ミトロプーロスのアテネ・ライヴ

  • ヴェルディ:「運命の力」序曲、ベートーヴェン:交響曲第3番、スカルコタス:4つのギリシャの歌、ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ミトロプーロス/ニューヨークPO (Urania URN22.272)
  • ショスタコーヴィチ:歌曲全集第4巻(呼応計画の歌、女中の歌、「The Dawn is Rising」、平和の歌、M.スヴェトローフによる2つの歌、キスがあった、ロマンス「春よ、春よ」、S.チョールヌイの詩による5つの風刺、ラヨーク) エフトディエヴァ(S) シキルティル(MS) ルコニン(Br) クズネツォフ(B) セーロフ(Pf) フトレツカヤ/サンクトペテルブルク・ユース室内合唱団 (Delos DE 3313)
…というわけで(4月19日付け本欄参照)、取り置きしてもらった音盤を引き取りに、Tower Records梅田店へ。レジで清算すると「790円です」という、耳を疑うような言葉が。さすがに店員もおかしいと思ったのか「少々お待ちくださいませ」と言われた後、無情にも2600円前後の妥当な値段を告げられた。まぁ、それだって高くはないんだけど。

さてこの音源、もう何年も前からこちらのサイトでリリース予告(?)が出ていた。僕も一応「予約したいと思います」とのメールを送信してはいたのだが、全く音沙汰なし。今回のUraniaレーベルからのリリースとどう関係しているのかは知らないが、いずれにしても無事にCD化されたことを喜びたい。ただし、マスターの保存状態は悪かったみたいで、音声の乱れが随所に入っている。音質も決して良くはなく、無条件に誰にでも薦められるような音盤ではない。

ミトロプーロスが母国ギリシャへ凱旋公演を行った1955年10月1日と翌2日の演奏会が収録されたこのアルバムは、全体を通して異様なまでにテンションが高い。冒頭の司会者(?)のアナウンスから客席も大盛り上がり。これだけ歓迎されれば、嫌でも熱気に満ちた演奏になろうというものだ。お国物ということで、スカルコタスが典型的な熱~い演奏。エロイカやブラームス、ショスタコーヴィチも基本的にはこの路線。もちろんミトロプーロスらしい明晰な見通しの良さは失われていないが、全体的に抒情が勝っている印象が強い。ショスタコーヴィチでは、同曲のスタジオ録音が大変素晴らしいだけに期待も膨らむが、こうした演奏の傾向に賛否が分かれるかもしれない。第2楽章は、少なくとも僕が知っている範囲では最速の演奏だが、案外腰の軽いスマートさに戸惑わなくもない。スタジオ録音に聴かれた硬派な凄みは後退し、終楽章などでも、どこか発散するような生気が溢れているのが特徴的。とはいえ、こうした熱狂も悪くはない。

4月13日付けの本欄で「早く確保しておかねば」と言っていた、ショスタコーヴィチの歌曲全集の第4巻も店頭に在庫があったので、迷わず確保。世界初録音を含め、録音がほとんどない作品ばかりが収録されている、何とも意欲的な内容。しかも、5枚中で最も演奏のレベルが高い。こんな音盤を見逃していたとは、僕もまだまだ蒐集家とは言えないな。さて、最初の4曲は映画音楽中の歌曲。「呼応計画の歌」は溌剌とした歌心に満ちた、とても素敵な歌唱。この曲が流行歌となったことがよくわかる。「女中の歌」は、肩の力が抜けた美しい歌に魅了される。ただ、伴奏はピアノよりもギターの方が、僕にはしっくりとくる。「エルベ河での出会い」からは、組曲に収録されていない「夜明け」と有名な「平和の歌」の2曲。ディスクの表記では「平和の歌」が「ベルリン陥落」の一曲ということになっているが、これはおそらく1958年出版の楽譜における誤表記の影響だろうと思われる。

