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ショスタコーヴィチの交響曲4題

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、ラヴェル:スペイン狂詩曲 コンドラーシン/イギリス国立ユースO(dbx RTS-3 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 ヘルビヒ/ザールブリュッケン放送SO(Berlin Classics 0016112BC)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 ヘルビヒ/ザールブリュッケン放送SO(Berlin Classics 0017972BC)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ヘルビヒ/ザールブリュッケン放送SO(Berlin Classics 0016152BC)
少し前のことになるが、とある方から、私が未架蔵の音盤を譲渡してもよい、という旨の連絡を頂いた。10年ほど前までは、こういうお申し出も少なからずあったのだが、ネットオークションが広く使われるようになってからは、めっきりと減った。私にとって何ら不都合のない話でもあり、数度のやり取りを経てお譲り頂いたのが、コンドラーシンがイギリスのユース・オーケストラを振ったライヴ盤LP。

アルバムの趣旨はdbxノイズリダクションを紹介するオーディオ的な関心にあるようで、ライナーの大半もこのシステムの説明に費やされている。残念ながらdbxのデコーダは所持していないし、それこそオークション等で入手も容易とはいえ、この1枚のためだけに揃える気にもならず、デコーダを通さずに聴取。適正な再生をしているとは言えないが、要するにドルビーのスイッチを間違ってカセットテープを聴くようなもので、演奏を知るという意味においては特段の不都合はない。

短めの2曲ではあるが、この苛烈なテンポと表現の振幅を、ユース・オーケストラ相手に一切の妥協なく要求しているコンドラーシンの指揮に、とにかく驚かされる。オーケストラは相当健闘しているものの、それでもついていけずに乱れている箇所も少なくないが、引き締まった剛毅な音楽が弛むことはない。ライヴ盤ならではの熱気にも溢れており、とりわけコンドラーシンのファンには愉しい録音ではなかろうか。

譲渡頂いた方からは、キリル・コンドラシン 演奏会記録一覧というサイトもご教示頂いた。膨大なデータ量もさることながら、その全てに緻密な検証の跡が見える労作。非常に参考になる優良サイトだ。


さて、このLPを聴いたのは9月のことだったが、諸事に忙殺されている内にアリアCDからまとまった数の音盤が届いたので、とりあえず、ヘルビヒ/ザールブリュッケン放送響のショスタコーヴィチのみ聴いてみた。この組み合わせの録音は他に第5番と第8番もあるが、今回入手できた第7番だけがなぜか廃盤になっているようだ。

第4番は、いかにもドイツ的なロシア音楽に仕上がっている。地味ながらも堅実なアンサンブルで、錯綜したスコアが見通し良くすっきりと整理されており、実に聴きやすい。先鋭的な箇所もまろやかに均されている点で評価は分かれるだろうが、交響曲としてのまとまりが卓越した渋い演奏と言えるだろう。


第7番も、第4番と同様の手堅い演奏。第1楽章や第2楽章のクライマックスで打楽器に乱れがあるものの、この録音だけが廃盤扱いになっている理由はよくわからない。ショスタコーヴィチの歪んだ響きよりも、素直な旋律美が前面に押し出されているので、極めて聴きやすく耳に優しい音楽となっている。


第10番も演奏者の確かな実力を感じさせるアンサンブルではあるのだが、そもそも交響曲としての緊密な構成を持っている作品だけに、それをただ音にしているだけのような退屈な印象が否めない。振幅の大きな突出した表現を随所に求めたくなってしまう。

