ヴィオラとトランペットのソロ・アルバム

  • ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ、ハチャトゥリャーン:無伴奏ヴィオラのためのソナタ・ペスニャ、プロコーフィエフ(ボリソーフスキイ編):バレエ「ロメオとジュリエット」より6つの小品 ピェルシュカ (Va) クーダ (Pf) (Artesmon AS 712-2)
  • 酒井 格:3つの小品、ショスタコーヴィチ(シロズヴィチ編):3つの幻想的な舞曲、フランセ:ソナチネ、ムーソルグスキイ(シロズヴィチ編):展覧会の絵、さだまさし(織田栄子編):北の国から、シルヴァ:3本のトランペットと2本のフリューゲルホルンのための組曲 白水大介 (Va) 久保千尋 (Pf) (Wako Records WKCD-0028)
アリアCDから、少し前に目について注文していた音盤が届いた。以前から存在はチェックしていたのだが、今まで入手しそびれていた。チェックしていた理由は、これまで聴く機会に恵まれなかったハチャトゥリャーンの無伴奏ヴィオラ作品。まだ聴き込んでいない上に楽譜も見ていないので、楽曲の内容を云々することはできないが、単音の並びから独特の民族的な雰囲気が浮かび上がってくる辺りは、ハチャトゥリャーンの面目躍如といったところ。作曲家の晩年の作品ということもあってか、渋みが強い。

ヴィオラのピェルシュカは、この録音の20年前にもショスタコーヴィチのソナタを同じピアニストと録音している。技術的な切れ味は旧盤に劣るが、ゆったりとした音楽の懐の深さは本盤に軍配が上がる。ただし、鋭さや厳しさとは無縁の解釈は共通しており、残念ながら物足りなさもまた共通している。

「ロメオとジュリエット」からの6曲は、ボリソーフスキイの編曲が秀逸。


関西フィルハーモニー管弦楽団のスター・プレイヤーであるトランペットの白水大介氏のソロ・アルバムは、リリース間もない時に、知人から「ショスタコーヴィチも入っているので、是非聴いてみて」と貸していただいたのだが、すっかり失念していて、気がつけば10年近く経ってしまった。今さらですが、慌てて聴いてみました。

トランペットの技術的な詳細については不案内だが、全体にロングトーンの伸びやかな力強さが印象に残る。ドクシーツェルのような派手さとは対極ながらも、端正さの中に十分な華やかさもあり、トランペットの魅力が存分に発揮されたアルバムである。

ショスタコーヴィチは、オリジナルのピアノ独奏版に聴かれる硬質で乾いた情感よりも、気だるさを感じさせる頽廃的な雰囲気がより前面に出ている。「展覧会の絵」では、曲毎に使用楽器を変えたり、シルヴァの作品では多重録音に取り組んだりと、意欲的な試みも満載だが、たとえば、「展覧会の絵」の冒頭のレガートのように、楽曲の要求に真摯に応えるような演奏姿勢そのものが好ましい。収録曲の中では、オリジナル作品であるフランセのソナチネが気の利いた楽しい曲で、演奏も聴き応えがあった。

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ペトレンコのショスタコーヴィチ

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5&9番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO (Naxos 8.572167)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第1&3番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO & cho. (Naxos 8.572396)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6&12番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO (Naxos 8.572658)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第2&15番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO & cho. (Naxos 8.572708)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO (Naxos 8.573057)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第13番 ヴィノグラードフ (B) V. ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO他 (Naxos 8.573218)
HMV ONLINEからセール案内が届いたので、ふと思い立ってペトレンコによるショスタコーヴィチの交響曲をまとめ買い。既に全集として完結しているのでボックス化されているが、第1弾の第11番だけは買っていたので、何となくバラで揃えたくなった(まだ全てを入手したわけではない)。場所を取るだけと分かってはいるが。

さて、ペトレンコのショスタコーヴィチ全集は、新時代のショスタコーヴィチ演奏のスタンダードとして、総じて高く評価されている。「若々しい」「新鮮な」「研ぎ澄まされた」「洗練された」などの、結論としては作曲家と同時代を生きた演奏家達の「思い入れたっぷりの」「雰囲気のある」演奏とは異なった、「スコアを丹念に読み解いた」「現代的な」演奏、という評価がほとんどである。

