ソヴィエトの「四季」

仲間内では周知のことなのだが、僕は旧ソ連の演奏家に目がない。理由は簡単。ショスタコーヴィチの音楽にハマったからだ。そりゃ、初演時の録音とか、定評ある演奏とか片っ端から集めていたら、いやでも旧ソ連の人達の演奏を聴くことになりますわな。

ところが、どうもそれだけではないことに気がついた。実は、小さい頃家で聴いていたレコードというのが河出書房からでていた名曲全集の類だったのだが、そこに収められている演奏というのが旧ソ連製のものばかり。ベートーヴェンのエロイカなんかイワノフの演奏でっせ。あ、いや別に我が家が思想的にどうだったということはありませんよ、念のため。しかし、聴いている曲はごくごく普通の“名曲”なのに、演奏がひと癖もふた癖もあるものだったとは…。許光俊氏風にいえば、まさに“邪悪”な音楽的環境だった訳ですね(^^;。そりゃ、趣味も悪くなるわ。

さてその名曲全集の第1巻というのがヴィヴァルディ。LP2枚組なのだが、「四季」以外は比較的マイナーな協奏曲ばかりというマニアックな選曲。演奏はバルシャイ指揮のモスクワ室内管弦楽団。僕がヴァイオリンを始めた頃、そう幼稚園の頃から数年の間は、このLPが愛聴盤だった。本当にすり減るまで聴きました。だから僕にとって「四季」のリファレンスはこの演奏ということになる。何ということだ!しかし、残念ながらCD化はされていないようで、大学に入って京都に来てからはこの演奏を聴いたことがなかった。

それが、たまたま土曜日に梅田のタワーレコードをうろついている時に見つかったのだ。
  • Vivaldi: ‘The Seasons’ Op. 8、Double Concerto for Two Horns、Double Concerto for Two Oboes
    Rudolf Barshai/Moscow Chamber Orchestra (REVELATION, RV10043)
正確に言うと、この演奏はライヴで放送用音源か何かをCD化したものだと思われ、僕の聴いていた録音とは違うようだ。でも、聴いた印象はほとんど同一のもの。そりゃ、正確無比を売り物にしていた彼らの演奏だから、ライブだからといって大きく変わることもないだろうが。

いやあ、しかしこの演奏は“濃い”。ロシア式の奏法で音のすみずみまでしっかりとヴィヴラートをかけた上に、リズムもテンポも何もかもぴったりと揃っているものだから、ただでさえロマンチックな演奏の傾向が増強されている。古楽器派の人にはまったくもって許し難い演奏だと思う。でも、何か良いのですよね。僕の持っている「四季」のCDは、パールマン、ズッカーマン、シュバルヴェ、ムター、クレーメル、ヴィオンディそれにスターン・ズッカーマン・ミンツ・パールマンが1曲ずつ弾いているやつで、皆それぞれ個性的だし、ある意味で“イタリア的”な演奏は一つもないとさえ言えるのだが、その中でもこのバルシャイ盤はひときわ異彩を放っている。

それにしても、なぜこの演奏がこんなにもしっくりくるのだろうか?北海道生まれの僕とモスクワっ子の彼らとの季節に対する感覚が似通っているからなのでしょうかねぇ。とりあえず、“今さら「四季」なんて”という人達にはお薦めです。ヴィオンディ盤並の衝撃があるかも(^^)。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Barshai,R.B.

ハイドンの弦楽四重奏曲─アマデウス四重奏団編

僕は室内楽が大好きだ。特に弦楽四重奏。聴いていても楽しいし、実際に弾いてみるとさらに楽しい。その理由を小人数のための親密さとか、交響曲等と比べると私的な性格が強いことなどに求めることもできようが、とりあえずややこしい理屈は抜きにして好きなのだ。しかも、古典派以降の作曲家ならほとんどの人が書いている。その作曲家の良し悪し(有名であるかどうかではない)を計るには、弦楽四重奏曲を聴いてみれば良い。いかにチャイコフスキーが二流以下の作曲家であるかがわかるだろう(ファンの方、ごめんなさい)。

そこでハイドンの登場である。勿論文句無しの大作曲家だが、何より弦楽四重奏をたくさん作っていることが素晴らしい。「鳥」、「ひばり」、「皇帝」、「日の出」といったニックネーム付きの名作だけではなく、滅多に実演では聴くことのできないような曲も佳品揃いである。全集を完成させているのは恐らく3団体ほどであろう。それらについてはまたの機会にコメントすることとして、今日はアマデウス四重奏団のDGへの録音について述べてみようと思う。

彼らは、作品51「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」以降の全作品を録音している。演奏は、良くも悪くも強烈なアマデウス節である。1st Vnのブレイニンの汗臭い弾き方が、演奏の印象を決定してしまう。受け付けない人も多いだろう。でも、僕は大好き。ハイドンの弦楽四重奏曲では1st Vnにソリスティックな節が頻繁に出てくる。当然技巧的に問題があっては楽しさも半減するのだが(だって、それじゃ自分で弾いているのと何にも変わらないもん)、かといってひたすら清潔に弾いてしまうだけではちょっと物足りない。その点アマデウス四重奏団はバッチリ。あの愛嬌のある顔そのままの、ひしゃげたようなフレージングが技巧的なパッセージに絶妙の彩りを添える。

