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フェドセーエフ/モスクワ放送SO演奏会

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  • チャイコーフスキイ:序曲「1812年」
  • チャイコーフスキイ:弦楽セレナーデ
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
  • ショスタコーヴィチ:劇音楽「条件つきの死者」より「ワルツ」
  • ショスタコーヴィチ:映画音楽「司祭とその下男バルダの物語」より「バルダの行進曲」
     V. フェドセーエフ/モスクワ放送SO
     2006年5月28日15時開演 兵庫県立芸術文化センター大ホール
久しぶりのコンサート。前回がボロディンQ(2005年6月13日;2005年7月8日付本欄)だったから、ほぼ1年ぶりということになる。生来の出不精なことと、平日の演奏会は時間的にちょっと厳しいこともあって、めったに演奏会に出向くことはないのだが、その代わり行く時は満を持して…といった感じで気合が入る。演奏会場が近場ということもあって、あっさりと家人の許しも出た。実はこのホール、終電で帰ってきてタクシーを待っている時とか、ちょっと出かけたりする時に車で前を通ったりして、建設中からずっと見ていたのだが、入るのは初めて。バブル期かと錯覚してしまうような豪華な建物で、近所にこんなホールができたら、ますます大阪方面への足が遠のいてしまう…(^^;

会場に入ると、まずはCD売り場チェック。残念ながら目ぼしいCDはなし。公演プログラムが3種類(日本語プログラムとロシア語の記念パンフレット、2001年刊の写真集(?))あったので、それをまとめて購入。日本語のプログラムは、500円でももったいないほど内容がない。ロシア語のパンフレットは、ゴンチャロフやガールキンの若き日の写真が載っているのが目をひくものの、録音のレビューも含めてそれほど目新しい内容はなし。ただ、110ページの写真集のような冊子は極めて充実した内容で、これが1500円というのはお買い得(ロシア語と英語)。モスクワ放送SOのスポンサーである石油会社ルクオイルの資金力の賜物だろうか。多数の現役奏者の写真を見ているだけでも楽しい。ざっと目を通して、たばこを1本吸ったら開演時間(天井が高く広々とした喫煙所は嬉しい)。

右隣が空席だったので、ゆったりと腰掛けて団員の入場を眺める。最後列にコントラバス(9人)が一列に並び、その前に下手側からTp、Tb、Tub、Hrと金管楽器が並ぶ。打楽器群は舞台上手側。弦楽器は対向配置で16型+α。前半のプログラムは、正直嫌いな部類の曲なのでリラックスして聴き始める…が、1812年冒頭のチェロのTuttiの素晴らしいこと!暖かく厚みのある音色で、朗々と懐かしさを感じさせる歌を歌い上げる。一体感のあるアンサンブルで、何の苦もなく壮麗な音響を積み上げていくところに、このコンビの卓越した境地が示されていた。炸裂するサモイロフの小太鼓を筆頭に、やりたい放題の打楽器が楽しい。最終和音の前にお囃子みたいな鐘の乱打が入るのは、フェドセーエフお得意の改変だろうか。まぁ、これはこれで良いのではないでしょうか。他にもカットがあったように思うが、よくわからない。

2曲目の弦楽セレナーデは、フル編成の弦楽器による演奏。一切力むことなく、しなやかな歌を貫く解釈は、近年のフェドセーエフに特徴的なものだろう。非常にゆったりとしたテンポで節度を持ちつつも丁寧に歌い込んだ音楽は、極めて抒情的で美しい。特に、第2楽章の主題の入りや第3楽章で多用された超弱奏は、このオーケストラの機能性あっての表現で非常に効果的。もっとも、これだけの大編成だとデュナーミクの幅を生かしたスケールの大きさは際立つものの、全体にざわついた感じが残るのは致し方のないところか。立派な演奏ではあったが、全曲を通して聴くのは……正直眠かった。

さて、休憩。一服して座席に戻ると、舞台上では、FlのフェドートヴァとObのパーニンが第3楽章の第1主題を丹念に合わせている。丁寧にイントネーションを整えていく様は、まさに一流のプロの仕事。その後ろではFgが、第4楽章コーダ直前のパッセージを合わせている。時間になり団員が登場し、チューニングが始まると、今度はTbが第1楽章展開部の終わりのコラールを合わせている。団員のショスタコーヴィチにかける気合が窺えるようで、否が応にも期待は高まる。

第1楽章。冒頭の一音から張り詰めた緊張感に貫かれた、しなやかな弦楽器の美しさが際立つ。オーケストラが一体となった音楽のうねりは見事。第1主題を提示するClのペルミャコフの超弱音は、腰が抜けるほどの圧倒的な名技。流麗でありながらも、決して上滑りすることのない音楽が繰り広げられていく。噛み締めるように何度も呻きを繰り返しつつ壮大なドラマを積み重ねていく息の長い音楽作りは、ロシアの団体ならではのものだろう。木管楽器の美しくも悲痛な鋭い響きと厚みのある弦楽器の透明な響きは、これぞショスタコーヴィチ。顔を真っ赤にして切々と吹き込むFgに導かれて、いよいよ展開部。なんという哀しい音楽なのだろう。聴きながら、涙を堪えるのが精一杯。ガロヤンのTimpが意味深い楔を打ち込み、金管楽器が威圧的にそびえ立つ。圧倒的な音響の中で切なく悲鳴をあげ続ける木管楽器と、とどまることなく感情を爆発させ続ける弦楽器の美しさ。これらが一体となって押し寄せて聴き手を飲み込む。圧巻は、再現部以降の緊張感漲る静寂。このコンビでしかなし得ない至高の境地といえるだろう。この楽章が終った後、尋常ではない緊張感からの解放された客席は、猛烈にざわついた。

続く第2楽章は、やや遅めのテンポ。しかし、楽章の暴力性は極めて適切に表出されている。サモイロフの小太鼓が、実に見事。硬質な鈍器を思わせる金管楽器の魅力もさることながら、木管楽器の巧さには舌を巻く。この解釈だと、短すぎるといわれるこの楽章のアンバランスさが気にならない。全弦楽器が弓を大きく空中に放り出すようなエンディングは、視覚的にも効果抜群。

第3楽章の多彩な響きは、名手揃いのこのオーケストラならではだろう。また、ひねくれたワルツのリズム感を一体となって繰り広げるアンサンブルも凄い。Hrのソロは特筆すべき出来。最初のE-A-E-D-A音型の英雄的な吹きっぷりと、その後の痺れるような弱奏が素晴らしかった。もちろん、楽章を通じてノーミス。てっきりガールキンが吹くのだとばかり思っていたのだが、お亡くなりになっていたようで、名前を知らない奏者だったのだが、これならガールキン亡き後のホルンセクションも安泰だろう。最初のソロの後、おそらくはフェドセーエフとのアイコンタクトがあったのだろう、にやりと微笑んだ顔が印象的だった。壮麗なクライマックスの後の終結部では、コンサートマスターのシェスタコフの音色も美しく、DSCHのピッツィカートを強調しながら余韻を残しつつ、この楽章が終った。

第4楽章では、木管楽器の鮮やかさに終始圧倒された。奇妙に明るい曲調の意味も完全に消化されていて、完全に納得させられる解釈に大満足。コーダの途切れながら何度も踊り始めようとする部分のギクシャクした感じは秀逸。終わりが近づくにつれ、このままずっと音楽が続いて欲しいという思いで切なくなってしまったほど。最終和音の後、ブラボーが乱れ飛び、あちこちでスタンディングオベーションが見られたのも当然の大名演であった。それにしても、わりと年配の聴衆が多かったにもかかわらず、ショスタコーヴィチでこの盛り上がりとは。

アンコールは、マニアにはたまらない選曲。「条件付きの死者」のワルツは、録音もしているだけに、彼らにとってはお得意のアンコールピースなのだろう。サックス、ピアノ、グロッケンシュピールをこの曲のためだけに追加した心意気が嬉しい。CDよりも一層ゆったりとしたテンポで、雰囲気豊かな弱音で奏でられた音楽にはうっとり。シンバルと小太鼓を担当したサモイロフの名技が目をひいた。「坊主とその下男バルダ」の行進曲は、組曲には収録されていない曲。オペラ版では第2幕エピローグの最初で「バルダの入場」とされている。管・打楽器のみによる短いが気の利いた曲で、とても素敵な選曲。勢いのある早目のテンポが楽しかった。2曲ともフェドセーエフ自身による紹介あり。「ショスタコーヴィチ、ワルツ」「ショスタコーヴィチ、マーチ」という言葉で、これらの曲を想定できた聴衆はおそらく皆無なのでは?バルダの行進曲の前には「もう一曲ショスタコーヴィチ、いきますよ」といった雰囲気のフェドセーエフの言い方に、客席からも和やかな笑いが起こっていた。

とにかく、猛烈に巧いオーケストラに大満足。アインザッツの隅々まで完璧に統率された鉄壁のアンサンブル…というわけではなく、むしろ緩さもあるのだが、全セクションがごく自然に一体化したアンサンブルは、オーケストラらしからぬ水準である。こういうリズム感を表出できる団体は世界中でも稀だろう。デュナーミクの幅の広さも凄い。唯一不満があったとすれば、Tpくらいか。それだって、贅沢な要求には違いない。これで、また1年くらいコンサートに行かなくても耐えられそう。

終演後は、サインをもらいに楽屋口で出待ち。団員が出てくる度に並んでいる人々が拍手で見送っていたのは、僕は初めての経験。並んでいた僕の後ろを、高校生達が「なんか、外人いっぱいおったで。有名人でも来てるんかな?」と話しながら通っていったのは、土地柄か。あぁ、関西…
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スパノーゲのVc協奏曲

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  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1&2番 スパノーゲ (Vc)、タバコフ/ソフィア・ゾリスデン (talent DOM 2910 11)
あくまでも自分の備忘録という意味合いが強いのだが、ショスタコーヴィチのページに「探しています!」を掲載している。ごくたまにそれを見て情報を下さる方々がいるのだが、今から約1年ほど前、立て続けにお二人の方から、あるCDがHMVの通販で入手可能だとの情報をいただいた。それが、このアルバム。当時はまだ通販を避けていたのですぐに購入しなかったのだが、2月にHMVのサイトを利用した際、せっかくなので注文した。在庫切れでずいぶんと時間がかかったが、ようやく入荷して届いた。

演奏内容は、まぁ予想通りというか… 正直なところ、あまりぱっとしない。オーケストラは、おそらく弦楽器の室内アンサンブルであるソフィア・ゾリスデンを中心に管楽器等を補強した団体ではないかと推察されるが、雰囲気は悪くないものの響きに求心力がない。特に、ホルンに力強さが欠けていることが致命的。ソロも技術的な不満はないとはいえ、やはり強靭さが感じられないのは物足りない。第1番のカデンツァではしっかりと間合いをとった重厚な表現を志向しているが、そのわりに音楽自体は軽い。第2番では、全体を通して単調さが否めない。

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ダネルQのショスタコーヴィチ(その3)

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  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集 ダネルQ (Fuga Libera FUG512)
ようやく、ダネルQの四重奏曲全集を完聴することができた。残るはDisc-4とDisc-5。Disc-4は全集の中でも最も収録が早い(2001年)3曲である。

第4番は、伸びやかな雰囲気が良い。ただ第3楽章や第4楽章では、特に弱奏部で平板な表現もある。第4楽章の高揚感はなかなかのものだが、全体としては今一つの感が否めない。

Disc-4の中で出来が良いのは、第11番。各楽章の性格を適切に把握した、スケールの大きな演奏は立派なもの。ただ、勢いに任せて表現が単調になってしまう部分もあるのが惜しい。技術的にも、少々荒っぽい。

第9番は、全集中でも不出来な部類に入る演奏だろう。解釈自体は正統的だが、それを表現する技術に不足がある。本来ならばこの作品でこそ威力を発揮するであろう、この団体の特徴でもある野生的な高揚感が、実際の音として実現していない。再録音を望みたいところだ。

第1番では、他の曲とは少し違って、どこか大人びた落ち着きを感じさせるところが面白い。透明な静寂感が印象的で、第2楽章などは、少々くどい気もするものの、深みのある充実した音楽となっている。一方で、第4楽章はおさまりすぎで物足りない。

第10番は、第2楽章の暴れっぷりにこの団体の魅力を感じることができるものの、全体としてはやや中途半端な出来。解釈そのものに問題はないが、後期の四重奏曲への過渡的な作風を消化しきれていないようにも思える。

Disc-5の最後である第15番は、全集の締めくくりに相応しい(録音に際して、そういう意図はないようだが)充実した硬派な佳演である。緊張感漂う異様な静謐感だけではなく、随所で爆発する力強い生命力が説得力を持っている。長大な作品を貫く集中力が素晴らしく、聴き手を退屈させることがない。

全体を通して、収録年の早い曲には物足りなさもあるが、2004年末以降に録音されている曲については、ほとんどハズレのない極めて水準の高い全集である。フランスの団体のようだが、ボロディンQ(ベルリンスキイ)やドルジーニンらの薫陶も受けているようで、解釈はもちろんのこと、響きにも不満はない。晦渋な印象もあるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲に、若々しい生命力を吹き込んだ充実のセットといえるだろう。お薦め。

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ダネルQのショスタコーヴィチ(その2)

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  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集 ダネルQ (Fuga Libera FUG512)
ダネルQの四重奏曲全集の続き。今日はDisc-2とDisc-3。

第6番は、この団体の魅力が存分に発揮された秀演である。高揚感に満ちた伸びやかな歌心が心地好く、この作品の魅力が適切に引き出されている。全曲のスケール大きな統一感も素晴らしい。

一方、第3番は消化不良の感が否めない。野生的なまでの表現意欲が、この録音の時点(2003年)ではまだ空回りしていて、むしろ粗雑にすら聴こえてしまうのが惜しい。解釈の意図自体は正統的なもの。

第13番は、堂々たる好演。簡素なスコアから多彩な表現を引き出す力量は賞賛に値する。ただ、重厚な表現のあまり、逆に作品の凝縮性が損なわれているのが残念。もっとも、一種の歌謡性を持った演奏なので、聴きやすいことは確かだろう。

個性的なのが、第14番。これほどまでに熱狂的な高揚感を持った演奏は、他にない。薄いスコアにもどかしさすら感じているかのような表現には、好みが分かれるかもしれない。僕は嫌いではないが、抒情的な部分でもう少し官能的な響きが欲しいところだ。

第8番は、正統的な秀演といえるだろう。際立った特徴があるわけではないが、全ての表現がツボにはまっているとともに、若々しい気力が漲っているのが素晴らしい。

ここまで聴いてきた中で、第5、6番と並んで感銘を受けたのが第12番。無骨で逞しい響きと、大柄で力強い音楽作りが傑出した名演である。長大な全曲を貫く緊張感が、作品の持つ独自の統一感を見事に描き出している。

実に優れた内容を持った全集である。残り2枚も楽しみ。

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荘厳な行進曲(ショスタコーヴィチ)

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  • プレオブラジェンスク近衛連隊行進曲、クバン・コサック歩兵大隊行進曲「Sea King」、トートレーベン、アガプキン:スラヴ娘の別れ、ペチェーラ近衛連隊行進曲、エファノフ:遼陽の戦闘、勝利者の凱歌、イッポリートフ=イヴァーノフ:祝祭行進曲、グリエール:赤軍行進曲、ミャスコーフスキイ:軍隊行進曲、スタロカドムスキイ:勝利の行進曲、プロコーフィエフ:行進曲 変ロ長調、ショスタコーヴィチ:荘厳な行進曲、ハチャトゥリャーン:大祖国戦争の英雄に捧げる行進曲 ナザロフ、セルゲーエフ/ソヴィエト国防省吹奏楽団 (EMI CSD 3782 [LP])
  • ソヴィエトの作曲家による子供のためのピアノ作品集(プロコーフィエフ:子供の音楽、年とった祖母のお話、ショスタコーヴィチ:人形の踊り(第4~6曲)、3つの幻想的な舞曲、5つの前奏曲(第1~3曲)、カバレーフスキイ:ソナティナ第1番、ウクライナ民謡による6つの変奏曲(第1曲)、トッカータ作品40-1) ガーチェフ (Pf) (Balkanton BKA 10294 [LP])
ショスタコーヴィチ作品の内、録音が存在する曲で聴いたことがないものは、全部で4曲(「祖国の詩」、「黒海」、「グリーンカの主題による変奏曲」、「荘厳な行進曲」)あるのだが、その内「荘厳な行進曲」がArs Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.のカタログに出ていたので、狂喜して注文した。HayesさんのサイトにあるLPジャケットを指をくわえて見ていたのだが、ようやく念願が叶った。当サイトの訪問者雑記帳にも書いたが、現在、ショスタコーヴィチに関する本を執筆しているところで、今年(生誕100年)中に出版を目指している。全作品にコメントすることが大きな目標であるので、脱稿前にどうしても音源を入手したく、奮発して航空便で注文した。

