年末の中古レコード・セールにて

  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3&4番、Op.14-1 メロスQ (Intercord INT 820.530)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5&6番 メロスQ (Intercord INT 820.531)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番 メロスQ (Intercord INT 820.753)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8&9番 メロスQ (Intercord INT 820.533)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10&11番 メロスQ (Intercord INT 820.534)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12&16番 メロスQ (Intercord INT 820.535)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12&16番、大フーガ バリリQ (Preiser 90097)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第72番 Op. 74-1、モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番、ベートーヴェン:大フーガ、弦楽四重奏曲第16番、シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 アマデウスQ アロノヴィッツ (Va) (Andante AN2160)
  • ロータ:弦楽のための協奏曲、マリピエロ:交響曲第6番「弦楽のための」、ポレーナ:ヴィヴァルディ、モリコーネ:10の独奏弦楽器のための練習曲 イタリア合奏団 (Denon COCO-70720)
  • バルトーク:ルーマニア民俗舞曲、ボッケリーニ:「マドリードの帰営ラッパ」の主題による変奏曲、バーバー:弦楽のためのアダージョ、ボッケリーニ:メヌエット、ボッテジーニ:タランテラ、チャイコーフスキイ:アンダンテ・カンタービレ、J. シュトラウスII世&弟:ピツィカート・ポルカ、トゥリーナ:闘牛士の祈り、ハイドン(伝ホフステッター):セレナード、グリーグ:2つの哀しき旋律、ブリテン:シンプル・シンフォニより第2楽章 イタリア合奏団 (Denon COCO-75040)
  • ロッシーニ:弦楽のためのソナタ(全6曲)、ドニゼッティ:弦楽四重奏曲第3&5番 イタリア合奏団 (Denon COCO-73144→5)
2016年末もまた、家の大掃除を一段落させてから阪神百貨店の「中古&廃盤レコード・CDカウントダウンセール」へ。

今回最大の収穫は、メロスQのベートーヴェン全集旧盤がまとまって入手できたこと。第1&2番の1枚だけは学生時代に購入済みだったが、その時以来、どこかの中古屋で一度全曲が揃っているのを見ただけで、まさに幻の全集であった。残念ながら第13~15番は見当たらなかったが、それに躊躇している訳にはいかず、その場で一気に確保。

彼らの結成間もない時期(1960年代末~70年代初め)の録音ゆえに、アンサンブルの精度や音色の練り上げに粗さはあるが、彼らの特徴でありまた魅力でもある、いかにもドイツ風の暖かく厚みのある響きと、時に攻撃的ですらある鋭い表現意欲は、既に確立されている。こう言うと、たとえばラズモフスキー・セットであれば第1番辺りが良さそうに思えるのだが、第2番の方が圧倒的に素晴らしいところが、彼らの個性をよく表しているのかもしれない。曲によって出来に差はあるが、全体として非常に立派な全集である。

メロスQの遺産が冷遇されている、とまでは言わないが、この独インターコードの廉価盤にせよ、DGの新盤にせよ、彼らのベートーヴェンが現時点で入手難であることは、極めて残念としか言いようがない。



バリリQによるベートーヴェンのPreiser盤は、Westminsterレーベルの全集録音と同一のもの。何も考えずにライヴなどの別録音と思って手に取ったので、ちょっと残念。リマスターの音質は聴きやすく、悪くない。演奏については、改めて論ずるまでもないだろう。情感に満ちた美演である。

