ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番(モスクワ初演)

  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番、ゴルベフ:チェロ協奏曲 ロストロポーヴィチ (Vc) ガウク/モスクワPO スヴェトラーノフ/モスクワ放送SO (Moscow Conservatoire SMC CD 0029)
  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番(with コンドラーシン)、チェロ協奏曲第2番、チェロ・ソナタ、チェロ協奏曲第1番(with ガーウク) ロストロポーヴィチ (Vc) ショスタコーヴィチ (Pf) コンドラーシン/チェコPO スヴェトラーノフ/プラハSO ガーウク/モスクワPO (Supraphon SU 4101-2)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、祝典序曲 ペトコフ/プロヴディフPO (Balkanton BCA 10212 [LP])

あてどもなくネットを彷徨っていたら、リリース時にチェックして以来、すっかり忘れていたアルバムを発見。Tower Records Onlineでしか見当たらない音盤があったので、いまさらながら初めて利用してみた。

目当ては、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番のモスクワ初演ライヴ。モスクワ音楽院とスプラフォンの2種類があり、どちらも“初出”を謳っているので、確認がてら両方をオーダー。

まず、収録内容について整理しておこう。ロストロポーヴィチが弾いたショスタコーヴィチの協奏曲には数多くのライヴ録音があり、それぞれが複数のレーベルから雑然とリリースされているために、今回のように確認作業をしなければならないことも少なくない。面倒なだけであまり楽しくはないこの作業、本当はできるだけ回避したかったのだが、この種の情報がすぐに見当たらなかったため、やむを得ずに確認した結果は、以下の通り:
  • リリースはモスクワ音楽院盤の方が先(マルPから判断)。
  • モスクワ音楽院盤とスプラフォン盤のモスクワ初演とされる音源は同一。ただし、終演後の拍手(に含まれる歓声)は異なり、私の感覚では前者の方で編集が行われているようだ。
  • モスクワ音楽院盤は「10月9日」、スプラフォン盤は「10月6日」の収録と記載されているが、ヒュームのカタログではモスクワ初演は「10月9日」となっている。
  • スプラフォン盤に収録されているコンドラーシンとのライヴ録音は、20年近く前にIntaglioレーベルから「INCD 7251」としてリリースされた音盤に収録されている演奏と同一。
  • 作曲者と共演したチェロ・ソナタは、有名な録音。
  • スヴェトラーノフとの第2番は、初出音源。
“初出音源”が売りのわりに1曲しか初出がないというのは微妙な感じもするが、おそらくはスプラフォンの制作スタッフがモスクワ音楽院盤やintaglio盤のことを知らなかっただけだろうし、モスクワ音楽院盤がHMV ONLINEAmazonでは見当たらないこともあり、ショスタコーヴィチ作品にのみ関心があるのならば、スプラフォン盤を入手すれば十分だろう。かつてのRevelation盤(RV10087)のように第2番の代わりに全く違う曲(ロペス=グラーサの室内協奏曲;2013年6月9日のエントリーにある録音と同一)が入っていたりするわけではないので、特に問題はない。

さて、第1番のモスクワ初演ライヴだが、辺り憚らぬ鼻息だけでもロストロポーヴィチの凄まじい気合は明らか。ただ、基本的なテンポ設定などはこの一か月後に行われたオーマンディとのスタジオ録音とほぼ同じであり、全体の印象はむしろ落ち着いている。ガーウクの指揮に問題があるのか、リズムが鈍重で諧謔味に欠けるのが残念。ティンパニの打ち込みも守りに入ったような大人しさが物足りない。終盤でアンサンブルに若干の乱れが見られるが、ライヴということを考えれば許容範囲内。

