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おフランス物とソ連物

  • ショーソン:愛と海の詩、終わりなき歌、歌曲集 ノーマン (S) ジョルダン/モンテ・カルロPO他 (Erato WPCC-3750)
  • プーランク:シンフォニエッタ、「エッフェル塔の花嫁花婿」より、2つの行進曲と間奏曲、フランス組曲 プレートル/パリO (EMI TOCE-11415)
  • カバレーフスキイ:チェロ協奏曲第1番、ピアノ協奏曲第3番、ピアノ協奏曲第4番「プラハ」、ヴァイオリン協奏曲 シャフラン (Vc) ギレリス、ポポフ (Pf) オーイストラフ (Vn) カバレーフスキイ/モスクワ放送SO、モスクワPO、ソヴィエト国立SO (Revelation RV 10103)
  • プロコーフィエフ:オラトリオ「イワン雷帝」・ショスタコーヴィチ:ステパーン・ラージンの処刑 M. ショスタコーヴィチ/ロンドンPO ロジデーストヴェンスキイ/モスクワ放送SO他 (Intaglio INCD 7371)
大学2回生になる春だった。京都フランス音楽アカデミーのガラ・コンサートで、ドゥーカンやB. パスキエらが弾いたフォーレのピアノ四重奏曲第2番は、今でも忘れられない強烈な記憶の一つ。その演奏会で初めて聴いたのが、ショーソンの「終わりなき歌」。ノーマンの歌唱によるこの録音では、その時に感じた密やかな佇まいはあまり感じられない。とはいえ、作品を楽しむ分には何ら支障はない。「愛と海の詩」の方がバックがオーケストラだけにノーマンの底力が発揮されているが、もう少し甘さが欲しいような気もする。それにしても、こういう作品に顕著な、ショーソンの“垢抜けていない”部分って好きだなぁ。

おフランス物をもう一枚。プーランクのシンフォニエッタは、かぶとやま交響楽団の第26回定期演奏会で演奏した曲。勉強がてら聴いている時には、演奏の大雑把さが気になったが、時間が経って改めて聴き直してみると、勢いと雰囲気に満ちたなかなかの好演だという印象。シンフォニエッタにしてもフランス組曲にしてもプーランクの最高傑作というわけではないだろうが、プーランクならではの音色感が際立つ良い曲だと思う。それほど好きな系統の音楽ではないが、たまにはこういうのもいいね。

「わが父ショスタコーヴィチ」の中で、マクシームとガリーナが人間的な面で結構ボロクソに言ってたカバレーフスキイの協奏曲集を聴いた。ん~やっぱり何度聴いてもぱっとしないかな。おっ、と思う瞬間は少なくないんだけどね。曲としてはどうしても散漫な印象しかない。豪華ソリスト陣の割には、彼らの魅力を存分に味わえない物足りなさが残る。

ということで、これぞソ連物というような一枚を探してIntagio盤を。「イワン雷帝」のナレーション役(ディスクにはクレジットなし)が、もう最高。曲自体はさして好きではないのだけれども、この感極まった語りを聴きたくてよく手を伸ばしてしまう。ロシア人万歳と叫びたくなるね。「ステパーン・ラージンの処刑」は、このロジデーストヴェンスキイ盤のテンポが大好き。早めのテンポで一気に進む第一部(?)には、興奮を押さえることができない。両曲とも、終演後の拍手と一緒にブラボーを叫びそうになる。

ハイテンションになったところで、今日の音楽鑑賞はおしまい。不眠症になるかな?
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贅沢すぎる2枚(ヴェデルニコフとムラヴィーンスキイ)

  • ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30、31、32番 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83654)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番、モーツァルト:交響曲第33番 ムラヴィーンスキイ/レニングラードPO (BBC Legends BBCL4002-2)
買ってはいたものの、今回の「ロシア・ピアニズム名盤選」中、最も楽しみにしていた盤だったので逆にずっと聴けずにいたヴェデルニコフのベートーヴェンを、ようやく聴く。抽象美の極致といった感じかな。第30番の第1楽章なんかは、もうちょっとしっとりと歌っても良いんじゃないかとは思うけど。第32番の第2楽章は、まさに神の領域。ただ、ものすごく立派過ぎて何度も繰り返し聴く気にはなれない。いわゆる“愛聴盤”にはなり得ない演奏なのかも。

先日読了した「リヒテルは語る」の中で、リヒテルがフルトヴェングラーの「トリスタン」なんかと並んで別格の演奏に挙げていたムラヴィーンスキイのショスタコーヴィチの交響曲第8番を久し振りに聴く。晩年のPhilips盤が最高だと思うが、併録のモーツァルトを聴きたくて、BBC盤を選択した。このモーツァルトがすさまじい演奏。オーケストラ芸術の極致ではないかと思う。確かにムラヴィーンスキイ独特の、細部まで手の入った個性的な音楽であるがゆえに、嫌いな人は堪えられないくらい嫌いかもしれないが、でもこの完成度を否定することはできないはずだ。僕は奏者として、こういう音楽に参加することができれば、もう二度と楽器を弾くことができなくても満足だ。

で、モーツァルトを立て続けに二回聴いた後、本丸のショスタコーヴィチを。もう今さら何を言う必要もない。技術的には、この60年代がレニングラードPOの絶頂期だったように思われる。特に金管楽器の音色と、アンサンブルの緊密さという点において。国外公演のライヴ録音ということで細部に荒い部分も散見されるが、とても大編成のオーケストラとは思えない凝縮力は傑出している。どこか神がかった82年のPhilips盤に比べると、こちらの方が偉大な音楽を聴いているという実感がある。いずれにしても、ただただ凄いの一言。