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アマデウスQが結成後10年ほどの間にケルンで行ったライヴ録音を集めた2枚組は、既に彼らの個性が確立されていたことを示す歴史的な記録というだけでなく、後年に渡って彼が得意とした楽曲の優れた演奏が収録されている点で、非常に価値のあるアルバム。彼らの演奏は、シューベルトですら現代の様式からするとロマンティックに過ぎるが、活力に満ちた独特の音楽は確固たる技術と音楽的確信によって裏付けられており、聴き手を納得させるに十分な説得力を持っている。1st Vnのブレイニンの奔放な音楽が彼らを特徴づけているのは事実だが、他の3人の渋い音色と卓越したアンサンブルもまた、彼らの個性。華やかさと渋さ、泥臭さと鮮やかさといった対比に加え、弦楽四重奏の枠を超えたスケールの大きな高揚感を聴くと、なるほど彼らが圧倒的な人気を持っていた団体であったはずだと、改めて思う。いずれの録音も高音がきつく、やや耳にうるさい感じはあるが、収められた演奏を味わうには不足しない。どの収録曲も彼らの個性を発揮するに十分な名曲ばかりだが、個人的には、大好きなハイドンのOp.74-1が収録されていることがとても嬉しい。後年のDG盤では少々衰えも感じられるだけに、この瑞々しい覇気はたまらなく心に響く。

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この中古市には、クラシックに関しても複数の店が出品しているのだが、なぜか今回はどの店の出品物にもイタリア合奏団のCDが目についた。収録曲を眺めて、家の棚に見当たらない楽曲が並んでいるアルバムを3枚選んで購入。

まずは、イタリアの現代作曲家の弦楽作品集。特に、ロータとモリコーネという映画音楽の巨匠2人の名がフィーチャーされている。とはいえ、収録されている作品全てがそれぞれに個性的かつ魅力的で、イタリアの現代音楽の多様さを堪能することができる面白いアルバムに仕上がっている。

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「プロムナード・コンサート」と題されたアルバムは、多彩な選曲と旋律美を前面に押し出した手馴れたアンサンブルが、弦楽合奏の粋と言って過言ではない魅力を放っている。こういう音楽は、この編成だからこそ、そしてこの団体だからこそなし得るのだろう。とても素敵な一枚である。

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ロッシーニの弦楽のためのソナタは、カラヤン/ベルリンPOの演奏(第1~3、6番の4曲のみ)しか持っていなかったので、この機会に全6曲を揃えておこうと確保。この団体のためにあるような作品だが、アンサンブルが緩くて冴えない出来だったのは意外。ドニゼッティの方が聴き映えのする演奏となっているが、どうせなら弦楽四重奏で聴きたいところ。

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theme : クラシック
genre : 音楽

とりとめのない買い物録

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、チャイコーフスキイ:交響曲第6番 M. ヤンソンス/バイエルン放送SO (BR Klassik 900123)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ハイティンク/ロンドンPO (London Philharmonic Orchestra LPO-0034)
  • ロシア・ソ連の作曲家によるピアノ音楽のアンソロジー第1集(ミャスコーフスキイ:ピアノ・ソナタ第3番、ハチャトゥリャーン:トッカータ、ショスタコーヴィチ:24の前奏曲、フレーンニコフ:5つの小品、3つの小品)ファヴォリン、ムンドヤンツ、コロベイニコフ、フレーンニコフJr (Pf) (Melodiya MEL CD 10 01963)
  • ライヴ・フロム・ザ・ルガーノ・フェスティヴァル2013(ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番、チェロ・ソナタ第2番、レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ、リスト:悲しみのゴンドラ、ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ、ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)、ドビュッシー:小組曲、オッフェンバック(グリグオーリ編):パリの喜び、サン=サーンス:動物の謝肉祭) アルゲリッチ、ピエモンテージ、J. マルグリス、モンテーロ、マルトン、トマッシ、グリグオーリ、ステッラ、ジルベルシュテイン (Pf) R. カピュソン、A. マルグリス、バラーノフ、M. グートマン (Vn) チェン (Va) マイスキー、G. カピュソン、ドブリュ (Vc) ファゴーネ (Cb) ルッツ (Fl) ジュフレーディ (Cl) ディ・トラパニ (Perc) スダーン/スイス・イタリア語放送O (Warner 0825646312207)
  • ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 75周年記念ボックスセット第3巻 1983-2007(ベートーヴェン:交響曲第9番、R. シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」~第13場、モーツァルト:レクイエムより、ミサ曲 c-moll「大ミサ曲」より、シューベルト:スターバト・マーテル g-moll、ブルックナー:テ・デウム、ショスタコーヴィチ:交響曲第1&5番、交響曲第14番) ポップ (S) マレイ (MS) ロルフ・ジョンソン (T) パーペ (B) ロンドン・フィルハーモニーcho ロット (S) M. ジョージ (B) イーグレン (S) レンメルト (A) ヴァン・デル・ヴェルト (T) ムフ (B) リンツ・モーツァルトcho モノガローヴァ (S) レイフェルクス (Br) テンシュテット、ヴェルザー=メスト、マズア、ユロフスキ/ロンドンPO (London Philharmonic Orchestra LPO-0099)
HMV ONLINEから荷物が届いた。いずれも旧譜ばかり。

M. ヤンソンスのライヴ録音は、まさに横綱相撲といった感じの堂々たる演奏。いずれの楽章も落ち着いたテンポでじっくりと表現されており、豊かな内容を持った音楽に仕上がっている。とはいえ、かつての「巨匠」然とした演奏とは異なり、終始淀みのない音楽の流れが特徴的で、味わい深くも颯爽とした感情の起伏がこれらの曲目に相応しい。熱狂的ではないが、高揚感のある熱い演奏である。

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ハイティンクの第10交響曲といえば、コンセルトヘボウ管とのライヴ録音(Q Disc 97014)が凄まじい演奏だったが、このロンドンPOとのライヴ録音はその1年後のものである。全編に漲る熱気と壮大な構成感は、この録音でも同様で、オーケストラの響きや技術的な精度こそ若干劣るものの、Q Disc盤が現時点では入手難であることを考えると、強く推薦するに値する。ハイティンクの真価を存分に味わうことのできる一枚である。

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Melodiyaレーベルの「ロシア&ソヴィエトの作曲家によるピアノ音楽のアンソロジー」というシリーズの第1巻には、ソ連音楽界の第1世代の作曲家の作品群が集められている。世界初録音となるフレーンニコフの作品以外は、既に評価の確立した有名曲ばかり。若手演奏家達による、丁寧に弾き込まれた勢いのある演奏が楽しい。

全30巻を予定している本シリーズには、やはり「知られざる作曲家」「知られざる作品」こそを期待したいところで、実際、そのような路線のリリースが続いているようだが、その点ではこの第1集の目玉はフレーンニコフ作品ということになるのだろう。しかしながら、彼の初期作品ということもあって、ショスタコーヴィチやミャスコーフスキイの亜流のように聴こえる箇所も多く、それほど興味を惹かれることはなかった。

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アルゲリッチが中心となって開催されているルガーノ音楽祭のライヴ録音は、毎年コンスタントにリリースされ続けており、その豪華な顔ぶれだけでなく、意欲的で面白い収録曲の多彩さでも注目に値するアルバムであり続けている。私はショスタコーヴィチ作品が収録されている年の物のみ購入しているのだが、2013年盤は未入手だったのでオーダー。

G. カピュソンによるショスタコーヴィチのチェロ・ソナタは、非常に均整のとれた美演。気負いのない寛いだ雰囲気が心地よく、また作品に相応しい。単なる伴奏に留まらない存在感をもったピアノも悪くない。現代の範たる演奏と言ってよいだろう。

その他の収録曲も全て、同様の高い水準のものばかり。R. カピュソンの弾くレスピーギのヴァイオリン・ソナタは、初めて聴いた曲ということもあって、とりわけ印象に残ったが、年齢を全く感じさせないアルゲリッチはもちろんのこと、それ以外の奏者も皆立派な演奏を繰り広げており、内容の詰まったアルバムである。

ただ、このルガーノ音楽祭、存続が危ぶまれる情勢とのこと(こちらの記事参照のこと)。アルゲリッチを聴くという意味ではヴェルビエ音楽祭などもあるのだが、せっかくのイベントがつまらない理由で立ち消えにならないことを願う。

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ロンドンPOの75周年記念ボックスは、同団の自主制作盤4枚を紙箱に納めたもの。この第3集をオーダーしたのは、ショスタコーヴィチの交響曲が2枚含まれていたからで、マズア盤は既に単独で架蔵済み(2005年5月20日のエントリー)だったのだが、ユロフスキの第14番が目についたからである。ところが、何とも間抜けなことに、これもまた既に架蔵済みであった。2012年8月1日のエントリーを見ると、「ロンドン・フィルPOのBOXセットに収録されていたことは分かったが、単独でリリースされていた形跡がほとんど見当たらない。余程売れなかったのだろうか、かなりネガティヴな意味でのレア・アイテムなのかもしれない。」ということで、全く印象に残らなかったのだろう。本ブログの本来の目的である「備忘」が全く達成されていない。もっとも、今回改めて聴き直し、そこまで悪い演奏ではないような気もした。

結局、初めて耳にすることになったのは、テンシュテット指揮の「第九」と、ヴェルザー=メスト指揮の宗教曲集の2枚。後者は面白い選曲ではあるが、端正で美しいものの、それ以上の感情表現に不足し(宗教曲とはいえ)、全体に物足りなかった。テンシュテットのベートーヴェンは、同じ顔合わせのマーラーなどと同様、金管楽器と打楽器が刺激的かつ切実に響く。今では聴くことのなくなった往年の演奏スタイルによるベートーヴェンを、懐かしみつつ堪能した。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

イタリアQのボッケリーニなど

  • 平尾貴四男:五重奏曲、間宮芳生:木管五重奏のための三楽章、入野義朗:「パルティータ」より アウロス五重奏団 (King KC3004 [LP])
  • 驚異のサウンド!パイプオルガンの魅力(ムーソルグスキイ:「展覧会の絵」よりプロムナード、ドビュッシー:ベルガマスク組曲より月の光、ラヴェル:ボレロ、アルビノーニ:アダージョ、J. S. バッハ:管弦楽組曲第3番よりアリア、およげ!たいやきくん(たいやきくんのテーマによるファンタジア)) 斎藤英美 (Org) (東芝EMI LF-91021 [LP])
  • コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ、ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲、チェロ・ソナタ シュタルケル (Vc) オイダス (Vn) ヘルツ (Pf) (Philips SFX-7585 [LP])
  • ボッケリーニ:弦楽四重奏曲 Op. 6-1(G.165)、Op. 58-2(G.243)、Op. 6-3(G.167) イタリアQ (Philips X-7798 [LP])
  • ベルク:弦楽四重奏曲、抒情組曲 ウィーン・アルバン・ベルクQ (Telefunken SLA 6301 [LP])
札幌で時間に余裕があるときは、狸小路7丁目にある中古音盤屋、FreshAirの店頭を覗くのが常である。ここはクラシックが主力では全くないのだが、店の軒先に並んでいる3~4箱程度のエサ箱に入っているクラシックの中古LPの中に、必ずと言ってよいほど目ぼしい音盤が紛れ込んでいるので、チェックを怠る訳にはいかない。

まず目についたのは、往年の日本人演奏家による、日本人作曲家の作品集。小出信也 (Fl)、丸山盛三 (Ob)、浜中浩一 (Cl)、山田桂三 (Hr)、戸沢宗雄 (Fg)というメンバーの名前には郷愁すら感じてしまう。特にファゴットの戸沢氏は、私が住んでいた当時の札幌交響楽団を代表する名奏者でもあったのでなおさら。生真面目に整えられたアンサンブルは、音色の多彩さには欠けるものの、「わが国を代表する演奏家達による」といった類の昭和の煽り文句がいかにも似合う立派な演奏である。いずれの作品も平明な音調ながら、それぞれの音楽的背景を感じさせつつ、どこか耳馴染みのある和風の旋律が聴こえてくるという点で、興味深いアルバムである。


東芝EMIの「プロユース・シリーズ」という、高音質アナログテストレコードの一枚であるオルガン作品集は、「およげ!たいやきくん」をパイプオルガンで演奏しているという“ネタ”だけで購入したもの。解説書も徹底して録音技術に関する記述ばかりであり、完全にオーディオマニアのために作られた音盤と言ってよいだろう。確かに見事な音がしているが、残響のふくよかさや雰囲気に欠けるのは、当時の録音思想的に仕方のないところなのだろうか。編曲および演奏については、とりたててコメントすべき点はない。「およげ!たいやきくん」も、タイトル以上の“ネタ”たり得なかった。


「松脂の飛び散る音が聞こえる」録音で有名なシュタルケルのコダーイのアルバム(2回目;1950年)は、未架蔵だったこともあって今回気の赴くままに購入。軽くネットで調べてみると、このアルバムはCD化されているものの、現時点では入手があまり容易ではない模様。録音の品質もさることながら、何より演奏内容が(有名な無伴奏だけでなく、他の2曲も含めて)極めて優れているので、これは何とももったいないことだ。素晴らしい演奏なのは“お国もの”だからだと単純に言いたくはないのだが、しかし、あらゆるフレーズの隅々まで心からの共感をもって自然に歌われているのを聴くと、そうとしか言いようがないような気もする。盤面の状態が悪く、針飛びもあったのは残念だが、それでも架蔵しておく価値のあるアルバムである。


今回の最大の収穫は、イタリアQによるボッケリーニの弦楽四重奏曲集である。これは、2016年7月10日のエントリーで紹介した幸松 肇氏の著作で知った音盤で、機会があれば是非聴いてみたいと思っていたもの。こんなにあっさりと巡り合えるとは思ってもみなかった。CDにもなっているようだが、イタリアQの全録音を集めた大きなBOXセットでしか入手できないようなので、運が良かった、の一言に尽きる。「典雅」という形容が相応しい、気品のある歌心と明朗かつ闊達な演奏は、ボッケリーニの魅力と真価を余すところなく伝えてくれる。名盤。


ウィーン・アルバン・ベルクQのデビュー・アルバム(商業的にハイドンの「皇帝」&「騎士」が先に発売された)であるベルクの2曲は、もちろんCDで持っており、幾度となく聴き込んだものだが、なんとなくオリジナル盤LPでも持っておきたくなって購入。

theme : クラシック
genre : 音楽

実家のLP

  • ブラームス:ハンガリー舞曲集第5、6、7、12、13、19、21、1番、ドヴォルザーク:スラブ舞曲集第1、3、8、10、9番 ライナー/ウィーンPO (London SLC 1035 [LP])
  • サラサーテ:カルメン幻想曲、ツィゴイネルワイゼン、サン=サーンス:ハバネラ、序奏とロンド・カプリチオーソ リッチ (Vn) ガンバ/ロンドンSO (London SLC 1039 [LP])
  • シューベルト:交響曲第5&7(8)番 カラヤン/ベルリンPO (EMI EAC-55053 [LP])
  • ヴィヴァルディ:合奏協奏曲「四季」、パッヘルベル:カノン アルマン (Vn) オーリアコンブ/トゥールーズCO (EMI EAC-55007 [LP])
  • J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2&1番、2つのヴァイオリンのための協奏曲、管弦楽組曲第3番よりアリア シェリング、アッソン (Vn) マリナー/アカデミーCO (Philips 18PC-5501 [LP])
  • モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第2番、ハイドン:ヴァイオリン協奏曲第1番 ファン・クーレン (Vn) ロス=マルバ/オランダCO (Philips 25PC-5161 [LP])
  • “ツィゴイネルワイゼン”決定盤・ヴァイオリン名曲集 (RCA RMF-2555~56 [LP])
先月、所用で札幌に出張した際に立ち寄った実家で、プレイヤーが使えなくなって以来20年以上死蔵されていたLPの一部を、目に付いたところから適当に選んで持ち帰ってみた。

ライナー/ウィーンPOのハンガリー舞曲集は、小学生の頃から頻繁に針を落とした一枚。盤面が明らかに擦り減っていて、しかも瑕だらけながら、針飛びもなく思ったより良い音がしたのが嬉しい。

ぎりぎりと締め上げられたような凄みのある第5番の冒頭を聴いただけで、20年振りにもかかわらず、アルバムの全てが一瞬にして脳裏に蘇る。改めて冷静に聴いてみると、このただ事ならぬ鋭利さは極めて異端の演奏には違いないのだろうが、その後聴いたどの演奏にも感じていた微妙な違和感のようなものがこの演奏にはなく、全てにおいて納得できてしまう。これぞまさに刷り込み。


ルッジェーロ・リッチのヴァイオリン名曲集も、擦り減る程度には繰り返し聴いたレコードである。現在の水準からすると細部の精度は随分といい加減なものだが、曲芸的なあざとくも愉しい雰囲気と、臆面もない歌謡的な歌心は、今となっては失われてしまった旧き佳き時代の名人芸に他ならない。ライナーといいリッチといい(他にバルシャイ/モスクワ室内Oの「四季」など)、こういう強烈な表現意欲に貫かれた濃口の音楽が自分の原体験となって現在の音楽的な嗜好が形成されていることを再確認した次第。


カラヤンのシューベルトは、高校生の頃に第5番を弾いたことがあって、その際に購入したような記憶がある。廉価盤しか手の出なかった学生にとって、「カラヤン」の名はそれだけで水準以上の内容を保証してくれる時代だった。もっとも、その録音に対する評論家の酷評ももれなくセットであったが、それもまた楽しかったものだ。このシューベルトは1970年代後半の録音だが、大編成のオーケストラによる地鳴りのするような重厚な響きと、徹頭徹尾ロマンチックな歌に溢れた、カラヤンの典型のような演奏である。これを現代の視点で批判することは容易だろうが、この音楽が持つ妖しい魅力を否定することはそう簡単にはできない。


私にとっての「四季」といえば、一も二もなくバルシャイ/モスクワ室内Oなのだが、たぶん、それではいけないと思って違う演奏を買ってみたのがオーリアコンブ盤だったのだと思う。なぜこの団体を選んだのかは忘却の彼方だが、一聴して「なんか変な演奏」だと思い、その後ほぼ全く聴かなかったことは覚えている。今回改めて聴いてみて、やはり非常に個性的な演奏であることを再確認した。具体的に表現することができないのだが、「おフランスの演奏」という漠然としたイメージが実にしっくりくる。また、楽譜の版が違うのか、あるいはオーリアコンブが手を入れているのかはわからないが、「夏」の第3楽章など、聴き慣れない箇所もある。イ・ムジチ的なヴィヴァルディとは全く違う世界なので、戸惑ってしまうのは事実。ただ、アンサンブルの精度は高く、かつ隅々まで音楽的であることは特筆すべきだろう。どこか静謐さを感じさせるパッヘルベルのカノンも含めて、異端ではあるのだろうが忘れられてしまうには惜しい演奏である。


シェリングのバッハは、もしかしたら弟が買ったものかもしれない。聴いた記憶が全くない。いわゆる「定盤」の類なのだろうが、今となるとかなり前時代的な、ロマンチックに過ぎる演奏ではある。それでもなお、品の良い節度が保たれているのはいかにもシェリングらしいのだが、それを物足りないと思ってしまうのは、私自身の嗜好が偏ってるということなのだろう。


ファン・クーレンのデビュー・アルバムも、弟がハイドンの協奏曲を習っていた時に買った一枚だと思われる。まだ10代の“天才少女”というアイドル的な扱いだっただろうことはジャケットの雰囲気からも窺えるが、A面のモーツァルトを聴く限りは、技術的な問題はないものの、まだまだ子供の音楽という感は否めない。ところがB面のハイドンでは一変して溌剌とした活力が漲る、骨太な熱い音楽が繰り広げられる。グリュミオーの老獪な演奏とは対極にあるが、聴いた後の爽快感は圧倒的にファン・クーレンの方が上で、それがまたこの協奏曲には相応しいように思える。