これに比べると、翌年の「プラハの春」で演奏されたコンドラーシンとの共演の方が、音楽的には断然面白い。ただ、オーケストラは結構よれよれ。

正真正銘“初出音源”であるスヴェトラーノフとの第2番も、初演翌年のライヴ録音である。初演を担当した2人による演奏だけに、音楽の運びは確信に満ちているが、残念なことにオーケストラの水準が低過ぎる。第3楽章の崩れ方を聴くに、オーケストラをフォローするだけで精一杯といった感じで、部分的には味わい深い音楽も聴かれるものの、全体としては録音で繰り返し鑑賞するのは少々辛い。

チェロ・ソナタについては、改めて言及する必要はないだろう。いまだに同曲の最良の演奏である。

モスクワ音楽院盤のカップリングは、フレーンニコフやシニートケを師事したことでも知られるゴルベフの作品。プロコーフィエフの協奏交響曲の影が見え隠れする音楽で、強い個性は感じられないが、当時のソ連音楽の流行を反映しているという点で興味深い。


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Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からも、6月オーダー分の1枚が届いた。

ブルガリアを代表する指揮者でありヴァイオリニストのペトコフによるショスタコーヴィチ。野趣溢れる素朴で武骨な響きで奏でられる第1楽章はなかなかに味わい深いが、第2楽章以降は技術的な問題に起因するリズムの悪さが目立ち、残念ながら十分に楽しむことができない。祝典序曲も同様の仕上がりなのだが、コーダでバンダが加わった時のオルガンのような響きは実に魅力的である。