正直なところ、曲自体はさして興味のあるものではなかった。陳腐ですらあるいくつかの動機を、型通りに展開しているだけ。作曲の背景はよくわからないが、やっつけ仕事に近い印象を受ける。ただ、アルバム全体を通して聴いて、この曲(B面の最後から2番目)になった途端、スピーカーから際立って壮麗な響きが出てきたのには驚いた。決して大編成ではないのに、弦楽器もあるかのような広がりのある響きは、ショスタコーヴィチの卓越した管弦楽法を端的に示すものだろう。セルゲーエフの演奏は、技術的に危なっかしい部分も少なくないが、いかにもな響きと端正に整えられた音楽に好感が持てる。ショスタコーヴィチのオーケストレイション技術を堪能するに不足はない。

その他の収録曲も珍しいものばかりだが、音楽的に面白味のある作品はない。ナザロフ指揮のA面第2曲「トートレーベン」というのは、意味がわからなかったので調べてみると、築城の専門家で、クリミア戦争の際にセヴァストーポリ要塞のロシア軍を監督した男の名とのこと。むしろ軍事マニアにたまらないアルバムかもしれない。しかし、この内容に対して「Famous Russian Marches」というタイトルをつけるセンス、ある意味素敵だ。

ガーチェフのアルバムは、この種のものとしてはごく標準的な内容。肩肘張らず、伸びやかに歌う素直な音楽は、とても楽しい。ショスタコーヴィチ作品も、愉悦に満ちたきれいな仕上がりで不満はない。「3つの幻想的な舞曲」だけは、若干表現過多に思われた。

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ダネルQのショスタコーヴィチ(その1)

fuga-fug512.jpg
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集 ダネルQ (Fuga Libera FUG512)
2月23日の本欄に購入したことを記したものの、全く聴いていなかったダネルQの四重奏曲全集、未聴盤が片付いたので聴き始めることにした。まずはDisc-1から。

第2番の冒頭から、木の香りがする硬派な音色が心地好い。全体を覆う熱気もさることながら、大柄な音楽の作りが曲によく合っている。第4楽章の歌が感動的。

第7番は、悪くないのだが、どうも物足りない。特に弱奏部の表現力が弱く、全体に平板で退屈な仕上がりになっている。録音年を確認すると、全集中では初期に収録されている(2003年)。この数年の間に彼らは飛躍的な進歩を遂げたということだろうか。

第5番は、第2番以上に充実した秀演。作品の劇性を適切に把握した、緊張感に貫かれた音楽の運びが素晴らしい。スケールの大きな歌心にも不足していないので、作品に対する親しみやすさすら感じさせる。

放っておいたのが後悔されるほどの立派な内容に、正直驚いた。残り4枚も、早い内に聴いてみたい。

※CGIの設定を確認していたら、画像をアップできることに気づいた。せっかくなので、試しにジャケット画像をアップしてみます(^^)

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未聴LP(4月分)

