【録画】NHK交響楽団 第919/1666回定期公演

  • モーツァルト:交響曲第39、40、41番 スウィトナー(指揮) (1984.1.11 録画 [NHK BS-2(2010.2.26)])
  • N響アワー「最近の演奏会から~広上淳一のプロコフィエフ」 (プロコーフィエフ:交響曲第7番、武満 徹:3つの映画音楽) 広上淳一/NHK交響楽団 (2010.1.20 録画 [NHK-ETV (2010.2.21)])
スウィトナーの追悼番組として、1984年の定期公演の映像が放送された。当時のN響のアンサンブルは洗練されているとまでは言い難いが、当然ながら、モーツァルトを演奏するのに技術的な問題があるわけではない。それでも、この3曲でプログラムを構成するとなると、ちょっとした破綻が全てを台無しにしてしまうような、技術的な難易度以上の重圧が、演奏者達にはかかったことだろう。

淡々としたスウィトナーの棒から導かれる音楽は、しかし、伸びやかで愉悦に満ちた音の奔流といった風情の、大変に素晴らしいものである。硬直した危なっかしさは皆無で、推進力のあるテンポに乗って表情豊かな音楽が紡がれていく。若々しい熱気を孕んだ歌心は、今となってはオールド・ファッションな“正しくない”演奏様式が持っていた抗い難い魅力を再認識させてくれる。

それから25年以上後の定期公演(第1666回)における、全身で音楽と格闘しているかのような広上淳一の不格好ですらある指揮姿は、古き佳き時代を彷彿とさせるスウィトナーの気品ある指揮姿とは対極にあるものだろう。広上の繊細な音づくりとスウィトナーの剛毅な音楽運びも、本来は比較するようなものでないことは重々承知してはいるが、好対照で面白かった。撮り溜めた録画をまとめて視聴すると、こんな妙な取り合わせになるのも、また一興か。
スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Suitner,O.

スウィトナーを偲ぶ

  • N響アワー「名誉指揮者・スウィトナーをしのぶ」 (ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲、ブラームス:交響曲第3番) スウィトナー/NHK交響楽団 (録画 [NHK-ETV (2010.2.7)])
  • 父の音楽 ~指揮者スウィトナーの人生~ (録画 [NHK-BS1 (2010.2.15)])
年明け早々の1月8日に、スウィトナーの訃報に接した。クラシック音楽を熱心に聴き始めた頃、N響への客演で彼の名前を知り、実に愚かなことだが、それゆえに彼の音楽家としての真価を長らく見誤っていた。サヴァリッシュについてもそうだったが、日本のオーケストラに頻繁に客演するというのは、“その程度”なんだと思い込んでいた。何とも冴えない彼の容姿も、その印象に拍車をかけたのだと思う。後に、愚かな僕も、スウィトナーが真に尊敬に値する音楽家であることを知った。しかし、その頃には既に彼は引退していた。

追悼番組で流れた1988年と翌89年の映像は、懐かしさと同時に、今まで気付くことのなかったスウィトナーの音楽の素晴らしさが極めて印象的なものだった。とりわけ、ブラームスの第3番。この交響曲は僕の大好きな作品で、とりわけ第2楽章の結尾部はブラームスの全作品中でも断トツに好きだったりする。スウィトナーの指揮ぶりは拍子抜けするほど淡々としているが、それでいて雄弁かつ熱い音楽がオーケストラから迸るのには、ただただ圧倒された。これぞ音楽、という手応えと充足感のある、偉大で素晴らしい演奏であった。N響も、特に金管陣が好調で、見事な出来。皆、若かったということか。

その一週間後、今度はスウィトナーの息子が制作したドキュメンタリーが放映された。これは、健康上の理由で引退してから随分と時を経た、スウィトナー最晩年の姿が記録された貴重なもの。いずれも断片ではあるが演奏シーンも数多く、昔かぶとやま交響楽団の第19回定期演奏会で演奏したデッサウの「交響的変態」には、思わず目が釘付けになったりもした。

しかし、このドキュメンタリーの凄さは、そうした名指揮者の足跡を辿る部分にあるのではない。監督であるスウィトナーの“息子”とは、スウィトナーが“愛人”に産ませた子供なのだ。スウィトナーは、生まれてからずっと西側で生活していたにもかかわらず東ドイツでキャリアを築き、プライヴェートでは妻と愛人のどちらも愛し続けた。この奇妙な、いや異常な歪みを理解することは、少なくともドキュメンタリーを見た程度では不可能だ。

結局のところ、このドキュメンタリー、ましてやスウィトナーの人生について、何かをコメントすることなど、僕のような凡人にはできやしないし、またするべきでもないのかもしれない。番組の最後で、スウィトナーは再び指揮台に立ち、モーツァルトの交響曲第39番と、J. シュトラウスのポルカ「とんぼ」を振る。その姿と音楽は、とても、とても感動的である。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Suitner,O.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター