ヴィクトル・トレチャコフ・エディション

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  • ヴィクトル・トレチャコフ・エディション トレチャコフ (Vn)他 (Brilliant 93005)
6月2630日付の本欄で述べたHMVの通販で購入した音盤の残り一点は、この10枚組BOX。トレチャコフは大好きなヴァイオリニストなので、こうしてまとめて聴くことができるのは嬉しい。BOXの内容は、以下の通り:
【CD1】
A. チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲(カッツ/ソヴィエト国立SO Rec. 1990)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1984)
【CD2】
ブラームス:ホルン三重奏曲(B. アファナシェフ(Hr)、エローヒン(Pf) Rec. 1977)
シューベルト:二重奏曲イ長調(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
グルック:精霊の踊り(エローヒン(Pf) Rec. 1973)
プロコーフィエフ:5つのメロディー(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
【CD3】
ペイコ:前奏曲とトッカータ(ペイコ(Pf) Rec. 1967)
ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):24の前奏曲より(第15、24番)(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ワーグナー:Feuille d’album(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
サラサーテ:サパテアード(エローヒン(Pf) Rec. 1974)
ラヴェル:ハバネラ形式の小品(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
シェドリーン:フモレスケ(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
プリンシペ:El Campinello(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ブラームス:ハンガリー舞曲第7番(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ファリャ:スペイン民謡組曲(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ショパン:ノクターン ホ短調(エローヒン(Pf) Rec. 1965)
ブラームス:ハンガリー舞曲ヘ長調/ト長調/ニ短調(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
イザイ:悲劇的な詩(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
【CD4】
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番(Rec. 1965)
J. S. バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲(カガン(Vn)、モスクワCO Rec. 1987)
ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ト長調(カガン(Vn)、モスクワCO Rec. 1987)
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲イ短調(モスクワCO Rec. 1988)
タルティーニ(クライスラー編):ヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」(エローヒン(Pf) Rec. 1973)
【CD5】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1984)
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調(テミルカーノフ/レニングラードPO?)
【CD6】
プロコーフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1983)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1983)
メシアン:主題と変奏(エローヒン(Pf) Rec. 1974)
【CD7】
サン=サーンス:ハバネラ(キタエンコ/モスクワPO Rec. 1975)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ(モスクワCO Rec. 1989)
ベートーヴェン:ロマンス第1番(テミルカーノフ/レニングラードPO?)
ショーソン:詩曲(モスクワCO Rec. 1989)
ゴダール:カンツォネッタ(キタエンコ/モスクワPO Rec. 1975)
クライスラー:ウィーン奇想曲(N. ヤルヴィ/エストニア国立SO Rec. 1978)
クライスラー:愛のよろこび(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
クライスラー:愛のかなしみ(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
クライスラー:美しいロスマリン(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
パガニーニ:ラ・カンパネラ(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
パガニーニ:奇想曲第17番(Rec. 1978)
【CD8】
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番(N. ヤルヴィ/エストニア国立SO Rec. 1978)
ハチャトゥリャーン:ヴァイオリン協奏曲(トゥーリン/モスクワPO Rec. 1967)
【CD9】
チャイコーフスキイ:瞑想曲(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:スケルツォ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:メロディー(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:憂鬱なセレナーデ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:ワルツ=スケルツォ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
【CD10】
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
プロコーフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番(エローヒン(Pf) Rec. 1972)
スーク:4つの小品(エローヒン(Pf) Rec. 1972)
ライヴ録音がほとんどだが、既出の音源がどの程度含まれているのかはわからない。少なくとも僕にとっては、パガニーニの協奏曲(名演!)以外は全て初めて聴くものばかり。ロシアの演奏家によるヴァイオリン名曲集といった趣で、マニアじゃなくても十分に楽しめる内容だろう。

