【録画】NHK交響楽団 第1662回定期公演

  • チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲、ヤナーチェク:グラゴル・ミサ デュトワ(指揮) シュタインバッハー (Vn) ディーナー (S) コロヴァー (A) オニール (T) ペトレンコ (B) 東京混声合唱団 (2009.12.11 録画 [NHK BS-2(2010.1.15)])
  • BS特集:“和解”へのハーモニー ~“バルカン室内管弦楽団”の挑戦~ (録画 [NHK BS-1(2010.1.16)])
2009年12月のNHK交響楽団定期公演から、1月14日の記事で紹介したAプロに続き、Cプログラムの初日がNHK BS-2で放送された。もちろん、ヤナーチェクが目当てである。

だが、“前座”のチャイコーフスキイがとても素晴らしい演奏で、いわば嬉しい誤算といった感じ。アラベラ・美歩・シュタインバッハーの演奏は、以前ショスタコーヴィチの協奏曲のCDを聴いたことがあるが(2009年1月10日の記事)、その時の印象は「単にきちんと弾いているだけのつまらない演奏」といったような、かなり否定的なものであった。しかし、このチャイコーフスキイはそれに留まらない、傑出した美演と深く感銘を受けた。まず、コンクールのように特別な機会以外で、この作品を隅々まで丁寧に弾き切る演奏というのは滅多に耳にすることがない。彼女の演奏は、たとえば第1楽章の終結部を聴けば分かるように、本当に丁寧に、余計な力みもなく、終始清潔かつ美しい、洗練された響きを奏で続けていた。前述したショスタコーヴィチとの印象の違いは、作品との相性なのか、経験を重ねた彼女の精進の成果なのか、よくわからないが、ともかく、このチャイコーフスキイは素晴らしかった。テレビで聴いただけでは楽器の鳴りまで判断できないが、清潔な音色と音楽性は、この協奏曲が持つ嫌味を見事に払拭していた。オーケストラは、伴奏としては立派な出来。もう少し色々とできそうな気はするが。

メインのヤナーチェクは、これはもう、実演の映像を視聴できただけでも満足。聴いていた時の想像以上に複雑なテクスチャに圧倒されつつも、個性的な美しさと壮麗さを堪能することができた。アンサンブルには細かい綻びも皆無ではなかったが、聴かせどころを的確に踏まえた堅実な演奏は、この作品の魅力を伝えるには十分なもの。もっとも、終演後の拍手はどうにも締まらず、聴衆がこの作品に戸惑いも感じていたことが窺えた。あまりこだわるべきポイントではないのだろうが、やや興醒め。

2009年12月10日の記事で触れた柳澤寿男先生のコソボでの活動が、別のドキュメンタリー番組で紹介された。今回のドキュメンタリーは、BS Japanの番組の最後に登場したバルカン室内管弦楽団(現段階では弦楽合奏団のようだが)の来日公演を中心とした構成になっていた。先生は随分痩せられていて健康が心配ではあるが、エネルギッシュな指揮ぶりと口調は相変わらず。まだまだアンサンブルの水準は低く、日本で全国行脚しても興行が成立するとは思えないが、そう遠くない将来、音楽的な進歩を遂げて、関西でも演奏会が実現することを心から願う。
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戦場に音楽の架け橋を:柳澤寿男先生のこと

  • 戦場に音楽の架け橋を~指揮者 柳澤寿男 コソボの挑戦~ (録画 [BS Japan(2009.11.21)])

かぶとやま交響楽団の第27回および第29回定期演奏会に客演していただいたのをきっかけに、親交を持たせていただいている柳澤先生のドキュメンタリーを観た。BSジャパンの番組HPを見ると、どうやら今回は再放送だったようだが、普段BSやCSのドキュメンタリー系の番組はほとんどチェックしていないだけに、放送予定を見つけて録画できたのは奇跡といってよいかもしれない。

柳澤先生を初めて知ったのは、上述した演奏会で一緒に演奏させていただいた時のこと。それまでは、存在すら知らなかった。その後、岡谷市のカノラータ・オーケストラの第1回定期演奏会(2002年10月5日)にエキストラとして呼ばれて弾いたこともあり、これら計3回が柳澤先生の棒で演奏した全てである。

アマチュアというのは身勝手なもので、自分はロクに弾けもしないくせに、呼んだ指揮者には遠慮会釈なくケチをつけたりする。その是非はさておき、練習から本番に至るまで、さしたる不満を抱かずに演奏できることは、やはりそうめったにあるものではない。柳澤先生とは、そのめったにない経験をすることができた。僕は、本番よりも練習の密度の濃さの方をより強く求めるのだが、柳澤先生の練習はまさに僕が求める細かさで、しかも妥協がない。一つ一つの約束事を徹底し、丁寧に確認しながら積み上げていく音楽作りの過程も、まさに自分自身が目標としているもので、毎回の練習が本当に楽しかった。もちろん、そういうやり方に不満を持つ奏者がいたこともまた事実で、それこそがオーケストラの難しさなのだろう。

練習後に酒を飲んだり、何の前触れもなく電話がかかってきたりしたこともあったが、いつでも、僕は先生のバイタリティに圧倒されていた。先生がバルカンでポストを得て旅立って行った時、ありきたりの(それを否定するつもりは毛頭ない)キャリアを積み重ねるのよりは、ずっと先生らしいと思った。その後、年賀状以外はすっかり無沙汰していたが、異国の文化を全身で受け止め、忙しくも充実した日々を送っているのだろうと、勝手に想像していた。

旧ユーゴスラビアの悲劇については、それなりに関心もあったので、ある程度の知識は持っていたつもりだった。しかし、それはやはりただの知識でしかなく、たとえば、国立のオーケストラといいながら、奏者が弾いている楽器が粗悪なもの――日本ではアマチュアでももうちょっとマシな楽器を持っている――しか揃っていないという、その生活水準に愕然とする。劣悪な生活環境、一触即発の治安……ただ生きていくだけでも過酷な中で、音楽をやり続けるということの凄まじさ。画面に映し出された柳澤先生の生き様は、実は僕より1歳だけ年下な彼が、僕にとっては紛れもなく“先生”なのだということを、この上ないほど力強く物語っていた。

先生のより一層のご活躍と、何よりも安全とご健康を祈念したい。

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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