ドルジーニンのソ連ヴィオラ曲集、ティーシチェンコの自作自演

  • ヴァーインベルグ:無伴奏ヴィオラ・ソナタ第1番、フリード:ヴィオラ・ソナタ ドルジーニン (Va) ムンチャン (Pf) (Melodiya 33 C 10-08249-50 [LP])
  • ティーシチェンコ:ピアノ・ソナタ第7番 ティーシチェンコ (Pf) ミハーイロフ (Bell) (Melodiya C10 20091 004 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの10月到着分。

ドルジーニンの剛毅な音は、私にとって理想のヴィオラの音だ。技術的な洗練度は既に二世代くらい前のものであるにせよ、その魅力は褪せることがない。イチローの凄さを同時代人として誇りに思いつつ、張本の古い映像に懐かしさと表裏一体の魅力を感じるようなものか。そのドルジーニンとほぼ同世代の作曲家による、ドルジーニン自身に献呈された2曲を集めたアルバムは、演奏家と作曲家の双方にとってその真価が十二分に発揮された聴き応えのある一枚である。楽曲としては、独特のテンションの高さが印象的なヴァーインベルグの方が面白いが、ショスタコーヴィチがヴィオラ・ソナタを書くきっかけとなったとも伝えられるフリードのソナタを、ショスタコーヴィチの自宅で弾いてきかせたドルジーニン&ムンチャンの顔合わせで聴くことができるのも、ショスタコーヴィチ愛好家にとっては非常に価値がある。


ティーシチェンコのピアノ・ソナタ第7番は、チューブラーベルが加わる編成が珍しいせいか、彼の作品中でもわりと知名度の高い一曲である。独特の音響ではあるが、この編成の必然性は今一つ分からない。とはいえ、ショスタコーヴィチのピアノ・ソナタ第1番を下敷きにしたように聴こえる楽曲そのものは、ティーシチェンコらしい瞑想的な曲調の中にも覇気が満ちていて、凡百のイロモノとは一線を画した内容がある。作曲家自身の演奏も見事なもので、リファレンスとして後世まで価値を持ち続ける録音だろう。

スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Weinberg,M.

ギレリス、ロジデーストヴェンスキイらによるソ連音楽

  • アレーンスキイ:ピアノ協奏曲 カプラン (Pf) ハーイキン/モスクワPO (Melodiya 33C 235-236 [10"mono])
  • カバレーフスキイ:ピアノ・ソナタ第2番、ヴァーインベルグ:ピアノ・ソナタ第4番 ギレリス (Pf) (Melodiya M 10-42715-D-07938 [LP])
  • ロクシン:交響曲第11番、アルティオーモフ:13人の協奏曲、グバイドゥーリナ:カンタータ「ルバーイヤート」 ソコレンコ (S) ヤコヴェンコ (Br) メシシャニノフ (Pf) ロジデーストヴェンスキイ/アンサンブル・ソリスツ (Melodiya C 10-15059-60 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの6月到着分。

アレーンスキイ最初期の作品であるピアノ協奏曲は、ショパンの第2番の影響を受けているという話を聞いたことがあったが、まさかこれほど似ているとは思わなかった。特に第2楽章などは、そのままである。とはいえ、甘美な旋律を彩る和声の煌めきにはアレーンスキイらしさが感じられ、単なる亜流として無視するには惜しい作品である。カプランの、幾分田舎臭さを残した武骨な演奏は、表面的な美しさの再現に留まらず、内なる情念を素直に表出していて好ましい。


ギレリスが弾いたソ連のピアノ・ソナタ2曲は、どちらも作曲家の個性が存分に発揮された佳曲であると同時に、ギレリスの音楽的な個性も色濃く投影された逸品である。これでもかと通俗的な楽想を、しかしもっともらしい雰囲気に仕立てて繰り出すカバレーフスキイ、民族的な熱狂を憚ることなく曝け出すヴァーインベルグ、重量感のあるメタリックな響きで猪突猛進するギレリス。好き嫌いが大きく分かれそうな強烈な個性を持った3人の音楽家の饗宴といった感じが楽しい。