「M.スヴェトローフによる2つの歌」の「子守歌」の録音は、おそらく初めて。可憐な歌声が、メロディメーカーとしてのショスタコーヴィチの魅力を再認識させてくれる。「ランタンの歌」には、全ソ・ラジオ歌のアンサンブルによる土俗的極まりない録音もあり、その本能的で陽気な歌い上げも忘れがたいが、一般的にはエフトディエヴァの清らかさの方が受け入れられるだろう。「キスがあった」も、おそらく世界初録音。少なくとも僕は初めて聴いたのでそれだけでも嬉しかったのだが、演奏にも全く不満はない。なぜか演奏頻度が低い「春よ、春よ」は、オリジナルのピアノ伴奏による世界初録音だが、深く渋い歌声の中にも、どこか若々しい抒情が感じられる秀演。

本アルバムのメインは「風刺」だろうか。収録曲中、最も音楽的に充実した内容を持っているだけに、演奏者の気合の入り方が違うように感じられる。時に消極的な伴奏を聴かせるセーロフも、ここでは刺激的なまでに意欲に満ちた表現を披露している。エフトディエヴァの歌唱も堂々としたもの。名演。

今となっては「ラヨーク」の新録音ということ自体に特別な目新しさは感じられないが、本盤は独唱の見事さで他の追随を許さない。元々音楽的には陳腐な作品であるために、その背景を理解した芝居っ気さえあれば良いと思っていたが、これだけ見事に歌われると今までの録音が物足りなくなってしまう。現時点では決定盤と言ってしまっても問題ないだろう。
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ヨッフムのブラームス交響曲全集他

  • ブラームス:交響曲全集 ヨッフム/ベルリンPO (DG 449 715-2)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第4番(2台ピアノ用編曲) ハイルディノフ、ストーン(Pf) (Chandos CHAN 10296)
4月15日の本欄でちょっと書いた“お目当ての音盤”とは、ここで紹介する2枚と「ロイヤル・コンセルトヘボウ・アンソロジー1960-1970」、それにミトロプーロスのアテネ・ライヴである。ミトロプーロスは難波店に在庫がなく、その場で梅田店に在庫があることを確認してもらった上で取り置きをお願いした。店員の方の対応も丁寧で感謝。

ヨッフムのブラームス全集は、◎銀璧亭◎というブログの4月6日の記事で絶賛されていたので気になっていた。ふらっとブラームスの棚を見たらあったので、迷わず購入。熱心な聴き手ではないものの、何枚か持っているヨッフムの録音は、いずれも僕の愛聴盤である。ベートーヴェンの第7&8番、ハイドンの第103 & 104番、ブルックナーの第8番と第9番、そしてギレリスと共演したブラームスのピアノ協奏曲第1番(全てDG)。いずれも同曲中、屈指の名盤である。ヨッフムの演奏は、乱暴な言い方をすると“熱いおっさん魂”を感じさせるところに最大の魅力がある。職場で野球大会をすると、普段の強面とは打って変わり、妙に張り切って見事な身体のキレを見せる上司(このタイプは、なぜか三塁を守ることが多い)の姿を彷彿とさせる。

で、このブラームス全集もヨッフムの魅力が十二分に発揮された名盤。弛むことなく終始一貫した速めのテンポは瑞々しくも迫力十分で、晦渋さとは無縁の重厚さを持っているのが凄い。フルトヴェングラー時代のベルリンPOの音色も、とても素敵。また、やんちゃな盛り上がりも有無を言わさず聴き手を興奮させる。第1番の終楽章コーダとか、第3番の両端楽章などは、そうした魅力が全開している。第4番の終楽章は毅然とした王道を行く演奏。もちろん、ここで挙げた楽章以外も極めて高い水準の演奏が繰り広げられている。録音も、うるさいことを言わなければ全く問題ない。僕にとって、全集としては現時点でこの演奏が決定盤。

ショスタコーヴィチの第4交響曲の2台ピアノ版編曲は、リリース予告が出た途端にマニアの間で話題沸騰となった一枚。コンドラーシンが初演にあたって勉強したと語っているものと同じ編曲ではないかと推測され、資料的な価値は抜群。もちろん世界初録音で、おそらくはDSCH社の新全集発刊に伴う録音だろう。演奏は手堅く、単なる資料音源の域を超えた音楽が表出されている。オーケストラでは響きに埋もれてしまってわからない和声の仕掛けや、対位法的な絡みが明快に聴き取れるのもおもしろい。とはいえ、ショスタコーヴィチの音楽は各楽器の音色を抜きにしては成立しない部分もあるので、あくまでもオリジナルを聴き込んだリスナー向けだと思われる。

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第3回レニングラード国際音楽祭1988

  • 第3回レニングラード国際音楽祭1988 (col legno 31806/1-6)
引越しも一段落ついてきたので、本当に久し振り(二ヶ月ぶりか?)にTower Records難波店へ。お目当ての音盤が何枚かあったのだが、それについてはまた後日。わりと沢山まとめ買いした音盤をレジに持っていく途中で、レジ前のワゴンに積んであったBOXが目に止まり、ふらっと衝動買い。6枚組で5000円弱は、最近ではそれほど安くない…のかな?

この「第3回レニングラード国際音楽祭1988」BOXの内容は、以下の通り:
【CD1】
F. フンメル:ヴァイオリン協奏曲「アルカエオプテリクス」 ヘルシャー(Vn)、ニカノロフ(S)、ヴェルビツキー/ソビエト国立SO
エシュパイ:ヴィオラ協奏曲 バシメート(Va)、グルシチェンコ/ソビエト国立SO
ヴァイス:シュッツのモテットの主題によるメタモルフォーゼ シトロツカヤ(Org)、ヴェルビツキー/ソビエト国立SO
【CD2】
イェヴチッチ:ピアノ協奏曲第2番 イェヴチッチ(Pf)、ドマルカス/リトアニアPO
クビーク:ヴァイオリン協奏曲 ジスリン(Vn)、ドマルカス/リトアニアPO
カンチェリ:悲しき光 カヒッゼ/レニングラードPO、ロシア国立メリテッド・アンサンブル、スヴェシニコフ少年少女合唱団
【CD3】
ロンバルディ:ピアノと室内管弦楽とレーザー光線のための協奏曲 ロンバルディ(Pf)、スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ
チェルベーリョ:室内オーケストラのための2章 スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ
ペンデレツキ:オーボエと11弦楽器のためのカプリチオ ウトキン(Ob)、スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ
シニートケ:2つのヴァイオリンのための前奏曲 スピヴァコフ(Vn)
シェドリーン:弦楽、オーボエ、ホルンとチェレスタのための音楽 スピヴァコフ/モスクワ・ヴィルトゥオージ
【CD4】
アダムス:ハーモニレーレ ドマルカス/リトアニアPO
カラビツ:管弦楽のための協奏曲第2番 ドマルカス/リトアニアPO
芥川也寸志:管弦楽のためのラプソディ ゲールギエフ/レニングラードPO
【CD5】
A. チャイコーフスキイ:5つのヴィオラのためのパヴァーヌ バシメート/アンサンブル・ソロイスツ
シニートケ:合奏協奏曲第1番 クレーメル、グリンデンコ(Vn)、バシメート/アンサンブル・ソロイスツ
バラカウスカス:管弦楽のための5つの断章 ドマルカス/リトアニアPO
リーム:バリトンと管弦楽のための「狼の歌曲集」 ザルター(Br)、ドミトリエフ/レニングラードPO
【CD6】
マトゥス:ティンパニ協奏曲「森にて」 ドミトリエフ/レニングラードPO
ミンチェフ:ピアノ協奏曲 N. ペトロフ(P)、ドマルカス/リトアニアPO
グバイドゥーリナ:「魂の時」~ソロ打楽器、メゾ・ソプラノと管弦楽のための ペカルスキ(Perc)、ムクルチヤン(MS)、ミンバエフ/レニングラードPO
“第3回”というからには過去にも同種の音楽祭が行われていたはずだが、少なくとも同じレーベルからはライヴ録音はリリースされていない模様。1988年ということは、ゴルバチョフ政権下のペレストロイカ期ということで、意欲的なプログラミングができたために、col legnoという屈指の現代音楽専門レーベルが参加したのかもしれない。もっとも、この辺りはその前後に行われた音楽祭の内容を見てみないと何とも言えないが。

