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久し振りにショスタコ三昧

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第14番 ジェイムズ (S) オリーマンス (Br) ニコリッチ/オランダCO(Challenge Classics CC72654)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 K. ザンデルリンク/スウェーデン放送SO(Weitblick SSS0135-2)
  • チャイコーフスキイ:交響曲第4番、ムーソルグスキイ(ショスタコーヴィチ編):歌劇「ホヴァーンシチナ」より前奏曲「モスクワ川の夜明け」 K. ザンデルリンク/ウィーンSO(Weitblick SSS0088-2)
  • ゲールギエフ&ロッテルダム・フィル 20年の軌跡 ゲールギエフ/ロッテルダムPO(Rotterdam Philharmonic Orchestra RPHO 2008-1)
  • ピアソラ(ブラガート編):天使の死、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 Op.14、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏のための2つの小品、ドヴォルザーク:「ジプシー歌曲集」より「我が母の教えたまいし歌」、ハイドン:弦楽四重奏曲第9番 Op.2-3、ヒアネオ:3つのクリオージョ曲集より「ケチュア族の哀歌」、シューベルト:「楽興の時」第3番 フランシスクスQ(Challenge Classics CC72176)
  • シューベルト:弦楽四重奏曲第10、12番、ブラームス:弦楽四重奏曲第2番、弦楽四重奏曲第3番より第3楽章 ボロディーンQ(ica ICAD 5044 [DVD])
2019年も押し迫った頃にアリアCDから届いた音盤は、いずれもショスタコーヴィチ絡み。

ロンドン響コンサートマスターのニコリッチが指揮した交響曲第14番は、まるでヴァイオリン独奏曲集のようなジャケットが印象的だが、清澄なアンサンブルと地に足のついた意味深さが傑出した好演。バリトンは声質が少し明る過ぎるように感じられるが、表現の内容と技術には何ら問題はない。ソプラノは若々しい声が妖しい色気すら漂わせていて見事。


K. ザンデルリンク最晩年のライヴである交響曲第8番は、全曲を通して貫かれた非常に遅いテンポが、異様なまでの悠揚たる巨大さを醸し出す凄演である。長大な作品にも関わらず、第1楽章の冒頭から第5楽章の最後の音に至るまで途切れることのない情念のうねりからあらゆる音が捻り出される様に、文字通り息をつく暇もない。しなやかさすら感じさせる冒頭を聴いただけでも分かるように、ロシア色は強くないが、楽曲の本質に深く迫った重厚な響きは否応なしに聴き手の心を捉えて放さない。ただ、個人的な好みを言えば、第2楽章は呵責のないテンポこそが悲鳴のようなクライマックスに不可欠と考えるだけに、この演奏はあまりに遅過ぎるのが惜しい。


同じくK. ザンデルリンクによるチャイコーフスキイの第4番は、ウィーン響とのライヴ。オーケストラの違いよりも指揮者の個性が卓越しており、全体に漂う巨大なスケール感はスウェーデン放送響のショスタコーヴィチに通じるものがある。ただ、楽曲自体が持つ構成の弱さに起因する散漫さがあからさまになる瞬間もあり、それを捻じ伏せるような力技がオーケストラにあれば……と思わなくもない。

カップリング曲の「モスクワ川の夜明け」は、ショスタコーヴィチの編曲をことさらに強調するようなことはなく、まさに大河の流れを彷彿させるようなゆったりとしたテンポで淡々と音楽が紡がれる。この上なく滋味豊かな演奏である。


ゲールギエフが初めてロッテルダム・フィルを振った1987年から20年が経ったことを記念した4枚組のアルバムは、ショスタコーヴィチの初出音源が含まれていることはチェックしていたものの、コストパフォーマンスの観点から購入を見送ってきたもの。収録内容は、下記の通り:
【Disc1】
  1. チャイコーフスキイ:交響曲第4番(1988年)
  2. シベリウス:交響曲第1番(2003年)
【Disc2】
  1. プロコーフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」より(2004年)
  2. ストラヴィーンスキイ:春の祭典 (1996年)
【Disc3】
  1. ショスタコーヴィチ:交響曲第11番(1990年)
  2. ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」より(1997年)
【Disc4】
  1. シニートケ:ヴィオラ協奏曲(バシメート (Va);1993年)
  2. デュティユー:ヴァイオリン協奏曲「夢の樹」 (カヴァコス (Vn);2007年)
  3. ティーシチェンコ:バレエ「ヤロスラーヴナ」より(2007年)