ロジデーストヴェンスキイによる現代ソ連作品集は、ショスタコーヴィチをはじめとするソ連第1世代に続く第2世代の作曲家の内、知名度の高い3人の有名曲を集めた内容である。ロクシンは11曲の交響曲を残しているが、その最後となる第11番は、交響曲というにはややスリムな感じはするものの、主題と8つの変奏から成る管弦楽曲である。ソプラノ独唱の使い方が、とても美しい。「13人の協奏曲」は、アルティオーモフの出世作。前衛的な肌触りながらも、最終的にはカバレーフスキイやヴァーインベルグの狂乱に通じていく様が面白い。カンタータ「ルバーイヤート」も、グバイドゥーリナ初期の傑作の一つ。ライナーの情報からは、11世紀ペルシャの詩人ウマル・ハイヤームによる同名の四行詩集とどのような関係があるのか知ることができなかったが、タタール共和国生まれのアイデンティティを感じさせる標題であることは確か。自己の作風を確立しつつあった時期の作品だけに、後年の作品を想起させる響きの作りと、青臭いまでに前衛的であろうとする音楽の運びが興味深い。他の演奏を知らないので聴き比べのしようがないが、さすがにロジデーストヴェンスキイはいずれの曲もそつなくまとめあげている。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Arensky,A.S. 作曲家_Kabalevsky,D.B. 作曲家_Weinberg,M. 作曲家_Gubaidulina,S.A.

ポスト・ショスタコーヴィチを色々と

  • ヴァーインベルグ:シンフォニエッタ第1番、ペイコー:交響曲第4番 スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO (Melodiya 33D-018975-76 [LP])
  • ボイコ:グツール狂詩曲、カルパチア狂詩曲、ヴォルガ狂詩曲、ジプシー狂詩曲 A. コールサコフ (Vn) D. サーハロフ (Pf) スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO (Melodiya 249 012 [LP])
  • シチェドリーン:ポエトリア ヴォズネセーンスキイ (朗読) ズィーキナ (歌) グスマン/モスクワ放送SO & cho. (Melodiya 33 C 10-04943-4 [LP])
  • ティーシチェンコ:交響曲第3番、「スズダリ」 ブラージコフ/キーロフ劇場CO他 (Melodiya 33CM 01973-74 [LP])
  • ヒンデミット:室内音楽第3番(チェロ協奏曲)、ヴェーベルン:チェロとピアノのための3つの小品、デニーソフ:チェロとピアノのための3つの小品、グバイドゥーリナ:デットーII モニゲッティ (Vc) A. リュビーモフ (Pf) キタエーンコ/モスクワPO ニコラエフスキイ/室内管弦楽団 (Melodiya 33 C 10-10167-68 [LP])
  • リュリ:歌劇「カドモスとヘルミオネ」序曲、Jean Douay:Cour de Versailles sous Louis XIVより「序曲」と「踊り」、ショスタコーヴィチ:前奏曲、前奏曲とフーガ、ジョスカン=デ=プレ:モテットと王室ファンファーレ、ケミーベシュ:エピローグ フランス国立管弦楽団金管五重奏団 (Disques Corélia CC 78010 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、ルーセル:シンフォニエッタ、ゲンツマー:シンフォニエッタ ゾルテル (Pf) シュナッケンベルク (Tp) ゲルミニ/ゲルミニO (RBM 3024 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの12月到着分。

ヴァーインベルグのシンフォニエッタ第1番は、いかにも彼の初期作品らしくユダヤ風の民族舞踊が炸裂する、ハイテンションな音楽である。それでいて、それぞれに個性的な4つの楽章が一つの作品としてまとめられているところに、ヴァーインベルグの非凡さが窺える。こうした熱狂の奔流を振らせたら、スヴェトラーノフの右に出る者はそう多くない。

ペイコーはミャスコーフスキイの弟子でショスタコーヴィチの助手としてモスクワ音楽院で教鞭をとったこともある作曲家。8曲の交響曲が代表作とのことで、ここに収録された交響曲第4番も恐らくはペイコー中期の創作を代表する作品なのだろう。師匠ゆずりの渋い内省的な暗さと鋭い響きは、聴き手にも真摯に音楽と向き合うことを要求しているかのようであるが、その割には3つの楽章がいずれも似たような雰囲気で、全体に単調であるために聴いていて退屈する。


ボイコ(同じような名前で混乱しそうになるが)の狂詩曲集は、2009年11月13日のエントリーに記したように、ジャケットだけを先行入手した形になっていたもの。今回入手した音盤はオランダでプレスされたもので、ジャケットもラベルも別物である。

さて、ここに収録された4曲の狂詩曲は、作品番号からも分かるようにボイコのルーツであるウクライナの民族性(?)をテーマにした連作である。それぞれに「グツール(東カルパチア山脈に住むウクライナ人のこと)」、「カルパチア」、「ヴォルガ」、「ジプシー」といった明確な標題が与えられているが、描写音楽というよりはこれらの語から想起されるイメージを自由に謳い上げた音楽と捉えるべきだろう。独奏楽器の有無などの相違はあるが、基本的には4曲とも同じような音楽である。溢れんばかりの民族的な音調はどれも分かりやすく、華麗な盛り上がりと胸を打つ抒情とのバランスもよくとれている。いわば、典型的な社会主義リアリズムの作品と言ってよいのかもしれない。スヴェトラーノフはここでも見事な手腕を発揮しているが、逆に言えばスヴェトラーノフ以外の指揮でこれらの曲を聴いてみようという意欲は、申し訳ないが湧かない。