僕は普段、いわゆる“現代音楽”に触れる機会があまりない。毛嫌いしているわけではないが、それよりも聴きたいものが他に沢山あるため、どうしても後回しになってしまう。そもそも音盤屋で現代音楽の棚に近づくこともめったにないだけに、今回のような機会を逃すわけにはいかない。

とりあえずざっと全曲を一聴しただけで、とても各曲についてコメントできるほど理解できているわけではないが、不思議な静けさに満ちた作品が多く、6枚立て続けに聴いてもそれほど飽きることはなかった。ソ連・東欧の作曲家の作品が中心だが、芥川やアダムスの名もある。気に入ったのは、エシュパイの協奏曲とA. チャイコーフスキイのパヴァーヌという2つのヴィオラ作品。バシメートの名技が光るだけではなく、楽器の魅力が十分に発揮された美しい響きに満ちている。シェドリーンの「弦楽、オーボエ、ホルンとチェレスタのための音楽」も僕の波長によく合った。シニートケの合奏協奏曲第1番は今や古典といっても良い作品だが、それにふさわしいクレーメルらの演奏も素晴らしい。芥川でのゲールギエフも実に見事。

これだけ充実した内容の音楽祭は、そうはないんじゃなかろうか。たまにはこういう衝動買いも悪くない。

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ボロディンQのDVD

  • ボロディン四重奏団―演奏会とマスタークラス ボロディンQ、ドミナントQ (RUSCICO RUSD9566DVD [DVD])
DSCH Journalの最新号(第22号)を見ていると、飛びつきたくなるようなDVDが紹介されていた。どうやら発売元のサイトでの直販しか入手できないようなので、ロシアの業者ということに不安を感じつつも早速注文。対応も迅速で、特にトラブルもなく手元にDVDが届いて、一安心。

まずパッケージを見て、その内容の膨大さに驚愕。メインのコンテンツは、DISC-1がVcのベルリンスキイによるドミナントQへのマスタークラス(ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番)、DISC-2がボロディンQの演奏会(ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第2番、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番)だが、ショスタコーヴィチの未亡人イリーナをはじめとする多数の関係者へのインタビュー、ボロディンQ関係の写真集に加えて、特典映像まで!さらに、ボロディンQの演奏記録を収録したブックレットもついている。本編には日本語字幕まであり、まさに至れり尽くせり。

特に見応えがあったのは、ベルリンスキイのマスタークラス。ベートーヴェンにおける、全ての音を意識的に解釈し尽くそうとする姿勢には、鬼気迫るものを感じた。「fpとsfzとrfzをきちんと弾き分けなければならない」といった類の、演奏上非常に参考となるコメントも多数。ただ、最も興味を惹かれるのは、ベルリンスキイの昔話だろう。ドゥビンスキイが全員のボウイングを決めてきた話とか、ベートーヴェンQの仲の悪さの話(V. シリーンスキイがツィガノーフのミスを「今、あなたは音を落としましたね?」と嬉々として指摘したのに対し、ツィガノーフが「あなたは、髪の毛を落としてるじゃないか」と悔し紛れに返したエピソードなどは抱腹絶倒もの)など、一言たりとも聞き逃すことができない。事細かな指導が行われたベートーヴェンに対して、ショスタコーヴィチでは全曲を一気に聴き通してその音楽に深く感動するベルリンスキイの姿が、見る者の涙を誘うほどに印象的。