さすがに各曲についてコメントはしないが、とにかくトレチャコフの巧いこと!正確無比な左手と完璧に同期した右手からは全ての音が輝かしい強さをもって響き渡り、ライヴゆえのもつれは皆無ではないものの、技術的な不安とは完全に無縁である。また、いかにもロシア人といった雰囲気の、どこか野暮ったい骨太で感傷的なスケールの大きい歌も魅力的。派手なスター性はないが、あらゆる意味でヴァイオリン演奏芸術の極致と言って過言ではない。

トレチャコフを堪能するという意味ではピアノ伴奏の独奏曲もいいが、面白いのは協奏曲。手加減というものを知らない、ソ連のオーケストラの節操の無さが何とも素敵である。たとえばCD5。普通に交響曲を演奏しているような感じでやりたい放題のフェドセーエフ(メンデルスゾーン)やテミルカーノフ(ブラームス)に笑ってしまう。それでいて一歩も退かずに協奏曲として成立させてしまうトレチャコフの凄みには、厳かさすら感じてしまう。

ただ、このセット、ピッチの不備が随分とある。たとえばCD2のホルン三重奏曲。完全に半音低く、調性が変わって聴こえるので、どうにも違和感が拭えない。CD4の無伴奏ソナタなんて、オリジナル楽器で弾いているのか?と思ってしまう。また、収録年が長期に渡っていることもあって、録音状態もまちまち。聴き辛いというほどのものはないが、ライヴ録音では、収録年のわりに…というものも少なくない。それでもなお、ヴァイオリン音楽の愛好家ならば必携のセットだと言いたい。この内容がBrilliant Classicsの激安価格で手に入る幸せを、むざむざ放棄する理由などない。

以下、ショスタコーヴィチ作品のみ個別にコメントしておく。協奏曲第1番(CD1)は、独奏・オーケストラ共に猛烈なテンションに貫かれた極めて素晴らしい演奏。充実しきったオーケストラと圧倒的な独奏との拮抗は、理想的なバランスである。トレチャコフとフェドセーエフの双方が持ち前の音楽性を遺憾なく発揮していて、非常に抒情的な仕上がりになっているところが特徴的と言えるだろう。第1楽章の美しさ、第2楽章の完璧で鬼気迫る推進力、第3楽章の切実な歌、第4楽章の狂気に満ちた昂奮、いずれも最高級の内容を持っている。ここまで凄い演奏は、久しぶりに聴いた。ただ第3楽章の半ばくらいからカデンツァ、第4楽章と、さすがに心身ともに消耗したのかミスが目立ってくるのが残念。とはいえ、それがこの演奏の価値を損なうものではない。協奏曲第2番(CD6)も、張り詰めた緊張感と作品の内面に真摯に立ち向かう精神の力強さが際立つ秀演である。それでいて、どこか陽性な推進力に満ちているのはフェドセーエフの伴奏によるものと思われる。細かい瑕はあるものの、トレチャコフの自在で男くさい歌は非常に魅力的。残念なことに、ソナタ(CD10)は収録されているピッチが完全に半音低い。聴いている内に慣れるようなものではなく、調性が狂って聴こえるので不快極まりない。演奏そのものは、真正面から作品と格闘しているかのような誠実なもの。技術的な精度も高く、時々一本調子になってしまうことを除けば模範的な演奏といえるだろう。エローヒンのピアノも立派な存在感を持っている。それだけに、録音の不備が残念でならない。24の前奏曲からの2曲(CD3)では、鮮やかな切れ味(少々荒っぽいが)をこれでもかと見せ付けられる。短い曲だけに仕方ない側面もあるが、勢いに任せすぎでやや単調な仕上がりなのが残念。
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theme : クラシック
genre : 音楽

