【YouTube】73年のキンテートの映像

ピアソラの演奏活動を、60年代の第一次キンテート(五重奏団)、そして80年代の第二次キンテートを抜きにして語ることは不可能である。実験的な活動を含め、キンテート以外の様々な編成も意欲的に試し続けたピアソラであるが、キンテートのメンバーは常にその中核であり続けた。

第一次キンテートが解散し、九重奏団も短期間で活動停止してしまった後の1973年に、1年に満たない活動期間ではあったが、キンテートが再結成された。現在、残されている音源は「天使の死」(milan)というアルバム1枚のみ。アグリ、キチョ、マルビチーノといったおなじみのメンバーに加えて、九重奏団でも圧倒的な存在感を放ったタランティーノがピアノを務めていることが目を引き、また実際にタランティーノのキャラクターがキンテートの音楽を決定づけているという点で、ピアソラ・ファンならばこのキンテートを聴き過ごす訳にはいかない。

その“73年のキンテート”の映像が、YouTubeにアップされていた。テレビ番組のようだが、親密でリラックスした雰囲気のスタジオで繰り広げられる演奏の質は、非常に高い。重厚なタンゴのリズム感を持ちつつも、軽やかにスウィングするタランティーノのスタイルが、いつものピアソラと一味違った趣きを持っている。「アディオス・ノニーノ」のピアノ・ソロや、「ブエノスアイレスの秋」のインプロヴィゼーションは上述したアルバムとは大きく異なっており、このアンサンブルが特筆すべき自由度を持っていたことも窺える。

「トード・ブエノスアイレス」や「アルフレド・ゴビの肖像」など、他に映像のない曲が含まれていることも嬉しい。ただ、画質や音質は劣悪で、商品化に耐えるものでは全くないことが残念。インターネットのおかげで観ることのできた映像だろう。投稿者に感謝!

ブエノスアイレスの夏ブエノスアイレス午前零時
ルンファルドトード・ブエノスアイレス
フラカナパアルフレド・ゴビの肖像
アディオス・ノニーノブエノスアイレスの秋
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theme : ワールド・ミュージック
genre : 音楽

tag : Tango_Piazzolla,A.

【YouTube】オブラスツォーヴァのスヴィリードフ歌曲リサイタル

1月20日のエントリーに続き、YouTubeで見つけたスヴィリードフの歌曲を。スヴィリードフ自身のピアノ伴奏でオブラスツォーヴァが歌うという、非常に貴重な動画である。テレビ番組なのだろうが、冒頭は俳優のスモクトゥノフスキイが話をしている。余談ではあるが、彼はショスタコーヴィチが音楽を担当した映画「ハムレット」の主役である。

初期の歌曲が中心のプログラムだが、オブラスツォーヴァは、気高い冷ややかさを感じさせる鋭い声の魅力を巧みに発揮しつつ、各曲を見事に歌いこなしている。スヴィリードフのピアノは、既に高齢であることもあって、率直に言ってそれほど達者ではないものの、武骨ながらも和声の多彩な響きが印象的な“味のある”伴奏である。

スヴィリードフの歌曲の魅力がぎっしりと詰まった、とても素晴らしい映像である。

  1. [03:34]「森は紅の装いを捨て」(А. プーシキン詩)
  2. [07:30]「冬の道」(А. プーシキン詩)
  3. [10:25]「予感」(А. プーシキン詩)
  4. [14:30]「イジョールィに来りて」(А. プーシキン詩)
  5. [16:57]「ニジニ・ノヴゴロドにて」(Б. コルニロフ詩)
  6. [20:40]「涙」
  7. [23:30]「Как прощались, страстно клялись」(А. ブローク詩)
  8. [27:15]「風見」(А. ブローク詩)
  9. [29:45]「幾山河のむこうに」(А. ブローク詩)
  10. [32:54]「モスクワの朝」(А. ブローク詩)
  11. [35:40]「ロシアの歌」
  12. [39:45]「秋に」(М. イサコーフスキイ詩)
  13. [44:40]「Не мани меня ты, воля」(А. ブローク詩)
  14. [49:30]「花嫁」(А. ブローク詩)
  15. [54:13]「手風琴の歌」(С. エセーニン詩)
  16. [56:10]「白樺」(С. エセーニン詩)
  17. [60:07]「心のうちにロシアは輝く」(С. エセーニン詩)
  18. [64:00]「流刑者」(А. イサーキアン詩・А. ブローク訳)
  19. [67:38]「ロシアの百姓娘」(А. プロコーフィエヴァ詩)
  20. [70:28]「ロシアの歌」


オブラスツォーヴァ (MS) スヴィリードフ (Pf)(1977年)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Sviridov,G.V.

