とりとめもなく…

  • ハイドン:弦楽四重奏曲集「プロシャ四重奏曲」 東京Q (DG POCG-2790/1)
  • メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲、シェーンベルク:浄夜 バルトークQ他 (Hungaroton HCD 31351)
  • ブラームス:8つのピアノ曲 作品76、2つのラプソディ 作品79、幻想曲集 作品116 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70664)
  • ブラームス:3つの間奏曲 作品117、6つのピアノ曲 作品118、4つのピアノ曲 作品119 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70665)
  • リームスキイ=コールサコフ:交響組曲「シェエラザード」、ボロディン:中央アジアの草原にて、バラキレフ(リャプノフ編):イスラメイ ゲールギエフ/キーロフO (Philips 470 840-2)
昨日取り出した東京Qのハイドンを、改めて全部聴き直した。僕は、ハイドンの弦楽四重奏の緩徐楽章が持つ泥臭い感傷性が大好き。それはこの作品50の数曲にもあって、それをまた原田幸一郎が実に泥臭く歌い上げている。日本人的な歌の感覚に共感しているのかもしれないけれども、模範的なアーティキュレーションや品の良いアンサンブルのおかげで、単なる演歌に陥ってはいない。

こういう泥臭さは、ハンガリーの団体にも感じることが多い。バルトークQは中でも好きな団体だが、メンデルスゾーンの八重奏曲を収めた一枚は、曲の良さとも相まって彼らの美質が存分に発揮された仕上がりになっている。8人全員が本当に気持ち良さそうに、伸び伸びと歌っているという点で、この演奏は傑出している。同質の楽器による八重奏ということでバランスの取り方が難しいところだが、この演奏は表面を整えることではなく、全員がしっかりと音を出して歌いきることで結果的に望ましいバランスを得ているのが特徴的。このことで、対位法的な絡み合いが、全体の熱気溢れる大きな流れの中で理想的に響いている。しかも、いわゆる室内楽的な親密感やまとまりは失われている。この曲を弾いたことがある人なら誰でも経験しただろう高揚感や満足感を彷彿とさせてくれる名演。シェーンベルクも同様。ただ、完全に後期ロマン派な演奏だけに、こちらは人によって趣味が分かれるかもしれない。

今、ボリソフ著の「リヒテルは語る 人とピアノ、芸術と夢」を読んでいるのだが、そこにブラームスのピアノ曲がいくつか出てくる。リヒテルの本にネイガウスやヴェデルニコフの演奏というのは、いかにも重い組み合せなので、今日はレーゼル盤全集の中から、先週聴かなかった後期の2枚を一気に。ブラームスのピアノ曲については先週何度も書いたし、BGMがてら聴いていたこともあるので今日は特にコメントせず。時に力任せになるものの、レーゼルの演奏からはブラームスの魅力が素直に伝わってくる。本当に素晴らしい曲だ。

日曜日の練習後、家まで送ってくれたYさんの車の中で聴いて好印象を持った、ゲールギエフの「シェエラザード」を昨日購入した。正直、この曲に2000円以上の投資をするつもりはなかったのだが、昨年非常に話題になったディスクでもあるし、最新録音を1枚くらい持っていてもいいだろうとこの度ようやく入手したもの。すごく巧い演奏だなぁ、というのが感想。まず技術的な精度が素晴らしい。特に管楽器の音色もインターナショナルなロシアン・サウンドといった感じで聴きやすくまた十分に魅力的。この曲、同じような旋律を延々と繰り返しているだけの側面もあって、どうしても退屈してしまうのだが、それを感じさせないゲールギエフの指揮も巧い。各楽器のソロの生かし方も優れている。早めのテンポで颯爽とまとめあげながらも、時々はったりをかますゲールギエフの特徴が良い形で表れた演奏だと思う。併録のボロディンとバラキレフも同様。ま、でも、これは好き嫌いがわかれるだろうな。僕は結構好き。

今日は結構とりとめもなく聴いたな。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_東京Quartet 演奏家_BartókQuartet 演奏家_Rösel,P. 演奏家_Gergiev,V.A. 作曲家_Haydn,J. 作曲家_Brahms,J. 作曲家_Rimsky-Korsakov,N.A.