こうした評価に私も異論はなく、現時点でのショスタコーヴィチ演奏の潮流を代表する優れた録音だと感じた。ただ、リリース時に聴いていれば、その「新しさ」に興奮することもできたのだろうが、今となってはそれが(良い意味で)当たり前になっていることもあり、全面的に私の怠惰が理由とはいえ、いささか新鮮味に欠けてしまったのは残念。もう少し新譜に対して積極的にならねば。

一点だけ、録音のレンジが広過ぎるのは好みではない。弱奏部に合わせたらうるさ過ぎ、強奏部に合わせたらさっぱり聴こえない、というのは、技術的には実際の音響を忠実に再現しているのかもしれないが、メディアを再生して聴取するには不適と感じる。

以下、曲毎にコメントを付しておく:

第5番は、上述したような古典作品としての解釈が既に定着している作品ということもあり、ペトレンコの演奏解釈そのものに驚くような新味があるわけではない。しかしながら、細部に至るまでの丁寧な目配りには特筆すべきものがあり、合理的なテンポ設定で全体の構造を明確にしつつ、終始余裕を持って堂々たる音楽が展開される、いわば横綱相撲的な王道の演奏に仕上がっている。

一方、第9番は、必要以上に軽やかでも、また極端に軽やかさを否定するのでもない、わりと中庸な演奏なのだが、オーケストラの技量が影響しているのか、全体にもたつく感じが気になる。

第1番は、作品自体がペトレンコによく合っているようにも思われ、第5番と同様に機能的ながらもごく自然な音楽が表出されている。交響曲という形式と、様々な楽想が目まぐるしく展開するショスタコーヴィチ独特の構成とが、齟齬を感じさせることなくまとめられているところに、ペトレンコの非凡さがある。

第3番は、ゆったりとしたテンポで多数の旋律群を抒情的に歌っているのだが、少し遅過ぎるようにも感じられ、楽曲の冗長さが目立ってしまうのが惜しい。合唱がすっきりし過ぎていて物足りないのだが、それは、私の耳が作曲家と同時代のローカル色の強いロシアの合唱にまだ囚われているということなのかもしれない。

第6番でも、独特の構成のいびつさを感じさせることのない、ペトレンコの手腕に感心する。特に第1楽章の響きの美しさは秀逸。ただ、第2楽章以降は第9番と同様のもたつきを感じる。

第12番は、勇壮さを排除した悲愴な第1楽章の序奏に、現在ならではの楽曲解釈が見られるものの、然るべき盛り上がりにも不足しないオーソドックスな演奏である。

第2番は、最も個性的な演奏と言ってよいかもしれない。初期ショスタコーヴィチの尖った部分が全て自然に解決され、前衛とは対極のまろやかな音楽となっている。サイレンすらも当たり前のように溶け込んでいる演奏は他になく、ショスタコーヴィチが「古典」となったことを端的に象徴しているようにも思われる。ただ、合唱はいかにも軽量で、私にはどうしても物足りない。

第15番は、第5番や第1番と同様に、ペトレンコの解釈が最も成功しているものの一つ。スコアに抗わず、音符やリズム、指示に素直に従っているだけなのだが、流麗ながらも堂々たる風格のある、雰囲気豊かな秀演に仕上がっている。局所的なこだわりよりも大局的な構造の明晰さが際立ち、つぶやきのような独奏箇所が全体の中で意味深く響くのも素晴らしい。

第7番は、冒頭からしなやかな流麗さが際立つ。虚仮威し的な見得を切ることはなく、スコアに内在する熱量に応じて音響が膨張収縮するような、極めて自然な音楽である。また、第1楽章展開部では、変奏ごとの和声の変化が繊細に取り扱われており、次第に凶暴性と悲劇性を帯びていく様が見事に表出されている。

第13番は、ペトレンコ率いるオーケストラのすっきりとした響きが、独唱と合唱にも徹底されているようで(意図したか否かはわからないが)、背景という名のノイズを取り払ったような、純度の高い音楽となっている。たとえば、終始テンションの高い第2楽章をはじめ、異様に力強い感情の暴発の表現にも不足せず、バランスの取れた佳演である。