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ケーゲル二題

  • ベートーヴェン:交響曲第7番、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番 トレチャコフ (Vn) ケーゲル/ドレスデン・シュターツカペレ (Weitblick SSS0058-2)
  • モーツァルト・エディション第11集(リタニア、ヴェスペレ、オラトリオ、カンタータ他) (Philips 464 870-2)
  • ショスタコーヴィチ:室内交響曲、スヴィリードフ:室内交響曲、ヴァインベルグ:室内交響曲第1番 バシメート/モスクワ・ソロイスツ (Onyx ONYX 4007)
  • アート・オブ・トイ・ピアノ レン・タン (Pf etc.) (Tower Records PROA-26)
  • ブラームス:ピアノ作品集(作品10、79、116) アファナシェフ (Pf) (Denon COCO-70529)
  • ブラームス:後期ピアノ作品集(作品117、118、119) アファナシェフ (Pf) (Denon COCO-70444)
今年はいつになく年度末業務に忙殺されている。買い込んだ音盤も無為に山積みされていく一方。本欄もすっかりご無沙汰してしまったが、その間に、今年もまた中古音盤堂奥座敷同人の2005年の5盤がアップされた。年を追うごとに個々の嗜好性が強く前面に押し出されてきて、なかなか刺激的。是非、ご一読を。

発売を心待ちにしていた新譜が入荷したとのことで、Tower Records難波店へ。お目当ての音盤は、ケーゲルとトレチャコフのアルバム。ベートーヴェンの凄いことといったら!久しぶりに鳥肌の立つような名演に出会えた。鋭く突き刺さるような音色感には好き嫌いがあるだろうが、楽曲の構成を丹念に表出しつつも尋常ならざる燃焼度が達成されている稀有の例。特に、第1楽章コーダのオスティナートや、第4楽章コーダの低音(これもオスティナートといってよいだろう)の凄みには言葉がない。リズムに取り憑かれた恐ろしさが端的に表現されているのに、それに昂奮させられてしまうことの怖さ。引き締まった集中力が全曲を貫いているのもさすが。管楽器のバランスなど、随所に凝った部分があるのもケーゲルらしい。圧倒的な音楽の奔流に言葉を失いつつ、終演後の拍手がないのを不思議に思ってジャケットを見ると、なんとスタジオ録音!

トレチャコフとのショスタコーヴィチは、このベートーヴェンに比べるとはるかに常識的。ソロ、オーケストラともに真摯で的確な楽曲把握が傑出している。派手さはないものの、思索的な雰囲気は抜群。ライヴ録音にも関わらず技術面での不満は全くなく、録音状態が冴えないことだけが惜しまれる。

ケーゲルでふと思い出し、長らく買いそびれていたセットを購入。モーツァルトの宗教曲を集めた13枚組BOX。収録曲は以下の通り:
【CD1】
リタニア 変ロ長調 K. 109
聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調 K. 243
主日のためのヴェスペレ ハ長調 K. 321
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho
【CD2】
聖体の祝日ためのリタニア 変ロ長調 K. 125
聖母マリアの祝日のためのリタニア ニ長調 K. 195
ディクシットとマニフィカート(晩課)ハ長調 K. 193
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho
【CD3】
証聖者の荘厳晩課 ハ長調(聴もん僧のおごそかな夕べの祈り)K. 339
キリエ ニ短調 K. 341
モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ニ長調 K. 618
モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K. 165
  C. デイヴィス/ロンドンSO & Cho他
【CD4】
モテット「神はわれらが避難所」ト短調 K. 20
キリエ ヘ長調 K. 33
聖ベネディクト祭の奉献歌「天の住居に昇れ」ハ長調 K. 34
アンティフォン「彼らを養いたまえり」K. 44
四声のための宗教曲「聖霊来たり給え」K. 47
聖ヨハネ祭の奉献歌「女として生まれた者の中で」K. 72
ミゼレーレ イ短調 K. 85
アンティフォン「まず神の国を求めよ」K. 86
キリエ ニ短調 K. 90
キリエ ニ長調(ロイター作) K. 91
レジナ・チェリ ハ長調 K. 108
奉献歌「主は賛美されよかし」ハ長調 K. 117
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho他
【CD5】
レジナ・チェリ 変ロ長調 K. 127
テ・デウム ハ長調 K. 141
アリア「故に問題は、高きものを求めて」K. 143
奉献歌「聖母の保護にすがり奉る」K. 198
聖節の奉献歌「主の御憐みを」ニ短調 K. 222
聖体の祝日のための奉献歌「来たれ、民よ」K. 260
聖母マリア祭の昇階誦「天主の御母なる聖マリア」ヘ長調 K. 273
レジナ・チェリ ハ長調 K. 276
聖母マリアのための奉献歌 ヘ長調「創造主の御母よ」K. 277
キリエ 変ホ長調(断片) K. 322
キリエ ハ長調(断片) K. 323
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho他
【CD6~7】
オラトリオ「第一戒律の責務」K. 35
アリア「来たれ汝ら恥知らずの罪人よ」K. 146
聖墓の音楽 K. 42
  マリナー/シュトゥットガルト放送SO他
【CD8~9】
オラトリオ「救われたベトゥーリア」K. 118
  ハーガー/ザルツブルク・モーツァルテウムO他
【CD10】
カンタータ「悔悟するダヴィデ」K. 469
  マリナー/シュトゥットガルト放送SO他
【CD11】
フリーメーソンのためのカンタータ「我らの喜びを高らかに告げよ」K. 623
弦楽四重奏曲のためのアダージョとフーガ ハ短調 K. 546
歌曲「結社員の道」K. 468
歌曲「おお聖なる絆」K. 148
カンタータ「宇宙の霊なる君」(未完)K. 429
結社員のための葬送曲 ハ短調 K. 477
結社員のための合唱つき歌曲「今日こそ、狂気し歓喜の歌を歌おう」変ロ長調 K. 483
結社員のための合唱曲「汝はわれらが新しき指導者」ト長調 K. 484
カンタータ「結社員の喜び」変ホ長調 K. 471
小カンタータ「無限の宇宙の創造者を崇敬する君らよ」ハ長調 K. 619
フリーメーソンの歌「固く手を結び合い」K. 623a
  シュライアー/ドレスデン・シュターツカペレ他
【CD12~13】
ラテン語喜劇「アポロとヒアキントス」K. 38
  ハーガー/ザルツブルク・モーツァルテウムO他
ケーゲルが振った声楽曲にはずれはないので、ずっと聴いてみたいと思ってはいたのだが、正直なところ、収録曲や他の演奏者に興味がないので、それにしては価格も分量も過大だったために購入を見送っていた。とても一気に聴き通すことはできないので、まずは順番通りにケーゲルの演奏が大半を占める(CD1、2、4、5)最初の5枚を聴いてみる。もう、さすがモーツァルト、さすがケーゲルとしか言いようがない。BGM的にリラックスして聴き始めたのだが、音楽の神々しさと張り詰めた演奏の素晴らしさがそんな安易な姿勢を許してくれない。この手の作品を形容するのに相応しいとは思えないが、とんでもなくデモーニッシュな音楽世界にノックアウトされた。有名曲が収録されたC. デイヴィスの演奏(CD3)にはこうした新たな発見はなかったが、音楽そのものはたまらなく美しい。

バシメート指揮の室内交響曲集は、少し前にリリースされていたものの、店頭にたくさん並んでいたので購入をとりあえず見送っていたもの。ショスタコーヴィチ以外は初めて聴く曲ばかりだったが、いずれも抒情的な美しさが印象的な、バシメートによく合う作品のように思えた。世界初録音と記されているスヴィリードフ作品が、とてもきれい。ショスタコーヴィチでは、自身のヴィオラ演奏と同種の粘っこさを感じさせる歌いまわしが特徴的。個人的にはもう少し辛口の引き締まった音楽が好みではあるが、音楽の訴求力は強く、これはこれで優れた演奏。モスクワ・ソロイスツの洗練された高度な技量にも感心する。

これらを購入したらポイントカードが満点になったので、1000円の音盤を3枚追加購入。まずは、Tower Recordsのフリーペーパー「intoxicate」58号(2005年10月)で絶賛されていたこともあって気になっていたトイ・ピアノのアルバム。何という豊かな音世界なんだろう。個々の楽曲については、あまり得意ではないジャンルなので好き嫌いも含めてはっきりとは評価しかねるのだが、全編を貫く響きが魅力的なことだけは疑う余地がない。

アファナシェフのブラームス作品集は、もう10年ほど前に大学の後輩の家で聴かせてもらって以来になる。演奏内容については色んなところで大絶賛されてきた名盤だけに、ここで改めて何かを言う必要性は全く感じられないが、とりあえずこの値段では申し訳ないような気がしてしまう。それにしても、ブラームス後期のピアノ作品は素晴らしい。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Kegel,H. 演奏家_Tretyakov,V.V. 作曲家_Mozart,W.A. 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Sviridov,G.V. 作曲家_Brahms,J.

DVD2題&第8交響曲2題

  • サンクト・ペテルブルグ・ガラ2003 テミルカーノフ、アレクセーエフ/サンクト・ペテルブルグPO トレチャコフ (Vn) ヴィルサラーゼ (Pf) マイスキー (Vc) ネトレプコ (S) フヴォロストーフスキイ (Br) (TDK TDBA-0072 [DVD])
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 バルシャイ/ボーンマスSO (EMI 7243 5 87034 2 9)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 コフマン/ボン・ベートーヴェンO (MDG 337 1204-2)
  • ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 セクンデ、ヴェントリス他 アニシモフ/バルセロナ・リセウ歌劇場O &合唱団 (EMI DVB 5 99730 9 [DVD])
特に目当ての音盤があったわけではないのだが、ふらっとTower Records梅田店へ。それでもそれなりに収穫があった。

サンクト・ペテルブルグ建都300年を記念するガラコンサートのDVDは、ショスタコーヴィチの祝典序曲が収録されていること以外にも、トレチャコフの演奏を是非とも観たかったので、迷わず購入。収録曲は以下の通り:
  1. ショスタコーヴィチ:祝典序曲 テミルカーノフ(指揮)
  2. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ トレチャコフ (Vn) アレクセーエフ (指揮)
  3. ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ヴィルサラーゼ (Pf) アレクセーエフ (指揮)
  4. チャイコーフスキイ:歌劇「エヴゲーニイ・オネーギン」よりポロネーズ アレクセーエフ (指揮)
  5. ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」より「あたりは静けさに包まれ」 ネトレプコ (S) テミルカーノフ (指揮)
  6. プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より「私が街を歩くと」 ネトレプコ (S) テミルカーノフ (指揮)
  7. チャイコーフスキイ:歌劇「スペードの女王」より「いとしい人…あなたを愛しています」 フヴォロストーフスキイ (Br) テミルカーノフ (指揮)
  8. ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より「おおカルロ様、お聞きください」 フヴォロストーフスキイ (Br) テミルカーノフ (指揮)
  9. レスピーギ:アダージョと変奏 マイスキー (Vc) テミルカーノフ (指揮)
  10. ブルッフ:コル・ニドライ マイスキー (Vc) テミルカーノフ (指揮)
  11. レオンカヴァッロ:歌劇「道化師」より「ネッダ!…シルヴィオ!こんな時間に」 ネトレプコ (S) フヴォロストーフスキイ (Br) テミルカーノフ (指揮)
  12. ラフマニノフ:交響曲第1番第4楽章よりファンファーレ テミルカーノフ (指揮)
こういうリラックスした演奏会だし、さぞかし爆裂した演奏が繰り広げられるだろうと期待した祝典序曲は、残念ながら満足のいく内容ではなかった。冒頭のトランペットからして、どこか腑抜けたような音。金管楽器の音程も今ひとつ良くない。練習不足なのか、主部に入ってからも雑然とした演奏が続き、コーダ前の部分では管楽器と弦楽器で完全にずれてしまう。致命的なのは、バンダがいないこと。せっかくのお祭りなんだから、そんなところでケチらなくても…

と、すっかり意気消沈したところでトレチャコフの登場。彼の演奏は、確か中学時代に札幌の厚生年金会館で円光寺雅彦指揮の札幌交響楽団とシベリウスのヴァイオリン協奏曲というのを聴いたことがあるが、第1楽章の第2主題の濃厚なロマンティシズムが強く印象に残っているものの、さすがに弾き姿の記憶までは残っていない。それにしても、実に達者な演奏。すべてが合理的で、全部の音が完璧に輝かしく響ききっている。時に泥臭さを感じさせる歌い口も魅力的。せめてもう一曲くらい聴きたかった。続くヴィルサラーゼも立派な演奏。ガラコンサートにラベルの左手という選択も凄いが、媚びのない峻厳とした音楽も素晴らしい。旧ソ連のこの世代の演奏家の底力を再確認させてくれる二人の演奏である。

アレクセーエフ指揮のポロネーズで前半が終わり、続く後半からはテミルカーノフの指揮となる。ネトレプコもフヴォロストーフスキイも巧い。大編成のオーケストラをバックに一歩も退かないどころか、スケールの大きな音楽で全体をリードしていく貫禄に圧倒される。テミルカーノフの伴奏も的確で見事なもの。マイスキーは随分大物扱いされているようだが、いつも通りの軟弱でか細い、見た目通りの演奏。ただし、ここでの選曲は彼の特質によく合っているのでそれほど不満は感じない。でも、マイスキーが2曲弾くのだったら、トレチャコフに3曲弾かせて欲しかったというのが率直な気持ち。ネトレプコとフヴォロストーフスキの艶やかな二重唱(最後のキスは見てて恥ずかしくなったが(^^;)でプログラムが終了すると、最後はラフマニノフの交響曲から抜き出したファンファーレでお開き。なかなか充実した内容でした。

バルシャイとボーンマス響によるショスタコーヴィチの第8番は、かなり以前にCD化されていたものの、ボーンマス響創立100周年記念CDに収録された第3楽章以外は長らく入手困難な状況が続いていた。廉価盤で復活したとの情報を知り、店頭で見つけて即購入。全体的には決して悪くない雰囲気で、特に切実な弦楽器の歌には心動かされる瞬間も少なくない。ただ、オーケストラのパワー不足は否めず、ダイナミックレンジの狭さが作品のスケール感を表現する上での制約になってしまっている。

交響曲第8番をもう一枚。7月15日付の本欄で第7番の秀演を取り上げたコフマンとボン・ベートーヴェン管による演奏。端正で丁寧な音作りと、楽曲に対する真摯な取り組みは立派なもの。テンポ設定や息の長い盛り上げなど、全体的に的確で模範的な解釈がなされていると言って構わないだろう。ただ、この作品では特にオーケストラの力不足が気になる。弦楽器の厚みが決定的に不足している。逆に、こういう音のまとめ方であれば、金管楽器にはさして不満はない。

「ムツェンスク郡のマクベス夫人」のDVDは、もう随分前にリリースされていたもの。いい加減、なくなる前に買っておこうということで購入。とりあえず一気に通して鑑賞してみたが、オーケストラがなかなか健闘している。これは、オケがしっかりと捉えられた録音のせいかもしれない。弦楽器が少々非力なのは否めないが、管楽器や打楽器が十分に雰囲気を醸し出していて、実演でこの水準ならば満足すべき出来だろう。声楽陣も悪くはないのだが、さすがにロシア語の発音には難がある。老囚人役のネステレーンコはさすがに圧倒的な存在感。歌劇場の雰囲気をよく伝えてくれる映像構成や画質・音質も立派なもの。演出もごく常識的なもので、違和感なく作品を楽しむことができる。もっとも、少なくともR15指定くらいはしたいところだが(^^;。ただ、第3幕の終わりでカテリーナとセルゲーイが逮捕された後に、交響曲第6番の第1楽章が挿入されたのはどうかと思う。第1幕と第2幕、休憩をはさんで第3幕と第4幕の連結部分で演出者の独自性を発揮したようだが、前者はともかく、このように違う音楽を(いくら同じ作曲家の作品とはいえ)突然挿入するのには賛成し難い。とはいえ、歌劇場の公演を収録した映像は他にないので、ファンならば必ず手元に置いておきたい一枚。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Tretyakov,V.V.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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