  • アイヴズ:弦楽四重奏曲第1番、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第10番 アミチQ (Pye GGC 4104 [LP])
  • ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲、オネゲル:交響曲第2番 タバコフ/ソフィア・ゾリスデン (Balkanton BKA 10657 [LP])
  • シニートケ:ヴァイオリン・ソナタ第2番「ソナタ風」、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ、シニートケ:ショスタコーヴィチ追悼のための前奏曲 ルボツキイ (Vn)、エドリーナ (Pf) (Philips 6514 102 [LP])
  • プロコーフィエフ:十月革命20周年のためのカンタータ、ショスタコーヴィチ:我が祖国に太陽は輝く コンドラーシン/モスクワPO他 (Melodiya C 01505-6 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からLPが届く。買うだけ買って積み上げる癖がつきつつあったので、今回は頑張ってとにかく一度針を落としてみた。

アミチQのショスタコーヴィチは、即物的で乾いた音楽の作りが時代を感じさせるが、悪くはない。むしろ、第3楽章などでも過度に情緒に溺れることのない、硬派な佇まいが魅力的である。ただ、音色が刺々しいのが残念。もう少し潤いが欲しいところ。逆にアイヴズでは、この団体のスタイルがハマっている。

タバコフ指揮の「室内交響曲」は、第1、4、5楽章といった緩徐楽章での重く陰鬱な雰囲気が傑出している。音楽のスケールも“交響曲”と称するに相応しい、巨大なもの。ただ残念なのは、オーケストラの技術の問題だろうが、速い部分では心許ない鈍さが感じられるところ。オネゲルも同様の印象。

ルボツキイのアルバムは、自身に献呈されたシニートケのソナタとショスタコーヴィチとのカップリング。これで、ヒュームのカタログに出ているショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタの音源は全部集まった。もっとも、ここに掲載されていないCDには、まだ未入手のものがいくつかあるが。演奏内容は、実に優れたもの。現代作品を得意とするルボツキイらしく、丁寧に積み上げられた響きの明晰さが印象的である。エドリーナの抒情的なピアノが音楽に温もりを与えていることで、現代曲風の冷たさに陥らずに済んでいることも好ましい。このコンビが初演したシニートケのソナタは、一層の自信に満ちた名演。極めて楽譜に忠実な演奏で、この作品の模範的な演奏ということができるだろう。

コンドラーシン指揮の「体制翼賛カンタータ集」は、両曲ともDante盤CDで架蔵済みだが、このCDは盤起こしなのでオリジナルLPも持っておきたいと注文したもの。ショスタコーヴィチはVenezia盤CDも持っていたことに後で気付いたが、まぁ、こういう色んなジャケットやフォーマットで持っているというのもコレクターみたいなので、たまには良いでしょう(^^;。で、LPで聴いてみると、特に合唱の響きの豊かさにびっくり。よほどマスターの保存状態が悪かったのか、CD化されたものにはこの片鱗すらうかがえない。ちょっと大げさな言い方だが、ショスタコーヴィチ作品がこれほどまでに壮麗なコーダを持っていたということを、この盤を聴いて初めて認識することができた。

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HMVの通販でまとめ買い その2

  • ショスタコーヴィチ:2台ピアノのための作品全集(2台のピアノのための組曲、3つの幻想的な舞曲、格言集、映画音楽「偉大な川の歌」よりワルツ、バレエ組曲第2番よりポルカ、陽気な行進曲、タランテラ、2台のピアノのための小協奏曲) ズルコフスカヤ、アルベルティ (Pf) (Dynamic CDS 464)
4月24日の本欄で述べたHMVの通販で注文したものの内、4枚が在庫切れだったが、その内の1枚が入荷して送られてきた。結構前にリリースされていたようだが、ノーチェックだった。不覚。

ショスタコーヴィチの2台ピアノ用の作品(編曲物は除く)が全て収録されているが、同じ内容のKlavierduo Genova & Dimitrov盤と一長一短といった仕上がりである。いずれも丁寧な演奏で、作品の抒情性が前面に押し出されている。聴きやすさという点では優れているが、たとえば「組曲」などは完全にロシア・ロマン派のピアノ曲といった雰囲気になっていて、あまりショスタコーヴィチを聴く楽しみは感じられない。コンチェルティーノに至っては、覇気が感じられず退屈する。逆に映画音楽等の編曲は、曲が短いこともあって、きれいな仕上がりが楽しい。2曲の独奏曲は、いまいち。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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