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久々のショスタコ三昧

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 マズア/フランス国立O (Naïve V 5071)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番、グラナート:管弦楽のための歌と舞曲「劇場的動物譜」 ビシュコフ/ケルンWDR SO (Avie AV 2137)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 クライツベルク/モンテカルロPO (OPMC 005)
  • グラズノーフ:ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 S. ロジデーストヴェンスキイ (Vn) G. ロジデーストヴェンスキイ/ロシア国立シンフォニー・カペラ (Nimbus Alliance NI 6123)
  • ショスタコーヴィチ:コンチェルティーノ、タランテラ、陽気なマーチ、2台のピアノのための組曲、3つの幻想的な舞曲、バレエ「黄金時代」よりポルカ、ピアノ・ソナタ第2番 ラウル、サンドレル (Pf) (Nothern Flowers NF/PMA 9941)
  • ステツェンコ:Mylist Spokoju、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲、スヴィリードフ:?、タネーエフ:カンタータ「聖イオアン・ダマスキン」より アッフォルテル、ブリュックナー(朗読) プリッシュ/ベルリンPO弦楽アンサンブル、クレド室内cho (IPPNW-Concerts 73)
仕事帰りにディスクユニオン 大阪クラシック館へ。今回は、ショスタコーヴィチ限定で探索。買いそびれている音盤が山ほどあるので、買うものがない、なんて心配は無用。

マズアの「レニングラード」は、常任指揮者であった当時のニューヨーク・フィルを振ったライヴ盤があるが、本盤はその約10年後にフランスのオーケストラを振ったライヴ盤である。ニューヨーク・フィル盤に感じた物足りなさや不満が全て解消されているばかりか、流麗でありながらも共感に満ちた高揚感が素晴らしく、ショスタコーヴィチの作品に対する受け止め方が同時代の音楽から古典へと変化しつつあった、時代の過渡期を象徴するような名演。オーケストラの熱気も凄まじい。


ビシュコフとケルン放送響とのショスタコーヴィチ・シリーズは目につけば買っていたのだが、なぜか第10番だけ買いそびれている内にHMV ONLINEでは販売終了してしまった。その容姿のせいか、実力に見合った人気を得ていないようにも思えるが、しかしこの第10番は聴き応えのある充実の秀演である。颯爽とした流麗な音楽ながらも、フレーズの持つ多彩な表情や苦い味わいなどが丹念に表出されている。 上記マズア盤と同時期(生誕100年のアニバーサリーの頃)の録音だが、ビシュコフ盤は現在に通じる新たな演奏様式の先駆けとして位置付けることができるかもしれない。


2011年に51歳の若さで逝去されたクライツベルクは、ビシュコフの弟。本人が会心の出来、と語ったと伝えられるこの演奏は、スマートな音楽の流れと過不足のない盛り上がりが確かに素晴らしい。標題に伴う思い入れの類をことさらに強調することのない、それでいて十分に熱い演奏である。オーケストラがもう少し強力であれば、申し分のない名演となっていたかもしれない。


ロジデーストヴェンスキイ親子によるヴァイオリン協奏曲集は、巨象のダンスを思わせるような父ゲンナーディの音楽を強く反映したような息子サーシャのヴァイオリンが面白い。顔は母ポーストニコヴァ似で、音楽性は父親似、といったところか。これはこれで一つの解釈ではあるが、両曲ともに“快刀乱麻を断つ”側面も楽曲の魅力の内なので、それが損なわれているのは残念。サーシャのヴァイオリンは、時折耳障りな音色がするのが気になるが、この程度の作品であれば演奏上の困難さを一切意識させない程度には技術的に十分。


「2台のピアノのための作品全集」は、そもそも2台ピアノの作品数が少ないために独奏曲も3曲収録されている。いずれも硬質なタッチで勢いを感じさせる楽しい演奏である。ソナタ第2番も含めて、過度に深刻ぶらず、また情緒に溺れ過ぎないバランス感覚が好ましい。録音がそう多くないこれらの作品のリファレンスとして、音楽的にも技術的にも満足な内容である。



核戦争防止国際医師会議(IPPNW)が東日本大震災の直後(2011年4月26日)にベルリンで行った「チェルノブイリ・コンサート 2011」は、2枚のCDとしてリリースされている(演奏会全体の映像もDVDとなっている)が、その1枚目はショスタコーヴィチの室内交響曲(バルシャイ編)を中心にした一種のミサ仕立ての構成となっている。朗読と聖歌(風)の合唱曲の合間に、各楽章が演奏される構成はなかなか秀逸で、全編に渡って敬虔な雰囲気に満ちている。ショスタコーヴィチが意図したのとは異なる楽曲の扱いではあろうが、ベルリンPOのメンバーによる万全の演奏は一聴の価値がある。