シチェドリーンの「ポエトリア」という作品は、寡聞にしてその存在すら知らなかった。「詩人のための協奏曲」という副題(?)の通り、ヴォズネセーンスキイの朗読を中心に、合唱と女声(ズィーキナ)を伴った管弦楽(響きは極めて室内楽的)がシチェドリーン独特の透明で鋭い音世界を繰り広げる。どのような背景で作曲されたのかは分からないが、意欲的な実験昨と言って良いだろう。ライヴ録音であるが、初演の記録かどうかは不明。いずれにせよ、朗読の比重が高いために再演の可能性はそれほど高くないかもしれない。詩の内容が分からないので、現時点では作品について云々するのは控えておきたい。


ティーシチェンコの交響曲第3番はE. フィッシャー/ムジチ・デ・プラハの音盤で知っていたが、フィッシャー盤のいかにも現代音楽風の冷たい肌触りに対し、今回入手したブラージコフ盤は小編成であることを感じさせないスケールの大きな歌が心に残り、聴後の印象は随分と異なる。どちらもこの作品の本質に迫った演奏だと思うが、ショスタコーヴィチの延長線上にあることを強く意識させるブラージコフ盤のロシア情緒は、僕の好むところ。

カップリングの「スズダリ」は、2008年12月15日のエントリーで紹介した録音と同一のものと思われる。


第5回チャイコーフスキイ国際コンクール(1974年)で第2位に入賞したモニゲッティのアルバムは、A面がドイツ、B面がソ連の(当時の)現代音楽で構成されている。技術的に確かな仕上がりで、いずれの曲もそのあるべき姿で鳴り響いているという安心感がある。ヴェーベルン風の簡潔な響きながらもロシアの香りが漂うデニーソフの小品もいいが、ウストヴォーリスカヤに通ずる音の強さが心に残るグバイドゥーリナの作品はより一層印象的である。


フランス国立管弦楽団の金管楽器奏者達による五重奏のアルバムは、編曲物を中心にオリジナル作品で締めるという。この編成ではよくある構成である。一昔前の世代ということもあってか、率直に言って技術的な水準は低い。また、これといった音色の特徴もないために、魅力を見出すのが難しい音盤であった。編曲自体はこの編成ならではの響きを生かしたものだが、リュリやジョスカン=デ=プレの曲はともかく、ショスタコーヴィチの2曲は明らかに技量不足で楽しめない。ケミーベシュの作品には、それほどの興味を抱けなかった。 


最後の一枚は、2008年8月15日のエントリーで紹介した音盤を誤ってダブり買いしてしまったもの。リストを「Shostakovich」で検索して反射的にオーダーしているせいで、極力注意をしているつもりでもこういった失敗はなくならない。認めたくはないが、歳のせいで記憶力が衰えてきているのかもしれない。気がつけば、今年は厄年である。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Weinberg,M. 作曲家_Peiko,N.I. 作曲家_Boiko,R.G. 作曲家_Shchedrin,R.K. 作曲家_Tishchenko,B.I. 作曲家_Denisov,E.V. 作曲家_Gubaidulina,S.A. 作曲家_Shostakovich,D.D.