【YouTube】スヴィリードフ:さまようロシア(管弦楽伴奏版)

YouTubeで、スヴィリードフの傑作歌曲集「さまようロシア」の面白い動画を見つけた。Ragnar Søderlindというノルウェーの作曲家が、スヴィリードフのピアノ伴奏を管弦楽編曲したものである。オーケストラは、スヴィリードフにとってはショスタコーヴィチのムラヴィーンスキイ/レニングラードPOに相当するフェドセーエフ/モスクワ放送SO。

グジョフの独唱も含めて、ロシアの土の香りが漂うスヴィリードフならではの旋律線を情感たっぷりに歌い上げる演奏には不満がない。ただ、オブラスツォーヴァ盤で聴かれるスヴィリードフ自身のピアノに比べると、この演奏の方がよほど精度が高くしかも洗練されているのに、伴奏の色彩感は逆にピアノ版に劣る。大編成のオーケストラを惜しげもなく使った編曲ではあるが、技術的に音色の多彩さを作る類の音楽ではなく、むしろ武骨なまでの素朴さこそが求められる音楽なのだろう。

オーケストレイションに不満は残るが、名曲の貴重な動画ということで、一聴(一見)の価値はある。

1. 秋2. 愛する故郷を後にして
3. 守護天使よ、門を開けよ4. 光り輝く銀色の道
5. さまようロシア6. シモンよ、ピョートルよ…どこにいるのだ?こちらへ来てくれ
7. お前はどこにいるのだ、父祖の家よ…8. 銀河の丘の向こう
9. 宿命のラッパが鳴り響く、鳴り響く10. フクロウは秋に鳴く
11. おお、私は信じている、幸福はあるのだと12. おお祖国よ、幸せで永遠の時よ
グジョフ (B) フェドセーエフ/チャイコーフスキイSO

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Sviridov,G.V.

現代の「森の歌」&「バービイ・ヤール」

先日、シュペーテQの次回公演に備えて、森悠子先生のレッスンを受けた。ラヴェルの四重奏曲の第1楽章と第3楽章だけに絞ったが、3時間以上に及ぶ熱心なご指導をいただき、大いに勉強させていただいた。我々の水準を十分に踏まえつつも、音楽的な要求に対して妥協することはなく、加えて我々の個性らしきものまで生かしてくれる、最高級のレッスンであった。音盤などで聴き知っているのと違ってうまくいっていないことは分かっていながら、それなりに工夫や検討を加えても釈然とせずに解決できなかった多くの箇所が、わずかな指摘で見違えるように形になっていくのは、まさに魔法のようですらあった。技術上の具体的なコツの伝授もさることながら、テンポの設定からフィンガリングに至るまで、音楽的な演奏を作り上げるための理論的に明確な基本原理が存在することを教えていただいたことが、今回のレッスンの最大の収穫だったように思う。

レッスン後の雑談の中で、ボウイングの世界的な潮流はすっかり変わっていて、かつてのように均質なものではなく、アーティキュレイションをくっきりと浮かび上がらせるような類の流儀が主流になっているのだと聞いた。それに対応していかなければ、欧米のオーケストラのオーディションを通ることも難しくなっているらしい。

漠然と感じていた現代風の演奏の特徴は、なるほどこのように技術的見地から明快に説明できるものかと、目から鱗が落ちた気分。とはいえ、音楽現場で活躍しているプロの方々にとっては、何をいまさらということに違いない。いくら関心を持って勉強しているつもりでも、所詮は素人ということだ。学ぶべき事柄は尽きない。