引き続きブラームスとシューマン

  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、3つの間奏曲 作品117、6つの小品 作品118 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83657)
  • ブラームス:ピアノ五重奏曲 P. レーゼル (Pf) ブラームスQ (Deutsche Schallplatten 32TC-32)
  • ブラームス:ピアノ五重奏曲、ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲より第2楽章 レオンスカヤ (Pf) アルバン・ベルクQ (EMI CE33-5400)
  • シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲 P. レーゼル (Pf) ゲヴァントハウスQ (Deutsche Schallplatten 32TC-132)
  • シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲 デムス (Pf) バリリQ (Westminster MVCW-19027)
まずは昨日の続き。ヴェデルニコフによるブラームスの作品117と118を聴いた。これはしかし、もの凄い演奏だなぁ。これらの曲集がこんなに多彩な世界を持っていたとは。各曲が絶妙のバランスで自立していて、身動きしただけで崩れてしまいそうな純度の高い繊細さを持っている。音符はその場に静止しているだけなのに、そこから歌が溢れ出してくるような感じ。しかも、曲集としてのまとまりまで感じられる。ネイガウスも凄いが、作品118は第2曲だけだし作品119も2曲のみの抜粋ということで、この点に関してはヴェデルニコフと比較しようがない。6月11日の当欄ではヴェデルニコフのブラームスについてあまり肯定的ではないような感想を書いたが、あれは曲の問題だったんだろうな。この一枚について言えば、これ以上の演奏は考えられないと言いたくなってしまう。そう言いながらもアファナシェフ盤を聴いたらまた同じようなことを言いそうだけど。

ブラームスとレーゼルつながりで、ふとピアノ五重奏曲の録音があったことを思い出した。渡辺学而氏だったか誰だったか忘れたが、僕が高校生だった頃の「音楽現代」誌のブラームス特集で同じレーゼルのピアノ独奏曲全集と一緒にこの録音を誉めていたような記憶がある。で、この演奏だが、これはもうひたすら勢いのとまらないレーゼルを楽しむためのもの。ドレスデン・シュターツカペレの首席奏者による団体というブラームスQは、完全に力不足。雰囲気はいいんだけど。第1楽章の展開部なんて、奔放なレーゼルの魅力全開といった趣き。

そこで今度は弦楽器を楽しもうとアルバン・ベルクQ盤を取り出してみた。これは、自分の小遣いで買ったごくごく初期のCDなので懐かしい。確か高校3年生の冬のことだったと思う。CDがまだ全部で10枚もなかった頃。この頃のABQは、本当にいいなぁ。たぶんピヒラーがまだガダニーニに持ち替える前の時期で、冒頭から癖のあるフレージングなんかがいかにもピヒラー節なんだけれども、それがまだ自然さを持っている。90年代に入ってからは急速に、作為的で人工的な節回しが強くなってしまったから。今や“円熟の境地”などと言われているが、誰が何と言おうと彼らの全盛期は80年代中頃だと思う。G. シュルツじゃなくてメッツェルの方が、カクシュカじゃなくてバイエルレの方が良かったという人も少なくないだろうが、良くも悪くもこの団体のスタイルが確立したのは、この時期だろう。そういう部分が、ブラームスの第3楽章によく表れていると思う。圧倒的なアンサンブル能力を駆使した、単位時間あたりの変化量が極めて大きい音楽作りは、まさに彼らならではのもの。レオンスカヤとの相性も実に良い。アンコールのドヴォルザークは、ピヒラー節が全開でファンとしてはたまらない。ドヴォルザークの全曲がこの時期にこの顔合わせで録音されなかったことが残念でならない。

レーゼルつながりで、今度はシューマンの作品44と作品47を聴いてみる。こちらはズスケ時代のゲヴァントハウスQなので、ブラームスQのような不満はない。が、逆にズスケががちがちに締め付けてしまったのか、レーゼルがすっかりおとなしい。これじゃ、全くもってつまんない。いかにもドイツ風の響きはいいんだけどね。

五重奏曲の方は録音も結構あるから選択肢があるが、四重奏曲の方はあまり目ぼしいものがない。だから、いつも結局バリリQ盤を聴くことになる。これは大学2回生になる春頃に、京都の河原町今出川にある「つだちく」という店の中古LPコーナーで見つけて初めて聴いた演奏。この店、良心的なのか相場を知らないのか、当時ウェストミンスター盤は全くCD化されてなくて、まさにバリリQのベートーヴェン全集やウラッハの一連の録音、ウィーン・コンツェルトハウスQ他のモーツァルト全集が初CD化されようとしていた時期なのに、1000円そこそこで買った記憶がある。で、初めて聴いたピアノ四重奏曲の第3楽章の美しさに惚れ込んで、その年の4月にあった京大音研の新歓演奏会で弾いたのは懐かしい思い出。演奏については、今さら何を言う必要もないだろう。これが音楽だとしか言いようのないフレージング、高貴な優しさに満ちた音色。何度聴いても、初めて聴いた時の感激を思い出す。