ここに収録された中で最も古い(若い頃の)録音であるチャイコーフスキイの第4番が素晴らしい名演であり、若干34歳(1988年)の演奏であるにも関わらず、ここにはゲールギエフの魅力と人気の秘密が凝縮されている。上述したザンデルリンクの演奏では楽曲の弱さが露呈してしまう箇所を、ゲールギエフはクライマックスに向けて集中度を弛緩することなく高めつつ、クライマックスの次のクライマックスへと無尽蔵なエネルギーを放出すると同時に内に蓄え、そして聴き手の想像を超える頂点に達する……この一連の流れを、終始洗練された流麗さを持って鮮やかに処理する。理屈ではなく、生理的に引き込まれる音楽だ。

ショスタコーヴィチの第11番も同時期(1990年)の演奏で、この特徴が、さらに物凄い熱量で発揮された快演。第1楽章のような弱奏部での表情にいま少しの彫りの深さを求めたいところではあるが、楽曲の長大さを全く感じさせない構成力と持続する緊張感は見事としか言い様がない。

他の収録曲もいずれ劣らぬ名演揃い。選曲のセンスも良く、数あるオーケストラの自主制作BOXの中でも特に薦められる物の一つだろう。


「Special Arrangements」と題するフランシスクスQのアルバムは、その名の通り“編曲”をテーマにした面白い内容。ベートーヴェンのOp.14や、本来は別編成のためのディヴェルティメントだったことから今では弦楽四重奏曲として扱われることのないハイドンのOp.2-3が取り上げられているのも嬉しい。本アルバム随一の聴きものは、「我が母の教えたまいし歌」。この編曲が素晴らしい。編曲者の情報が全く見当たらないことからすると、この団体のメンバーによるものだろうか。クライスラーによるヴァイオリンとピアノのための編曲は有名なものの、不思議と弦楽四重奏のためのまともな編曲が皆無に等しい作品だけに、いつかこの編曲譜が出版されることを切望したい。

ショスタコーヴィチの2つの小品は、線が細く、表情が平坦なのが残念。ポルカの最後の方で1st Vnに音の間違い(使用楽譜によるのかもしれない)があるのもいただけない。


ボロディーンQのDVDは、2nd Vnがアブラメンコフだった時代の最後にあたる頃のライヴ映像。この時点でもう1st Vnのアハロニアンの個性が支配的になっているように感じられるが、技術的な水準は変わらず維持されているし、透明で涼やかな響きも魅力的。シューベルトとブラームスというドイツ・ロマン派の王道のようなプログラムで、細かい節回しに私の好みとは異なる箇所が少なくないものの、見応え、聴き応えのある映像作品である。

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スウェーデン放送響:1936~86

  • スウェーデン放送交響楽団の50年(BIS LP-331/333 [LP])
知人から、5枚組LPのBOXを譲っていただいた。BISレーベルの面目躍如といった感の強い、充実した内容と丁寧な作りである。それでいて、CD化されないのも当然とばかりにごく限定された購買層しか想定していないのも、往年のマイナーレーベルの気概が窺われて潔い。

私にとってスウェーデン放送響と言えば、晩年のスヴェトラーノフの数々やチェリビダッケのBOXセットなどの印象が強いのだが、このセットではオーケストラの前身が発足した1936年から1986年までの50年が網羅されている。解説書はオーケストラの歴史についてかなり詳しく記述されているようだが、スウェーデン語のみという硬派なもので、私には読むことができないことがつくづく残念でならない。

収録内容は、以下の通り:
【Disc1】
  1. ワルディミール:テーマ音楽「皆様こんばんは!」(ワルディミール;1939年)
  2. ドナルドソン(ワルディミール編):私の青空(ワルディミール;1938年)
  3. スコルド:夏(スコルド;1940年)
  4. ワルディミール:窓を開けて(ワルディミール;1943年)
  5. ウォーレン(エールリンク編):ブロードウェイの子守歌(エールリンク;1942年)
  6. リューブラント:カルーセル交響曲より第4楽章(リューブラント;1951年)
  7. コック:舞曲第2番(イェルヴィン;1954年)
  8. フルメリー(コターセク編):真夏のポーランド(チェルマン;1958年)
  9. ニーストレーム(ヘーグステット編):春に愛す(ヘーグステット;1962年)
  10. J. シュトラウスII世:ポルカ「狩り」(ボスコフスキー;1960年)
  11. リンド:ヴァイオリン・リフ(リンド;1964年)
  12. プッチーニ(ビッリ編):歌劇「トゥーランドット」より(グレヴィリウス;1928年)
  13. ウェーバー:歌劇「オベロン、または妖精王の誓い」序曲(マン;1933年)
  14. アウリン:劇音楽「紳士オロフ」より(ヘルマン;1936年)
  15. ルーセンベリ:組曲「作られた興味」より第1、5楽章(ラーション;1943年)
  16. ルーセンベリ:「マリオネット」序曲(フリッチャイ;1953年)
  17. ヴェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章(シェルヘン;1955年)
【Disc2】
  1. モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(フリュクベリ;1949年)
  2. ブロムダール:田園組曲(フリュクベリ;1951年)
  3. モーツァルト:ホルン協奏曲第2番(ブレイン (Hr)、フリュクベリ;1956年)
  4. ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より第3幕への前奏曲(グレヴィリウス;1963年)
  5. ヘンデル:合奏協奏曲 Op. 6-8より第4~6楽章(レーマン;1956年)
  6. ヒンデミット:組曲「気高い幻想」より「パッサカリア」(ヒンデミット;1955年)
  7. ヴィレーン:シンフォニエッタ(ヴォルフ;1960年)
【Disc3】
  1. ブラームス:交響曲第2番(G. L. ヨッフム;1957年)
  2. ベック:「これぞ聖なる十戒」による幻想曲(ブロムシュテット;1960年)
  3. ヘンツェ:ラジオ・オペラ「田舎医者」より(エールリンク;1957年)
【Disc4】
  1. ベートーヴェン:「コリオラン」序曲(ショルティ;1958年)
  2. ストラヴィーンスキイ:バレエ「火の鳥」より「魔王カシチェーイの凶悪な踊り」(ストラヴィーンスキイ;1963年)
  3. スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲(クベリーク;1963年)
  4. メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」序曲(セル;1963年)
  5. J. S. バッハ(ストコフスキ編):トッカータとフーガ ニ短調(ストコフスキ;1967年)
  6. ルトスワフスキ:交響的変奏曲(ルトスワフスキ;1969年)
  7. ショスタコーヴィチ:交響曲第6番より第3楽章(コンドラーシン;1977年)
  8. グリーンカ:歌劇「ルスラーンとリュドミーラ」序曲(スヴェトラーノフ;1979年)
【Disc5】
  1. ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲(D. オーイストラフ (Vn)、オーロフソン (Vc);1971年)
  2. ファリャ:バレエ「三角帽子」第2組曲(フリューベック・デ・ブルゴス;1983年)
  3. ヒメネス:「ルイス=アロンソの結婚式」より間奏曲(フリューベック・デ・ブルゴス;1979年)
  4. リードホルム:ファンファーレ(ブロムシュテット;1979年)
  5. ベールヴァルド:歌劇「ソリアのエストレッラ」序曲(ブロムシュテット;1979年)

この分量について、個別にコメントするつもりはない。放送局のオーケストラらしいレパートリーの広さを窺わせる選曲の素晴らしさと、全ての演奏の質の高さを特筆しておくだけで十分だろう。豪華な客演指揮者の顔ぶれに加えて、デニス・ブレインのホルンやダヴィッド・オーイストラフのヴァイオリンなど、聴きどころは枚挙に暇がない。

私の目当であるコンドラーシン指揮のショスタコーヴィチは、響きの志向と容赦のないテンポ設定が、いかにもコンドラーシンらしい。ライヴゆえの瑕はあるが、残りの2つの楽章も聴きたいと思わせるに足る演奏である。


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ウィーン・ゾリステンによるモーツァルトのセレナーデ

  • モーツァルト:カッサシオン ニ長調(セレナーデ第1番)、4つのコントルダンス(セレナーデ第2番)、セレナーデ第6番「セレナータ・ノットゥルナ」 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 858 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第4番 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 856 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第5番 ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201 857 [LP])
  • モーツァルト:セレナーデ第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、6つのレントラー舞曲、ディヴェルティメント ヘ長調 、7つのメヌエットより ベッチャー/ウィーン・ゾリステン(amadeo 201.800 [LP])
  • アーノルド:イギリス舞曲第5番(第2集)、ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーヴスによる幻想曲、ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より「鍛冶屋の合唱」、ヘンデル:オラトリオ「ソロモン」より「シバの女王の到着」、J. S. バッハ:カンタータ第147番「心と口と行いと生活で」より「イエスは変わらざるわが喜び(主よ、人の望みの喜びよ)」、マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「復活祭の合唱」、ヘンデル:オラトリオ「サムソン」より「輝けるセラフたちに」、J. S. バッハ:管弦楽組曲第3番より「アリア」、ショスタコーヴィチ(アトヴミャーン編):組曲「馬あぶ」より「ロマンス」、ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」より「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」、カントルーブ(編):「オーヴェルニュの歌」より「バイレロ 」、ロッシーニ:小荘厳ミサ曲より「聖霊とともに」 コバーン (S) ヒューズ/ハレO & cho(Classics For Pleasure CFP 41 4474 1 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.にて、ウィーン・ゾリステンによるモーツァルトのセレナーデをまとめ買い。恥ずかしながら、このジャンルは体系的に聴いたことがないので、ほとんどの収録曲を初めて聴いた。多くの曲でヴァイオリン独奏があるものの、全てがピヒラーという訳ではない。とはいえ、あらゆるフレーズの処理に至るまで細心の心配りがなされた丁寧でいて闊達なアンサンブルは、明らかにアルバン・ベルクQ以降の時代を予感させる。若い団体ならではの緻密さも傑出しているが、それでいて神経質にはならない潑剌さが何よりも魅力的な演奏である。


「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を収録した1枚は、ジャケットの体裁や品番などから察するに、上記の3枚に先立って録音されたものと思われる。と言うより、メンバー表記を見ると、ピヒラー、メッツェル、バイエルレの初代ABQメンバーに加えてカクシュカの名前がヴァイオリン奏者の一人としてクレジットされていることから、この団体初期の録音であることが明らかである。彼らの後の音楽人生に思いを馳せると、何とも感慨深い。演奏内容自体は、この団体の他の音盤と同様の清新さに満ちた清潔で健康なもの。

ウィーン・ゾリステンの全ディスコグラフィーは把握できていないが、ピヒラー在籍時の約10年分については、そこそこ蒐集できたような気がする。


ウェールズの指揮者オウェイン・アーウェル・ヒューズが自身で選曲した「管弦楽名曲集」は、その嗜好がいかにも英国圏らしくて面白い。ショスタコーヴィチの「馬あぶのロマンス」などを聴く限り、やや濃口の表情付けがされているものの、基本的には奇を衒うことのない真面目な演奏である。

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tag : 演奏家_DieWienerSolisten 作曲家_Mozart,W.A. 作曲家_Shostakovich,D.D.

シチェドリーンの「封印された天使」など

  • ロマンティックな人々 ウィーン弦楽五重奏団(Camerata 32CM-241)
  • 冬は厳しく~弦楽四重奏の諸相II クロノスQ(Nonesuch WPCS-5540)
  • シューベルト:弦楽五重奏曲 タートライQ スィルヴァーシ (Vc)(Hungaroton HRC 056)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1、3、8番 ルートヴィヒQ(Calliope CAL1102)
  • シチェドリーン:封印された天使 ミーニン/ソヴィエト国立アカデミーcho、モスクワ室内cho(Melodiya MEL CD 10 02070)
所用で日曜日の昼間に梅田で30分ほど空き時間ができたので、時間潰しにディスクユニオン 大阪クラシック館へ。眺めるだけ、と思って入店したものの、当然ながら黒い袋を持って次の用事へと向かうことになった。

先日もウィーン・ビーダーマイヤー・アンサンブルのウィンナ・ワルツ集を買ったばかり(8月9日のエントリー)だが、今回もなぜか最初に目についたのと、ランナーとシュトラウス1世中心の収録内容に惹かれて、ウィーン弦楽五重奏団のアルバムを確保。やや技巧的な華やかさに偏る傾向が無きにしも非ずだが、各曲のアレンジはごく自然で妥当なもの。選曲も演奏も、十分に愉しい。


クロノスQのこのアルバムは、私が大学に入った頃に「ピアソラ作品を弾いてみない?」と先輩に聴かせてもらったもの。当時はよく分からない現代音楽集としか思えず、ジョン・ゾーンの「狂った果実」で太田裕実の声ばかりを堪能した記憶がある。なぜか買いそびれたまま今日に至っていたが、いい機会なので確保。「一昔前」の最先端を思い出させてくれる選曲と内容だが、それは必ずしも否定的な意味ではなく、このアルバムの持つ歴史的な意義を再認識した次第。ピアソラ作品はもちろんのこと、他の作品も今の私の耳にとってはごく「普通」の楽曲にしか聴こえない。思いもかけず、歳月の流れを感じてしまった。


現在、仲間と「死と乙女」に取り組んでいることもあり、シューベルトの棚をチェックしたが、残念ながら弦楽四重奏曲には目ぼしい品がなかった。悔しいので、一番安価だったタートライQによる弦楽五重奏曲を手に取った。往年の演奏様式による、いささか武骨ながらもロマンティックなシューベルトだが、田舎臭い自然さが何とも心地よく、シューベルトの悠長な音楽時間に寛いで浸ることができた。


フランスのベテランの団体であるルートヴィヒQ(1985年結成)によるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、燃焼度の高い表現意欲に貫かれつつも手堅い演奏。とりわけ第1番の自然な流れが心地よい。第3番は思ったよりも常識的なテンションだが、第8番では大柄で力強い音楽を聴くことができる。ただ、弱奏部の透徹した雰囲気に欠けるのは惜しい。


12月18日のエントリーでスヴィリードフとラフマニノフの宗教曲を取り上げたばかりだが、今度はシチェドリーンの宗教曲。『封印された天使』というのは本作品の元となったレスコーフの小説の題名。ただし、歌詞はロシア語ではなく教会スラブ語である。したがって厳密な意味での「教会音楽」ではないが、極めて宗教色の強い(作曲も初演もソ連時代)作品である。ロシア正教会の聖歌の様式については未だよくわからないままではあるが、このシチェドリーンの作品も美し過ぎるほどの美しさ。フルートと合唱とが織りなす響きが古風でありつつも現代的でもあり、時空を超越した荘厳さと、それでいて人間的な温もりと優しさを湛えた天上の音楽に、心底魅了された。

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スヴィリードフの宗教音楽と、レーガーのピアノ独奏曲

  • スヴィリードフ:バーンズの詩による歌曲、デニーソフ:バーンズの詩による5つの歌曲より、ショスタコーヴィチ:イギリスの詩人の詩による6つの歌曲より、レヴィチン:バーンズの詩による歌曲集、フレーンニコフ:バーンズの詩による5つのロマンスより サヴェンコ (B) ブローク (Pf)(Toccata TOCC 0039)
  • シェバリーン:プーシキンの詩による5つの無伴奏合唱曲、レールモントフの詩による3つの無伴奏合唱曲、ソフロノフの詩による3つの無伴奏合唱曲、タンクの詩による6つの無伴奏合唱曲、イサコーフスキイの詩による4つの無伴奏合唱曲、モルダヴィア詩人の詩による3つの合唱曲、子供のための4つの無伴奏合唱曲「我が孫たちに」、子供のための7つの無伴奏合唱曲「森の端で」、映画「グリーンカ」より国防市民軍兵の合唱「おお、我が夜明けよ」 ホンジンスキイ/ルースカヤ音楽院室内カペラ(Toccata TOCC 0112)
  • スヴィリードフ:聖歌と祈祷 プリシュ/クレド室内合唱団(Toccata TOCC 0123)
  • ラフマニノフ:晩祷 スヴェトラーノフ/ブルガリア合唱団(Russian Disc RDCD 00719)
  • ヴィラ=ロボス:アマゾンの森 ゲラシーモヴァ (S) スヴェトラーノフ/ロシア国立SO(Russian Disc RDCD 00530)
  • レーガー:ピアノ独奏曲全集 ベッカー (Pf)(NCA 234239)
かなり間が空いてしまったが、11月8日のエントリーに続き、アリアCDから届いた音盤を。

Toccataレーベルのセールでは、声楽曲ばかり3枚をオーダー。

ロバート・バーンズの詩によるロシア人作曲家の作品を集めたアルバムは、スヴィリードフとショスタコーヴィチの有名曲と、世界初録音のレヴィチンの作品などのあまり聴かれる機会のない曲とがバランスよく配置された聴き応えのある一枚。サヴェンコの歌唱は現代的な洗練を感じさせるもので、旋律の明晰なフレージングと、伴奏の和声に寄り添って移ろう色合いの変化が美しい。収録曲の全てがそれぞれに魅力的だが、歌謡曲的な旋律線という点で、フレーンニコフの作品が記憶に残った。デニーソフ作品の美しさも忘れ難い。


シェバリーンの無伴奏合唱曲全集というのも、このレーベルならではの企画。シェバリーンにとってこの編成が重要な位置を占めていたことがよく分かる分量だ。モスクワ音楽院の院長であったシェバリーンの後任がスヴェシーニコフだったのも、故なき事ではなかったのかもしれない。収録曲の間にそれほど大きな作風や曲調の違いは見出せず、いずれもロシア民謡風の素朴さが楽しい。もっとも、収録曲は全てジダーノフ批判以降の作品であることを忘れてはならない。


スヴィリードフの晩年は専ら宗教曲に没頭したようだが、「聖歌と祈祷」はその集大成のような曲集。ただ、奉神礼(カトリックでいうミサのようなもの)などを当初から想定して系統立てて作曲された訳ではなく、曲順等はあってないようなもの。このアルバムでは、旧約・新約それぞれの話の流れに沿って配列されている。

これがとてつもなく美しい。とにかく美しい。信者であれば各曲の表題や歌詞からその宗教的な内容も加味して聴くことができるのだろうが、この神々しい美しさはその知識が皆無な私の心をも優しく、それでいて力強く鷲掴みにする。


私にとってロシア正教会の宗教音楽といえば、何はさておきラフマニノフの「晩祷」である。結局のところはスヴェシニコフ盤に回帰してしまうのだが、スヴェトラーノフのラフマニノフとなれば一度は聴いておきたく、この機会に入手。しかし残念ながら、合唱の強烈なブルガリア色が耳につき過ぎて、スヴェトラーノフの解釈云々に辿り着くことができなかった。ロシアの女声もかなり鋭いが、比較にならない。


ヴィラ=ロボス最晩年の大作「アマゾンの森」は、ヘップバーン主演の映画「緑の館」(1959)の映画音楽を再構成した作品。ディスクを通してチャプターが1つしか打たれていないため、スコア無しでは楽曲構成のポイントを把握するのが難しく、結果としてラテン色に満ちた気怠くも官能的な情感を漫然と愉しむだけになってしまった。スヴェトラーノフの演奏はこうしたヴィラ=ロボスの音楽に期待される要素を手堅く的確に表出しており、作品を知るという点において十分に優れた演奏である。ただし、どんな曲でもロシア色に染めてしまう強烈な「スヴェトラーノフ/ロシア国立響」の刻印を求めるファンには物足りなさが残るかもしれない。


今回最大の買い物は、レーガーのピアノ曲全集。Max-Reger-Instituteのサイトで見る限り、作品番号なしの作品については若干の未収録もあるようだが(それらが演奏できる状態で遺されているかどうかは知らない)、「全集」と称するに十分値する労作である。この膨大な量の作品群を、音楽的にも技術的にも非常に高い水準で、しかも一人で弾き切っているだけでも驚嘆する。さすがに数度聴いた程度で各曲を個別に認識することは無理だが、どの曲にも咽せ返るほど濃密な後期ロマン派的情緒が充満し、「ドイツ」の名に期待する響きが十全に繰り広げられている。総じて私の好みど真ん中の楽曲と演奏であり、CD12枚を聴き通すことに何ら苦労はない。私が知るレーガーは、専ら室内楽曲と弦楽器の独奏曲ばかりだが、彼の魅力はピアノ曲の方が理解しやすいのかもしれない。もっと演奏頻度が高くてもよいと思うし、もっと広く聴かれてもおかしくないとも思う。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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