ニコニコ動画にアップされている「森の歌」は、さしづめ現代風のショスタコーヴィチ演奏の典型と言えるだろう。重厚な音の壁が聴衆をやみくもに興奮させるのではなく、繊細な音の線の絡みが聴き手の心の襞を撫でるかのような優しい熱気が心地よい。こういう解釈が可能であれば、少なくともロシア語の通じない地域では、今後も「森の歌」が演奏される機会が失われることはないだろう。

第1~5楽章第6~7楽章
ショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」
ヴォロパエフ (T)、レイフェールクス (Br)、ペトレンコ/フランス放送PO他(2012年2月10日)


YouTubeにアップされている交響曲第13番も、フレーズの細部がよく動く現代流儀の演奏である。僕の脳裏に刷り込まれた「バービイ・ヤール」に比べるとかなり軽量な印象であるが、このスタイルでこそ明らかになる響きの美しさは極めて魅力的。

ショスタコーヴィチ:交響曲第13番
アレクサーシキン (B)、スロボデニューク /オランダ放送PO他(2011年4月3日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【ニコニコ動画】フェドセーエフのショスタコーヴィチ3種

いささか遅ればせながら、訃報を一つ。ショスタコーヴィチ研究家として著名なマナシール・アブラーモヴィチ・ヤクーボフ氏(1936~2012)が、去る2月5日にご逝去された。DSCH社の新全集では、既刊のほぼ全てで解説や校訂報告を執筆されていた。ご高齢であったものの大往生と言うには少し早く、何とも惜しまれる。自筆譜をはじめとする一次史料を丹念に読み込むことで構成された緻密な論文を、これからは読むことができないと思うと、いかに後継者たる優秀な研究者が活躍しているとはいえ、大きな喪失感を禁じ得ない。立て続けにK. ザンデルリンク(1912~2011.9.18)やベリルンド(1929~2012.1.25)の訃報に接したこともあり、つくづく自分も歳をとったものだと、寂しい気持ちになる。ご冥福をお祈りいたします。

さて、本題。ニコニコ動画に、フェドセーエフ/モスクワ放送SOがウィーン楽友協会大ホールでショスタコーヴィチの交響曲を演奏した時の映像がアップされていた。第5番・第10番・第15番の3曲で、嬉しいことにいずれも全楽章が揃っている。

どの曲においても、オーケストラの高い機能性が際立つが、多くの優秀な首席奏者が長年に渡って在籍していることによって、この水準が保たれているのだろう。ソ連時代以前に比べるとかなり洗練されていることは確かだが、ロシア以外の何物でもない響きは、音楽的な伝統が最良の形で継承されていることの証でもあろう。もちろん、フェドセーエフとの長い関係も忘れてはならない。淀みのない、それでいて彫りの深い音楽は、近年では他に類を見ない指揮者とオーケストラの関係の賜物である。

第5番は、彼らも数え切れないほど演奏してきた作品であろう。僕も、1999年に大阪で彼らの実演を聴いたことがある。技術的な不満があろうはずもなく、颯爽としたフェドセーエフの解釈にも揺らぎがない。お手本のような演奏といってよいだろう。とりわけ第2楽章の格好良さは、彼らならではのもの。惜しいのは、第3楽章の後半辺りから、どこか緊張感が失われてしまっているところ。破綻はないものの、第4楽章も今一つ盛り上がりきらない。

第1楽章第2楽章
第3楽章第4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月25日)


第10番も、西宮で彼らの実演を聴いている(2006年5月29日のエントリー)。この曲にもフェドセーエフの個性的な解釈が聴かれるが、曲との相性が良いのか、そのほとんどに違和感はない。オーケストラの首席奏者も、大多数が西宮公演時の顔ぶれと共通しており、かつての感動や興奮がそのまま甦ってくるような映像である。ここにアップされている3曲の中では、演奏の出来が最も良い。

第1楽章第2楽章
第3~4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月26日)


第15番を映像で観ることができるのは嬉しいが、この曲に関しては、フェドセーエフの解釈に違和感が残る。とりわけ第1楽章と第3楽章の鈍重なテンポは、明らかに意図を持ったものではあるが、僕がこの曲に抱くイメージとは異なる。ただ、第4楽章のクライマックスに向かう長大なクレッシェンドは、このコンビにしか成し得ないであろう、独特のしなやかさを持った素晴らしいもの。

第1~2楽章第3~4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月27日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Fedoseyev,V.I.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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