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ロストロポーヴィチ・ソヴィエト・レコーディングス

  • Rostropovich The Russian Years 1950-1974 (EMI 7243 5 72016 2 9)
2月9日のエントリーの続き。購入してから半年が過ぎてしまったが、最後の1点は、「ロストロポーヴィチ・ソヴィエト・レコーディングス」(13枚組)。ショスタコーヴィチ作品が収録されたCD4とCD10、およびピアソラ作品が収録されたCD13は既に架蔵済みだが、聴いたことのない作品も数多く収録されていることもあり、せっかく見かけたのだから…と、この機会にBOXを購入。各巻の内容は以下の通り:
【CD1:小品集】
ストラヴィーンスキイ:歌劇「マヴラ」より「ロシアの歌」(デデューヒン (Pf) 1960年12月11日)
ストラヴィーンスキイ(ロストロポーヴィチ編):バレエ「妖精の口づけ」より「パ・ド・ドゥ」(デデューヒン (Pf) 1960年12月11日)
スクリャービン(ピアティゴルスキイ編):練習曲 作品8-11(ヤンポーリスキイ (Pf))
ミヨー(ロストロポーヴィチ編):「ブラジルの思い出」より第8曲「ティジュカ」(デデューヒン (Pf) 1960年12月11日)
ファリャ(ピアティゴルスキイ編):バレエ「恋は魔術師」より「火祭りの踊り」(デデューヒン (Pf) 1960年12月11日)
ドヴォルザーク:「森の静けさ」(ヤンポーリスキイ (Pf))
R. シュトラウス:「4つの情緒のある風景」より第2曲「寂しい泉のほとり」(ヤンポーリスキイ (Pf))
シンディング:組曲第1番イ短調「古い様式で」より「プレスト」
フォーレ(カザルス編):夢のあとに(デデューヒン (Pf))
ドビュッシー(ローレンス編):ベルガマスク組曲より第3曲「月の光」(デデューヒン (Pf))
ドビュッシー:夜想曲とスケルツォ(デデューヒン (Pf) 1968年11月11日)
シャポーリン(クバツキイ編):ロマンス「君を見る」(ヤンポーリスキイ (Pf))
ポッパー:「妖精の踊り」(デデューヒン (Pf))
シューベルト(ハイフェッツ/ロストロポーヴィチ編):即興曲 D.899(デデューヒン (Pf))
プロコーフィエフ:バレエ「シンデレラ」より「アダージョ」「ワルツ~コーダ」(デデューヒン/ジブツェフ (Pf))
プロコーフィエフ:歌劇「3つのオレンジへの恋」より「行進曲」(ジブツェフ (Pf))
ヘンデル:ソナタ ニ長調より「ラルゲット」(デデューヒン (Pf))
シャポーリン:エレジー(ヤンポーリスキイ (Pf))
シャポーリン:スケルツォ 作品25-5(アミンタェヴァ (Pf))
【CD2:ベンジャミン・ブリテンの作品】
無伴奏チェロ組曲第1番(1966年2月15日)
無伴奏チェロ組曲第2番
チェロ交響曲(ブリテン/モスクワPO 1964年3月12日)
【CD3:セルゲーイ・プロコーフィエフの作品】
チェロ・ソナタ(リヒテル (Pf) 1950年3月1日)
交響的協奏曲(グスマン/ソヴィエト国立SO 1972年12月27日;ロジデーストヴェンスキイ/ソヴィエト国立SO 1964年2月25日)
チェロと管弦楽のためのコンチェルティーノ(ロジデーストヴェンスキイ/モスクワ放送SO 1964年5月13日)
【CD4:ドミートリイ・ショスタコーヴィチの作品】
チェロ協奏曲第1番(ロジデーストヴェンスキイ/モスクワPO 1961年2月10日)
チェロ協奏曲第2番(スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO 1967年9月25日)
【CD5:ボリース・チャイコーフスキイの作品】
無伴奏チェロ組曲(1961年11月5日)
チェロ、ピアノ、ハープシコード、エレクトリックギターと打楽器のためのパルティータ(デデューヒン (Pf) B. チャイコーフスキイ (Cemb)他 1967年1月10日)
チェロ協奏曲(コンドラーシン/モスクワPO 1966年9月4日)
【CD6:ロシア以外の作品】
ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第1番より第2曲「プレリュード」(1962年2月6日)
レスピーギ:アダージョと変奏(コンドラーシン/モスクワPO)
オネゲル:チェロ協奏曲(ドゥブロヴスキイ/ソヴィエト国立SO 1964年2月14日)
R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」(コンドラーシン/モスクワPO 1964年3月12日)
【CD7:世界初演集】
ロペス=グラーサ:室内協奏曲(コンドラーシン/モスクワPO 1967年)
クニッペル:コンチェルト・モノローグ(ロジデーストヴェンスキイ/ソヴィエト国立SO 1964年2月25日)
ヴァーインベルグ:チェロ協奏曲(ロジデーストヴェンスキイ/ソヴィエト国立SO 1964年2月25日)
【CD8:19世紀の古典派とロマン派の作品】
ベートーヴェン:三重協奏曲(D. オーイストラフ (Vn) リヒテル (Pf) コンドラーシン/モスクワPO 1970年1月5日)
シューマン:チェロ協奏曲(ロジデーストヴェンスキイ/ソヴィエト国立SO 1960年11月30日)
チャイコーフスキイ:ロココの主題による変奏曲(ロジデーストヴェンスキイ/ソヴィエト国立SO 1960年11月30日)
【CD9:ロシアの作品】
タネーェフ:カンツォーナ(デデューヒン (Pf))
ミャスコーフスキイ:チェロ協奏曲(スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO 1964年1月14日)
グラズノーフ:コンチェルト=バラード(スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO 1964年1月14日)
【CD10:作曲家の自画像】
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ(D. ショスタコーヴィチ (Pf))
カバレーフスキイ:チェロ・ソナタ(初版)(カバレーフスキイ (Pf) 1962年2月6日)
K. ハチャトゥリャーン:チェロ・ソナタ(K. ハチャトゥリャーン (Pf) 1967年1月10日)
【CD11:協奏曲集】
ティーシチェンコ:チェロと17の管楽器、打楽器とハルモニウムのための協奏曲(ブラジコフ指揮 1966年2月6日)
ハチャトゥリャーン:チェロのためのコンチェルト・ラプソディー(アミンタェヴァ (Pf) 1964年4月4日)
外山雄三:チェロ協奏曲(外山雄三/モスクワ放送SO 1967年1月13日)
【CD12:デデューヒンとのリサイタル】
ショパン:チェロ・ソナタ(デデューヒン (Pf))
ショパン:華麗なるポロネーズ(デデューヒン (Pf))
ミャスコーフスキイ:チェロ・ソナタ第2番(デデューヒン (Pf) 1967年1月10日)
シャポーリン:5つの小品(デデューヒン (Pf))
【CD13:1996年―献呈された作品】
ピアソラ:ル・グラン・タンゴ(ウリアシュ (Pf) 1966年11月22日)
ウストヴォーリスカヤ:チェロとピアノのための大二重奏曲(リュビモフ (Pf))
シニートケ:チェロ・ソナタ第2番(ウリアシュ (Pf) 1966年11月21~22日)
シニートケ:バレエ「ペール・ギュント」のエピローグ(ウリアシュ (Pf) 1966年9月17日)
以下、各ディスクの感想を簡単に。