社会主義リアリズム三昧

  • アレーンスキイ:交響曲第1番、組曲第1番 セローフ、イヴァーノフ/モスクワ放送SO (EMI ASD 3642 [LP])
  • フレーンニコフ:バレエ「軽騎兵のバラード」(組曲) フェドセーエフ/モスクワ放送SO (eurodisc 206 406-425 [LP])
  • カバレーフスキイ:カンタータ「わが祖国」、カンタータ「明日の歌 春と平和」、歌曲(学生時代、おやすみ、幸せ) キタエーンコ、カバレーフスキイ/モスクワPO 児童合唱団“春” (Melodiya C10 22421 000 [LP])
  • アルテュニャーン:トランペット協奏曲、クリューコフ:トランペットと管弦楽のための協奏的詩曲、ヴァーインベルク:トランペット協奏曲 ドクシーツェル (Tp) ロジデーストヴェンスキイ、ジュライティス/ボリショイ劇場O (Melodiya C10 02273 009 1968 [LP])
  • My Boundless Motherland(ドゥナエーフスキイ:祖国の歌、ホールミノフ:レーニンの歌、トゥリコフ:我ら、共産主義者、バスネル:労働者階級は行進する、ショスタコーヴィチ:E.ドルマトーフスキイの詩による4つの歌曲より「祖国は聞いている」、フレーンケリ:ロシアの曠野、ロシア民謡:カリーンカ、ノーヴィコフ:星に向かって、ロシア民謡:雪の山で、ポノマレーンコ:その歌は何処で聴けるの、ロシア民謡:行商人) (Melodiya 33CM-03745-6 [LP])
  • ディレーツキイ:Solemn Song「 Glorify the name of the Lord」、クレスチヤーニン:Befittingly、カラーシニコフ:12声部のコンツェルト「ヘルヴィームの歌」、ベレゾーフスキイ:Do not reject me in my old age、ボルトニャーンスキイ:ヘルヴィームの歌第7番、コンツェルト第24番「I lift up my eyes to the hills」、ヴェーデリ:コンツェルト第3番「How long, O Lord, how long wilt thou forget me?」 ユルローフ/ロシア共和国合唱団 (EMI ASD 3102 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番、ボロディーン:弦楽四重奏曲第2番 ブルガリアQ (Harmonia Mundi HMO 34.709 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの、11月到着分。ここ数ヶ月、何かとばたばたしていたせいか、LPに針を落とすのは久し振りのような気がする。

アレーンスキイの甘美な音楽は、グラズノーフと並んで僕の愛好するところだが、交響曲第1番も期待に違わぬ憂愁の旋律美に満ちた素敵な作品である。セローフのやや直情的な演奏も、作品の若々しい魅力を率直に伝えてくれる。カップリングの組曲第1番も同様だが、イヴァーノフに剛毅でスケールの大きな演奏を期待していただけに、よくまとまった普通の演奏ではあるものの、どこか肩透かしをくらった感じ。もちろん悪くはないのだが、この曲に関してはスヴェトラーノフ盤の方が良い。


フレーンニコフの「軽騎兵のバラード」は、スヴェトラーノフお得意のアンコール・ピースでもある「アダージョ」しか聴いたことがなかった。できれば全曲盤が欲しいところではあったが、この組曲(編者は分からなかった)も20曲が抜粋されているので、とりあえずは良しとしよう。誰もが口ずさめるような分かりやすく平易な旋律に、大仰で華やかなオーケストレイション、程よく民族臭が散りばめられた和声とリズムなど、まさに「社会主義リアリズム」の極致と言っても構わないだろう。こういう曲をやらせたら、フェドセーエフは天下一品だ。


カバレーフスキイの児童合唱用の作品集も、「社会主義リアリズム」のお手本のようなアルバムだ。2曲のカンタータは、一聴しただけでは明確に区別できないほど曲調や構成などがよく似ている。音楽史上にその名を轟かせるような作品ではないが、ソ連音楽のある時代の特徴が凝集した作品と言うことはできるだろう。カバレーフスキイ自身が伴奏をした3つの歌曲は、映画音楽や劇音楽などからの抜粋なのか、元から児童合唱用に作曲されたものなのか定かではないが、伴奏のオーケストレイションも含めていずれも魅力的な小品である。


ドクシーツェルが独奏を務めた現代ソ連トランペット協奏曲集は、彼のアルバムがいつもそうであるように、ドクシーツェルの圧倒的な名技を堪能すべき内容。有名なアルテュニャーンの協奏曲は言うまでもなく、クリューコフの幾分地味な作品でも、ドクシーツェルの華麗な音楽が惜しげもなく繰り広げられる。とはいえ、このアルバムのメインはヴァーインベルクの協奏曲だろう。ショスタコーヴィチ風の瞑想から民族色が暴発し続ける狂喜乱舞まで、ヴァーインベルグの音楽の諸相を適切に音化しつつも、その全てをドクシーツェル色に染めてしまう音楽性と個性の強烈さが素晴らしい。


