パガニーニを楽しむ

最近なかなかヴァイオリンを練習する時間が取れず、オケの練習の時に技術の衰えを痛感することが増えてきた(ちょっと大げさかな)。夜中でも練習できるような広い家にでも住めたら良いのだけど、とりあえず今のままの身分では無理。どっかに金持ちの未亡人とかおらんかなぁ。

それはともかくとして、技術が落ちてきた時にはスケールとか練習曲などを地道にさらうのが最も効果的だ。でもちょっと退屈だと思う日は、パガニーニとかヴェニャフスキィとかヴュータンといった人達のコンチェルトをかじってみるのが楽しい。ここのところハマっているのがパガニーニ。高校生の頃、ラジオで聴いた5番の協奏曲の楽譜を最近購入したのがきっかけ。アッカルドの演奏した協奏曲全集のディスクを2日に1度は聴いている。3番はちょっとつまらないけど、6番の2楽章とか5番の3楽章なんか知ってる人はあんまりいないだろうけど、なかなか美しくて楽しい。

曲よりも楽しいのがアッカルドの演奏だ。勿論上手ではあるのだが、それだけではない。難しいところを「俺はこんな難しいことをやってるんだぜ」と言わんばかりに難しそうに、しかも鮮やかに弾いている。最近クレーメルもパガニーニの第4協奏曲を録音したが、クレーメルにはそうした嫌味がないのが物足りない。エルンストの「夏の名残のバラ」とか「魔王」とかびっくりするほど上手だし、恐らく現在のヴァイオリニスト達の中でも群を抜いてうまいことは分かるのだが、ああもあっさりと、しかも完璧に弾かれてしまうと、「はいはい、上手だね」なんてひがみたくもなる。

その点、アッカルドの演奏にはヴァイオリン弾きを燃えさせる何かがある。勿論、意気込んで楽器を手にしたところでアッカルドのように弾ける訳じゃないのだけれど、「ようし、ちょっと練習してみるか」なんて気分になってくるのだ。「24のカプリース」なんかもそう。ミンツ盤なんかはほとんど精密機械のノリなんだけど、アッカルドのような楽しさはない。

アッカルドのパガニーニで楽しいのは、かつてLPで発売されたオーケストラ伴奏付き作品集の録音。
  • アッカルド・プレイズ・パガニーニ:F. タンポーニ指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団
    1983年録音(EAC-90278)
このLPは解説も面白い。「常動曲」では、「4分以内で弾くように指定されているが、アッカルドは9秒オーヴァーしている。これは伴奏がオーケストラであることが原因だろう」なんて、スポーツかなんかのようなことが書いてある。当時中学生だった僕は、こんな曲が弾けたら良いなぁとうっとりしながら聴いたものだった。自分にはそういう才能がないことを悟った今では、「アッカルドもこういう曲しかできないからなぁ」なんて通ぶったことを言って悔しさをまぎらわしている。
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theme : クラシック
genre : 音楽

コーガンのショスタコを‘観る’

この連休は、学会発表の準備と別の発表会の要旨締切とに追われてさんざんだった。それでも、19日(土)には大阪まで出かけて色々と買物をしてきた(おかげで20日に徹夜する羽目になった…)。現在財政状況が極めて悪化しているので、あまりCD屋には寄りたくなかったのだが(そりゃ、立ち寄ったら必ず何か買っちゃうもんね(^^;)久しぶりに堂島のワルツ堂を覗いてみた。

そそられるCDがあまりなかったので中古LPやLDもくまなく探していると、ふとヴィデオのコーナーに目が行った。そこには「レオニード・コーガンは演奏する(ИГРАEТ ЛЕОНИД КОГАН)」というタイトルの商品があった。何気なくパッケージの解説を読んでみると、何と「ショスタコーヴィチの協奏曲が全曲収録されている」と書いてあるではないか!ショスタコおたくの僕としてはすぐにレジへと走り、ワクワクしながら家路についた。

はじめに書いた理由のために、大阪から帰るとすぐに研究室に寄って仕事をしなければならなかったので、結局ヴィデオを見たのは0時過ぎだった。まずじっくりとパッケージを鑑賞する。すると、収録時間が「29分」と表示されていることに気がついた。この曲は40分弱かかるはずなのに…。不安がよぎる。

さて、ヴィデオをスタートさせる。タイトルの後ろで1楽章が始まる。ほどなくコーガンの映像が映し出された。コーガンが実際に弾いている映像を見るのは初めてだったので、非常に興味深く見ることができた。しかし、不安は的中した。楽章の半分くらいで、画面はコーガンが車を運転している映像に切り替わったのだ。何が悲しくてコーガンの運転姿なんぞ見なきゃならんのじゃ。数分我慢していると、2楽章が始まった。この楽章はカット無しで収録されていた。

さあ3楽章だ、と思っていると今度はコーガンのレッスン風景に切り替わった。生徒はあの佐藤陽子。資料的な興味はあるのだが、よりによって弾いている曲がチャイコフスキーの協奏曲!チャイコ嫌いの僕に対する当てつけとしか思えない。気を取り直して3楽章を聴き始める。素晴らしい演奏!よし、次はカデンツァ。

しかし無情にも画面は切り替わる。結局カデンツァは収録されておらず、コーガン一家の映像などの後で4楽章が始まる。曲の終りとともにこのヴィデオは終る。他のことはまだ許せる。でもよりによってカデンツァを省くなんて!全曲の頂点なのに…。ショスタコが見たら泣くぞ。こんな構成なのに「全曲収録されている」とは詐欺じゃないか!