最後に、どういう経緯だったのかは覚えていないが、親が買ってきた「ヴァイオリン名曲集」。内容は以下の通り:
【Disc 1:フリードマン (Vn)】
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン(サージェント/ロンドンSO)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ(ヘンドル/シカゴSO)
サン=サーンス:ハバネラ(サージェント/ロンドンSO)
ディニーク(ハイフェッツ編):ホラ・スタッカート(B. スミス (Pf))
タルティーニ(フランチェスカッティ編):コレッリの主題による変奏曲(B. スミス (Pf))
チャイコーフスキイ:憂うつなセレナード(B. スミス (Pf))
リームスキイ=コールサコフ(ハイフェッツ編):くまばちは飛ぶ(B. スミス (Pf))
クライスラー:ポルポラのスタイルによるメヌエット(B. スミス (Pf))
モーツァルト:ロンド C-dur(B. スミス (Pf))
ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲(B. スミス (Pf))
【Disc 2:アッカルド (Vn)】
J. S. バッハ(ウィルヘルミ編):G線上のアリア(ベルトラーミ (Pf))
サラサーテ:サパテアード(ベルトラーミ (Pf))
パガニーニ:24のカプリースより第13番
ノヴァーチェク(ダヴィソン編):常動曲(ベルトラーミ (Pf))
ポルディーニ(クライスラー編):踊る人形(ベルトラーミ (Pf))
パガニーニ:24のカプリースより第24番
ヴィエニャフスキ:スケルツォ・タランテラ(ベルトラーミ (Pf))
ヴィターリ:シャコンヌ(ベルトラーミ (Pf))
バッジーニ:妖精の踊り(ベルトラーミ (Pf))
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番より第3楽章(ボンコンパーニ/ローマPO)
文字通りの「名曲集」で、こういった類のアルバムは、今に至るまで私が自分で買ったことはない(おかげで、子供の「お手本」となるような音盤がなく、一曲毎に選択する羽目になる)。今思えば、これで満足していたから、それ以上を求める気にならなかったということなのかもしれない。名曲集としては必要にして十分な選曲だろう。

ハイフェッツの愛弟子エリック・フリードマンの演奏は、派手な聴き映えのする系統のものだが、ボウイングが滅法荒く、私は全く好まない。一方のアッカルドは、“パガニーニ弾き”として鳴らしていた時代の録音ということもあってか、最良の意味でのヴィルトゥオージックな輝かしさを持った、愉しく気持ちの良い演奏である。

theme : クラシック
genre : 音楽

小澤征爾 若き才能とつむぐ四重奏(カルテット)

  • 小澤征爾 若き才能とつむぐ四重奏(カルテット)(録画 [BS11(2016.9.18)])
随分前に視聴していたのだが、備忘を兼ねて簡単にメモ。

小澤征爾が主宰するスイス国際音楽アカデミーは、弦楽四重奏に限定して開講され、既に10年以上になるとのこと。番組は、受講生が集った弦楽合奏(指揮は小澤)の演奏風景から始まる。

恩師斎藤秀雄の教えが小澤の弦楽四重奏に対する特別な想いに繋がっていることが、老いてなお情熱的な口調で小澤自身によって語られる。また、受講生達の音楽に対する若々しい想いなども、美しい風景の合間に挿入される。

しかしこの番組のメインは、何と言っても実際のレッスン風景に尽きる。特に元東京Qの原田禎夫氏の深い経験と見識に支えられた雄弁かつ繊細で、情熱的な指導は、番組では断片しか取り上げられていないにもかかわらず、極めて刺激的で示唆に富んでおり、素晴らしい。

昨年末にも再放送されていたようだが、カルテット好きには、機会があれば是非観てもらいたいドキュメンタリーである。

theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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