【CD1】は小品集だが、いわゆる名曲集ではない選曲が面白い。ロシア=ソ連の作品が目につくものの、ミヨーやフォーレ、ドビュッシーなどもあり、ありとあらゆる曲を弾き尽くそうとするかのようなロストロポーヴィチらしさが反映されている。録音年が記されていないものも少なくないが、録音状態などから判断しても、ほとんどが1960年前後のものと思われる。やや荒っぽいもののロストロポーヴィチの達者な技術を堪能できるが、彼特有の柄の大きな音楽は、こうした小品に必ずしも相応しいと思えないのも事実。このBOXの露払い的位置付けの一枚なのだろう。残る12枚は全て、ロストロポーヴィチの独壇場。

【CD2】は、親交の深かったブリテンがロストロポーヴィチに献呈した3曲が収録されている。全てライヴ録音(組曲第2番の終演後の拍手は、どうも後付けくさく感じられるが)だが、中でもチェロ交響曲は世界初演ライヴという点で貴重。ロストロポーヴィチの圧倒的な表現力で奏でられるブリテン独特の闇の世界は、今なお格別である。

【CD3】も、友人として…ではなかったにせよ、親交のあったプロコーフィエフに献呈された3曲が収録されている。ソナタは、作曲家立会いの下での初演ライヴ(聴衆の中にはショスタコーヴィチもいた)。第2楽章終了後に拍手があるなど、その場の高揚した雰囲気がよく捉えられている。交響的協奏曲は、演奏ではなく収録音源のデータに問題がある。なぜ第1楽章と第2~3楽章とが別演奏なのか、その理由が分からない上に、クレジットされている演奏者名にも混乱がある。この点についてはHayesさんの「ロストロポーヴィチのBrilliant箱を検証する」という記事が詳しいので、参照されたい。録音はいかにも古めかしいが、演奏は文句無しに素晴らしいもの。

ショスタコーヴィチの2曲の協奏曲を収録した【CD4】は、第2番の初演ライヴもさることながら、第1番も常軌を逸した力感に溢れた名演。いまだに録音が多いとは言えないボリース・チャイコーフスキイの作品が3曲も収録されている

【CD5】は、このBOXセットの目玉の一つと言ってよいだろう。3曲全てがロストロポーヴィチに献呈されており、全てがその世界初演時の録音である。迸る表現意欲はもの凄く、勢い余って…という箇所もないわけではないが、単なる綺麗事に収まらない振幅の大きな表情は、いささか地味なボリース・チャイコーフスキイの音楽を広範な聴衆に説得力をもって伝えることに貢献している。ただ、パルティータについてはチェロが突出し過ぎの感が否めず、もう少しバランスに配慮して独特の色彩感を表出してもらいたかったところ。