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ストラディヴァリウス・コンサート2019


ストラディヴァリウス・コンサート2019
  • ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番(ベイルマン)
  • バルトーク:44の二重奏曲より(1st:イム、2nd:ベイルマン)
  • チャイコーフスキイ:「なつかしい土地の思い出」より「メロディ」(イム)
  • ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番(イム)
  • ショスタコーヴィチ(アトヴミャーン編):2つのヴァイオリンとピアノのための5つの小品(1st:ベイルマン、2nd:イム)
  • モシュコフスキ:2つのヴァイオリンとピアノのための組曲より第4曲(1st:ベイルマン、2nd:イム)【アンコール】
2019年10月30日(水) ベンジャミン・ベイルマン、イム・ジヨン (Vn) 萩原麻未 (Pf) いずみホール
前日にチケットを頂き、急遽いずみホールへ。事前に演奏曲目などの情報を全く知らずにホールへ向かったのだが、ショスタコーヴィチ作品がメインの曲目だったのは、我ながらさすがと言うべきか。日本音楽財団が保有するストラディヴァリウスと、それを貸与されている演奏家による「ストラディヴァリウス・コンサート」の存在は知っていたが、実際に聴くのは初めて。「エングルマン」(1709)を貸与されているベイルマンと「サセルノ」(1717)を貸与されているイムの2人が出演したが、当初出演予定だったヴェロニカ・エーベルレが貸与されている「ドラゴネッティ」(1700)もバルトークとチャイコーフスキイでイムが弾き、舞台に上がった楽器は計3台であった。

またこの大阪公演は、チケット収益の全額が京都大学iPS細胞研究所に寄付されるチャリティー・コンサートでもあり、演奏に先立って山中伸弥教授によるプレトークもあった。

若手演奏家2人の演奏はメカニック面では申し分のないもので、強奏部などでコントロールが利いていない音も散見はされたものの、純粋にヴァイオリンの美しさや楽しさを享受することができた。音色という点ではベイルマンの方に魅力があり、ベートーヴェンの第2楽章などは出色の美しさであった。イムも精度の高い繊細な演奏をしていたが、私の耳には痩せた音色に聴こえたのが残念。

ショスタコーヴィチは、いささか過剰な表情付けが意図されていたように思えたが、演奏家の若さゆえか、結果として嫌みのない自然な仕上がりになっていて、リラックスして愉しむことができた。第5曲のアンサンブルは雑然としていたが、そこまでうるさいことを言うべき音楽でもないだろう。

コンサート全体を通して、ピアノの地味ながらも手堅い表現力が演奏の水準を引き上げていたことも特記すべきだろう。おじさん好みの容姿ゆえに評価が甘くなっている可能性を否定するつもりもないが、それを差し引いても存在感のあるピアノであった。

このコンサートの趣旨の一つであるストラディヴァリウスの聴き比べという点では、圧倒的に「ドラゴネッティ」の素晴らしさが際立っていた。私が聴いたストラディヴァリウスの中では、ヴェンゲーロフの弾く「クロイツェル」(1727)に匹敵する銘器と感じた次第。

アンコールのモシュコフスキも楽しい演奏で、満たされた気分でホールを後にすることができた。

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新たな御狩場?

  • ハイドン:弦楽四重奏曲集 Op. 64 タートライQ(Hungaroton HCD 11838-39)
  • フランク:弦楽四重奏曲 ゲヴァントハウスQ(Deutsche Schallplatten TKCC-70671)
  • ショスタコーヴィチ(バルシャーイ編):弦楽のための交響曲(弦楽四重奏曲第10番)、アイネ・クライネ・シンフォニー(弦楽四重奏曲第1番)、室内交響曲(弦楽四重奏曲第8番) ファン・アルフェン/ロッテルダムCO(talent DOM 2929 72)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、武満徹:フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム 佐渡裕/ベルリンPO(avex AVCL-25733~4)
東京での空き時間は御茶ノ水~神保町界隈で過ごすことが多いのだが、先日久し振りに新宿で時間ができたので、偵察がてらディスクユニオン 新宿クラシック館を初訪問。結果としては、量の割りにあまり琴線に触れる品揃えではなかったが、挨拶代わりに4枚だけ購入。私にとってのディスクユニオンのランキングは今のところ、大阪>お茶の水>新宿、かな。とはいえ、中古音盤屋は通ってなんぼのところがあるので、今後も機会があれば足を運びたい。