恐らくはソ連時代の愛国歌集と思われるアルバムが、リストの中にあった。そこにショスタコーヴィチの名前が挙がっていたので、既に架蔵済みの音源である可能性が高いと思いつつもオーダーしてみた。届いた現物を確認してみると、「My Boundless Motherland(広大なる我が祖国)」というタイトルで、アエロフロート社50周年を記念して制作・頒布されたアルバムであった。雰囲気から察するに国外からの旅行者を対象としているようだが、搭乗者全員に無償で渡されたのか、それとも機内販売のような形で希望者だけが購入したものなのかは判然としない。それはともかく、ソ連大衆歌曲の粋を集めた内容は、単なるお土産の域を超えている。イヴァーン・ペトローフの雄大極まりない「祖国の歌」の名唱に、「リェエーニィイーン」の甘美な連呼が次第に理性を蝕んでいく「レーニンの歌」と続く最初の2曲で、ソ連大衆歌曲の世界が畳みかけるように聴き手の心身を縛り付けてしまう。残念ながら目当てのショスタコーヴィチは、ガガーリンが宇宙で歌ったとされる「祖国は聞いている」の有名な録音で、予想通りの結末であったが、いかにもな愛国歌が並べられたA面の威力は相当なものである。一方のB面は、映画音楽などの大衆歌謡と古典的なロシア民謡とが交互に並べられた構成。とりわけ憂愁のロシア情緒が惜しげもなく垂れ流される歌謡曲は、抗い難いほど魅力的だ。映画「小悪魔たちの大冒険」(1969年)の挿入歌「ロシアの曠野」のグリャーェフ、「星に向かって」のズィーキナ、「その歌は何処で聴けるの」のヴォローネツといった、当時のソ連で人気のあった歌手達の雰囲気豊かな歌唱も素晴らしい。音源の選択が実に絶妙なアルバムだ。



映画「小悪魔たちの大冒険」より
Новые приключения неуловимых
フレーンケリ:ロシアの曠野
グリャーェフ(歌)
ノーヴィコフ:星に向かって
ズィーキナ(歌)
ポノマレーンコ:その歌は何処で聴けるの
ヴォローネツ(歌)


濃厚なロシアの香りを堪能した後のクールダウンに、17~8世紀のロシア聖歌集というのは、期せずして良い選択となった。ボルトニャーンスキイ以外は今まで名前しか知らなかった作曲家ばかりで、各々の個性を明確に把握するには至らないものの、資料として十分に価値がある。ただ、ユルローフ/ロシア共和国合唱団の演奏が楽曲の時代様式をどれほど踏まえているかには疑問が残る。もちろん、いわゆるヒーリング・ミュージック風の聴き易さに文句を言うつもりはない。


ブルガリアQのショスタコーヴィチは、ディモフQ名義の架蔵済みLP(Columbia OS-2901-HA)と同一音源。技術的な怪しさはあるものの、それほど悪くない演奏である。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : USSR大衆歌曲 作曲家_Arensky,A.S. 作曲家_Khrennikov,T.N. 作曲家_Kabalevsky,D.B. 作曲家_Weinberg,M. 演奏家_Dokschitzer,T.A. その他_正教会

ミャスコーフスキイ:交響曲第23番/ヴァーインベルグ:ピアノ五重奏曲

  • ミャスコーフスキイ:交響曲第23番、シチェドリーン:交響曲第1番 コヴァリョーフ/モスクワ放送SO アノーソフ/モスクワPO (EMI ASD 2927 [LP])
  • ヴァーインベルグ:ピアノ五重奏曲 ヴァーインベルグ (Pf) ボロディーンQ (Melodiya C 0667-668 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から届いた後、一ヶ月以上も未聴のまま放置してしまった。

ミャスコーフスキイの交響曲を知ろうとするならば素直にスヴェトラーノフの全集を買えばいいのだが、一度に27曲を聴き通す気力もなく、当面は単品を見かけた折りに買い求めていくというスタンスを変えるつもりはない。そもそもスヴェトラーノフ以外で全27曲が揃うのかどうかは知らないのだが、とりあえず今回は第23番を手に入れた。

基本的には平明な曲調でありながらも、暗く淀んだ陰影を持つ和声が、いかにもミャスコーフスキイといったところ。とりたてて印象に残るような箇所はないので、実演で聴くよりも、部屋でリラックスしながら雰囲気に浸るような聴き方の方が向いているように思われる。マスタテープに撚れでもあるのか、途中で大きく乱れる録音は残念だが、雰囲気豊かな演奏は悪くない。

カップリングのシチェドリーンは、2010年11月15日の記事で紹介したものと同一音源。


ヴァーインベルグのピアノ五重奏曲は、2009年12月17日の記事で紹介したコーペリマンQの映像で初めて聴き、気に入っていた作品である。作曲家とドゥビーンスキイ時代のボロディーンQによる録音がリストに挙がっていたので、迷わずオーダー。

この顔ぶれに誰もが期待するであろう通り、非の打ち所のない名演である。何かに取り憑かれたようなテンションの高さを真正面から受け止め、芝居がかっているとすら感じられるほどの大きな身振りで劇的に仕上げられた音楽は、まさしくこの作品の理想的な姿であろう。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Myaskovsky,N.Y. 作曲家_Weinberg,M.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
01 | 2017/02 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター