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落穂拾い(大阪)

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15&12番 カルミナQ (Denon COCO-80263)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13&14番 メロスQ (Intercord INT 820.536)
  • ブルックナー:弦楽五重奏曲、間奏曲 メロスQ サンチャゴ (Va) (harmonia mundi France HMC 901421)
  • ボッケリーニ:弦楽四重奏曲 Op. 58-5、ドニゼッティ:弦楽四重奏曲第13番、プッチーニ:菊、3つのメヌエット、イザイ:パガニーニ変奏曲 Quatuor Arte del Suono (Pavane ADW 7309)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第14番 ロジャース (S) レイフェルクス (B) アシケナージ/NHK SO (Decca UCCD-1187)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1&2番、ピアノ五重奏曲 ヘルムヒェン (Pf) ユロフスキ/ロンドンPO (London Philharmonic Orchestra LPO-0053)
  • ピアソラ:バンドネオン協奏曲、3つのタンゴ ピアソラ シフリン/セント・ルークスO (Nonesuch WPCS-5071)
深い意味もなく、私の中ではディスクユニオン=お茶の水だったのだが、よく考えてみると昨年、大阪にもクラシックの専門店がオープンしていたことを思い出し、所在地を調べて足を運んでみた。仕事帰りに音盤屋なんて、何年振りだろうか。

ということで、ディスクユニオン 大阪クラシック館に初めて突撃。帰りのバスの時間の都合で30分くらいしか時間がなかったので、とりあえず配架の構成など、店舗全体をざっと見回り、先日の東京(6月12日のエントリー)と同様、ショスタコーヴィチと室内楽にのみ集中して探索してみた。

まずは、お茶の水で確保したメロスQのアルバムと全く同じ組み合わせの、カルミナQのアルバム。1970年前後に結成された団体が私にとって弦楽四重奏のデフォルトなのだが、「その次」の世代の筆頭がカルミナQであった。デビュー盤のシマノフスキ&ヴェーベルンをリリース直後に買いに行ったのも懐かしい。その後もそれなりに新譜を追ってはいたものの、いつの間にか私の関心から外れてしまった。このシューベルトの15番に聴かれるような極端な弱音は、彼らの得意とする卓越した技術の発露であり、その前の世代とは一線を画す弦楽四重奏の響きなのだが、要するに、私はこれが好みでない、ということなのだろう。彼らの考え抜かれた音楽は、素晴らしく彫琢されていて際立って巧いが、私の思い描くシューベルトの不健康で危うい陰のある妖しい美しさとは異なる。


昨年末の中古レコード・セールで、メロスQのベートーヴェン旧全集の大半を入手したが(2月24日のエントリー)、残る2枚の内、13&14番を収録した1枚を発見。もちろん、即確保。

さすがにベートーヴェンの後期にはまだ若かったようで、真摯に取り組んでいることは十分に伝わるものの、音楽の表情が単調であることは否めない。彼らの魅力である各パートがそれぞれ自由に盛り上がりつつも一体感が終始保たれる独特の奔放さは、少なくともこの録音の段階ではあまり感じられない。


ここしばらくメロスQづいている感もあるが、ブルックナーの弦楽五重奏曲も見つけた。こちらは彼らの円熟期である1990年代の録音。冒頭から、これぞドイツ・ロマン派という響きに満ち溢れ、時に冗長さも否めない楽曲の長さが愛おしくすらある。各声部がそれぞれ思いのままに歌い込んで形成される燃焼度の高い音楽は、シンフォニックに響きつつも室内楽でしかなし得ない緊密な大柄さ、とでもいった感じ。大満足の一枚。


ボベスコといえば、私が子供の頃にヴィオッティの協奏曲の“お手本”としてLPを愛聴した思い出がある。彼女が率いる弦楽四重奏団の録音は、ヴィオッティの弦楽四重奏曲集を架蔵しているのみだが、「Rare Works for String Quartet」と題するイタリア人作曲家の作品集が目についたので、これも入手。プッチーニの「菊」以外は、全て初めて耳にした作品ばかりだが(プッチーニのメヌエットは、遊びで弾いたことはあるが)、いずれも同じ作曲家の他の作品と印象は同じで、作曲家を代表する作品が選ばれているとは言い難い。“Rare”であるには違いないが。ただし、パガニーニのカプリース第24番をイザイが弦楽四重奏にアレンジ?した作品は、非常に面白かった。いつか弾いてみたいと思って調べてみたが、楽譜は未出版の模様。録音は他にクリプトスQのものがあるようで、プロアマ問わず需要はあると思うのだが、さすがに出版は難しいか?

演奏は、1st Vn主導の古いタイプのもの。ただし、どの曲もそのスタイルがよく合っているので、とりたてて不満はない。ブリリアントな響きも心地よく、楽しいアルバムである。


アシケナージがDeccaレーベルで録音したショスタコーヴィチの交響曲は、第4、13、14番の3曲がN響との組み合わせで、それぞれ1枚物でリリースされた後、すぐに全集ボックスになってしまい、単独の音盤は入手難になってしまった。中古屋で見かけることもなかったのだが、今回、第14番を発見。

ややもっさりとしたテンポだが、それがアシケナージの指揮技術ゆえなのか、本心からの解釈なのかは判然としないものの、じっくりと奏でられた響きはなかなか美しい。N響弦セクションの底力を見せつけられた感がある。寛いだ、と言ってよいだろう独特の雰囲気は、この交響曲とは異質のはずなのだが、一方で、鋭さ一辺倒の演奏では気付くことのできない甘美さを見出させてくれる興味深い演奏である。


ロンドンPOの自主制作盤はそれなりにチェックしていたはずなのだが、ヘルムヒェンというピアニストをフィーチャーしたアルバムの存在は全く知らなかった。これがなかなかの掘り出し物である。溌剌とした勢いに満ち、それでいて終始安定感のある優れた演奏。奇を衒うことのない、ごくごくオーソドックスな解釈なのだが、間然とすることなく一気呵成に全曲を聴かせてくれる。オーケストラの、手堅くも共感に満ちた熱いバックも立派。

ピアノ五重奏曲も悪くないが、こちらはもう少し練り上げられた緊密なアンサンブルを求めたくなるのが、正直なところ。


ピアソラのバンドネオン協奏曲は、特別好きというわけでもないせいか、最も有名なスタジオ録音をずっと買いそびれていた。ふと思い出した時には廃盤になっているという、負のスパイラル。没後10年くらいまでの間にCDでリリースされた音源はほぼコンプリートしているだけに長年の懸案であったが、いざレジに向かおうと振り向いたら「目が合って」しまったので、勢いで確保。

他のライヴ録音と比べると随分と落ち着いた演奏ではあるが、たとえば最後の録音となったハジダキス指揮の録音のような技術的な問題もなく、この曲を知るには最適の音盤のように思う。ただし、オーケストラは終始ムード音楽的に和声を鳴らしているだけで、ドライヴ感に乏しいのが残念。


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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. Tango_Piazzolla,A.

【YouTube】73年のキンテートの映像

ピアソラの演奏活動を、60年代の第一次キンテート(五重奏団)、そして80年代の第二次キンテートを抜きにして語ることは不可能である。実験的な活動を含め、キンテート以外の様々な編成も意欲的に試し続けたピアソラであるが、キンテートのメンバーは常にその中核であり続けた。

第一次キンテートが解散し、九重奏団も短期間で活動停止してしまった後の1973年に、1年に満たない活動期間ではあったが、キンテートが再結成された。現在、残されている音源は「天使の死」(milan)というアルバム1枚のみ。アグリ、キチョ、マルビチーノといったおなじみのメンバーに加えて、九重奏団でも圧倒的な存在感を放ったタランティーノがピアノを務めていることが目を引き、また実際にタランティーノのキャラクターがキンテートの音楽を決定づけているという点で、ピアソラ・ファンならばこのキンテートを聴き過ごす訳にはいかない。

その“73年のキンテート”の映像が、YouTubeにアップされていた。テレビ番組のようだが、親密でリラックスした雰囲気のスタジオで繰り広げられる演奏の質は、非常に高い。重厚なタンゴのリズム感を持ちつつも、軽やかにスウィングするタランティーノのスタイルが、いつものピアソラと一味違った趣きを持っている。「アディオス・ノニーノ」のピアノ・ソロや、「ブエノスアイレスの秋」のインプロヴィゼーションは上述したアルバムとは大きく異なっており、このアンサンブルが特筆すべき自由度を持っていたことも窺える。

「トード・ブエノスアイレス」や「アルフレド・ゴビの肖像」など、他に映像のない曲が含まれていることも嬉しい。ただ、画質や音質は劣悪で、商品化に耐えるものでは全くないことが残念。インターネットのおかげで観ることのできた映像だろう。投稿者に感謝!

ブエノスアイレスの夏ブエノスアイレス午前零時
ルンファルドトード・ブエノスアイレス
フラカナパアルフレド・ゴビの肖像
アディオス・ノニーノブエノスアイレスの秋

theme : ワールド・ミュージック
genre : 音楽

tag : Tango_Piazzolla,A.

スヴィリードフ:「困難な時代に」「夜の雲」

  • スヴィリードフ:劇音楽「皇帝ヒョードル・イヴァノーヴィチ」より3つの合唱曲、合唱のための協奏曲「プーシキンの花輪」、「困難な時代に」、合唱カンタータ「夜の雲」 ラストヴォローヴァ/モスクワ新合唱団 (alto ALC 1029)
  • 「Melhores Momentos de Chico & Caetano(シコとカエターノの最良の機会)」 V.A. (SOM LIVRE 2132-2)
HMV ONLINEでCDを3点購入。ただし、1つは10枚組BOXなので、それ以外の2枚を先に聴く。

スヴィリードフの合唱曲集は、ブロークの詩につけた「困難な時代に」と「夜の雲」の2曲が目当てで購入したもの。どちらも名作「さまようロシア」などと同時期の作品で、歌謡性と独創的な響きとが自然に共存した、スヴィリードフらしい味わい深い音楽である。特に「困難な時代に」の音楽世界は、僕の大好物。必ずしも洗練された演奏とは言えないが、こうした作品の魅力は十分に表出されている。非常に廉価であることも考えると、この手の音楽が嫌いでさえなければ満足度の高いアルバムだと思う。

HMVジャパン


『シコとカエターノの最良の機会』というアルバムは、ブラジルのTV番組「シコとカエターノ」で披露されたゲスト達の演奏の中から、目ぼしいものを集めたもの。この番組でピアソラ・キンテートが演奏した映像については、1月11日の記事http://dsch1975.blog75.fc2.com/blog-entry-392.htmlで紹介したばかり。この時の「アディオス・ノニーノ」が収録されたCDを未入手だったことを思い出し、文字通りコレクションのために購入したもの。上述の映像と同様に、冒頭のピアノのカデンツァは収録されていない。さらに、録音機材のトラブルでもあったのか、途中からヴァイオリンの音がほとんど聴きとれなくなっている。ピアソラ・ファンにとっては、完全にコレクターズ・アイテムであり、わざわざ探してまで手に入れる必要はないだろう。その他の収録曲は、いずれもゴキゲンなものばかりで、アルバムとしてはそう悪いものではない。

HMVジャパン

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Sviridov,G.V. Tango_Piazzolla,A.

【YouTube】プグリエーセ&ピアソラ「Finally Together」

1989年6月26日にアムステルダムで行われたプグリエーセ楽団とピアソラ・セステートとの共演は「Finally Together」という名盤に収録されているが、その映像がYouTubeにアップされていた。字幕などから、おそらくは当時、オランダで放送されたものなのだろう。僕が見つけたのは、次の5つ。「リクエストによる埋め込み無効」なので、リンクを張っておく:
最後のアディオス・ノニーノは、あちこちがごっそりとカットされていて残念だが、あまり贅沢を言っては罰が当たる。演奏については、今さら言葉を重ねる必要はないだろう。必ずしも評価が高いとは言えないセステートだが、ここで繰り広げられている演奏は、この編成あるいはこのメンバーの真価が存分に発揮されたもの。

それにしても、このアディオス・ノニーノの最後のクライマックスには、何度聴いても激しく心が揺さぶられる。ガンディーニのカデンツァは正直あまり好きじゃないが、それ以外はピアソラが演奏した同曲のベストと言って良いかもしれない。

theme : ワールド・ミュージック
genre : 音楽

tag : Tango_Piazzolla,A.

【YouTube】コンフント9

1月9日の記事で「ピアソラにとっての理想的な演奏形態がキンテートであっただろうことは、短命に終わったコンフント9をひとまず考慮に入れなければ、衆目の一致するところだろう」と述べた。キンテートの音楽遺産は質量ともに際立っているのだが、それでもコンフント9の緻密でありながらも広がりのある響きをキンテートの上に位置付けたくなる衝動を抑えることはできない。

わずか1年ほどで解散してしまった団体だけに、遺された録音はそれほど多くない。演奏風景の写真ですら珍しいだけに、ましてや映像となると極めて貴重である。これまでネットで視聴できるピアソラの映像を5回に渡って紹介してきたが、その最後に、僕の大好きなコンフント9の映像を2つ紹介したい。なお、これらについては、斎藤充正氏のブログ「tangodelog」の2009年11月26日の記事)でその存在を知った次第。

まずは、1972年にイタリアのテレビ番組に出演した際の映像。「Divertimento 9」というちょっと渋い選曲だが、この1曲だけの出演とは考えにくいので、他の演奏曲目についても映像が発掘されることを切に願いたいところ。

それはともかく、アンサンブルの完成度がもの凄い。九重奏という、決して少なくない人数のアンサンブルにしてこの緊密さ。奏者同士が互いの機微を知り尽くし、演奏している楽曲に対する理解を完全に共有していることの証明だろう。楽曲や響きもさることながら、こういう奏者を常に従えることができたという点で、この団体をピアソラにとっての究極の形態とすることに問題はないだろう。

Divertimento 9
1972年


この編成には、イタリアの女性歌手ミーナとの共演の映像も遺されている。ステージの雰囲気などから上述した映像と同じライヴ(番組?)のような気もするが、よく分からない。この演奏は1993年にCD化されているが、僕は未入手である。

ミーナの歌唱は少々絶叫系で僕の好みではないが、伴奏するコンフント9の濃密な音楽にはノックアウトされてしまう。中間部のピアソラのソロは、いくつもあるこの曲のアレンジ、演奏の中でも一、二を争う素晴らしさ。

Balada para mi muerte
1972年


楽曲だけでなくミーナによるピアソラの紹介も聞くなら、こちらの動画の方がお薦め。

theme : ワールド・ミュージック
genre : 音楽

tag : Tango_Piazzolla,A.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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