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とりとめのない買い物録

  • ヴィオッティ:ヴァイオリン協奏曲第22番、パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番 アッカルド (Vn) ボンコンパーニ/ローマPO (RCA R25C-1032)
  • バルトーク:弦楽四重奏曲全曲、ヤナーチェク:弦楽四重奏曲全曲 東京Q (RCA 09026 68286 2)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第5~8番、ミャスコーフスキイ:弦楽四重奏曲第13番 パシフィカQ (Cedille CDR 90000 127)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第9~12番、ヴァーインベルグ:弦楽四重奏曲第6番 パシフィカQ (Cedille CDR 90000 138)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第13~15番、シニートケ:弦楽四重奏曲第3番 パシフィカQ (Cedille CDR 90000 145)
  • パーセル(ブリテン編):シャコニー ト短調、エルガー:序奏とアレグロ、ブリテン:前奏曲とフーガ、シンプル・シンフォニー、ディーリアス(フェンビー編):2つの水彩画、ブリッジ:ロジャー・ド・カヴァリー卿 ブリテン/イギリスCO (Decca UCCD7256)
  • モーツァルトのカルテット・パーティ(モーツァルト:弦楽四重奏曲第3番、ハイドン:弦楽四重奏曲第3番、ディッタースドルフ:弦楽四重奏曲第5番、ヴァンハル:弦楽四重奏曲) ウェラーQ (Tower Records PROC-1401)
会議で東京に出向いたついでに、ディスクユニオン お茶の水クラシック館へ。20分しか余裕がなかったので、入り口から順に棚を眺めて、程良い枚数になったところで打ち止め。

まずCDカウンターのセレクションから、若きアッカルドによるヴァイオリン協奏曲集を。パガニーニの第2番については、2017年1月19日のエントリーで紹介した編集盤LPで第3楽章だけは何度も聴いていたが、このオリジナルのカップリングはヴァイオリンという楽器の魅力を凝縮したような選曲が素晴らしく、CD初期の素っ気ないジャケットにも惹かれて迷わず確保。

やや細身でありながらも臆面のない情緒纏綿たる歌心は、これらの協奏曲に対して私の持つ“イタリア”の“ヴィルトゥオーゾ的協奏曲”のイメージを完璧に体現した演奏で、大満足。「パガニーニ弾き」として鳴らしていた若きアッカルドの魅力が全開である。現代ではこの演奏よりもさらに精確な演奏はざらだが、こういう良い意味のあざとさを感じさせる演奏はそう多くはない。特にヴィオッティは、これまでにリバール、ボベスコ、スターン、オイストラフ、クレバースなどの音盤を聴いてきたが、このアッカルド盤が最もしっくりくる。ただ、オーケストラの音が終始割れている録音だけが残念。


ウンジャン時代の東京Qのヤナーチェク&バルトーク全集が、かなりの安価(1,000円未満)で並んでいた。この3枚組は絶頂期の東京Qの最良の記録と言えるかもしれない。楽曲解釈の点では両者共にややロマンティックに傾きすぎているように感じられ、原田時代のバルトーク全集(DG)や、1971年のライヴ盤(Hänssler)のバルトーク、1979年のライヴ盤(TDK)のヤナーチェクの尖り方の方がより相応しいと思う。本盤の凄さは何よりも、弦楽四重奏としてのアンサンブルの完成度の異様な高さにこそある。全ての音符が「カルテットの音」で響いており、たとえ誰か一人で奏している箇所においても、その「カルテットの音」であり続けている。機能という点において、本盤は弦楽四重奏の一つの極致と言って差し支えないだろう。この後、ウンジャンの故障でメンバー交代を余儀なくされた彼らが、この水準の機能に再び至ることはなかった。


本丸であるショスタコーヴィチの棚には、残念ながら目ぼしい出物がなかったが、パシフィカQの全集(分売)が第2巻(第1~4番+プロコーフィエフの第2番)を除いてまとまって並んでいたので、良い機会と思って確保。なぜ第2巻のみ?と思ったが、曲順に従って購入しようとしていた人がいたのかもしれない。これらは新品だったので特にお買い得ではなかった。