今日の選択は、さすがにちょっと贅沢すぎたな。

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アルディッティQとクロノスQ

  • アルディッティ アルディッティQ (Gramavision VACK 5511)
  • アルディッティII アルディッティQ (Gramavision VACK 5512)
  • 吠える!《アメリカン・ヴォイス》 クロノスQ他 (Nonesuch WPCS-5040)
アルディッティQの代表的名盤を続けて聴いた。どちらも彼らならではの演奏だが、クセナキスの「テトラス」が入っている1枚目の方が、選曲も含めてより彼ららしい仕上がりだと思う。一枚目の「大フーガ」と二枚目のバルトークの第4番、共に冒頭におかれているこの2曲が、彼らの音楽的な姿勢を知る上で重要な位置を占めるのだろうが、その独特の音楽世界が持つ価値を否定するつもりはないものの、僕には正直しっくりこないんだよな。音に音以上の意味はなく、極めて抽象化された音楽というのはわかるんだけど、つまんないって思ってしまう部分がある。複雑な対位法の処理とか、楽譜に記された情報の完璧な再現とか、凄いのは間違いないんだけど。ただ、それがナンカローとかクセナキスとかになると、一転して圧倒的な説得力を持つように聴こえるのは、僕がまだこの種の音楽に慣れていないっていうだけなのか。

一方、クロノスQのアルバムはアルディッティQのやってる音楽とは対極に位置するもの。アメリカ嫌いの僕には、色んな意味で面白いアルバム。久し振りに聞いたけど、「歌え!フーヴァーFBI長官」は本当におもろい。一種の“色物”だとは思うけどね。

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ピアソラ、バルトーク、ショスタコーヴィチ

  • Sérgio & Odair Assad Play Piazzolla (Nonesuch 79632-2)
  • バルトーク:野外にて、コントラスツ、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ R. マン (Vn) ハンブロ (Pf)  S. ドラッカー (Cl) (Bartók Records BR 1916)
  • ビゼー(シェドリーン編):カルメン組曲・ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番 キーシン (Pf) カフェルニコフ (Tp) スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ他 (Melodiya MEL CD 10 00618)
アサド兄弟のピアソラは、何度聴いても良い。収録曲のいくつかは、他のアルバムからの再録だったりするが、アルバムとしてのまとまりも良く、何度となく繰り返し聴きたくなる一枚だ。特に好きなのは、「トロイロ組曲」。ピアソラ本人によるオリジナル録音よりずっと曲の良さが出ていると思う。

今年に入ってから購入したディスクの中で、特に感銘深いのが、このバルトーク作品集。大学時代、音研の大先輩Nさんが「バルトークの無伴奏はロバート・マンが一番やで」と言ってたのがずっと記憶に残っていたのだが、一度エテルナ・トレーディングの通販カタログで見かけたきり、結局LPで入手することはできなかった。それだけにこのCD化は文字通り待望のものだったが、演奏もその期待を全く裏切らなかった。巧いだけではなく、この曲をこんなにも官能的に弾きこなしているとは!無伴奏ソナタは、ムローヴァ盤さえあれば十分だと思っていたが、あの快刀乱麻を断つ爽快さとは違う次元の音楽が、ここにはある。他の収録曲も、模範的と言って良いだろう仕上がり。

ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番のキーシン盤は3種類あるが、その中ではこのライヴ盤が傑出している。この顔合わせで、たとえライヴであろうと演奏の精度に問題があろうはずがなく、加えて迸る熱気の凄さに圧倒される。淀みのない、早口かつ正確な音楽は、まさにショスタコーヴィチ。併録の「カルメン組曲」も、まさに理想的な名演。すっきりと洗練された極上のアンサンブルが、このスコアの持つ多彩な響きを余すところなく再現している。

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リヒテル・ファミリーの室内楽(モーツァルト)

  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番、ピアノ四重奏曲第1番 リヒテル (Pf) カガン、トレチャコフ (Vn) バシメート (Va) グートマン (Vc) (Live Classics LCL 193)
先日読了したリヒテル本に影響されて、いわゆる「リヒテル・ファミリー」の室内楽を聴く。

弦楽四重奏曲は、あたかも常設の四重奏団のように同質な響きに驚く。トレチャコフとバシメートの粘着質で暗い内声が、並みの四重奏団では実現することのできない深い音楽を奏でる。リヒテル本では同じモーツァルトの第19番「不協和音」についてのコメントがあったが、曲としてはこの第15番の方がより彼らに適しているかもしれない。クレーメルの寄せ集め四重奏団とは次元の違う仕上がり。

ピアノ四重奏曲は、リヒテルの圧倒的なイニシアチブの元に繰り広げられる。第1楽章と第2楽章も素晴らしいが、この第3楽章だけは、彼ら以外にはなしえなかったのではないだろうか。

非常に優れた内容をもつ1枚である。

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映画版「カテリーナ・イズマーイロヴァ」のDVD

  • ショスタコーヴィチ:歌劇「カテリーナ・イズマーイロヴァ」(映画版) K. シーモノフ/キエフ歌劇場O他 (Dreamlife DLVC-1104[DVD])
  • シューマン:クライスレリアーナ・リスト:ピアノ協奏曲第2番 H. ネイガウス (Pf)他 (Denon COCQ-83665)
3月に発売されたDVDをようやく購入した。既にLDで持っていたため、解説や字幕に若干の変更があるとは聞いていたものの、ついつい後回しになっていた。一昨日読了した「わが父ショスタコーヴィチ」の中に、ここで演奏を担当しているキエフ歌劇場でのこの作品の公演に、ショスタコーヴィチ自身が大変満足していたとの記述があった。事実、素晴らしい出来である。ヴィシネーフスカヤの熱唱も凄いが、それだけが突出して全体のバランスが犠牲になったりすることはない。映画としての完成度も高く、音楽映画としては贔屓目なしに最高級の仕上がりということができるだろう。それにしても、何という音楽か。第4幕の音楽などは、全てが切実で感動的。妻子のいる休日の日中に鑑賞するようなものでもないのだろうが、一人大満足の時間を過ごした。

子供が昼寝している間に、ネイガウスの「クライスレリアーナ」をそっとかける。元々録音状態のよくないものを小さな音量でかけているから、細部はさっぱりわからないのだが、自然で品のある流れの中に、尋常ならざる内面の情熱が迸っている様は、やはりネイガウスならではのもの。男性的で格調の高いピアノの響きも素晴らしい。リストの協奏曲では、一層ロマンティックな響きが魅力的である。

何ともだらしのない巨人の試合を見た後、何気なく「N響アワー」を見る。「プルチネッラ」組曲の抜粋(準メルクル指揮)が流れていたが、う~ん、篠崎さん、もうちょっと音程くらいは整えた方がいいんじゃなかろうか。あまり面白い演奏でもなかったので、テレビを消して、いしいひさいち著の「現代思想の遭難者たち」(講談社)を読む。

今、ショスタコーヴィチの「明るい小川」について、手持ちの資料でわかる範囲のことを整理したWWWページを準備中である。今年の4月に、モスクワのボリショイ劇場にて復活初演がなされたのだが、その公演をモスクワでご覧になったIさんのご好意で、公演パンフレットを入手することができた。これが、なかなかしっかりとした内容で、ただ死蔵しているだけではもったいないと、少しまとめてみようと思い立ったもの。今週中には公開できるようにしたい。

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[2003-06-21分] ネイガウスのブラームスと「リヒテルは語る」

  • リームスキイ=コールサコフ:交響組曲「シェエラザード」、ボロディン:中央アジアの草原にて、バラキレフ(リャプノフ編):イスラメイ ゲールギエフ/キーロフO (Philips 470 840-2)
  • J. S. バッハ:平均率クラヴィーア曲集第1巻より(6曲)、モーツァルト:ロンド、ブラームス:8つのピアノ曲 作品76より(7曲)、作品118-2、作品119より(2曲) H. ネイガウス (Pf) (Denon COCQ-83664)
今日は、かぶとやま交響楽団の練習日。午前中は子供の関係で用事があったりして、ほとんど音楽を聴く時間がとれなかった。

とりあえず、先日購入したばかりの、ゲールギエフの「シェエラザード」をまた聴き直してみる。隅々まで丁寧に磨き抜かれていることに、改めて感心。たとえば弦楽器に多用されているハーモニクスなどが実に鮮やかで、リームスキイ=コールサコフが意図したオーケストラの響きが、理想的といって良い形で再現されているように思われる。同じパターンの繰り返しながらも単調さを感じさせないのは、こうした地道な細部の積み上げによる成果なのだろう。テンポ設定は、いかにもスタイリッシュで颯爽としたものだが、時にあっさりと流れ過ぎと感じなくもない。キーロフOの各首席奏者は皆、実に達者。最新録音ゆえ、美しい響きも存分に堪能することができる。結局、こういう曲は、奏者の名技が前提条件になるんだろうな。アマチュアだの、音楽性だの、といった能書きは、単なる言い訳にしかならない。練習あるのみ。

どうしても、ネイガウスのブラームスを聴きたくなった。何という情感、何という完成度、何という音楽。どの曲をとっても、最初の一音からブラームスの音楽が溢れ出てくるような感じ。一つ一つのフレーズが聴き手を縛り付け、それが解けない内に次のフレーズがさらに聴き手を縛り付ける。まさに魔法。

ボリソフ著の「リヒテルは語る 人とピアノ、芸術と夢」を読了したが、モンサンジョン著の「リヒテル」とほとんど似たような印象。ここのエピソードは異なるものの、語り口はそっくり。楽曲を具体的なイメージでストーリー立てて捉える独特の感覚は、必ずしも共感できるわけではないが、大変興味深い。実は、僕はさしてピアノ音楽が好きではないので、リヒテルのピアノ演奏もごく数えるほどしか持っていないし、聴いてもいない。それでも、最近こうしてよく聴いているネイガウスの演奏を引き合いに出して語っている部分も多いので、リヒテルの難解な言葉のいくらかは理解することができたように思う。この本に出てくる録音のいくつかは僕も持っているので、せっかくの機会だから近い内に聴き直してみよう。

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tag : 作曲家_Rimsky-Korsakov,N.A.作曲家_Brahms,J.演奏家_Gergiev,V.A.演奏家_Neuhaus,H.G.演奏活動_かぶとやま交響楽団演奏家_Richter,S.T.

「わが父ショスタコーヴィチ」を読了

  • ラフマニノフ:交響曲・管弦楽曲全集 スヴェトラーノフ/ロシア国立SO (Canyon PCCL-00325)
  • 1949年のショパン・リサイタル・1958年のジュビリー・リサイタル H. ネイガウス (Pf) (Denon COCQ-83661~2)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 ゲールギエフ/キーロフO & ロッテルダムPO (Philips 470 845-2)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、ヴァイオリン協奏曲第1番 オーイストラフ(Vn) コンドラーシン/モスクワPO (Altus ALT046)
昨日購入したアールドフ著「わが父ショスタコーヴィチ」を通勤電車の中で一気に読了。こんな社会的地位が高い大天才を父として持った子供達の親子関係が率直な調子で語られているのは、実に興味深くまた楽しい。史実的に新しい発見があるような本ではないが、共産党入党の辺りなどは、グリークマン書簡集などからも引用されていて、やはり胸をしめつけられる。彼らの実の母親であるニーナについて、最期のエピソードしか語られていないのは少し残念だったかな。マルガリータ夫人について全く記述がないことや、イリーナ夫人についても最後に軽くコメントされているだけなのは、まぁ当然か。この調子で、もっと色んなショスタコーヴィチ関連書籍の邦訳が出ることを期待したい。ヘーントヴァが亡くなったばかりなのだから、彼女の労作なんか邦訳してくれると嬉しいんだけど。

月曜日にちょっと聴いてから、そのまま机に出しっ放しにしてあったスヴェトラーノフのラフマニノフ全集をまとめて聴いた。どの曲にも熱い共感が満ちた、まさにラフマニノフの音がする名盤だと、いつ聴いても思う。でも、やっぱり僕はラフマニノフとはそれほど波長が合わないんだろうな。良いと思うのは交響曲第2番と交響的舞曲だけ。他は、いかにも雑駁な印象しか残らない。部分的に耳を惹かれるところは少なくないんだけど。剛毅な交響曲の演奏も素晴らしいが、荘厳な交響的舞曲の演奏も立派。この曲、他にCDは持っていないはずなのだが、この1枚で十分だと思わせるだけの説得力がある。

ロシア・ピアニズム名盤選のネイガウス・シリーズの内、まだ購入していなかった最後の1枚を入手した。音質には全く期待していなかったが、思ったよりは聴きやすい。しかし、ネイガウスのショパンは素晴らしく良い。ソナタ第3番なんかは技術的にも安定しているし、まさにこうでなければならないというような名演。晩年のライヴゆえにミスタッチが目立つのは残念だけれど、他の曲も音楽的には否の打ち所がない感じ。品のある抒情性が心に染みる。さらに凄いのは70歳記念コンサート。この内面から尽きることなく湧き出る情熱は一体何なんだろう。お世辞にも良いとは言えない録音だが、文字通り圧倒される。

ゲールギエフの「レニングラード」をようやく購入した。昨年のN響との合同演奏会は録画して何度か見たが、感覚的な快感はあるもののそれに終始しているだけで、作品の持つ切実さや交響曲としての意味もあまり感じられず、CDが発売されても何となく買いそびれていたもの。こうしてディスクを聴いてみても、その印象は変わらない。ケーゲル盤の凄みは、もともと志向している音楽が違うわけだから期待していなかったけれども、ビシュコフ盤の面白さにも敵わないかなという感想。既出の8番や、以前BSで放映されたドキュメンタリー中の演奏でも思ったが、たぶんゲールギエフとショスタコーヴィチとの相性はそれほど良くないのだろう。ま、生で聴いたら何だかんだ言って興奮したんだろうけどね。

ということで、ショスタコーヴィチの音が聴きたくなって、コンドラーシン/モスクワPOの来日ライヴ盤を取り出した。やっぱ、これですねぇ。いつまでも同時代を生きた演奏家による演奏が一番なんてことばかり言っていてはつまらないんだけど、でもやっぱり違うもんな。

ということで、これを聴いちゃったら、後はもう何も聴く気にならない。

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とりとめもなく…

  • ハイドン:弦楽四重奏曲集「プロシャ四重奏曲」 東京Q (DG POCG-2790/1)
  • メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲、シェーンベルク:浄夜 バルトークQ他 (Hungaroton HCD 31351)
  • ブラームス:8つのピアノ曲 作品76、2つのラプソディ 作品79、幻想曲集 作品116 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70664)
  • ブラームス:3つの間奏曲 作品117、6つのピアノ曲 作品118、4つのピアノ曲 作品119 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70665)
  • リームスキイ=コールサコフ:交響組曲「シェエラザード」、ボロディン:中央アジアの草原にて、バラキレフ(リャプノフ編):イスラメイ ゲールギエフ/キーロフO (Philips 470 840-2)
昨日取り出した東京Qのハイドンを、改めて全部聴き直した。僕は、ハイドンの弦楽四重奏の緩徐楽章が持つ泥臭い感傷性が大好き。それはこの作品50の数曲にもあって、それをまた原田幸一郎が実に泥臭く歌い上げている。日本人的な歌の感覚に共感しているのかもしれないけれども、模範的なアーティキュレーションや品の良いアンサンブルのおかげで、単なる演歌に陥ってはいない。

こういう泥臭さは、ハンガリーの団体にも感じることが多い。バルトークQは中でも好きな団体だが、メンデルスゾーンの八重奏曲を収めた一枚は、曲の良さとも相まって彼らの美質が存分に発揮された仕上がりになっている。8人全員が本当に気持ち良さそうに、伸び伸びと歌っているという点で、この演奏は傑出している。同質の楽器による八重奏ということでバランスの取り方が難しいところだが、この演奏は表面を整えることではなく、全員がしっかりと音を出して歌いきることで結果的に望ましいバランスを得ているのが特徴的。このことで、対位法的な絡み合いが、全体の熱気溢れる大きな流れの中で理想的に響いている。しかも、いわゆる室内楽的な親密感やまとまりは失われている。この曲を弾いたことがある人なら誰でも経験しただろう高揚感や満足感を彷彿とさせてくれる名演。シェーンベルクも同様。ただ、完全に後期ロマン派な演奏だけに、こちらは人によって趣味が分かれるかもしれない。

今、ボリソフ著の「リヒテルは語る 人とピアノ、芸術と夢」を読んでいるのだが、そこにブラームスのピアノ曲がいくつか出てくる。リヒテルの本にネイガウスやヴェデルニコフの演奏というのは、いかにも重い組み合せなので、今日はレーゼル盤全集の中から、先週聴かなかった後期の2枚を一気に。ブラームスのピアノ曲については先週何度も書いたし、BGMがてら聴いていたこともあるので今日は特にコメントせず。時に力任せになるものの、レーゼルの演奏からはブラームスの魅力が素直に伝わってくる。本当に素晴らしい曲だ。

日曜日の練習後、家まで送ってくれたYさんの車の中で聴いて好印象を持った、ゲールギエフの「シェエラザード」を昨日購入した。正直、この曲に2000円以上の投資をするつもりはなかったのだが、昨年非常に話題になったディスクでもあるし、最新録音を1枚くらい持っていてもいいだろうとこの度ようやく入手したもの。すごく巧い演奏だなぁ、というのが感想。まず技術的な精度が素晴らしい。特に管楽器の音色もインターナショナルなロシアン・サウンドといった感じで聴きやすくまた十分に魅力的。この曲、同じような旋律を延々と繰り返しているだけの側面もあって、どうしても退屈してしまうのだが、それを感じさせないゲールギエフの指揮も巧い。各楽器のソロの生かし方も優れている。早めのテンポで颯爽とまとめあげながらも、時々はったりをかますゲールギエフの特徴が良い形で表れた演奏だと思う。併録のボロディンとバラキレフも同様。ま、でも、これは好き嫌いがわかれるだろうな。僕は結構好き。

今日は結構とりとめもなく聴いたな。

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東京Qのハイドン作品50

  • ハイドン:弦楽四重奏曲集「プロシャ四重奏曲」 東京Q (DG POCG-2790/1)
何やかんやとやることがあって、昨日は何も聴かずじまい。今日も似たような状況だったが、何となく気分転換で久し振りにこのセットを取り出した。

1973~4年の録音で、2nd Vnが池田氏に交代した第2期メンバーによる演奏。実に丁寧な仕事だと思う。地味で演奏頻度の低い曲集だが、デビュー盤からハイドンを取り上げている団体だけに、隅々まで磨き上げられた音で確信に満ちた音楽が繰り広げられている。

これぞ弦楽四重奏、というような音に大満足。明日も続きを聴くことにしよう。

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ラフマニノフの交響曲第2番

  • ラフマニノフ:交響曲第2番 スヴェトラーノフ/ロシア国立SO (Canyon PCCL-00325)
昨晩は、練習後に澤先生と軽く飲みに行って、家に帰ったら午前0時半過ぎ。さすがに今朝はしんどかった。歳だねぇ。日記も2日分まとめてアップ。

澤先生の練習は、いつもながら丁寧で意図のはっきりとした説明と、それを実現するための細部の積み上げを大事にしたもの。解釈自体はごくオーソドックスなんだけれども、実に気持ちよく弾くことができる。「シェヘラザード」の2楽章は、約束事をみっちりと確認。最後に通してみると忘れていることがいっぱい。こういうことがきちんとできるようになると、もっと水準の高い練習ができるんだろうけど。

たまらなかったのが、シベリウスの7番。めちゃくちゃえぇ曲ですなぁ。全部の音に感情移入してしまいそうになる。いわゆる第1楽章に相当する部分の途中までしかやらなかったのが残念で仕方ない。技術的にはそんなに難しい曲じゃないから、これは音楽的に色々と詰めていけそう。

「ダンバートン・オークス」は、ひたすら丁寧に弾けないところをさらう。こちらも第1楽章の途中までだったが、皆必死で譜面にかじりついているのが楽しい。たまにはこういう曲で脳を活性化させないと。

札幌南高校時代に所属していた吹奏楽部のOB会MLで、ひょんなことから「春の祭典」談義になっていて、そこで話題になっていた部分について練習前に澤先生に質問したが、今度アナリーゼしたスコアを持ってきてくれるとのこと。先生は、最近ロシアに2回行ったそうで、「俺は将来絶対ロシアに住むよ」とえらい惚れ方。延々とロシア(ソヴィエト)音楽談義で0時過ぎまで飲んでしまったわけでした。

その場でラフマニノフの交響曲も話題にあがったので、今日は第2番を聴いてみた。これは、夫婦の趣味が一致する数少ない曲の一つ(^^;。やっぱこれはスヴェトラーノフの新盤がベストだな。プレヴィンの甘い歌や、ラトルのこだわりに満ちた若々しい演奏も好きだけど、この音じゃなきゃ。ロシア万歳。

さすがに昨日一日音の洪水(というほど大編成のオーケストラじゃないけど)の中にいたので、今日はもうこれだけでお腹一杯。

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[2003-06-15分]続・練習に向けて(シェエラザード他)

  • リームスキイ=コールサコフ:交響組曲「シェエラザード」、グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1&2番 クリヴィヌ/フィルハーモニアO、スメターチェク/プラハSO (Denon COCO-70322)
  • リームスキイ=コールサコフ:交響組曲「シェエラザード」 コンドラーシン/アムステルダム・コンセルトヘボウO (Philips PHCP-20359)
  • ストラヴィーンスキイ:「ダンバートン・オークス」(自作自演集) ストラヴィーンスキイ/イタリア・スヴィツェラ放送SO (Ermitage ERM 156)
  • J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番、バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、パガニーニ:「わが心はうつろになりて」の主題による序奏と変奏曲 ムローヴァ(Vn) (Philips 32CD-835)
午前中は、昨日同様かぶとやま交響楽団第29回定期演奏会に向けた予習。今日は「シェエラザード」を。クリヴィヌ盤は、カントロフのヴァイオリン・ソロ目当てで購入したもの。この曲のヴァイオリン・ソロに関しては、これが最も納得できる。これでもっと線が太ければ文句なしなんだけど。オーケストラは技術的に文句があるはずもなく、クリヴィヌの指揮もスコアを見ながら丁寧に聴くと、実に真っ当な仕事で好感が持てる。鑑賞用ということになると、同じ主題が延々と繰り返されるだけのこの曲の場合、こういうアプローチでは少々退屈になるが。

古典的な名盤ということでコンドラーシン盤も聴いてみたが、スコアを見ながら聴くと、細部が結構荒っぽい。はったりの利いた演奏自体は面白いんだけど。クレバースのヴァイオリン・ソロは、いかにもオケマンらしい端正なもの。もちろん良い音がしているけれども、色々な細かい処理が僕の好みとは違う。

オーイストラフがソロを弾いているゴロヴァーノフ盤も聴こうかと思ったが、ソロはともかく、オケの部分は自分が弾くための参考にはならなさそうなので、今日はやめた(^^;。

引き続いて、「ダンバートン・オークス」を。ストラヴィーンスキイって、正直言って良いと思った曲がない。この曲も同様。だから、以前ワゴンセールで見つけて“資料”のつもりで買ったこの1枚しかCDを持っていない。これは、自作自演とはいえ、オーケストラの技量が低く、かなり適当。ま、雰囲気は分かるんだけど。理屈としてどういう曲なのかは分かるんだけど、「ここがいいんだよねぇ~」と言えないのが辛い。本番までに、作品に共感することができるだろうか。

最後に、テンションを高めるべく、“巧い”ヴァイオリンを聴こうと思って、ムローヴァの無伴奏曲集を取り出す。彼女の3枚目の録音だったと思うが、この圧倒的な切れ味の鋭さは実に爽快。渡辺和彦氏のように、(当時の)ムローヴァを音楽に表情がなくただ左手だけが達者なヴァイオリニストと評することもできるだろうが、少なくともこの録音に聴かれる完璧な技巧は、それだけで十分に魅力的。選曲もいいし。久しぶりに聴いたけれど、いつものようにヴァイオリンを弾きたくてたまらなくなってきた。

練習まで3時間くらいあるから、何年振りかで基礎練習でもしよう。

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明日の練習に向けて(シベリウスの交響曲第7番他)

  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、3つの間奏曲 作品117、6つの小品 作品118 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83657)
  • シベリウス:交響曲第7番、チャイコーフスキイ:バレエ「くるみ割り人形」より抜粋 ムラヴィーンスキイ/レニングラードPO (Altus ALT054)
  • シベリウス:交響曲第7番 ロジデーストヴェンスキイ/モスクワ放送SO (Victor VIC-4001~5 [LP])
  • 「タンゴ-ガルデルの亡命」オリジナル・サウンドトラック ピアソラ五重奏団他 (BMG BVCF-35021)
  • チマローザ:「秘密の結婚」序曲、ストラヴィーンスキイ:「プルチネッラ」組曲、ドヴォルザーク:交響曲第7番 澤寿男/かぶとやま響 (Private Recording)
昨日の感激が覚めやらず、またもやヴェデルニコフのブラームス作品集を聴く。極めて理性的な男の音楽。内面の葛藤や動揺を決して表に出すことのできない、プライド高き男の哀しさみたいなものを感じる。

明日は、かぶとやま交響楽団第29回定期演奏会に向けて、指揮の澤先生がいらっしゃる初回の練習。少し予習をしておこうと、まずはシベリウスの交響曲第7番のスコアを読み直す。ムラヴィーンスキイ盤を選んだのは、テンポの変化やデュナーミクに色々と手を加えている演奏だから。下手にスコア通りだと、聴き流してしまう部分が多くなりそうで。このAltus盤が発売されるに至るきっかけとなったムラヴィーンスキイ未亡人との昼食会には僕も出席していただけに、ちょっとだけ思い入れもあるのだが、さすがに音質には多少の不満を感じなくもない。劣悪なMelodiya録音に慣れているので、録音レベルや音質は適当に補正して流すことができるが、パート間のバランスだけは実際は一体どんなものだったのかがわからない。金管楽器が時に下品なまでに突出しているのは、個人的にはムラムラと興奮してしまうところだが、実際にムラヴィーンスキイが意図した響きの構造の手がかりが得られる水準の録音でないのは残念。

で、このムラヴィーンスキイ盤の演奏だが、何度聴いても僕にとっては最も納得のいく解釈。シベリウス最後の交響曲だとか北欧の抒情だとか言われて、とかく響きや雰囲気が重視されてしまいそうになるところを、ムラヴィーンスキイはリズムと劇性の面から明解にまとめあげている。練習番号Zで迎える音量的な絶頂(fff)を全曲の頂点として、壮大な落日のような最終和音へと次第にクールダウンしていく音楽の流れは、感覚的にも十分説得力がある。個人的には、練習番号Yでヴァイオリンとヴィオラ以外の全楽器に強烈なスフォルツァンドを付加する処理がたまらない。実に劇的な瞬間だ。まぁ、僕の知る限り他にやっている人はいないし、澤先生もやらないだろうけど。

シベリウスの交響曲第7番は、このムラヴィーンスキイ盤以外にはカラヤン盤を好んでいるのが、今日は長年埃をかぶっていたロジデーストヴェンスキイ盤LPを取り出してみた。金管楽器のメタリックな響きはモスクワ放送SOならではの魅力だが、演奏自体には意外に際立った特徴がない。特にティンパニの重要性を強調するようなリズム上の処理は時々面白いのだが、練習番号N以降の緩徐楽章に相当する部分以降はむしろ平凡な仕上がり。また、練習番号Aは大好きな部分だが、ここの木管楽器の音程がちょっと酷い。この悪印象が、僕の評価に最後まで影響しているだろうことは否定できない。

少し集中して同じ曲を繰り返し聴いた(各2回ずつ)ので、少し息抜きで久し振りにピアソラを一枚。このアルバムの前半は全然違う団体によるもので、今日はチャプター6以降のピアソラ五重奏団によるピアソラ作品のみを聴く。最初の「愛のデュオ」が、実にたまらん良い曲。もう5年近く前の1998年9月19日、ピアソラ五重奏団のメンバーと小松亮太によるライヴの超名演を体験したことがつい昨日のように思い出される。続く「不在」もいいが、最後に収録されているピアソラ自身の多重録音によるバンドネオン二重奏の「想いの届く日」が心に染みる。ピアソラのむしろあっさりとしたさりげない演奏が、聴き手の思い入れを優しく受け止めてくれる。

最後に明日に向けて、前回澤先生と演奏した第27回演奏会の記録録音を聴いてみる。演奏会直後に聴いて以来だったが、印象はそう大きく変わらなかった。細かい部分を曖昧にせず、時間をかけてみっちりと作り上げていく澤先生の練習は大好きなのだが、そうして作られた本番での音楽の流れはなかなかのもの。特にドヴォルザークが良い。ただテンポはめっぽう速いし、余計なタメがないので、聴き手の好き嫌いははっきりと分かれたかもしれない。でも、奏者側がこの解釈をよく理解し、納得して弾いているという感じが、今聴いても伝わってくる。しかし、こうやって録音で聴くと、自分のダメな部分を突き付けられるようで辛いねぇ。特に「プルチネッラ」のヴァイオリン・ソロなんか、人に聴かせるレベルじゃないな。ドヴォルザークの第一ヴァイオリンの音程も相当悪いし。

さ、明日の練習はがんばろう。日曜日の夜だから、練習後にあまり飲めないのが残念だけど。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Mravinsky,E.A.作曲家_Sibelius,J.Tango_Piazzolla,A.演奏活動_かぶとやま交響楽団

引き続きブラームスとシューマン

  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、3つの間奏曲 作品117、6つの小品 作品118 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83657)
  • ブラームス:ピアノ五重奏曲 P. レーゼル (Pf) ブラームスQ (Deutsche Schallplatten 32TC-32)
  • ブラームス:ピアノ五重奏曲、ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲より第2楽章 レオンスカヤ (Pf) アルバン・ベルクQ (EMI CE33-5400)
  • シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲 P. レーゼル (Pf) ゲヴァントハウスQ (Deutsche Schallplatten 32TC-132)
  • シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲 デムス (Pf) バリリQ (Westminster MVCW-19027)
まずは昨日の続き。ヴェデルニコフによるブラームスの作品117と118を聴いた。これはしかし、もの凄い演奏だなぁ。これらの曲集がこんなに多彩な世界を持っていたとは。各曲が絶妙のバランスで自立していて、身動きしただけで崩れてしまいそうな純度の高い繊細さを持っている。音符はその場に静止しているだけなのに、そこから歌が溢れ出してくるような感じ。しかも、曲集としてのまとまりまで感じられる。ネイガウスも凄いが、作品118は第2曲だけだし作品119も2曲のみの抜粋ということで、この点に関してはヴェデルニコフと比較しようがない。6月11日の当欄ではヴェデルニコフのブラームスについてあまり肯定的ではないような感想を書いたが、あれは曲の問題だったんだろうな。この一枚について言えば、これ以上の演奏は考えられないと言いたくなってしまう。そう言いながらもアファナシェフ盤を聴いたらまた同じようなことを言いそうだけど。