そんな彼らだから、やはり泥臭いロマンティシズムに満ちた、暑苦しい曲が絶品。作品64は特にそういう色合いの強い曲集だけに、どの曲も良い演奏。どれか一つと言われたら6番の2楽章か。あとは、作品71の2とか作品74の1なんかも曲の良さと相まって秀逸。そして特筆したいのは作品77の2曲。最近ではタカーチやアルバン・ベルクが録音したということで知名度もアップしたようだが、これこそまさに隠れた名曲と呼ぶのにふさわしい。規模は大きく、それでいて枯れた味わいにも不足してい
ない。ベートーヴェンの作品18とほぼ同時期で、モーツァルトはとうの昔に亡くなっていた、という時代背景を思い起こすと、ハイドンの個性と彼が到達した世界を知ることができるはずだ。この2曲を初めて弾いた時の感激と興奮は未だに忘れることができない。そしてその気持ちは弾く度にますます強くなっていく。

アマデウス四重奏団の演奏は、そんなアマチュアの感動を、まさにプロフェッショナルの技で味わせてくれる。「良い曲だなぁ、こんな風に弾いてみたいなぁ」と思わせてくれるのだ。もっとも、実際に弾いてみるとガッカリするだけなんだけどね(^^)。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Haydn,J. 演奏家_AmadeusQuartet

意外な楽しみ─ソ連の軍歌

ちょっと怪しい神経の持ち主でなければ手にすることもないのだろうが、聴いてみると誰もがハマってしまう、そんな曲を集めたCDがある。きっかけは、今年の正月に帰省した時、札幌のとあるレコード店の中古LPコーナーで「ロシア民謡集」というLPに目が止まったことだった。何気なく収録されている曲を調べてみると、一番最後に「ブッヘンワルドの鐘」という曲があった。作曲者はムラデリ。そう、あのショスタコをはじめとしてソ連の主だった作曲家達が皆やり玉にあげられた憎むべき“ジダーノフ批判”のきっかけを作った男だ。オペラ「偉大な友情」という作品の名前は知っていても、さすがに実際にムラデリの作品を音で聴いたことはなかった。だから、思わず買って帰ってしまった。

いやあ、しかしこれが大当たり。有名な「道」とか「カチューシャ」だけではなく、「誓いの石」、「暗い夜」、「前線の森にて」、「バルカンの星の下で」などなど、すごくおセンチな曲が一杯で思わずサルのように聴き耽けってしまった。そうなるともうこの一枚だけでは満足できず、この類のディスクが揃っている東京・神保町の新世界レコードで次の4枚を購入してきた。
  1. The Sacred War: The Alexandrov Red Army Choir Today Vol. 2 (MK 437121)
  2. Victory Day: The Alexandrov Red Army Choir Today Vol. 3 (MK 437122)
  3. ソビエト赤軍思い出の名唱集 (MEL CD 60 00615)
  4. ベルリンへの道~第2次大戦思い出の名唱集 (RDCD 00479)
この他にも、ミーニン合唱団の歌う「満州の丘に立ちて」、「淋しいアコーディオン」といったディスクも入手した。

この4枚、どれもが一種異様な怪しさを持っている。何といっても曲の題名が凄い。「モスクワ防衛軍の歌」、「敵は故郷を焼きはらった」、「聖なるレーニンの旗」…。歌詞は上述のLPに付属していた以外は分からないのだが、分かっている範囲だけでも凄い。さらに、4のCDなど、戦後横須賀の米軍基地で米兵達が踊っているといった映画のワンシーンで使っても何の違和感もないようなジャズが含まれていたりする。勿論、言葉はロシア語だ。そして何といっても演奏者。「ソビエト赤軍アンサンブル」だ。

しかし、これら旧ソ連の軍歌(といって問題があるのならば大衆歌曲)は偉大な娯楽だ。僕の友達で店頭でこのディスクを見つけ出して購入するような奴はほとんどいないが、これを聴かせると皆喜んで何曲も聴くのが非常に面白い。サークルの先輩のTさんなどは、弦楽四重奏用に編曲までしてしまった。そう、ショスタコのような芸術性はないのかもしれない。でも、これらの曲には人の心に訴えかける何かがあるのだろう。

それにしても、こんなものを喜んで聴いている奴なんてそうはいないだろうと思っていたら、ONTOMO MOOKの「輸入盤CD読本」の63ページにソ連の軍歌についての記述があるのを見つけた。「それにしても、どんな人がどんな風に聴いているのか少々気になる今日この頃なのだ」だって。こんな人がこんな風に聴いているんですよ。しかし、こんなCDを聴いている人があちこちにいるなんて、オタクの道は深いですな。

theme : 心に沁みる曲
genre : 音楽

tag : USSR大衆歌曲.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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