さて、まずはいつものようにルーティーンをこなしてみたが、結局タートライQのハイドンしか見つけることができなかった。この「第2トスト四重奏曲」はタートライQ最晩年の録音であるが、元々素朴な風合いを持った彼らの音色がさらに枯れていて、一聴するとピリオド楽器による演奏と間違えてしまうほど。ともかく、これでタートライQのハイドン全集を無事にコンプリートできた。


私にとってフランクという作曲家は、微妙な存在。ピアノ五重奏曲や交響曲は大好きだし、ヴァイオリン・ソナタも聴けば素晴らしい作品だと思うが、部分的にはともかく、全曲を通して気に入る作品は他に思い当たらない。弦楽四重奏曲も、楽曲の長大さに見合う魅力を感じられないまま今に至る。ズスケ時代のゲヴァントハウスQによる本盤は初出時から名盤として知られているが、神経質な線の細さを持つこの団体の演奏では、この弦楽四重奏曲が私の好きな作品のリストに入ることはなかった。とはいえ、フランクの最高傑作に推す人もいるほどの作品だけに、今後も挫けることなく挑戦し続けたい。


ショスタコーヴィチ関係は、どうにも目ぼしい物を見つけることができず、わりと安かった2枚だけ確保。まずは、バルシャーイが弦楽合奏用に編曲した弦楽四重奏曲3曲のアルバム。何とも繊細な演奏で、弱音の美に耽溺しているかのよう。第10番ではその意図がよく伝わるものの、第1番の素朴な活力は犠牲になっている。また、技術的な破綻を避けるためか第3楽章の極端に遅いテンポもいただけないし、それでもなお瑕が残っているのも残念。有名な第8番には、やはり表面的な美観を損なってでも内面から噴き出るような力強さが欲しいところ。響きの志向そのものは悪くないだけに、残念。


佐渡 裕のベルリン・フィルへのデビューは、当時様々なメディアで大々的に取り上げられ、その際に放送された演奏会の映像は録画もして視聴している(2011年7月11日のエントリー)。当時は汗を撒き散らして忘我の境地で音響に没入する指揮者の姿に激情型の演奏という印象を抱いたが、今回改めて音だけで聴くと、隅々まで極めて整然としたアンサンブルで極上の響きでありながらも、音楽そのものは非常に冷静であることに驚かされた。テンポが変わる箇所のスムーズさなどは指揮者の棒に忠実であった証であろうが、それゆえに、あの指揮姿とギャップのある淡々とした音楽と、それでいて豪奢な響きには、まさに“笛吹けども踊らず”的なオーケストラの恐ろしさが垣間見える。こうした背景を何も知らずに聴くならば、「お手本のような」演奏であることに違いはない。

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悪趣味?なヘンデル

  • ムーソルグスキイ(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」、ショスタコーヴィチ:祝典序曲 デイヴィソン/ウェールズ・ナショナル・ユースO(Music for Pleasure MFP 57009 [LP])
  • ヘンデル(ハーティ編):組曲「水上の音楽」、ヘンデル:合奏協奏曲第10番, Op.6-10 D. オーイストラフ/モスクワPO バルシャーイ/モスクワ室内O(Melodiya 489.031 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から2枚が届く。今回は本当に欲しかったものが悉く入手できず、ついでにオーダーしたものだけ。

ウェールズ・ナショナル・ユースOのアルバムは、残念ながらユース・オーケストラの活動記録という以上の価値が見出せない。1970年頃の技術水準としては平均的なのかもしれないが、粗さばかりが耳につく。祝典序曲は、アンサンブル上の配慮からか非常に遅いテンポが採られているが、これではまるで違う曲である。