ボーナス映像は、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番とショスタコーヴィチのピアノ五重奏の、どちらも第3楽章。前者はドゥビンスキイ時代、後者はコペリマン時代(ピアノはリヒテル)の映像。映像と音声が1拍近くずれているのが気になって仕方ないが、これを見逃してはマニアとは言えないだろう。

ボロディンQの演奏会は、楽屋での様子も収録した完全版(?)。しかも、ベートーヴェンの終楽章ではチェロの弦が切れてしまうオマケつき。1st Vnがアハロニヤンになってからの演奏を聴くのはこれが初めてだったが、特に大きな違和感もなかった。ベルリンスキイの存在が、やはり大きいのだろう。それにしても、4人ともうまい。技術的にこのレベルの4人が揃っている団体は、極めて少数だろう。ショスタコーヴィチの説得力、ベートーヴェンの鮮やかさ、いずれをとっても非の打ち所がない(もちろん好き嫌いはあるだろうが)。各メンバーの個性が際立つリハーサル映像も楽しい。

このDVD、是非とも多くの愛好家に視聴してもらいたい。

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二ヶ月ぶりです…

  • アストル・ピアソラのポートレート (Opus Arte OA0905D [DVD])
  • ワーグナー:舞台神聖祝祭劇「パルシファル」 ケーゲル/ライプツィヒ放送SO他 (Berlin Classics 0013482BC)
  • ヴェルディ:歌劇「オテロ」 ケーゲル/ライプツィヒ放送SO他 (Walhall WLCD 0091)
  • ショスタコーヴィチ:歌曲全集第5巻(ユダヤの民族詩より、ミケランジェロの詩による組曲) スマチョヴァ(S) タラソヴァ(MS) プルジニコフ(T) クズネツォフ(B) セーロフ(Pf) (Delos DE 3317)
去る2月15日に、長男が生まれた。ちょうど卒論や修論の発表会と重なっていたために何かとバタバタしたが、これは嬉しい忙しさ。ただ、優雅に音楽に耽る余裕は、さすがになかった。加えて4月6日には引越し。通勤には不便だが、眺望の良さは格別。このまま隠居生活でもしよっかな(^^;。……などと暢気なことを言ってる状況ではなく、とりあえず山積みになった段ボールからCDや本を早く取り出して整理しなくては。そんなこんなですっかりこの“覚え書き”もご無沙汰してしまった。

この二ヶ月ほどは、CDショップが開いている時間に帰宅することもほとんどなく、Tower Records難波店に2回行ったのみ。それもあらかじめ購入しようと思っていたものを閉店間際に駆け込んで買っただけ、という有様。新譜等にアンテナを張る余裕がなかったため、随分と買い逃したものがあるだろうなぁ…

斎藤充正氏のブログtangodelogの1月28日付けの記事で、ピアソラのドキュメンタリーが収録されたDVDの発売予告があった(ごく最近、読売新聞の記事でRSSリーダーというものの存在を知った。早速goo RSSリーダーを導入したのだが、本当に便利で重宝している)。日本語吹き替えや字幕はないものの、貴重な映像が満載とのことで、これは買い逃すわけにはいかない。掲示板等を毎日チェックし、入荷したとの情報が出るのを待って店頭へ。

早速視聴してみたが、まずはそのボリュームに圧倒された。BBC制作のドキュメンタリーだけでも約100分。これに晩年のセステートのライヴ、関係者のインタビューなどがボーナス(?!)トラックとして収録されている。英語字幕を表示させることができるので、日本語がない不利はほとんど感じない。とりあえず、本編のドキュメンタリーから観ることにしたが、とても一度で全部通して観る時間はとれない…はずだったのだが、最初の方でゲイリー・バートンとの共演したモントリオール・ジャズ・フェスティバルの映像が出てきた辺りから、もう画面に釘付け。止めようと思う度に目を引く映像が出てくる構成はさすが。全てにコメントすることは避けるが、中でも特に嬉しかったのは映画「タンゴ ガルデルの亡命」の冒頭、「愛のタンゴ」が流れるシーンが収録されていたこと。同じソラナス監督の「スール」は近所のレンタル・ビデオ屋にもあったのだが、なぜかこの「タンゴ ガルデルの亡命」はいくつかの店を探しても見つけることができなかっただけに、印象的だという評判のこのシーンを観ることができた意義は極めて大きい。確かに素晴らしい映像でした。大感激。