ブラームスとレーゼルつながりで、ふとピアノ五重奏曲の録音があったことを思い出した。渡辺学而氏だったか誰だったか忘れたが、僕が高校生だった頃の「音楽現代」誌のブラームス特集で同じレーゼルのピアノ独奏曲全集と一緒にこの録音を誉めていたような記憶がある。で、この演奏だが、これはもうひたすら勢いのとまらないレーゼルを楽しむためのもの。ドレスデン・シュターツカペレの首席奏者による団体というブラームスQは、完全に力不足。雰囲気はいいんだけど。第1楽章の展開部なんて、奔放なレーゼルの魅力全開といった趣き。

そこで今度は弦楽器を楽しもうとアルバン・ベルクQ盤を取り出してみた。これは、自分の小遣いで買ったごくごく初期のCDなので懐かしい。確か高校3年生の冬のことだったと思う。CDがまだ全部で10枚もなかった頃。この頃のABQは、本当にいいなぁ。たぶんピヒラーがまだガダニーニに持ち替える前の時期で、冒頭から癖のあるフレージングなんかがいかにもピヒラー節なんだけれども、それがまだ自然さを持っている。90年代に入ってからは急速に、作為的で人工的な節回しが強くなってしまったから。今や“円熟の境地”などと言われているが、誰が何と言おうと彼らの全盛期は80年代中頃だと思う。G. シュルツじゃなくてメッツェルの方が、カクシュカじゃなくてバイエルレの方が良かったという人も少なくないだろうが、良くも悪くもこの団体のスタイルが確立したのは、この時期だろう。そういう部分が、ブラームスの第3楽章によく表れていると思う。圧倒的なアンサンブル能力を駆使した、単位時間あたりの変化量が極めて大きい音楽作りは、まさに彼らならではのもの。レオンスカヤとの相性も実に良い。アンコールのドヴォルザークは、ピヒラー節が全開でファンとしてはたまらない。ドヴォルザークの全曲がこの時期にこの顔合わせで録音されなかったことが残念でならない。

レーゼルつながりで、今度はシューマンの作品44と作品47を聴いてみる。こちらはズスケ時代のゲヴァントハウスQなので、ブラームスQのような不満はない。が、逆にズスケががちがちに締め付けてしまったのか、レーゼルがすっかりおとなしい。これじゃ、全くもってつまんない。いかにもドイツ風の響きはいいんだけどね。

五重奏曲の方は録音も結構あるから選択肢があるが、四重奏曲の方はあまり目ぼしいものがない。だから、いつも結局バリリQ盤を聴くことになる。これは大学2回生になる春頃に、京都の河原町今出川にある「つだちく」という店の中古LPコーナーで見つけて初めて聴いた演奏。この店、良心的なのか相場を知らないのか、当時ウェストミンスター盤は全くCD化されてなくて、まさにバリリQのベートーヴェン全集やウラッハの一連の録音、ウィーン・コンツェルトハウスQ他のモーツァルト全集が初CD化されようとしていた時期なのに、1000円そこそこで買った記憶がある。で、初めて聴いたピアノ四重奏曲の第3楽章の美しさに惚れ込んで、その年の4月にあった京大音研の新歓演奏会で弾いたのは懐かしい思い出。演奏については、今さら何を言う必要もないだろう。これが音楽だとしか言いようのないフレージング、高貴な優しさに満ちた音色。何度聴いても、初めて聴いた時の感激を思い出す。

それにしても、今日聴いたディスクの内3枚は1枚3200円とかいう大昔の値段。まだ消費税がなくて物品税だった頃なんだな。消費税導入後は3008円(税抜き2920円)とかいう小さい紙が貼り付けてあったことを思い出した。懐かしいな。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Vedernikov,A.I.演奏家_Rösel,P.演奏家_AlbanBergQuartet演奏家_BarylliQuartet作曲家_Brahms,J.作曲家_Schumann,R.

ロシア・ピアニズム名盤選とブラームスのピアノ曲(続き)

  • ショパン:ピアノ協奏曲第1番、スクリャービン:ピアノ協奏曲 H. ネイガウス (Pf)他 (Denon COCQ-83663)
  • ブラームス:自作の主題による変奏曲、ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、パガニーニの主題による変奏曲 P. レーゼル (Pf) (Deutsche Schallplatten TKCC-70663)
  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、3つの間奏曲 作品117、6つの小品 作品118 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83657)
昨日に引き続き、今日もピアノばかり。まずは、リヒテルが誉めていたネイガウスによるショパンの協奏曲を。これは、8月にかぶとやま交響楽団のお仕事で伴奏をすることになっている曲でもあり、少し前に購入して一度聴いていたもの。特筆すべきはガウクが指揮するオーケストラの下手糞さ、と言ったら怒られるか。一瞬、自分達の記録録音を聴いているような錯覚に襲われた。それはともかく、ここでのネイガウスは剛毅な感傷性とでもいった歌心で魅了してくれる。音符の数がやたらと多いのに、その全てを歌いきっているのが凄い。しかも、端正な佇まいを崩さずに。スクリャービンは好きな曲ではないが、ゴロヴァーノフの伴奏ともどもハマりまくり。確かに録音状態は酷いが(1946年)、少なくとも僕にとってこの曲はこの一枚があれば十分。