【CD6】には、ロストロポーヴィチのレパートリーの広さを窺わせる作品群が収録されている。「ドン・キホーテ」は有名曲だが、それ以外は演奏頻度も知名度も低い作品ばかり(ブラジル風バッハ第1番は有名曲に入れてもよいと思うが、人口に膾炙しているのは第1曲だろう)。いずれもロストロポーヴィチ風のロマンティシズムに染められてはいるが、知らずに済ますには惜しいと思わせるだけの魅力を放っている。

手当たり次第にチェロのための新作を依頼しては、片っ端から初演していったという片鱗を窺わせる【CD7】は、作品自体の素晴らしさもあって、ヴァーインベルグの協奏曲が聴きものである。他の作品も演奏自体は立派なものだが、後世に渡って繰り返し演奏されるほどの訴求力がないのも確か。

多様な作曲家の作品を聴くことができるのもロストロポーヴィチのBOXならではと思いつつも、【CD8】のオーソドックスなクラシカル作品を聴くとほっとするのも確か。オーケストラのロシア臭に対する賛否はあるだろうが、卓越した技巧に支えられた荒っぽいほどの表現の振幅の大きさは、徹頭徹尾ロストロポーヴィチである。

【CD9】に収録されている作品はいずれも有名曲ではないが、まさに“お国物”と称するに相応しい、隅々まで堂に入った隙のない演奏が圧倒的で、隠れた名曲であるミャスコーフスキイやグラズノーフの大作の真価が余すところなく表出されている。

既に架蔵していた【CD10】は、作曲家自身のピアノで演奏した作品集。ショスタコーヴィチのソナタについては語り尽くされた感があるものの、カバレーフスキイの清澄な音楽も一聴の価値がある。K.ハチャトゥリャーンのソナタは、正直なところ、あまりピンと来ない。

【CD11】のティーシチェンコは、有名な録音と同一かどうかは比較検討していないので分からないが、少なくとも演奏の出来は同様に素晴らしい。ハチャトゥリャーンのコンチェルト・ラプソディーは複数の録音や映像で視聴したことがあるが、ピアノ伴奏版はこれが初めて。華麗な民族色が印象的な管弦楽伴奏ももちろん良いが、ピアノ伴奏の和声の煌めきも捨て難い。外山雄三の協奏曲は、時折日本風の調子が聴こえてくるものの、ロストロポーヴィチの演奏がそれを強調するようなものでないこともあってか、これといった特徴に乏しい凡庸な作品に聴こえた。

どんな作品(作曲家、時代、様式…)であれ、唯一無二のロストロポーヴィチ色に染めてしまうのが、良くも悪くもロストロポーヴィチの強烈な個性なのだろうが、【CD12】に収録された演奏にはそうした嫌味がほとんど感じられない。ここで聴かれるのは、大オーケストラをバックに、曲も共演者も聴衆もねじ伏せようとする強引さではなく、互いに心から信頼し合っている相手と寛いだ気分で音楽に没頭している心安らかさである。地味なミャスコーフスキイのソナタがとりわけ素晴らしいのは、当然の帰結であろう。

新作を精力的かつ貪欲に委嘱・初演してきたロストロポーヴィチらしく、【CD13】は(当時の)最新作を集めた最新録音ということで、「ボーナス・ディスク」と表記されている。いずれも後世に残る名曲揃いだが、シニートケの「ペール・ギュント」の「エピローグ」は、この巨大なBOXセットを締めくくるに相応しく、ひときわ美しい傑作である。

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【YouTube】ショスタコーヴィチ:交響曲第8番(ロストロポーヴィチ指揮)

ショスタコーヴィチの誕生日に行われた生誕100年記念演奏会にて、最晩年のロストロポーヴィチが指揮した交響曲第8番の映像を、YouTubeで見つけた。

いやはや、これは凄まじい演奏である。ほとんど常軌を逸していると言ってよいかもしれない。僕は、ショスタコーヴィチ作品に関する限りは、押しつけがましい思い入れが溢れ出したベタつくような雰囲気の演奏解釈を、基本的には好まない。この演奏は、まさにその路線の極致……なのだが、とてもそんな常識的な好き嫌いの範疇には収まり得ないほどの圧倒的な説得力をもって聴き手に迫り来る。こんな音楽を前にして、何かを語ろうとするのは愚の骨頂だろう。