でも、コーガンの演奏は良かった。諏訪内晶子がプレヴィン/N響とやった時のヴィデオを観たり他のヴァイオリニストが弾いたCDを聴いたりした限りでは、皆オイストラフとほとんど同じボーイング・フィンガリングを採用している。何たって出版譜に書いてある通りにやるのが楽ちんだもんね。それにオイストラフのフィンガリングは弾いてみると分かるが、非常に合理的だしよく響く。しかし、コーガンは全く違うボーイング・フィンガリングで弾いているのだ。3楽章などでそれが顕著に認められる。やはり、オイストラフと同じことをするのはプライドが許さなかったのだろうか。でも、演奏はオイストラフと双壁を成しているのがさすが。

コーガンのこの曲の録音は他に4種類あるが(ここを見て下さい)、やはり映像付きが一番インパクトありますねぇ。それにしても、あぁカデンツァよ…。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Kogan,L.B.

ちょっとミーハーにピアソラ

僕は結構あまのじゃくで、他人には自分の良いと思ったものを聴かせたがるくせに、他の人々が口を揃えて「これは良い」と言っているものは何となく避けてしまうことがある。ピアソラも、そのような理由で、聴こうと思いながらも聴くことのないまま過ごしてきた。それが4月のある日、京都のJEUGIAでウロウロしていると、JAZZコーナーの近くにピアソラ特設コーナーができているのに気付き、1400円のディスクを見つけ出し「まあ安いから試しに聴いてみるか」と軽い気持ちで購入して帰ったのが始まりだった。

これが非常に良かった。購入したディスクは
  • ASTOR PIAZZOLLA and his Tango Quintet, Live at Lugano, 1983.10.13
    (ERMITAGE ERC CD 12007-2)
で、名曲集といった感じのアルバムだった。とあるMLで詳しい方にお伺いしたところ、「1000円以下が相場。1400円はボってる」とのことだったが、全然惜しくなかった(ちょっと悔しかったけど)。“アディオス・ノニーニョ”、“リベルタンゴ”、“天使のミロンガ”など当然のことながら初めて聴いたわけで、久しぶりに夢中になって何度も繰り返し聴いた。

それからというもの、CD屋に行くと必ずタンゴのコーナーを覗くようになった。しかし所詮しがない学生の身、年度始めはCDなぞに使う金もなく(まあ別に年度始めじゃなくても貧乏なのですが…)、ネットニュースに某N氏が投稿された記事などからピアソラ関係の情報を集める毎日が続いた。

そんな中で何となく集まったCDが次の3枚。
  1. Astor PIAZZOLLA y su conjunto nueve
    (PERSONALITY PRS 23193)
  2. CONCIERTO EN EL PHILHARMONIC HALL DE NUEVA YORK, 1965
    (Polydor POCP-1248)
  3. ALTERNATIVE PIAZZOLLA: Sergio & Odair Assad, 1985, 1988
    (NONESUCH WPCS-5082)
この他に、実は
  • Five Tango Sensations, Kronos Quartet with Astor Piazzolla
    (NONESUCH WPCC-4216)
というアルバムを発売当時(1991年頃)買っていたことも分かり、先日購入した小沼純一氏の「ピアソラ」という著作を片手に、ここ数日はピアソラ三味の生活を送っていた。

残念なのは、誰もが口を揃えて名盤だというアメリカン・クラーヴェの3枚がどうしても見つからなかったこと。だから、大声でピアソラのことを語ることはできないような引け目を感じつつこの文章を書いているわけだが、でもピアソラは良い。実に良い。自分の中のセンチメンタルな部分に直接訴えかけてくる。小沼氏の本では「80年以前の古い録音にはあまり見るべきものがない」といった趣旨のことが書かれていたが、どうしてどうして、65年のアルバムなどはその鋭いタッチの演奏が忘れ難い印象を与えてくれる。1曲目の「悪魔のタンゴ」から最後の「ラ・ムーファ」まで息をつく間もなく聴き通してしまった。

アサド兄弟の「タンゴ組曲」も良かった。これは1000円という値段に惹かれて購入したのだが、非常に楽しめた。「トロイロ組曲」の残りも買っちゃおうかな。

ちょっと判断に苦しんでいるのが、1.のディスク。収録されている曲はどれも気に入ったし、「ロコへのバラード」のようなテクスト付きの作品もこのアルバムで最初に聴いたわけでそれなりに満足はしているのだが、どうもアレンジが納得できない。シンセサイザーのような音がするのだが、あれは何の楽器なのだろうか?それからパーカッションも今一つ効果的でないどころか、邪魔にすらなっているような気もする。前述の小沼氏の本にはこの録音についてのコメントは載っておらず、ライナーノーツにも録音年代などの詳しいデータは記載されていない。参考までにジャケットの写真を載せておくので、どなたかこのアルバムについて知っておられる方は、ご一報下さい。

theme : ワールド・ミュージック
genre : 音楽

tag : Tango_Piazzolla,A.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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