次に、レーゼルによるブラームスのピアノ独奏曲全集から、昨日ヴェデルニコフで聴いたパガニーニ変奏曲を収録した一枚を聴いてみた。若々しい勢いの良さが心地よい。堅実な技巧と僕好みの重厚で切れ味鋭いタッチで、衒いのない音楽が奏でられている。レーゼルはモスクワでバシキーロフに師事したらしいが、ロシア仕込みのテクニックを持ったドイツ人という点ではH. ネイガウスに通じるものを感じないわけでもない。さすがにネイガウスと比較するには一本調子に過ぎるが、淀みのない音楽の流れだけでこの長大な変奏曲を一気に聴かせてしまう音楽性は賞賛に値するだろう。実に爽快。

で、今度はヘンデル変奏曲をヴェデルニコフの演奏で聴いてみた。まず主題が実に良い。フレージングも響きも、こうでなければならないと言いたくなるような完璧さ。この変奏曲を支配する対位法的なテクスチャが見事に整理され、気品に溢れた壮大さを呈している。最後のフーガは圧巻。音楽的な完成度がレーゼルとは段違い。荘厳過ぎて何度も繰り返し聴く気にはあまりならないが。

時間がなかったので、後は作品118の2だけを聴いて、残りは明日以降にまわす。これも本当に良い演奏だと思う。まぁ、大好きな曲だけに大抵の演奏でも満足してしまうんだけど。昨日聴いた極めて人間的なネイガウス盤とは違って、ゆったりとしたテンポで突き放したような冷たさを感じるのに胸が締め付けられるという不思議な印象。適切なフレージングと気品のあるルバート以外には特に歌っていないように聴こえるのに、和声進行そのものが濃厚な歌になっている。そんじょそこらの“楽譜通り”の演奏では達することのできない境地。

実に心に染みる素晴らしい音楽を聴いた。いい夢が見られそう。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Neuhaus,H.G.演奏家_Vedernikov,A.I.演奏家_Rösel,P.作曲家_Brahms,J.

ブラームスのピアノ曲

  • J. S. バッハ:平均率クラヴィーア曲集第1巻より(6曲)、モーツァルト:ロンド、ブラームス:8つのピアノ曲 作品76より(7曲)、作品118-2、作品119より(2曲) H. ネイガウス (Pf) (Denon COCQ-83664)
  • シューベルト:さすらい人幻想曲、シューマン:交響的練習曲、ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 A. ヴェデルニコフ (Pf) (Denon COCQ-83655)
  • ブラームス:バラード 作品10、8つのピアノ曲 作品76、3つの間奏曲 作品117 アデル (Pf) (Accord 472 334-2)
ここのところ、機会(=財布の余裕)があれば、5月末に発売されたロシア・ピアニズム名盤選を買い集めるようにしている。かつてデンオンから発売された音源ばかりだが、元々ピアノ音楽があまり好きではないので、ショスタコーヴィチの作品が収録された1枚しか買っていなかった。それでも例のテイチクから密かに発売された超貴重盤である晩年のライヴ録音(これも、ショスタコーヴィチのソナタが収録されていたから買い求めたのだが…)で圧倒されていたヴェデルニコフについては、BMG-Melodiyaから出たJ. S. バッハの二組やハイドンとモーツァルトのソナタを収めた一枚などで、その実力の凄さを改めて認識していただけに、今回のリリースを逃す手はないだろう。また、ネイガウスのショスタコーヴィチ作品がCD化されていたことは全くノーマークで、今回の宣伝パンフレットで初めて知った次第。収録曲も結構好きなものが多いので、ネイガウスも在庫状況をにらみながら買い求めている。ソフロニツキイは、うーん…ショパンとかスクリャービンってあんまり好きじゃないんだよなぁ。でも一番売れてるみたい。

で、今日はピアノ曲の中では例外的に大好きなブラームスの小品が収められているものを聴いてみた。ここでのネイガウスは、実に素晴らしい。右手の麻痺とやらで技術的には全盛期に遠く及ばないらしいが、そんな不満は微塵も感じないし、何より多彩で音楽的なタッチにはただただ驚愕。特に好きな作品118-2なんか、思わず繰り返し聴いて、その度に胸を打たれた。バッハやモーツァルトでの気品の高さもいいけど、ブラームスでの何とも人間的で女々しい(すなわち男らしい)歌心は、ちょっと他に対抗できる人がいるとは思えない。

続けてヴェデルニコフの1枚を聴いたが、これはちょっと評価が難しい。シューベルトは、彼には合わないのかも。強靭なタッチと明晰で分析的な音楽の作り方が、どうもこの曲とはミスマッチ。それに比べるとシューマンはまだいいかな。ヴァントの交響曲を聴いた時と同じような説得力を感じる。これがシューマンの魅力なのかと問われると何とも答えようがないんだけど。このディスクで一番納得したのは、ブラームス。知的なギレリスといったような雰囲気で、この長大な作品を飽きることなく一気に聴かせてくれる。でも、ネイガウスの後期小品を聴いた後では、作品そのものからしてハンディがあるか。リヒテルが、「ヴェデルニコフの欠点は音が汚いことだ。音色の大家であるネイガウスの助言を受け入れなかったことがもったいない」みたいなことを言っていたけど、言わんとすることはよくわかった。ネイガウスとは違うけれども、ヴェデルニコフだってタッチの多彩さは群を抜いていると思う。でも、ヴェデルニコフは音楽の構造を表現するためのタッチというか、そういう意味で対位法的な作品や現代作品を得意としていると評されることが多いのも納得できる。

パガニーニ変奏曲だったら、勢いに任せた力づくのレーゼル盤の方が爽快でいいかな、などと思いつつ、やはり後期の小品の魅力に惹かれて、最近買ったアデル盤も聴いてみた。アデルは、ルクーの室内楽曲集で初めて聴いたピアニストだったが、硬質で重さのある音色が印象に残っていて、彼女のブラームスなら悪いことはないだろうと思い、店頭で見つけてすぐに購入したもの。出来は期待通り。実に良い音がしているが、使用楽器がベヒシュタインであることも関係しているのか。時々力任せの硬い音になってしまうのが残念だが、それほど気にはならない。美味しいスコッチが飲みたくなるような音楽。

でも、ネイガウスは凄いや。しばらくハマりそう。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Vedernikov,A.I.演奏家_Neuhaus,H.G.作曲家_Brahms,J.

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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