指揮者ロストロポーヴィチの渾身の名演、一人でも多くの人がより良い条件で鑑賞できるよう、願わくば、一刻も早く商品化してもらいたいものだ。

第1楽章(1)第1楽章(2)
第1楽章(3)~第2楽章(1)第2楽章(2)~第3楽章(1)
第3楽章(2)~第4楽章(1)第4楽章(2)~第5楽章(1)
第5楽章(2)
ショスタコーヴィチ:交響曲第8番
ロストロポーヴィチ/ロシア国立SO(2006年9月25日 モスクワ音楽院大ホール)

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『ロストロポーヴィチ伝』


  • ウィルソン, E.・木村博江訳:ロストロポーヴィチ伝 ―巨匠が語る音楽の教え、演奏家の魂, 音楽之友社, 2009.
夏頃には書店に並んでいたものの、決して安くない価格のために買いそびれていた本を読了。

著者のE. ウィルソンはチェロ奏者だが、ショスタコーヴィチに関心のある人達には演奏家としてよりも、『SHOSTAKOVICH A Life Remembered』(1994年初版)の著者としてその名が知られていることだろう。著者はモスクワ音楽院でロストロポーヴィチに師事しており、ロストロポーヴィチの“亡命”にも少なからず関わっている。本書の前半は、普通の伝記と同様にロストロポーヴィチの幼少期から音楽家としての名声を確立するまでの過程をほぼ編年体で追っているが、それは、たとえばヘーントヴァの評伝などの内容と重複するところが多く、正直言ってそれほど面白くはない。

本書の最大の魅力は、主にレッスンを通して著者自身が見聞きしたロストロポーヴィチの言葉の数々だ。いずれの言葉も、音楽を音楽以外の事象と結び付けて捉えるロシアの楽曲解釈の伝統を最良の形で示すだけでなく、人の生き方に対するロストロポーヴィチの信念が込められた含蓄のあるものばかり。音楽に関する記述の内容を即座に理解できるようなコアなファンでなくても、十分に面白く読むことができるだろう。もちろん、本文中に出てくる楽曲を全て知り、そのロストロポーヴィチ自身の演奏も知っているならば、本書の記述はより一層活き活きと読者に訴えかけてくることは言うまでもなく、また本書を読めばそれらを聴きたくなるに違いないのだが。

それにしても、ロストロポーヴィチが授業で要求した内容の非常にハイレベルなことには、改めて驚かされた。自分と同等以上の才能を相手にも求め、またそういう相手としか親交を結ぼうとしないエゴイズムに賛否は分かれるかもしれないが、常識的な人格者にあのような押し出しの強い圧倒的な演奏ができるとも思えない。ロストロポーヴィチと言うと、ともすれば精力的に国際的な社会活動を展開した反体制の闘士としての側面ばかりが強調されがちだが、あくまでも第一義的には20世紀最大のチェロ奏者にして音楽家である。本書は、そのことを改めて再認識させてくれる。

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ショスタコーヴィチ三題

  • ムーソルグスキイ:歌劇「ホヴァーンシチナ」より前奏曲(リームスキイ=コールサコフ編)、死の歌と踊り(ショスタコーヴィチ編)、展覧会の絵(ラヴェル編) レイフェルカス (Br) テミルカーノフ/ロイヤルPO (RCA 82876-59423-2)
  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番、ヴァイオリン協奏曲第1番 ロストロポーヴィチ (Vc) L. コーガン (Vn) スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO (Dreamlife DLVC-1150 [DVD])
  • ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ、ヴィオラ・ソナタ クニャーゼフ (Vc) ヴォスクレセンスキー (Pf) (Exton OVCL-00202)
家人に頼まれてシンデレラのDVDを予約しに、Tower Records梅田店へ。妻がVHSを持っているものの、これがどうやら随分と貴重なものらしく、娘が繰り返し観る度に文字通り身を磨り減らす思いをしていたようだが、これでめでたく何度でも観せてやることができる。…という口実の元に、何の気兼ねをすることもなく堂々とCD屋へ足を運ぶ。

