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NHKでショスタコーヴィチ

  • ららら♪クラシック「ショスタコーヴィチの映画音楽」 (録画 [NHK ETV(2020.5.1)])
  • ショスタコーヴィチ:バレエ組曲第1番、チェロ協奏曲第2番、交響曲第5番 ワイラースタイン (Vc) パヤーレ/NHK SO (2019.4.24 録画 [NHK ETV(2020.5.17)])
緊急事態宣言が続く中、人民が抑圧されているとでも言いたいのか(笑)、NHKでショスタコーヴィチ関連の番組が続いた。

まずは、ららら♪クラシック。このようなテーマが、いわば初心者向けの番組で取り上げられたことにびっくり。内容も、個人的には気に入らない言い方や話の展開がなかったわけではないが、目くじらを立てるほどでもない。番組中で使われていた映像の中では、一度も観たことのなかった「第1軍用列車」の1シーンが目を惹いたが、それ以外にもオリジナルの映像がふんだんに使われていたのが嬉しい。

ただ、楽曲分析に時間を割くくらいなら、ジダーノフ批判後の“お仕事”にもう少し言及してもよかったかも。ショスタコーヴィチはゴルゴ13的な“プロフェッショナル”なので、「誰からのどんな依頼でも」作曲したという文脈の方が、視聴者の関心が高いような気がする。また、若い頃の映画館でのアルバイトのエピソードから、彼の作品に内在する映画音楽向きの特性などを論じても面白かったように思う。権利関係があるのだろうが、「ファンタジア2000」の「鉛の兵隊」とか。

番組中で全曲演奏されたのは、「ステージ・オーケストラのための組曲」(アトヴミャーン編)より「第2ワルツ」(沼尻竜典/NHK響)と、映画音楽「馬あぶ」より「青春(ロマンス)」(フォルトゥナートフ編)(神尾真由子 (Vn)、大越崇史 (Pf))の2曲。

もう一つは、クラシック音楽館で放送されたNHK交響楽団第1933回定期公演。それほど目新しい選曲ではないと思ったのだが、チェロ協奏曲第2番でのオーケストラの集中力の低さ(これは多分に客席の雰囲気が伝染したようにも思えるが)を見るに、まだまだショスタコーヴィチの本丸は多くの人々にとって縁遠いものなのかと感じた次第。

バレエ組曲第1番は、言うまでもなく端正な演奏なのだが、多少破綻してもいいから弾けてもらわないと、つまらない。編成の大きさがネックにはなるが、アマオケ向けの曲なのかもしれない。ちなみに、「バレエ『明るい小川』からの抜粋」というアナウンスは、甚だ不正確。また、パヤーレが語っていた「ショスタコーヴィチの6曲のバレエ」という言葉も少し不思議。3曲+バレエ組曲第1~3番ということなのだろうか。

チェロ協奏曲第2番は、これぞショスタコーヴィチという音楽で大好きな作品の一つなのだが、独奏が力演しているだけに、オーケストラとの間に隙間風が吹いているような歯痒さが残る。ホールで聴いていれば、響きの繊細な美しさだけで満足できたのかもしれないが。

これら2曲に比べると、さすがに交響曲第5番はオーケストラも手慣れた作品だけに、指揮者の意図をよく汲んだ熱演。ゲスト・コンサートマスターのキュッヒルが頭まで真っ赤にして弾いている姿や、終楽章のコーダでチェロ・パートが腰を浮かせて前のめりでゴリゴリ弾いている様子に、テレビ越しながら興奮させられた。とかく議論のある終楽章コーダだが、インタビューでパヤーレが「感動的」と語っていた通りの音楽。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

シフのベートーヴェン

  • ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1、5番、ピアノ・ソナタ第24番「テレーゼ」 シフ (Pf) カペラ・アンドレア・バルカ (2019.11.8 録画 [NHK ETV(2020.1.5)])
  • ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2、3、4番 シフ (Pf) カペラ・アンドレア・バルカ (2019.11.7 録画 [NHK ETV(2020.1.12)])
いずみホールで昨年11月10日に行われた公演(第1&5番)を聴きに行っていた義父から、「シフのベートーヴェンがとにかく素晴らしかった」と聞いていたので、クラシック音楽館の放送予定を見てすぐに録画予約。

第1番の冒頭から、極上の音楽が溢れ出す。こういう演奏こそ、ライヴで聴きたかった。「ベートーヴェンのピアノ協奏曲」は私の主たる関心の範疇外であるのは確かだが、もう少し多方面にアンテナを張っておかないと、このような“一生もの”の経験を逃してしまうと痛切に反省。

カペラ・アンドレア・バルカは、「アンドラーシュ・シフ」のイタリア語読みがその名称となっていることからも分かる通り、“シフのための”団体である。ツィマーマンがショパンのピアノ協奏曲で聴かせているような細部への拘りを徹底するためのパートナーというよりは、音楽的な阿吽の呼吸を共有するパートナーという感じ。トランペットは旧式の楽器を使っているものの、基本的にはピリオド・アプローチを適切に反映した現代風のモダン楽器によるアンサンブルである。木管楽器の色合いが少し薄いような気はしたが、独奏のシフと一体となった音楽のしなやかさは無類の美しさ。ピアノはベーゼンドルファーで、そのいぶし銀の響きとオーケストラの響きの調和は、聴き慣れた協奏曲とは次元が違う。

聴き手の好みはあろうが、5曲全てが水準の高い名演。室内楽的な緊密さとシンフォニックな壮大さとが両立しつつ、終始シフならではの叙情が溢れ出す音楽は、華やかな滋味とでもいった大人の味わい。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、当分この録画だけで十分。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Beethoven,L.v. 演奏家_Schiff,A.

NHK交響楽団第1911回定期公演

  • イツァーク~天才バイオリニストの歩み~ (2017 録画 [NHK ETV(2019.7.5)])
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ヴァーインベルグ:交響曲第12番「ショスタコーヴィチの思い出に」 グルズマン (Vn) 下野竜也/NHK SO (2019.4.24 録画 [NHK ETV(2019.7.14)])
近年、その活動を耳にすることがなかったパールマンだが、ドキュランドへようこそで紹介されたアメリカのドキュメンタリーでごく最近の姿を見ることができた。てっきり年齢的な衰えで活動を縮小しているのだとばかり思い込んでいたが、演奏の鮮やかさに衰えは全く感じられなかった。そもそも彼は1945年生まれなので、まだ後期高齢者ですらない。

さて、このドキュメンタリーでは複数のテーマ(「ユダヤ人」「妻トビー」「障がい」「演奏家としてのキャリア」「近年の活動」)が扱われているが、それぞれに興味深い映像が盛り込まれており、たった45分の番組にもかかわらず極めて充実した内容となっている。楽器の表板の裏にヒトラーの名が書かれている場面などはかなりの衝撃ではあったが、私は専ら近年の演奏に目を奪われた。ヴァイオリニストに限らず、単一の楽器には物足りなくなって指揮者に転向する名奏者は少なくないが、パールマンは徹底してヴァイオリン一筋であるところが、私の好むところである。彼の演奏姿からは、いまだにヴァイオリンを弾く愉しさや悦びが溢れ出している。冒頭でアメリカ国歌を楽しそうに弾くパールマンを観ると、あぁヴァイオリンっていいな、と改めて思う。


NHK交響楽団第1911回定期公演は、その素晴らしいプログラムで私の知人も数多く足を運んだようだが(そのわりに、客席には空きが目立ったらしい……)、その様子がクラシック音楽館で放送された。この種の番組にマニアックな深い情報を求めるものではないが、とはいえ、明らかにマニアックな意図を持って組まれたプログラムを放送するのだから、もう少し深入りした解説があってもよかったように思う。少なくとも下野氏には語るだけの知識や思い入れがあっただろう。たとえば、ヴァイオリン協奏曲の第3楽章の作曲直前にヴァーインベルグの義父であったミホエリスの殺害事件があったこと、そしてそれはジダーノフ批判の時期であったことなど、互いの壮年期にそういう時代を共に過ごしたことを念頭において、あの交響曲を聴けば、どこかとりとめのない印象にも聴き手それぞれが意味付けをできたようにも思う。

交響曲の演奏は、非常に手堅く、隅々まで明晰に処理された立派なもの。分裂した躁鬱の表現にはもっと極端さがあってもよいとは思うが、実演はおろか録音でも聴かれることの稀な作品のライヴとして、不満は全くない。ヴァイオリン協奏曲の方は、まるで譜面台にかじりついているかのような独奏からは何も感じることができず(協奏曲の独奏で楽譜を見ること自体に違和感があるわけではない)、オーケストラも悪い意味での安全運転に終始した、ただただ凡庸な演奏。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Weinberg,M.

年始の視聴録

  • ドキュメンタリー『ショルティ/メイキング・オブ・マエストロ』、ベートーヴェン:交響曲第1番、シューベルト:交響曲第6&7番、ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、チャイコーフスキイ/交響曲第6番 ショルティ/シカゴSO、バイエルン放送SO (EuroArts 2087898 [DVD])
  • 玉木宏 音楽サスペンス紀行~ショスタコーヴィチ 死の街を照らした交響曲第7番(録画 [NHK BSプレミアム(2019.1.2)])
  • スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2&6番、ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 ユジャ・ワン (Pf) ヴェンゲーロフ (Vn) パピアン (Pf) (2013.4.17/2013.6.12 録画 [NHK BSプレミアム])
  • モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番より第3楽章、ベートーヴェン:七重奏曲 チュマチェンコ (Vn) 鈴木学 (Va) 中木健二 (Vc) 池松宏 (Cb) 斎藤雄介 (Cl) 福士マリ子 (Fg) 福川伸陽 (Hr) 菊池洋子 (Pf) (2015.4.27 録画 [NHK BSプレミアム])
  • N響 伝説の名演奏~リクエスト特集~(チャイコーフスキイ:交響曲第5番、ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より、ベートーヴェン:交響曲第7番 スヴェトラーノフ、シルヴェストリ、サヴァリッシュ/NHK SO (1997.9.6/1964.4.5/2004.11.3 録画 [NHK ETV(2018.12.23)])
  • 弦楽四重奏で楽しむジャズ(Footprints、Milestones、Ana Maria、Nature Boy) エベーヌQ (2017.10.10 録画 [NHK ETV(2019.1.20)])
  • スヴィリードフ:「吹雪」、スクリャービン:ピアノ協奏曲、練習曲 Op.8-12、グラズノーフ:交響曲第7番 コロベイニコフ (Pf) ヴェデールニコフ/NHK SO (2018.12.1 録画 [NHK ETV(2019.2.3)])
  • 札幌交響楽団 アルプス交響曲 (2018 録画 [BS朝日(2019.1.5)])
2月も終わろうかというタイミングで“年始”というのも間抜けだが、1月中に視聴した録画等をまとめておく。

まずはアリアCDから届いた「ショルティ生誕100年記念ボックス」。ショルティは1912年の生まれなので随分前のリリースになるが、ボックスというよりは、ショスタコーヴィチの交響曲第9番を収録したDVD目当ての購入である。この映像自体はかなり以前からチェックしていたが、なぜかPAL形式の物しか見当たらなかった。特に強く観たいわけではない映像も含まれているものの、この機会を逃さぬようオーダー。