ソ連のヘンデル、とでも言うべきアルバムは、この種の旧き佳きロマンティックなバロック音楽を受容できる向きにとっては時代錯誤な壮麗さが愉しめるだろう。オーイストラフ指揮の「水上の音楽」は、同じハーティー版でもセルの有名な録音のような節度はなく、完全にロマン派である。バルシャーイ指揮の合奏協奏曲の冒頭の鮮烈な鋭利さは、まるで現代音楽のよう。フルトヴェングラーの大仰な演奏とは対極ながらも同じ様式感を共有しているのが面白い。ただ、ヘンデルの音楽にはこういうアプローチを許容し得る側面があるようにも思える。大きな声では言えないが、私はこれらの演奏が大好き。もし自分で室内オケを結成することがあれば、こういうスタイルの演奏をしたいと思うほどに。決して趣味が良いと言われることがないのは、よく分かっているけれども。

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ルドルフ・バルシャイを讃えて

  • ツィンツァーゼ:チェロ協奏曲第2番(5つのエピソードによる)、ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番 ホルヌング (Vc) ポーガ/ベルリン・ドイツSO(myrios MYR023)
  • ショスタコーヴィチ:ロシアとキルギスの民謡による序曲、ドビュッシー:「海」管弦楽のための3つの交響的素描、ピアソラ:タンガーソ、バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番 レオン/ボフスラフ・マルティヌー PO(Centaur CRC2799)
  • ブリテン:ラクリメ-ダウランドの歌曲の投影、ロックバーク:ヴィオラ・ソナタ、ペルト:鏡の中の鏡、ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ ミンクラー (Va) ジョンソン (Pf)(Centaur CRC3049)
  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ ボンド (Pf)(Centaur CRC2896/2897)
  • ルドルフ・バルシャイ(1924-2010)を讃えて(ica ICAB5136)
アリアCDから、いつもより大きな箱が届いた。

珍しく新譜を一枚。ドイツの若手チェリスト、ホルヌングによる、1966年に作曲された2曲のチェロ協奏曲を収録したアルバムである。極めて高い精度のテクニックをもって隅々まで明晰に解釈された、いかにも現代的な精緻さを有した演奏と言えるだろう。ショスタコーヴィチの陰鬱でありながらも諧謔を感じさせる繰り言のような独特の雰囲気は、いささか平準化されてしまったようにも思えるが、より普遍的な聴きやすさという点では決して悪くはない。グルジアの作曲家ツィンツァーゼの協奏曲は、ショスタコーヴィチに比べるとはるかに生気の感じられる暗さであるが、こちらの方が、少なくとも現時点のホルヌングにはより合っているように思われる。


Centaurレーベルのセールから、ショスタコーヴィチ作品を収録した未架蔵の3枚をオーダー。

まずは、レオン/ボフスラフ・マルティヌー・フィルによる管弦楽集。このオーケストラを聴くのは初めて。本盤に関する限りは、技術的には中の上、といった感じだろうか。ドビュッシーとバーバーは、その音楽語法に馴染みがある故か、表現の振幅も大きく、聴き映えのする面白い演奏に仕上がっている。ショスタコーヴィチも馴染みという点では同じように思われるのだが、民謡主題の歌いまわしに加えて主部に入ってからのリズムのノリに不満が残る。さらにピアソラ作品ではタンゴ的要素が全く表出できておらず、ピアソラの愛好家には全く受け入れられないだろう。


ミンクラーというヴィオラ奏者の名は初めて知ったが、わりとオーソドックスな選曲の現代ヴィオラ曲集は、現在のヴィオラ界の技術水準の高さを象徴するような、充実の一枚。ヴァイオリンと同様の明晰な響きと、ヴィオラならではの深く暗い響きとがごく自然に両立している。どの曲も模範的な解釈だが、ピアノにややロマンティックな傾向がある。透明ながらも薄っすらと色付いた美しさは、ショスタコーヴィチでは好みが分かれるかもしれないが、ブリテンや、とりわけペルトでは堪らない。


ボンドというピアニストも初めて聴くが、“中庸”という言葉の最良の意味を体現したような音楽に、寛いだ心地好さを覚えた。取り立てて突き抜けた要素はない代わりに、全24曲を通して聴いても妙な疲労を感じることがない。この曲集が苦手な聴き手にはお薦め。


さて、今回の大きな箱の正体は、バルシャーイの没後5周年BOX(20枚組)であった。収録内容は、以下の通り:
【Disc1】
  1. シューマン:おとぎの絵本(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  2. プロコーフィエフ(バルシャーイ編):バレエ「ロメオとジュリエット」(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  3. フォーサイス:ケルトの歌(バルシャーイ (Va) ストゥチェフスキイ (Pf))
  4. ショパン(バルシャーイ編):練習曲第14番(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  5. グリーグ(バルシャーイ編):抒情小曲集第3集より「春に寄す」 (バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  6. ラヴェル(ボリソーフスキイ編):亡き王女のためのパヴァーヌ(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  7. ドビュッシー:フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ(コルニーフ (Fl) バルシャーイ (Va) エルデリ (Hp))
  8. ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  9. ドビュッシー:「小組曲」より「小舟にて」(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
【Disc2】
  1. J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(バルシャーイ (Va))
  2. ヒンデミット:無伴奏ヴィオラのためのソナタ Op. 25-1 (バルシャーイ (Va))
  3. ヒンデミット:葬送音楽(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
  4. カサドシュ(伝ヘンデル)(バルシャーイ編):ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
【Disc3】
  1. ブーニン:ヴィオラ・ソナタ(バルシャーイ (Va) ニコラーエヴァ (Pf))
  2. クリュコフ:ヴィオラ・ソナタ(バルシャーイ (Va) ニコラーエヴァ (Pf))
  3. ゴルトシュタイン(伝ハンドキシン):ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
  4. ブーニン:ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) アノーソフ/ソヴィエト国立SO)
【Disc4】
  1. ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第1番(L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
  2. ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第3番(L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
【Disc5】
  1. フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番(ギレリス (Pf) L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
  2. ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲(ショスタコーヴィチ (Pf) モスクワ・フィルハーモニーQ)
【Disc6】
  1. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番(モスクワ・フィルハーモニーQ)
  2. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番(チャイコーフスキイQ)
  3. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第4番(チャイコーフスキイQ)
【Disc7】
  1. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番(チャイコーフスキイQ)
  2. チャイコーフスキイ:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」(L. コーガン、ギレリス (Vn)、バルシャーイ、タラルヤン (Va)、クヌシェヴィツキイ、ロストロポーヴィチ (Vc))
【Disc8】
  1. ボッケリーニ:交響曲 Es-dur, Op.35-2 (G.510)(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ヴィヴァルディ:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 B-dur, RV.547(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 h-moll, Op.3-10 (RV.580)(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc9】
  1. アルビノーニ:弦楽オーケストラのための協奏曲 B-dur, Op.5-1(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. アルビノーニ:弦楽オーケストラのための協奏曲 D-dur, Op.5-3(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. タルティーニ:チェロ協奏曲 A-dur(ロストロポーヴィチ (Vc)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 g-moll, RV.319(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  5. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  6. J. S. バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲(L. コーガン、ギレリス (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc10】
  1. J. S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲第4番(コルニーフ、ツァイデル (Fl)、D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:交響曲第40番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc11】
  1. モーツァルト:ディヴェルティメント KV136(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. モーツァルト:協奏交響曲(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ (Va)、モスクワ室内O)
  3. モーツァルト:ロンド C-dur, KV201(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:交響曲第29番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc12】
  1. モーツァルト:交響曲第10番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番(ギレリス (Pf)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:ロンド D-dur, KV382(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc13】
  1. ハイドン:交響曲第49番「受難」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ハイドン:ピアノ協奏曲第11番(ギレリス (Pf)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc14】
  1. シューベルト:交響曲第5番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ショスタコーヴィチ:交響曲第14番(ドルハーノヴァ (S)、ネステレーンコ (B)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc15】
  1. ロクシーン:交響曲第5番「シェイクスピアのソネット」(アレン (Br)、バルシャーイ/ボーンマスSO)
  2. ロクシーン:交響曲第4番「シンフォニア・ストレッタ」(バルシャーイ/ドイツ・ナショナル・ユースO)
  3. ロクシーン:ゲーテの「ファウスト」からの3つの情景(プロキーナ (S)、バルシャーイ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー・アンサンブル・レゾナンス他)
【Disc16】
  1. マルチヌー:ディヴェルティメント(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. バルトーク:ディヴェルティメント(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ストラヴィーンスキイ:弦楽のための協奏曲(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ストラヴィーンスキイ:バレエ音楽「ミューズをつかさどるアポロ」(バルシャーイ/台北国立SO)
【Disc17】
  1. パーセル:弦楽のための2つのファンタジー(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ブリテン:シンプル・シンフォニー(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ティペット:2重弦楽オーケストラのための協奏曲(バルシャーイ/バース祝祭室内O)
  4. ティペット:歌劇「真夏の結婚」より「典礼舞曲」(バルシャーイ/ボーンマスSO)
【Disc18】
  1. モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(バルシャーイ/東京都SO)
  3. マーラー:さすらう若者の歌(アレン (Br)、バルシャーイ/ケルンWDR SO)
【Disc19】
  1. マーラー(バルシャーイ補筆):交響曲第10番(バルシャーイ/東京都SO)
【Disc20:『マエストロ・バルシャイへの挨拶』】
  1. ボロディーン(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第2番(NSO弦楽アンサンブル)
  2. チャイコーフスキイ(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第1番(NSO弦楽アンサンブル)
  3. ショスタコーヴィチ(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第8番(NSO弦楽アンサンブル)