今回の最大の収穫は、長らく探していたが廃盤で見つからなかったレイフェルカス&テミルカーノフの「死の歌と踊り」を見つけたこと。RCAの“Classic Library”というシリーズの一枚として復刻された模様。一聴して、とにかくレイフェルカスの張りのある美声に惹きつけられる。もちろん表面的な美観に終始せず、ムーソルグスキイ独特のロシア魂が力強く歌い上げられていることは言うまでもない。しなやかでありながら厳しい響きを奏でているオーケストラも立派。極めて完成度の高い名演である。それにしても、本当に素晴らしい曲だ。カップリングの2曲もなかなか秀逸。特に「展覧会の絵」はスケールが大きく、それでいて流麗な流れに貫かれた格調高い美演。ロシア情緒やエグさのある咆哮にも不足することなく、この曲の一二を争う名盤だと思う。

Dreamlifeのスヴェトラーノフ・シリーズ、9月発売分は2曲の協奏曲である。特にチェロ協奏曲第2番は初演ライヴの演奏であり、第3楽章のクライマックスの一部だけショスタコーヴィチの伝記映画などで目にしていただけに、まさに待望のお宝映像である。残念ながら、たとえば第2楽章冒頭の数小節分が欠落しているなどのキズは少なくないのだが、この映像の持つ歴史的な価値と演奏自体の素晴らしさの前では、細かにそうした指摘をするのは無粋というものだろう。リズム構造が複雑な作品だけにスヴェトラーノフもいつも以上にかっちりとした棒を振っているが、第3楽章の頂点などでは全身で音楽の強さを表現し、オーケストラから莫大なエネルギーを引き出しているのに感心した。これは、ヴァイオリン協奏曲第1番でも同じ。こちらは先月発売の交響曲第5番(8月31日付本欄)と同じショスタコーヴィチ生誕70年記念演奏会のライヴ。スネギリョーフのティンパニを初めとして、ソヴィエト国立響の魅力全開といった趣の演奏が繰り広げられている。スヴェトラーノフが第3楽章などで非常に細かく音楽の表情に関する指示を出している様もしっかりと捉えられていて、とても興味深い。二人のソリストについては、改めて述べることは何もない。両者ともに異様なまでのテンションの高さで聴き手を圧倒する。曲良し、演奏良し、画質・音質のみ悪し。

クニャーゼフというチェリストの名は知っていたし、ショスタコーヴィチ作品の録音も二つあることもチェックしていたのだが、国内盤でリリースされているとなるとどうしても後回しになってしまい(入手しやすさと価格の高さゆえ)、今回ようやく遅ればせながらチェロ・ソナタとヴィオラ・ソナタとをカップリングしたアルバムを確保した。男臭く、時に軋むチェロの音色が素敵。技術的には彼より巧い奏者は少なからずいるだろうが、この音の魅力はなかなかのもの。ヴォスクレセンスキイの重いピアノともども、手応えのあるロシアン・サウンドを堪能することができる。チェロ・ソナタは、ゆったりとしたテンポが心地よく、伸びやかな抒情が素敵。偶数楽章ではさらなるキレが欲しい気もするが、これは好みの問題だろう。ヴィオラ・ソナタは、チェロで演奏したものの中では最も優れた部類に入る内容。遅めのテンポが表面的な重々しさに留まることなく、複雑怪奇な内容に対する真正面からの取組みの結果であることがよく伝わってくる。ヴォスクレセンスキイのサポートも見事。確かに旋律線の変更などに伴う違和感がないわけではないが、それを超えて聴き手に訴えかける何かがある演奏である。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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