日を改めてインタビュー集を観た後、満を持してセステートのライヴを。この編成、実はあまり好きではなかったのだが、こうして映像で視聴すると抗し難い魅力がある。もっともそれは、セステートに魅力があるというよりは、やはりピアソラが魅力的であるということに他ならないのであるが。チェロのブラガートはさすがに年齢的な衰えが痛々しい一方で、ピアノのガンディーニはコンディションが良かったのだろうか、非常に優れた演奏を聴かせている。

アラを探せばキリがないだろうが、しかしこれはピアソラを知るには格好の傑出した内容を持つDVDである。必見!

もう一つの気になる新譜は、ケーゲルのオペラ2点。こちらはピアソラとは逆に今ひとつの感が否めなかった。

「パルシファル」は、以前にドイツのKochレーベルからリリースされていたらしいが、今回はBerlin Classicレーベルからのリリース。その存在と賛否両論の評価はかねてから耳にしていただけに、店頭に並ぶのが待ち遠しかった一枚。実は、ワーグナーの楽劇をまともに通して聴くのは初めて。この録音は、1975年の演奏会形式によるライヴということだが、視覚的な効果もなしにこの音楽を一気に聴くのは、随所に魅力的な部分が少なくないとはいえ、正直辛い。ケーゲルならそうした僕の先入観を払拭してくれるのではないかと期待したが、残念ながらそれほどのインパクトはなかった。パルシファル役のルネ・コロ、アンフォルタス役のテオ・アダムといったビッグネームが名を連ねているだけあって、響きは十分に美しい。合唱の透明感もケーゲルならでは。しかし、きっちりと制御されたフレージングや引き締まったテンポ感が、ここでは逆にワーグナーらしさ(単なる僕の先入観かもしれないが)を損なっているように感じられる。時にせかせかするのは、ケーゲル自身がこの音楽に退屈さを感じ取っているからではないかとも思える。もっとも、話の筋すらまともに把握せずに聴いているので、性急に演奏への評価を下すことは避けたい。

一方「オテロ」は、1954年に収録された放送用のスタジオ録音らしい。残念ながら音質は悪い。ドイツ語歌唱だが、僕自身はイタリア歌劇を聴くことは滅多にないので、全く違和感はない。引き締まったオーケストラと美しい合唱にケーゲルらしさを感じるものの、それを楽しむことができるレベルの音質ではない。独唱陣もやや力不足か。デズデモーナ役フリートラントの可憐な声質は個人的に好みのタイプだが、イタリア歌劇のヒロインとしては線が細過ぎる。全体を通して、ケーゲルならではという特徴を感じ取るには至らなかった。

ショスタコーヴィチの歌曲集は、偶然店頭で見つけたもの。この第5巻には、最も演奏頻度の高い2曲が収録されている。どちらもオーケストラ伴奏のことが多く、ピアノ伴奏での録音は貴重。特に、「ユダヤの民族詩より」が傑出した演奏。非常に安定してスケールの大きな音楽を奏でている、大変立派な演奏。ゆったりとしたテンポ設定だが、途中でだれることもない。素直で嫌味のない歌唱が、作品の魅力を適切に伝えてくれる。一方の「ミケランジェロの詩による組曲」もなかなか良い。クズネツォフの美声がとても魅力的。伸びやかな歌心が、ショスタコーヴィチ晩年独特の透明な美しさを見事に描き出している。セーロフの伴奏は、ややおとなしめ。もう少し積極的な主張があっても良いだろう。

ところで、この音盤をCD棚に収めると、DELOS盤全集の第4巻を未架蔵であることに気付いた。忘れない内に早く確保しておかねば!

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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