シチェドリーンのピアノ曲、ヴェルストーフスキイのオペラ、R. シュトラウスの「カプリッチョ」全曲

  • シチェドリーン:ポリフォニーの手帳 シチェドリーン (Pf) (Melodiya C04685-6 [LP])
  • ヴェルストーフスキイ:歌劇「アスコーリドの墓」(抜粋) スミルノフ/モスクワ放送SO & cho.他 (Melodiya M10 47219 001 [LP])
  • R. シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」 ヤノヴィッツ (S) フィッシャー=ディースカウ (Br) シュライアー (T) プライ (T) ベーム/バイエルン放送O & Cho 他 (DG 445 347-2)
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの10月到着分は、2枚。今年に入って在庫リストの更新が2ヶ月に一度のペースになってからというもの、めっきり掘り出し物が減ってしまった感が否めないMikrokosmosだが、品揃えの傾向を考えると、私にとっては依然としてチェックを怠るわけにはいかない業者の一つである。

シチェドリーンの自作自演は、彼の代表作の一つに数えられる「ポリフォニーの手帳」全曲。表題通り多彩な対位法的手法に貫かれた25曲は、おそらくは相互に関連づけられた構造があるのだろうが、LPで漫然と聴いている限りでは、正直なところ、そこまで分からない。ショスタコーヴィチの作品87に通ずる雰囲気もあるが、響きの質やジャズ風な要素など、シチェドリーン以外の何者でもない美しさと面白さに満ちている。J. S. バッハなどの楽曲が引用されたり下敷きにされたりしているようだが、その辺りは不得手ゆえ、作品の面白さを味わい尽くしていない悔しさは残る。


ヴェルストーフスキイは、グリーンカ以前のロシア音楽を語る上で欠かすことのできない存在だが、彼の5作を数えるというオペラは、どれも聴く機会に恵まれないままだった。今回入手できた「アスコーリドの墓」は彼の代表作であると同時に、アメリカで上演された初のロシア歌劇でもあるらしい。

アスコーリドとはリューリクの家来でキエフを支配し、後に初代キエフ大公オレーグに殺害された人物で、その墓(と伝えられる場所)の上には現在、聖ニコラーイの教会が建てられている。と言っても、アスコーリドがこのオペラの題材となっているわけではなく、10世紀のキエフを舞台にした、王に誘拐・監禁されたヒロイン、ナデージダを若者が救出する冒険活劇とのこと。

抜粋版ということもあって、あまり楽曲の内容は気にせずに聴いたが、古典的なイタリア・オペラの書法に準じた佇まいは、いかにもグリーンカ以前のロシア・オペラだが、妙に哀愁のある旋律や和声進行など、後のロシア音楽を予感させるところは、たとえばパシケーヴィチやフォミーンとは一線を画している。後世の私達がロシア的だと感じる要素を、当時のアメリカ人がどのように感じたのか、興味のあるところだ。


話は変わるが、知人に誘われて、R. シュトラウスの歌劇「カプリッチョ」の前奏曲を演奏することになった。前奏曲単独では数枚の音盤を架蔵しているが、全曲は聴いたこともなかったので、この機会に入手してみた。

R. シュトラウス最後の歌劇に相応しく、全編通してとにかく美しい。中でも「月光の曲」は、私がこの世で最も美しい音楽だと思う曲だ。何が語られているのかが分からなくても、ただ音楽に身を委ねているだけで十分に満足できる。

とはいえ、「音楽が先か、詩が先か」という議論がこの歌劇の内容である以上、そうとばかりも言っていられない。歌詞や台詞もきちんと把握しておきたいところ。シュトラウスがクレメンス・クラウスと共同執筆したこの歌劇の台本は、しかし、言葉の量が多い。価格優先で輸入盤を選んだのを後悔している。地道に英語とドイツ語を読み解くより、DVDを入手して字幕に頼る方が早いかも。

前奏曲や月光の曲を単独で評価するならば、もちろんそれぞれに気に入っている演奏もあるが、このベーム盤は、ひとまず全曲盤として大きな不満を抱くようなことのない、水準の高い演奏である。まだ登場人物の性格を個別に把握していないので、歌手陣のそれぞれが適役かどうかは判断できないが、巧拙だけで言うならば、皆とても巧い。オーケストラも、楽曲の室内楽的テクスチャをよく整ったアンサンブルで見事に描き出している。

ただ、これは指揮者あるいは演奏者の個性なのかもしれないが、艶やかさに欠けるのが惜しい。あの戦争中に、しかも晩年を迎えていた老人が書いたとはとても思えないこの耽美的とすら言ってよい音楽は、いたずらに“枯淡の境地”で演奏されるべきではないと思う。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shchedrin,R.K. 作曲家_Verstovsky,A.N. 作曲家_Strauss,R.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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