチはゴルゴ13的な“プロフェッショナル”なので、「誰からのどんな依頼でも」作曲したという文脈の方が、視聴者の関心が高いような気がする。また、若い頃の映画館でのアルバイトのエピソードから、彼の作品に内在する映画音楽向きの特性などを論じても面白かったように思う。権利関係があるのだろうが、「ファンタジア2000」の「鉛の兵隊」とか。

番組中で全曲演奏されたのは、「ステージ・オーケストラのための組曲」(アトヴミャーン編)より「第2ワルツ」(沼尻竜典/NHK響)と、映画音楽「馬あぶ」より「青春(ロマンス)」(フォルトゥナートフ編)(神尾真由子 (Vn)、大越崇史 (Pf))の2曲。

もう一つは、クラシック音楽館で放送されたNHK交響楽団第1933回定期公演。それほど目新しい選曲ではないと思ったのだが、チェロ協奏曲第2番でのオーケストラの集中力の低さ(これは多分に客席の雰囲気が伝染したようにも思えるが)を見るに、まだまだショスタコーヴィチの本丸は多くの人々にとって縁遠いものなのかと感じた次第。

バレエ組曲第1番は、言うまでもなく端正な演奏なのだが、多少破綻してもいいから弾けてもらわないと、つまらない。編成の大きさがネックにはなるが、アマオケ向けの曲なのかもしれない。ちなみに、「バレエ『明るい小川』からの抜粋」というアナウンスは、甚だ不正確。また、パヤーレが語っていた「ショスタコーヴィチの6曲のバレエ」という言葉も少し不思議。3曲+バレエ組曲第1~3番ということなのだろうか。

チェロ協奏曲第2番は、これぞショスタコーヴィチという音楽で大好きな作品の一つなのだが、独奏が力演しているだけに、オーケストラとの間に隙間風が吹いているような歯痒さが残る。ホールで聴いていれば、響きの繊細な美しさだけで満足できたのかもしれないが。

これら2曲に比べると、さすがに交響曲第5番はオーケストラも手慣れた作品だけに、指揮者の意図をよく汲んだ熱演。ゲスト・コンサートマスターのキュッヒルが頭まで真っ赤にして弾いている姿や、終楽章のコーダでチェロ・パートが腰を浮かせて前のめりでゴリゴリ弾いている様子に、テレビ越しながら興奮させられた。とかく議論のある終楽章コーダだが、インタビューでパヤーレが「感動的」と語っていた通りの音楽。

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ダブり買いしまくり

  • ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 スコティッシュ三重奏団(Waverlev LLP 1023 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、R. シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 D. オーイストラフ/SO (Melodiya 33 C 10-05203-4 [LP])
  • ショスタコーヴィチ(ストラホフ編):24の前奏曲より第10、14~18、24番、ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ スタンチェフ (Va) エフティモフ (Pf) (Balkanton BKA 11424 [LP])
  • 軍楽隊の音楽 Vol. 3 カルドン/De Muziekkapel van de Rijkswacht (Dureco Benelux 66.038 [LP])
  • モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」、ショスタコーヴィチ(スタセーヴィチ編):シンフォニエッタ ペシェク/東ボヘミア州立パルドビツェCO (panton 11 0396 [LP])
  • A. チャイコーフスキイ:ピアノ三重奏曲、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 イヴァノフ (Vn) ウトキン (Vc) ボンドュリャンスキイ (Pf) (Melodiya C 10-14927-8 [LP])
  • ドビュッシー(ショワネル編):「小組曲」より「小舟にて」、ドビュッシー(ロック編):レントより遅く(ワルツ)、ドビュッシー(Rissliand・スピヴァコフ編):美しき夕べ、ラヴェル(ハイフェッツ編):「高雅で感傷的なワルツ」より第6、7曲、メシアン:「世の終わりのための四重奏曲」より第8楽章「イエスの不滅性への賛歌」、ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):24の前奏曲より第12、6、17曲、バルトーク(セーケイ編):「ルーマニア民俗舞曲」より第2、3曲、ブロッホ:「バール・シェム」より第2曲「ニーグン(即興)」、ガーシュウィン(ハイフェッツ編):前奏曲第2番、歌劇「ポーギーとベス」より「It Ain't Necessarily So」 スピヴァコーフ (Vn) ベフテレフ (Pf) (Melodiya C 10-17555-6 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から、2回分の注文品が立て続けに届いた。世界的なコロナ禍で物流も不安定と思われる中、行方不明になることなくきちんと手元に届いたことを感謝したい。

3月注文分は、1枚のみ。スコティッシュ三重奏団によるベートーヴェンとショスタコーヴィチのカップリング。録音年は表記されていないが、モノラルなので、それなりに古いものと思われる。実際、音質も古めかしいし、2世代くらい前の先生による模範演奏といった雰囲気である。ショスタコーヴィチはおそらく楽譜のミスプリントに起因するだろう箇所があるものの、現代音楽に対するような気負いはなく、非常に生真面目で端正な演奏。悪くはないのだが、今敢えて取り上げるほどの魅力はない。


残りは全て、4月注文分。

オーイストラフ指揮のショスタコーヴィチの第9は、かつてRussian Discからリリースされていたものと同一音源。一番わかりやすい終楽章冒頭の客席ノイズしか確認していないが、間違いはないだろう。剛毅な格好良さは、オーイストラフ自身のヴァイオリン演奏を彷彿とさせ、細かいアラをものともしない勢いやたっぷりとした歌が非常に魅力的。ただ、現代の技術的に洗練された演奏水準からすると、さすがに荒過ぎるのは否めない。ティルも同様。こちらはCD復刻がされていたかどうかはわからない。

なお、Russian Discには「ソヴィエト国立響」、ヒュームのカタログには「モスクワ響(モスクワ・フィル?)」と記されているが、本盤には「交響楽団」としか表記がない。技術的な出来栄えからすると、推測ではあるが、どちらでもなく、臨時編成のオーケストラだったのかもしれない。


ブルガリアのヴィオラ奏者スタンチェフのショスタコーヴィチ・アルバムは、ヴィオラ版の「24の前奏曲」が目を引く。残念ながら全て原曲の調性とは異なっている上に、旋律線の扱いなどに違和感が残る編曲である。いかにツィガーノフの編曲が素晴らしいか、ということなのだろう。スタンチェフのヴィオラは、深くもどこか枯れた響きがしている辺り、ロシアではなく東欧の特徴が強く感じられる。ソナタは全体に早めのテンポが採られているが、細部に至るまで丁寧に磨き上げられた表情に聴き応えがある。技術的にも立派な出来。


ベルギーの吹奏楽団(軍楽隊のようだが、所属等の詳細はわからなかった)による吹奏楽曲集は、指揮をしているカルドンのオリジナル曲を中心に、コープランドの「シェイカー教徒の旋律による変奏曲 」(「アパラチアの春」より)や、「南京豆売り」「ナポリの月」の編曲などで構成された、ちょっとした吹奏楽の演奏会を想起させるような選曲である。当然ショスタコーヴィチ作品が含まれているからオーダーしたのだが、「Folk Dances」と記されていたので、てっきり「馬あぶ」の「祭り」辺りだとばかり思っていたら、音楽舞踏劇「祖国」の第3曲「若者の踊り(水兵の踊り)」だった。これは、汐澤安彦/東京佼成ウインドオーケストラの録音と同じ編曲で演奏されている。賑やかで楽しげな雰囲気は好ましいが、技術的にはかなり心許ない。


以下の3枚は、ダブり買い。手元に届いてジャケットを見たらすぐに、あっ!っと思ったのだが、リストを眺めていた時には気付かなかった。認めたくはないが、老いが忍び寄ってきているようだ……

ペシェク/東ボヘミア州立パルドビツェ室内管のアルバムは2010年5月18日のエントリーで、モスクワ・トリオのアルバムは2005年5月30日のエントリーで、それぞれ紹介した音盤。どちらも、聴後の印象は変わらない。強いて言えば、モスクワ・トリオのショスタコーヴィチは、その後に若い世代の優れた演奏をいくつも聴いたせいか、今回はそれほどのインパクトはなかった。併録のアレクサーンドル・チャイコーフスキイの作品は、曲・演奏共に魅力的。


スピヴァコーフの小品集は、記憶が定かではないが、どうやら本ブログを始める以前に入手した物のようで、過去ログは見当たらなかった。スピヴァコーフは本盤の約10年後に、RCAレーベルにほぼ同内容の小品集を録音しており、仕上がりはそちらに軍配が上がるものの、本盤に聴かれる颯爽とした、それでいてテンションの高い弓さばきにも強く惹かれる。


それにしても、トレチャコーフ(1946)のようにオーイストラフを彷彿とさせる王道の奏者もいる一方で、クレーメル(1947)、カガーン(1946)、コーペリマン(1947)そしてスピヴァコーフ(1944)といった、それまでのヴァイオリン演奏とは一線を画す透徹した鋭利さを持った鬼才達が、大祖国戦争の終戦前後に集中して生まれていることは、その背景にあるソ連の音楽教育システムも含め、非常に興味深い。

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Pragaレーベルのショスタコーヴィチと、レーガーのオルガン曲全集

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第13番 ディデンコ (B) 大野和士/バルセロナSO他(Altus ALT397)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第15番、ミケランジェロの詩による組曲、ノヴォロシイスクの鐘の音楽 コプチャク (B) セローフ/チェコPO、ヴァイナル/プラハ放送SO、A. ヤンソンス/モスクワ放送SO(Praga PRD 250 334)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第10~13番 ベートーヴェンQ(Praga PRD 250 318)
  • レーガー:オルガン作品全集 ハース (Org)(MD+G MDG 315 1645-2)
アリアCDから、オーダーしていたことを忘れていた音盤がまとめて入荷。

大野和士指揮の「バービイ・ヤール」は、彼がバルセロナ交響楽団の音楽監督となった最初のシーズン(2015~6年)のライヴ録音である。ライナーノーツではやたらと「爆演」風の煽り文句が並んでいるが、むしろ緻密な解釈と職人的な端正さに感心させられる。全体に明るく軽い響きが特徴的だが、それはこのオーケストラの個性というよりは、特に弦楽器の非力さに起因するように思われる。さらに、バスのディデンコの声質も少なからず影響している。この響きが大野の理想かどうかはさておき、与えられた条件での最適解となっているところに大野の職人技を感じる。とりわけ第3楽章以降の切実さは聴き手を虜にするに十分で、終楽章の肩の力が抜けたような清明さが、オーケストラの音色が存分に生かされていることもあり、心を打つ。


Pragaレーベルが活動停止するとのことで、在庫一掃セールの案内があった。その意図は判然としないものの、音源の素性が粉飾されていることが多く、さらにスタジオ録音をライヴ録音と偽るために別物の拍手を重ねてみたりするなど、色々と問題の多いレーベルではあったが、特にその初期においては、このレーベルでしか入手できない音源もあったりして、私もショスタコーヴィチ作品の音盤を蒐集し始めた時期には重宝したのも事実。ジャケット記載のデータを信じてはいけない、ということを教えてくれた反面教師的なレーベルでもあった。

セローフ指揮の交響曲第15番とコプチャク独唱のミケランジェロ組曲の抜粋は、元々、別々にリリースされていたものを、「晩年の作品集」というコンセプトの下に再編集したアルバムである。これらには敢えて別フォーマットで買い直すほどの魅力はないので、本盤を購入したのは、これが初CD化となるA. ヤンソンス指揮の「ノヴォロシイスクの鐘の音楽」だけが目当て。

ノヴォロシイスクの記念碑の除幕式(1960年)で実際に流された(今日も同じ音が流れているのか、そもそもこの音楽が流れ続けているのかも知らない)音源もA. ヤンソンス指揮であり、本盤で復刻された録音がリリースされたのが1962年であること、この楽曲の規模を考えると、この作品のためだけに録音セッションが何度も組まれるとは思えないことから、本盤で聴かれる演奏は記念碑で流れたものと同一音源の可能性が高いように思われる。国歌候補だった旋律の荘重な優しさが、この上なく自然に奏でられた格調高い演奏は、録音の古さを超えて本作品の決定盤たり得る見事なもの。聴き手の理想を具現化したオーケストラの響きも、素晴らしく魅力的である。


ベートーヴェンQによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の全曲録音は、いくつかのレーベルから度々リリースされていたが、Pragaレーベルの第10~13番(このレーベルからは以前に第15番がリリースされていた)は、販売元の情報によると「第11番と第13番はメロディアから発売されているものと同一演奏。第10番と第12番は初出と思われます」とのことで、念のために確認してみようと購入。

初出の判断を何に基づいて行ったかはわからないが(各トラックの時間?)、結論から言えば、4曲とも全てMelodiyaの全曲録音と同一である。特に驚くこともない。それにしても「a ‘ring’ for string quartet」と銘打つなら第10~13番ではなく第11~14番の方が適切と思うのだが、いずれにせよ、杜撰な商品である。

演奏は、さすがに現代の基準では技術的に問題も少なくないが、ショスタコーヴィチ直伝のテンポ設定や、ショスタコーヴィチが思い描いた響きを知る上で、欠かすことのできない歴史的史料であることに変わりはない。それにしても第2代Va奏者として加入直後のドルジーニンの音の素晴らしいことと言ったら!後年、この音のためにソナタを書いたのも当然のことだろう。


以前に取り上げたピアノ独奏曲全集(2019年12月18日のエントリー)に続き、今度はオルガン曲全集に挑戦してみた。作曲家や時代の如何を問わず、オルガン曲は私にとって最も縁遠いジャンルの筆頭。携帯音楽プレイヤー+イヤホンだと音が飽和して聴き辛いということすら、今回初めて認識したくらい。