ライヴ録音でありながらも演奏には終始余裕があり、明晰な解釈と手慣れた音楽の運びは、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲が既に古典として咀嚼されていることを感じさせられる。骨太で重量感のある響きが硬派な高揚感を導き出しており、いたずらに深刻ぶらないこともあってか、良い意味で聴きやすい音楽となっている。第5番や第12番などは、こうした彼らの特質がよく発揮された優れた演奏である。一方で抒情性には不足しているために、第6番などは若干の不満が残る。ショスタコーヴィチ以外の楽曲は、いずれも有名曲が選ばれているのでヲタク感はあまりないが、入手容易な音盤が多いとは言い難いこれらの作品を、手堅くもツボを押さえた水準の高い演奏で聴くことのできる意義は大きい。


一番奥の「演奏家別」の棚では、まずブリテン指揮の「弦楽合奏によるイギリス音楽」というアルバムを。言わずと知れた名盤なので今さら何を言う必要もないのだが、演奏もさることながら、特筆すべきは選曲の素晴らしさであろう。ここのところすっかり気に入っているパーセルのシャコニーに、エルガーの名作「序奏とアレグロ」と続くアルバムは、どの曲も珠玉の逸品と呼ぶに相応しいものばかり。


ハイドン(1st Vn)、ディッタースドルフ(2nd Vn)、モーツァルト(Va)、ヴァンハル(Va)という4人の大作曲家が会したカルテット・パーティーを再現したという企画アルバムは、ウェラーQを代表する名盤である。本CDは、タワーレコードのオリジナル企画として復刻されたもの。ハイドンとモーツァルトは後年にロマン派への架け橋となる数々の名曲を生み出すことになるが、ここに収録された4曲は典型的な前古典派の作品で、彼らの生きた時代の雰囲気に満ちたアルバムとなっている。この辺りの楽曲は、近年ではピリオド・アプローチで聴く機会の方が多いが、ウェラーQの今となってはやや古風な、それでいて洗練された上品な演奏で聴くと、それぞれの作品に内在する次の時代への萌芽が自然に浮かび上がるようで、心地よくも面白い。

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再生不能になった音盤と10数年ぶりの再会

  • ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ、ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホマ (Vc) エティカー (Pf) (Centaur CRC 3100)
  • RIAS録音集第II集(シューベルト:弦楽四重奏曲第14、10、9、13、15番) アマデウスQ (audite 21.428)
  • ブラームス:五重奏・六重奏曲集 アマデウスQ アロノヴィツ (Va) プリース (Vc) エッシェンバッハ (Pf) ライスター (Cl) (DG 419 875-2)
またまた、当てもなくふらっとディスクユニオン 大阪クラシック館へ。

シャホフスカヤの弟子であるホマのチェロ・ソナタ集は、ロストロポーヴィチ~シャホフスカヤの系譜から想像されるような野太い力強さよりも、渋みのある伸びやかさが印象に残る。ショスタコーヴィチは考え過ぎたのか、いささか瞑想的に過ぎるようにも感じたが、ブラームスはロマンの香り漂う自然な歌が好ましい。


auditeレーベルのアマデウスQ初出放送録音集は、2016年7月19日のエントリーで現代曲集(第IV集)を紹介したところだが、第III集であるシューベルト選集を見かけたので、確保。この時期のアマデウスQは、まだブレイニンの奔放なプレイスタイルが確立しておらず、全体として(当時としては)現代的な洗練されたアンサンブルが際立つ。こういう颯爽としたシューベルトは、さぞかし人気があっただろうと推察する。これで、第12番「断章」と第8番なども収録されていたらなおよかったが、あまり贅沢を言うものでもないだろう。


アマデウスQといえば、何と言ってもブラームスの五重奏・六重奏集である。ピアノ五重奏曲とクラリネット五重奏曲は他により好む音盤もあったが、弦楽五重奏曲と弦楽六重奏曲に関しては、学生時代、問答無用のヘヴィーローテーション。CDだから擦り減りはしなかったものの、脳裏にはっきりと刷り込まれる程度には聴き込んだがゆえに、21世紀に入ってからは実際にスピーカーで鳴らす機会が激減し、棚の中で埃を被っていた。ある時、iTunesにリッピングしようと久し振りにケースを開けてみると、ウレタンのクッション材が劣化してCD自体が再生不能な状態に……(写真)。この音盤に関しては名盤中の名盤だけに、いつでも容易に入手することができたのだが、気分的に元々持っていた2枚組の輸入盤の形で買い直したく、今まで巡り会えずにいたところ、ついに発見。高校生の時にLPで初めて聴いた作品18を、久し振りに鳴らすことができた。至福の時である。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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