それにしても、今日聴いたディスクの内3枚は1枚3200円とかいう大昔の値段。まだ消費税がなくて物品税だった頃なんだな。消費税導入後は3008円(税抜き2920円)とかいう小さい紙が貼り付けてあったことを思い出した。懐かしいな。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Vedernikov,A.I. 演奏家_Rösel,P. 演奏家_AlbanBergQuartet 演奏家_BarylliQuartet 作曲家_Brahms,J. 作曲家_Schumann,R.

ロシア・ピアニズム名盤選とブラームスのピアノ曲(続き)

  • ショパン:ピアノ協奏曲第1番、スクリャービン:ピアノ協奏曲 H. ネイガウス (Pf)他 (Denon COCQ-83663)
  • ブラームス:自作の主題による変奏曲、ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、パガニーニの主題による変奏曲 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70663)
  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、3つの間奏曲 作品117、6つの小品 作品118 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83657)
昨日に引き続き、今日もピアノばかり。まずは、リヒテルが誉めていたネイガウスによるショパンの協奏曲を。これは、8月にかぶとやま交響楽団のお仕事で伴奏をすることになっている曲でもあり、少し前に購入して一度聴いていたもの。特筆すべきはガウクが指揮するオーケストラの下手糞さ、と言ったら怒られるか。一瞬、自分達の記録録音を聴いているような錯覚に襲われた。それはともかく、ここでのネイガウスは剛毅な感傷性とでもいった歌心で魅了してくれる。音符の数がやたらと多いのに、その全てを歌いきっているのが凄い。しかも、端正な佇まいを崩さずに。スクリャービンは好きな曲ではないが、ゴロヴァーノフの伴奏ともどもハマりまくり。確かに録音状態は酷いが(1946年)、少なくとも僕にとってこの曲はこの一枚があれば十分。

次に、レーゼルによるブラームスのピアノ独奏曲全集から、昨日ヴェデルニコフで聴いたパガニーニ変奏曲を収録した一枚を聴いてみた。若々しい勢いの良さが心地よい。堅実な技巧と僕好みの重厚で切れ味鋭いタッチで、衒いのない音楽が奏でられている。レーゼルはモスクワでバシキーロフに師事したらしいが、ロシア仕込みのテクニックを持ったドイツ人という点ではH. ネイガウスに通じるものを感じないわけでもない。さすがにネイガウスと比較するには一本調子に過ぎるが、淀みのない音楽の流れだけでこの長大な変奏曲を一気に聴かせてしまう音楽性は賞賛に値するだろう。実に爽快。

で、今度はヘンデル変奏曲をヴェデルニコフの演奏で聴いてみた。まず主題が実に良い。フレージングも響きも、こうでなければならないと言いたくなるような完璧さ。この変奏曲を支配する対位法的なテクスチャが見事に整理され、気品に溢れた壮大さを呈している。最後のフーガは圧巻。音楽的な完成度がレーゼルとは段違い。荘厳過ぎて何度も繰り返し聴く気にはあまりならないが。

時間がなかったので、後は作品118の2だけを聴いて、残りは明日以降にまわす。これも本当に良い演奏だと思う。まぁ、大好きな曲だけに大抵の演奏でも満足してしまうんだけど。昨日聴いた極めて人間的なネイガウス盤とは違って、ゆったりとしたテンポで突き放したような冷たさを感じるのに胸が締め付けられるという不思議な印象。適切なフレージングと気品のあるルバート以外には特に歌っていないように聴こえるのに、和声進行そのものが濃厚な歌になっている。そんじょそこらの“楽譜通り”の演奏では達することのできない境地。

実に心に染みる素晴らしい音楽を聴いた。いい夢が見られそう。

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genre : 音楽

tag : 演奏家_Neuhaus,H.G. 演奏家_Vedernikov,A.I. 演奏家_Rösel,P. 作曲家_Brahms,J.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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