ということで、楽器がどうとか音色がどうとか、そういったことは全く分からないし、比較対象もない。純粋に、レーガーの膨大な作品群の一角を片っ端から聴いてみた……という、半ば義務的な取り組みをしてみた。が、思いの外、オルガンの持つ独特の神々しい雰囲気にどっぷりと浸かるのは面白かったというのが率直な感想。荘厳な響きの隙間に、妙にロマンティックな節回しが現れたり、レーガーらしいねちねちしたフーガに不思議と晦渋さが感じられなかったりなど、レーガーを楽しんだのかオルガンを楽しんだのかは未だによくわからないものの、こういう「お勉強」をするのも、たまには良い。

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三度、ディスクユニオン(大阪)

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO(Naxos 8.572461)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第2、11番 ゲールギエフ/マリイーンスキイ歌劇場O(Mariinsky MAR0507)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲第3番 アンデルジェフスキ (Pf) ベルチャQ(Alpha ALPHA360)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲 Op.9-1、3、4 コダーイQ(Naxos 8.550786)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲 Op.9-2、5、6 コダーイQ(Naxos 8.550787)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲 Op.17-1、2、4 コダーイQ(Naxos 8.550853)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲 Op.17-3、5、6 コダーイQ(Naxos 8.550854)
  • ハイドン:十字架上の七つの言葉 クレーメルQ(Philips 32CD-325)
年度末セールに誘われて、3月3度目のディスクユニオン 大阪クラシック館

ペトレンコのショスタコーヴィチ、先日は気づかなかった第10番が目に留まったので確保。これでこのシリーズは第14番の1枚を残すだけとなった。全集中8番目の録音ということもあってか、ペトレンコ自身のショスタコーヴィチ解釈が確立した秀演である。オーケストラは盤石というほどではないものの、颯爽とした音楽の流れを見事に実現しており、明晰に描き分けられた各声部が互いに関連し、対立しつつクライマックスを構築していく本作品の劇性が申し分なく表現されている。



ゲールギエフのショスタコーヴィチは、映像での全集(2016年8月28日のエントリー)のインパクトが大きかったこともあり、CDでコツコツとリリースされている録音の方はまだ数枚しか架蔵していない。映像は全てライヴ収録だが、録音の方はセッションとライヴが混在している。この第11&2番の一枚は、販売元の情報によるとライヴ録音のようだが、たとえば第11番最後の鐘の残響などは明らかにセッション収録であり、“一発録り”という意味でのライヴ録音ではない。
映像全集の数年前の録音だが、演奏の基本的な内容は同一と言って差し障りはない。ただ、両曲共にゲールギエフにしてはあまり出来の良い演奏ではないのが残念。第11番はゲールギエフの十八番だが、淀みのない流麗な音楽作りで長大な作品を退屈することなく一気呵成に聴かせてしまう構成力は傑出しているものの、たとえば第1楽章のようにどこか集中力を欠いた散漫さが感じられる箇所が少なくない。オーケストラの肌理も粗い。第2番は無難にまとめただけで、これといった聴かせどころがなく、物足りない。


ベルチャQによるショスタコーヴィチは、彼らの個性が前面に押し出された演奏である。緊密なアンサンブルに基づいた、表現主義的な振幅の大きさを感じさせる表情付けは、時に表面的な美しさを犠牲にするほどの過剰さで、たとえばピアノ五重奏曲の第2楽章と第3楽章の対比などは実に効果的である一方、弦楽四重奏曲第3番の第4楽章などのようにくどくて聴き疲れすることも少なくない。内から湧き上がる熱気の表現は素晴らしいが、ショスタコーヴィチならではの表面的なクールさが損なわれている印象。


セール対象商品ではなかったが、先日の買い物(4月7日のエントリー)で買いそびれたコダーイQのOp.9とOp.17も確保した。初期の作品になるほどコダーイQの爽やかな演奏と楽曲との相性が良いように思えるが、特にOp.17に関してはシュナイダーQの闊達な演奏(3月19日のエントリー)ほどのインパクトには欠ける。


ハイドンの弦楽四重奏曲をもう一枚。クレーメル他による「十字架上のキリストの七つの言葉」は1981年の録音で、同年には同じメンバー(+ピアノのバシキーロヴァ)でシニートケのピアノ五重奏曲も録音(Philips)している。集中的に活動を共にしたメンバーなのだろうが、「クレーメルQ」という表記は日本語解説+帯のみで、常設の団体というわけではない。

ロッケンハウス音楽祭における数々の室内楽同様、クレーメルの異端とでも言うべき突出した個性がこの演奏を覆っている。表現主義的な多彩な音色で、研ぎ澄まされた厳しさとロマンの残り香のような現代的な甘さとを紙一重のバランスで両立させている。技術的にはさして難しくないものの、どうしても退屈してしまいがちなこの作品を、張り詰めた緊張感の下で一気に聴かせてくれる。独奏者×4≠ 弦楽四重奏ではあるが、このアンサンブルの精度と一体感は凡百の常設団体をはるかに凌ぐ。それには、ヴィオラのコセの存在が大きいと感じた。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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