ヴィオラ奏者、弦楽四重奏をはじめとする室内楽奏者、モスクワ室内管の設立者、指揮者、編曲者……といった、音楽家バルシャーイの全貌を存分に味わうことのできるBOXである。全てCD初出音源とのことであるが、たとえばヴィヴァルディの「四季」がRevelation盤の演奏と同一か否かなどは精査していないため、この宣伝文句を鵜呑みにすることはできないが、既出音源あるいは架蔵済音源と重複があったとしても、これだけまとまった形で整理されているメリットは計り知れない。また、バルシャーイの遺族が制作に協力しているとはいえ、ライヴ録音を偽装したスタジオ録音が含まれている可能性も否定できず、ディスコグラフィを整備するのならばYedang盤などの既出音源とデータ照合をする必要があるだろう。

それにしても、膨大なレパートリーである。データは古いがバルシャーイのディスコグラフィとして公開されているリストを見ると、これでもその全てとは言い難いことに驚かされる。

ヴィオラ奏者としてのバルシャーイはボリソーフスキイに師事しているものの、その精確で洗練された響きは、ボリソーフスキイの孫弟子となるバシメートを彷彿とさせる現代的なものである。贅沢をいえば、D. オーイストラフ/モスクワPOと共演したベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」も聴きたかったところ。

室内楽奏者としては、何よりもギレリスやL. コーガン、ロストロポーヴィチなどの豪華共演陣に圧倒されるが、その存在感たるや、ヴィオラ奏者が目指すべき最高峰とでも言いたくなる。また、モスクワ・フィルハーモニーQ(後のボロディーンQ)やチャイコーフスキイQといった録音自体が稀少な弦楽四重奏団の若々しくも鮮やかな演奏も素晴らしい。

しかし、バルシャーイといえば何よりもまずモスクワ室内管である。本ブログでも何度も記してきたことだが、私のクラシック音楽の原体験は「世界大音楽全集」(河出書房新社)であった。とりわけ、ヴィヴァルディやバッハ、そしてモーツァルトの巻は、文字通り“擦り減るまで”聴いたため、私にとっては(良くも悪くも)デフォルトの演奏である。現代の耳で聴くと必ずしも技術的に完璧ではないのだが、それでいて怜悧な完璧さを体現したようなアンサンブルの凄味は今なお他の追随を許さない境地である。ただ、完璧=冷たい、というわけでは決してなく、バロック音楽にせよモーツァルトやハイドンにせよ、かなり濃厚なロマンを感じさせるところに時代も感じさせられる。モーツァルトの交響曲は音の強度と鋭さが卓越しているので、今となってはさすがにこれをデフォルトとは言い難いものの、ヴィヴァルディとバッハについては、やはり彼らの演奏が私の奥深い部分に刷り込まれているようだ。こうなると色々思い出してきて、子供の頃、特に好きだった「弦楽のための協奏曲 G-dur, RV.151『アラ・ルスティカ』」や「フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための三重協奏曲 a-moll, BWV1044」も聴きたくなった。中古LPでも探してみようかな。

モスクワ室内管との録音について付言しておきたいのは、協奏曲の“伴奏”の素晴らしさである。いかにもお仕事的な緩さを感じさせる演奏が少なくなかった当時において、これだけ手抜きをせず緻密に仕上げられた伴奏は、異端とすら言えるだろう。

1977年に亡命した後の指揮者としての活動は、残念ながら音盤という形での記録には恵まれていないだけに、CD4枚分以上の量が収録されているこのBOXの存在はありがたい。身贔屓ではないが、東京都響とのドヴォルザークとマーラーは、普通に傑出した秀演である。バルシャーイ最晩年に良好な関係にあった台北国立響も、立派な水準の演奏を聴かせている。

Disc20は、編曲者としてのバルシャーイに焦点を当てたもので、有名弦楽四重奏曲の弦楽合奏用編曲を、NSO弦楽アンサンブル(NSO=National Symphony Orchestra=台北国立響)がバルシャーイを偲んで指揮者なしで演奏した際のライヴ録音である。演奏の精度は他の収録演奏に比して格段に落ちるのが、残念。

最後に、収録されているショスタコーヴィチ作品の演奏について、まとめて言及しておきたい。ショスタコーヴィチ本人と共演したピアノ五重奏曲は、もしかしたらVogue Archives Soviétiques 651023というCD(現物未確認;弦楽四重奏曲第8番とのカップリング)に収録されているものと同一かもしれないが、現時点では確認する術がない。録音状態は聴き辛くはないものの、音の細かいニュアンスまでは捉えきれておらず、歴史的録音と割り切っていてももどかしさは残る。ただ、演奏は極めて素晴らしい。ショスタコーヴィチの状態もよほど良かったのか、終始端正に整ったピアノであり、若きボロディーンQと抒情的で清らかな美しさが際立つ音楽を聴かせている。演奏のみを評価するのであれば、全録音中のベストに挙げてもよい。ピアノ五重奏曲と同日の録音である弦楽四重奏曲第1番は、ボロディーンQが得意としたレパートリーであるだけに、後年の録音と比較するとセールスポイントに欠ける。もちろん、技術的には十分に洗練されている上に、素直で伸びやかな音楽には清新な魅力があることは言うまでもない。交響曲第14番は、収録日からするにショスタコーヴィチ65歳の誕生日を記念する演奏会でのライヴ録音と思われる。初演時のライヴ録音やスタジオ録音に聴かれる鋭い緊張感の代わりに、どこか泰然とした風格を感じさせる音楽になっている点で、1975年の東京ライヴ(Tokyo FM TFMC-0038)により近い演奏である。これは、ドルハーノヴァの声質が甲高い鋭さではなく、暗く深いものであることも影響しているのかもしれない。ネステレーンコはいささか青臭い気取りを感じさせるものの、安定した立派な歌唱である。NSO弦楽アンサンブルによる室内交響曲は、技術面での粗さが気になる上に、音楽的な踏み込みも甘く、凡庸な演奏。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Barshai,R.B.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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