ショスタコーヴィチ、グラズノーフ、ムーソルグスキイ、ソルジェニーツィン…

- ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、ゴーリツ:前奏曲集より第1、4、12、14番、ウストヴォーリスカヤ:ピアノと弦楽合奏、ティンパニのための協奏曲 P. セレブリャコーフ (Pf) Y. セレブリャコーフ/レニングラード・フィルハーモニー室内O (Melodiya CM 02439-02440 [LP])
- ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲第11番 ツェヒリン (Pf) ノヴァークQ (Eterna 8 26 017 [LP])
- グラズノーフ:サクソフォーン協奏曲、サクソフォーン四重奏曲 ミハイロフ (Sax) コロニエフ/モスクワ放送SO モスクワ・サクソフォーン四重奏団 (Melodiya C10-06997-8 [LP])
- ソルジェニーツィン・木村 浩(訳):マトリョーナの家,新潮文庫,1973.
- 一柳富美子:ムソルグスキー「展覧会の絵」の真実,ユーラシア・ブックレット,115,2007.
P. セレブリャコーフ独奏のピアノ協奏曲集は、非常に優れた内容。ショスタコーヴィチは、仄かな抒情を漂わせながらも、明晰な響きと端正な造形が印象的な格調高い秀演。オーケストラは少々控えめに過ぎるのが物足りないが、技術的な問題はない。ゴーリツという作曲家の名は初めて聞いたが、ロシア風の甘さがあって、なかなか素敵な作品であった。P. セレブリャコーフが初演した(初演時のオーケストラは不明)ウストヴォーリスカヤの協奏曲は、このアルバムの白眉。時に暴力的な和声の個性的な力強さと、後の作品には聴かれない甘い抒情とのバランスが良く、ウストヴォーリスカヤの原型とでも言える若々しい姿が見事に表出されている。
ノヴァークQという団体は初めて聴いたのだが、第1VnのA. ノヴァークはスークQの奏者として、Vcのチョヴァネツはドヴォルザーク・ピアノ三重奏団の奏者として、どちらも1970年代の録音を聴いたことがある。全体に速めのテンポで熱気を孕んだ音楽が展開されていて、なかなか面白い。ときにショスタコーヴィチとしては過度にロマンティックになる部分(たとえば五重奏曲の第4楽章など)も少なからずあるが、全体を貫くテンションの高さゆえに、違和感を抱く間もなく一気に聴かされてしまう…といった感じ。弦楽四重奏曲第11番も、良い意味で聴きやすい仕上がりになっている。
グラズノーフが最晩年に残した2曲のサクソフォーン作品は、どの演奏が良いのだろうかと迷っている内に、すっかり聴きそびれていた。亡命後の作品でもあるし、別にロシア人演奏家にこだわる必要もないのだろうが、たまたまカタログにあったので良い機会だと思いオーダー。インターネット上で検索してみると、わりと有名なアルバムのようだ。サクソフォーンの演奏流派等については全く分からないのだが、朴訥とした音色で伸びやかに歌い上げるミハイロフの演奏は、作品の魅力を伝えるのに全く不足はない。四重奏曲では少し金属的な音色が気にならなくもないが、十分に楽しむことができた。
Youtubeに、この協奏曲の動画があったので、貼っておく。
Part 1 | Part 2 |
Part 3 | |
グラズノーフ:サクソフォーン協奏曲 (Andreas van Zoelen (Sax),Arjan Tien/Magogo Kamerorkest) |
11月28日付の本欄で書いた古本市では、ソルジェニーツィンの小品集も確保。なんとも印象深く、そして人間の気高い美しさが散りばめられた素敵な一冊である。「焚火と蟻」という短編は、ソ連から亡命した人々、一方で決して祖国を離れなかった人々の胸の内を見事に描出した逸品。
一柳富美子氏の名前を最初に見たのは、『音楽現代』誌に掲載されていた「展覧会の絵」についての短期集中連載だった。ショスタコーヴィチ研究の第一人者でもある氏が、本業(?)のムーソルグスキイについて、コンパクトながら充実した一冊を上梓された。僕が関係した出版社だから宣伝するわけではなく(^^;、実によくできた本である。いくつかの説に異論があるとしても、無駄な行がなく、確度の高い情報がびっしりと満ちていることだけは確かだ。でも、ブックレットではなくて、もっとまとまった書籍だったら……と思ってしまうのは僕だけだろうか(^^)
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