まずはショスタコーヴィチとチャイコーフスキイの1枚(Disc 3)から。これは1990年にミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニーでバイエルン放送交響楽団を指揮したもの。観ているだけで疲れてしまうようなショルティの精力的な棒さばきはいつも通り。ショスタコーヴィチは第2楽章がいささかせわしないものの、その他は抜群のスピード感で一気呵成に聴かせる。チャイコーフスキイも同様で、一切の妥協なく剛毅に突き進むショルティの音楽は「悲愴」としては異端の部類かもしれないが、第3楽章から第4楽章への接続など、独特の説得力を持っている。

Disc 1のドキュメンタリーは、ショルティ最晩年の音楽活動を記録したもの。過去の映像も適宜挿入されるが、容姿こそ老人のそれであるが、指揮ぶりや音楽に対する熱意などに年齢を全く感じないのには驚かされる。史料として取り立てて貴重なものではないが、音楽家ショルティの魅力を再確認させてくれる魅力的な映像作品である。

このボックスで最も興味深かったのは、注文時には特に気にも留めていなかったシカゴ響との1970年代の映像(Disc 2)であった。ショルティの音楽的な志向はここでも変わりないが、シカゴ響の極めて高度な合奏能力と、ショルティの意図を的確に音化するパートナーシップには、ただひたすら驚嘆するしかない。当時の常識的な演奏からすると、シューベルトにしては鋭利過ぎる響きが耳につくものの、ピリオド楽器による演奏に慣れた現代の耳にはむしろ違和感がないのが面白い。


年始早々インフルエンザに罹患してしまい、寝込んでいる内に「玉木宏 音楽サスペンス紀行」を録画しそこなったのは痛恨の極み。知人のご厚意でとりあえず観ることはできた。

これは2017年3月25日にBSフジで放送されたドキュメンタリー「レニングラード 女神が奏でた交響曲」(2018年3月30日のエントリー)と同様の、第二次大戦(大祖国戦争)時のレニングラード包囲戦とショスタコーヴィチの交響曲第7番とを題材とした番組である。アメリカでの西側初演を巡るスパイ映画まがいの経緯をクローズアップしていたのは面白かったが、新たな史実の類はないので、ショスタコーヴィチ・ファンの多くにとっては狂喜乱舞するほどの内容ではない。しかしながら、丁寧な取材に基づいた映像の訴求力は強く、当時の聴衆が受けた感銘の一片にしか過ぎないにせよ、交響曲第7番を特別な作品と見做すに足る思い入れを視聴者に与えてくれる。ただ、特に第1楽章に「(スターリンを含む)悪の表象」を聴き取ることに敢えて異論はないが、たとえば第3楽章などは純粋に愛国的な感情の発露と取る方が自然で、その点についての掘り下げがもう少しあってもよかったような気はする。玉木宏は声も姿も格好良かったが、番組を通してかけていたショスタコーヴィチ風の眼鏡は、ちょっと微妙だったかも。

上記ドキュメンタリーのついでに、クラシック倶楽部の過去の録画も見せていただいた。ユジャ・ワンのスクリャービンは、やや健康的な感じはするものの、表現の多彩さとスケールの大きさが格別。ヴェンゲーロフのベートーヴェンは、ただひたすらに美しい。名教師として知られるチュマチェンコと日本の若手奏者達による室内楽は、チュマチェンコの安定した貫禄の弾きぶりに目を奪われた。さすがにベートーヴェンのスケルツォ楽章では無傷というわけにはいかないが、全曲に渡ってこれぞ室内楽という細やかな気配りが行き届いたアンサンブルは、寛いだ愉悦感に満ちていて聴き応えがあった。

クラシック音楽館で年末に放送された「N響 伝説の名演奏」では、断片ではあったがシルヴェストリの「新世界より」というお宝映像が流れた。ルーマニア放送響とのショスタコーヴィチの交響曲第10番(Electrecord)に聴かれる異様な興奮がどのように導き出されていたのか、その片鱗を窺うことができた。使用スコアがポケットスコアであったのも興味深かった。スヴェトラーノフのチャイコーフスキイ、サヴァリッシュとの最後の共演は、これまでにも何度か放送されている。

本編のNHK交響楽団第1899回定期公演には関心がなかったのだが、その後の「コンサート・プラス」で取り上げられたエベーヌQによるジャズのスタンダード集だけはしっかりと録画。ヴィオラがヘルツォクからシレムに交代して以降のこの団体を聴くのは、恥ずかしながらこれが初めて。視覚的にも強烈な個性を放っていたヘルツォクに比べるとインパクトという点では劣るが、弦楽四重奏のヴィオラとしては十二分にバランスのとれた存在感があり、弦楽四重奏団としてのクォリティを高い水準で維持し、発展し続けていることに感心した。それにしても彼らの編曲は、どれをとっても非常にセンスが良い。楽譜に記してあることをただ弾くだけで彼らの演奏を再現できるわけではないことを理解しつつも、いつかまとめて出版されることを強く強く望みたい。

年始…ではなく2月の放送だが、NHK交響楽団第1900回定期公演はロシアの秘曲集といったプログラムで、要保存の内容。スヴィリードフの「吹雪」は知る人ぞ知る作品だが、まさか実演で取り上げられるとは思ってもみなかった。フェドセーエフ/ウィーン響やスヴェトラーノフ/ソビエト国立響の演奏で数曲の映像を観たことはあるが、全曲の映像というのはロシア以外では極めて珍しいのではないだろうか。フェドセーエフの4種類の録音に親しんだ耳にはあまりにも無味無臭に感じられるが、作品の旋律美は十分に表出されており、この曲を知らない聴衆に訴えかけるところは大だったに違いない。コロベイニコフをソリストに迎えたスクリャービンの協奏曲は、オーケストラも一体となって繰り広げられるロシア風の不健全さに満ち満ちた音響世界が素晴らしい、雰囲気豊かな名演。アンコールでも、気取った上っ面では隠し切れない野性的な体臭が漂ってくるような音の奔流に惹きつけられた。グラズノーフの交響曲第7番は立派な演奏ではあるが、作品自体がいささか焦点の定まらない音楽であるだけに、指揮者の手堅さは伝わったものの、オーケストラの魅力が十分に引き出されたとは言い難い。

北海道では年末(12月22日)に放送された、マティアス・バーメルト氏の札響の新首席指揮者就任を記念してのドキュメンタリーが、年始にBSで放送された。リハーサル中心の構成ながらも、深い音楽ファンには物足りない程度の掘り下げではあったが、それでもウィンドマシンのくだりなど、この種のドキュメンタリーとしては満足な内容。私が札幌の厚生年金会館や市民会館、そして道庁前のグリーンコンサートなどに足を運んでいた岩城宏之氏の時代とは、色々と隔世の感がある。札響の今後さらなる発展を祈念いたします。

theme : クラシック
genre : 音楽

NHK交響楽団第1886回定期公演・ラトル/ベルリンPO

  • トルミス:序曲第2番、ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番、ブルックナー:交響曲第1番 トラーゼ (Pf) P. ヤルヴィ/NHK SO (2018.5.18 録画 [NHK ETV(2018.7.8)])
  • ハイドン:ピアノ・ソナタ第50番より第2楽章、ラフマニノフ:楽興の時第5番、シベリウス:悲しきワルツ ポゴレリチ (Pf) (2017.10.24 & 25 録画 [NHK ETV(2018.7.8)])
  • サイモン・ラトルとベルリン・フィル~16年の軌跡~ (2017 録画 [NHK BSプレミアム(2017.7.16)])
  • マーラー:交響曲第6番 ラトル/ベルリンPO (2018.6.19 & 20 録画 [NHK BSプレミアム(2017.7.16)])
  • ヴァルトビューネ2018(ガーシュウィン:キューバ序曲、フォーレ:パヴァーヌ、カントルーブ:「オーベルニュの歌」より、ハチャトゥリャーン:バレエ「ガヤネー」より「ゴパーク(第3組曲第6曲)」「クルドの若者達の踊り(第3組曲第2曲)」「ガヤネーのアダージョ(第1組曲第7曲)」「レズギンカ(第1組曲第8曲)」、レスピーギ:交響詩「ローマの松」、モンテヴェルディ:「かくも甘い苦悩が」、エルガー:「威風堂々」第1番、スーザ:自由の鐘、リンケ:ベルリンの風) コジェナー (MS) ラトル/ベルリンPO (2018.6.24 録画 [NHK BSプレミアム(2017.7.16)])
クラシック音楽館で放送されたNHK交響楽団第1886回定期公演を、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番目当てで録画。この作品は、N響にとって第1661回定期公演(2009年12月5日)以来となる。ゲルシュタインの独奏とデュトワの指揮によるその演奏は非常に整ったものだった(2010年1月14日のエントリー)が、今回のトラーゼは弱音に傾倒したかなり個性的な音楽を繰り広げている。率直に言って、指回りはいまひとつで、第1楽章を聴く限りはもたつくとまではいかないまでも滑舌の悪さが気になった。しかしながら、遅めのテンポで奏でられる第2楽章は弱音の多彩さが際立つ非凡な演奏。オーケストラ、とりわけホルンにとっては殺人的なテンポだが、温かみのある緊張感に貫かれた音楽は極めて印象的である。終楽章は、第1楽章と同様。アンコールのスカルラッティでは、再び第2楽章の世界。

トルミスの序曲第2番は、録音(2010年12月6日のエントリー)もあるパーヴォお得意のレパートリー。颯爽とした熱気溢れる演奏である。ブルックナーの第1番は、まるでトルミスに呼応しているかのような、若々しい溌剌さに貫かれた力強い音楽で、いわゆるブルックナーらしさとは距離のある個性的な解釈。

「コンサート・プラス」は、正暦寺福寿院客殿で収録された「イーヴォ・ポゴレリチ in 奈良」の後半。全編は、過去にクラシック倶楽部でも放送されている。とりわけハイドンが印象に残った。

プレミアムシアターでは、ラトルのベルリン・フィル首席指揮者退任に伴うドキュメンタリーと2つの演奏会というボリュームのある特集が放送された。

さすがにカラヤン時代のベルリン・フィルについては、その全貌とは言わないまでも一般的なイメージ程度のことは私でも共有できていると思うのだが、アバド時代以降についてはよく知らない、というのが正直なところ。ラトルとオーケストラとの関係や、ラトルの音楽的志向について、このドキュメンタリーは短いながらも的確に整理して提示しているとは思うのだが、アバド時代との違いのような視点が個人的には欲しかった。それにしても、毒を吐く団員達の顔を見ていると、指揮者は大変だなぁと改めて思う。

さよなら公演のマーラーは、細部に至るまで緻密でありながら、壮麗かつ余裕のある響きで構築される大局的な造形とスケール感が見事としか言い様のない、このコンビの到達点に相応しい名演。

首席指揮者としてのラトル最後の演奏会となった「ヴァルトビューネ2018」は、選曲も気が利いていて楽しいが、前半と後半とで全く趣の異なる作品を、それぞれ鮮やかかつ模範的に、しかもやすやすと演奏してしまうオーケストラの圧倒的な機能と、それを思い通りに使いこなしている指揮者の存在感が際立つ。本編最後の「ローマの松」は8月14日のエントリーで紹介したシャイー指揮の「ヴァルトビューネ2011」でも取り上げられていたが、どちらもそれぞれに豪壮で巨大な響きをもって聴く者を圧倒する凄演には違いないものの、このクライマックスに漂うどこか寛いだ雰囲気はラトルとベルリン・フィルとの関係性を象徴しているようにも感じられ、このコンビに関心を抱いてきたとは言い難い私ではあるが、名残惜しい余韻と共に視聴し終えた。

theme : クラシック
genre : 音楽

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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