テミルカーノフの10枚組BOX(Brilliant)

  • Yuri Temirkanov Edition (Historical Russian Archives) (Brilliant 8818)
12月16日、および17日の記事で紹介した買い物の続き。

ちょうど1年ほど前にリリースされたBOXセットだが、遅ればせながらようやく確保。収録曲は以下の通り:
【CD 1】
チャイコーフスキイ:幻想的序曲「ロミオとジュリエット」(キーロフO 1983.6.4)
チャイコーフスキイ:交響曲第6番「悲愴」(キーロフO 1983.6.4)
【CD 2】
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番(ソヴィエト国立SO 1966.12.)
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(ソヴィエト国立SO 1981.6.14)
【CD 3】
ショスタコーヴィチ:交響曲第13番(レニングラードPO 1983.6.16)
シチェドリーン:管弦楽のための協奏曲第2番「鐘」(ソヴィエト国立SO 1976.2.25)
【CD 4】
プロコーフィエフ:交響曲第1番「古典」(ソヴィエト国立SO 1981.6.14)
プロコーフィエフ:組曲「ロミオとジュリエット」第1、2番より(ソヴィエト国立SO 1980.7.27)
プロコーフィエフ:組曲「キージェ中尉」(ソヴィエト国立SO 1980.7.27)
シチェドリーン:組曲「愛のみにあらず」第1番より(ソヴィエト国立SO 1980.5.17)
【CD 5】
ハチャトゥリャーン:交響曲第2番(レニングラードPO 1970.5.25)
スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」(モスクワPO 1970.5.25)
【CD 6】
ラフマニノフ:交響曲第2番(ソヴィエト国立SO 1977.4.10)
イベール:交響組曲「パリ」(レニングラードPO 1980.7.31)
【CD 7】
ベートーヴェン:交響曲第8番(レニングラードPO 1969.1.30)
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲(レニングラードPO 1982.2.20)
ロッシーニ:「セビリアの理髪師」序曲(ソヴィエト国立SO 1968.11.14)
ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」(ソヴィエト国立SO 1968.11.14)
【CD 8】
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(ソヴィエト国立SO 1968.5.9)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(レニングラードPO 1976.6.12)
ラヴェル:スペイン狂詩曲(レニングラードPO 1976.6.12)
【CD 9】
シベリウス:交響曲第2番(レニングラードPO 1985.11.17)
ブリテン:青少年のための管弦楽入門(ソヴィエト国立SO 1967.3.28)
【CD 10】
ドビュッシー:3つの夜想曲より「雲」、「祭り」(ソヴィエト国立SO 1980.5.17)
ドビュッシー:海―3つの交響的スケッチ(レニングラードPO 1976.6.12)
ドビュッシー(ビュセール編):小組曲(レニングラードPO 1976.6.12)
エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番(ソヴィエト国立SO 1968.5.9)
ただし、収録年月日やオーケストラなどの録音データが、どれほど信頼できるかは不明。ともかく、まずは一度全部を聴くことにする。以下、ディスク順に(実際に聴いたのは、逆の順番だったが)。

【CD 1】BOXの冒頭を飾るに相応しい、2曲ともずっしりと手ごたえのある秀演である。隅々まで緻密に作り上げられながらも、空虚な音が一つもないといった感じ。知情意のバランスがよくとれた、とても素晴らしいチャイコーフスキイだと思う。

【CD 2】ショスタコーヴィチの第1番は、初出音源。気合いの入った燃焼度の高い音に生理的な快感を禁じえないが、知的な造形力の確かさも特筆に値する。表現はやや一面的に過ぎるような気もするが、若きショスタコーヴィチの筆先から迸った音符がそのまま鳴り響いているような音楽の奔流は、非常に魅力的。第3~4楽章のアタッカは、後年のスタジオ録音とは異なって楽譜通り。第5番は、かつてRevelationからリリースされていたものと同一のライヴ演奏。大分荒っぽい演奏だが、音楽の作りそのものは模範的である。何だかんだ言っても、こういう“熱い”演奏には抗しがたい魅力がある。

【CD 3】本BOX中、最も楽しみにしていた一枚だったが…… ショスタコーヴィチのただならぬ緊迫感や、抑えきれずに暴発してしまうような昂奮は非常に印象的だが、全体の仕上がりはさすがに荒過ぎる。ギリギリのところで踏みとどまって格好よくきめる第2楽章や、いかにも魂の叫びといった風情の第3楽章は悪くないが、第4楽章以降がどうにも納得しかねる。全曲を貫くテミルカーノフの想いには共感できるのだが、ここまで破綻している演奏を無条件に賛美するわけにはいかないだろう。シチェドリーンもかなり勢いに任せた演奏ではあるが、図らずもクラスターなどの刺々しい響きに切実さが加わっていて、そんなに悪くもない。

【CD 4】知的な造形と異様な昂奮とが、非常に高い次元で音楽的に結実した、いかにもテミルカーノフらしい名演。特に古典交響曲の愉しさは、この曲のベスト盤に推したいほど素晴らしい。シチェドリーンの組曲も凄い。9枚目と並んで、このBOXの白眉と言ってよいだろう。

【CD 5】爆演指揮者テミルカーノフの本領発揮か?!と期待が高まる曲目であるが、力技だけでねじ伏せるのではなく色々やろうと考えたせいか、終始燃え尽きているわけではなく、その意味ではやや中途半端な印象も残る。もっとも、録音が荒れ狂う音響のすべてを捉え切れてないので、どちらかといえばその影響が強いのかもしれない。

【CD 6】ラフマニノフでは、オーケストラは気持ちよく鳴っているものの、全楽章通して音楽がせかせかと落ち着かない。それに対してイベールは、歯車の噛み合った爆演。フランスのエスプリ……は見当たらないが、とても楽しい音楽に仕上がっている。

【CD 7】古典派の作品がまとめられた1枚だが、若い頃の演奏であるせいか、感情が先走っていて平凡な爆演(?)に留まっている。唯一80年代の演奏である「コリオラン」序曲では、ティンパニの爆裂に圧倒されつつも、理性的な造形が音楽の格調を保っているところにテミルカーノフの個性が発揮されている。

【CD 8】「新世界より」は、やみくもに興奮し、これ見よがしにオーケストラをドライブしようとする“若気の至り”だろう。終楽章の盛大な崩壊ぶりは、自業自得。ラヴェルの2曲は、拍子抜けするほど穏やかで普通な演奏。最近の演奏に通じるような気もする。

【CD 9】シベリウスは、燃焼度の高い素晴らしい演奏である。冒頭から異様なまでにテンションが高く、隅々まで熱い共感が満ちている。北欧音楽というにはあまりにもロシアンな金管楽器が炸裂しているが、第2番ということもあって違和感はない。ブリテンは、これより遡ること20年近くも前の演奏だけに、細部の彫琢はそれほどでもないが、多少の泥臭さを漂わせながら、ぐいぐいと前に進んでいく勢いに、思わず惹き込まれてしまう。

【CD 10】ドビュッシーは、いずれも手堅い印象。若きテミルカーノフの爆裂演奏を期待すると肩透かしかも。その不満は、最後のエネスコで解消される。


緻密さを求める向きには薦められないが、アンサンブルの破綻や録音の質にそれほどこだわらないのであれば、なかなか面白いBOXだとは思う。
スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Temirkanov,Y.K. 作曲家_Shostakovich,D.D.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター