シベリア・ヴァイオリン・アンサンブル

  • フレーンニコフ:バレエ「軽騎兵のバラード」より3つの小品、バレエ「愛のための愛」より愛の賛歌、コミック・オペラ「ドロテア」より第2幕への間奏曲、コミック・オペラ「黄金の孔子」より「オスタップ・ベンデルのタンゴ」、K. カラーエフ:組曲「7人の美女」 パルホモフスキイ/シベリア・ヴァイオリン・アンサンブル (Melodiya C10 25391 003 [LP])
  • カルロヴィチ:セレナーデ第2番、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲 ライスキ/ライスキCO (Poljazz PSJ 184 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの1月到着分。

シベリア・ヴァイオリン・アンサンブルという団体は初めて聴いたが、編成はおそらくボリショイ劇場ヴァイオリン・アンサンブルと同様だろう。フレーンニコフとK. カラーエフの舞台作品から旋律の美しい作品を集めた選曲は通好み……と言いたいところだが、コアなファンしか喜ばないと言った方が正しいか。響きには少々野暮ったさがあるものの、この音盤を手にするような聴き手にとっては、むしろその田舎臭さが美質として肯定的に捉えられるはず。技術的な不満も、もちろんあろうはずがない。

A面は、1980年前後に作曲されたフレーンニコフの作品集である。シェイクスピアの「から騒ぎ」に基づくバレエ「愛のための愛」だけはあらすじを把握しているが、その他の作品はどんな話なのか、知らない。唯一「黄金の孔子」については、イリフ=ペトロフの「12脚の椅子」と同じ主人公(オスタップ・ベンデル)が出てくるということだけは分かった(ここ参照)。もっとも、たかだか数曲の抜粋を聴くのに全てのあらすじを把握する必要は、必ずしもないのだが。

K. カラーエフの作品を聴くのは、たぶん初めて。この「7人の美女」というバレエは代表作の一つらしい。ここでは、12曲を抜粋して組曲としているが、この抜粋が作曲者によるものか、編曲者によるものか、あるいは演奏者の希望によるものかはわからない。歌謡曲的な俗っぽさを強く感じさせるフレーンニコフに比して、K. カラーエフの作品は繊細で品のある美しさが印象的。当時のソ連での社会的地位を反映してB面となったのだろうが、音楽的な内容から言えばこのK. カラーエフの作品が本アルバムのメインと言って差し支えない。標題の「7人の美女」というのは、曲名から推測すると、インド、ビザンティン、ホラズム、スラヴ、マグレブ、支那、ペルシャという、いずれもアジア地域の古代文明のあった地の美女のことらしい。いかにもアゼルバイジャン出身の作曲家らしい選択とも言えるが、各国の民族音楽を直截的に反映したような音楽ではない。あくまでも、それぞれの国のイメージをカラーエフなりに表現したということなのだろう。オリジナルのオーケストレイションで聴くと、また印象が異なるかもしれないが。とにかく、気に入った。

今回届いた残りの一枚は、2007年1月31日の記事で紹介したものを、うっかりダブり買い。気に入った演奏なら慰めにもなるが、一度聴いてお蔵入り……に近い音盤なので、わりとショック。

【2009年2月3日:追記】
妻とのたわいもない会話の中で、この「7人の美女」の話題が出た。話している内に、家にある「がんばれ、ドナルド」というVHSソフトに収録されている「ドナルドのゲーム、ゲーム、ゲーム。」という短編の中で、ドナルドが「7人の美女」というお話を読むシーンがあることに気づく。きっと由緒正しい(?)原作があるのだろうと、調べてみた。

その結果、ペルシアの叙事詩人ニザーミー(1141~1209)による『七王妃物語』が元になっていることがわかった。ササーン朝ペルシアの王、バハラーム5世が7人の王妃を迎え、曜日毎にそれぞれの王妃を訪ねて、そこで王妃が語る様々な話を集めた、といった感じの内容のようだ。「シェエラザード」(『千一夜物語』)のようなものなのだろう。邦訳もあるようだが、今のところは、読もうとまでは思わないかな。
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クレンペラーのショスタコーヴィチ

  • ハイドン:交響曲第101番「時計」、ストラヴィーンスキイ:組曲「プルチネッラ」、ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、R. シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、ベートーヴェン:交響曲第1番、シューベルト:交響曲第7番「未完成」、ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲 クレンペラー/トリノ・イタリア放送SO (Memories Reverence MR2095/96)
基本的に面倒くさがりなので、最新情報のチェックなどは苦手である。色んなブログをマメに見るようにしたいところだが、なかなかそういう習慣が身につかない。それでも、たまには気になるサイトなんかを巡回することもあって、そういう時に見るところの一つが「20世紀ウラ・クラシック!」というブログ。昨年末、よりにもよってクリスマス・イヴに日帰りで東京・新橋に出張だったのだが、戻ってからこのブログをチェックすると、こんな記事が。一日早く見ていれば、帰りに銀座に寄ったのに…… というわけで、東京在住の弟に頼んで山野楽器で確保してもらった次第。

ドイツ系の作品については、いずれも格調の高い、確固たる造形の見事さが際立つ名演揃い。もちろん、トリノ・イタリア放送SOの技量には不満が残るし、録音状態も1955年のライヴ録音ということを考えても褒められたものではない。クレンペラーでこれらの曲を聴くのならば、もっと状態の良い名盤が他にいくらでもあるだろう。とはいえ、この水準の演奏をまとめて聴くことに不満があろうはずがない。

このアルバムの目玉は、ストラヴィーンスキイとショスタコーヴィチの2曲だろう。ただ、オリジナルのLPがリリースされた当時とは異なり、今では「プルチネッラ」のスタジオ録音がCDで出ている(Testament)ので、ショスタコーヴィチだけを目当てに入手する人も少なくないだろう。言うまでもなく、僕もその一人。

そのショスタコーヴィチだが、随分と個性的な解釈である。前半の3つの楽章では非常に遅いテンポをとり、オーケストレイションの仕組みを丹念に紐解いたような響きが印象的。当然の帰結と言うべきか、第1楽章や第3楽章では愉悦感が薄く、気分の晴れない第2楽章の雰囲気が支配的なまま、第4楽章に突入する。この楽章は通常より極めて速く、おそらくサクソフォーンに吹かせていると思われるファゴット・パートは、妙に艶めかしい。第5楽章は、ごく普通のテンポ(やや遅めではあるが)。ようやく、賑やかで楽しい音楽が繰り広げられる。このように書くと、「戦勝を祝う交響曲」の裏にある作曲家の意図を暴き出した解釈と受け取られるかもしれないが、むしろ“形式主義者”ショスタコーヴィチの独特な様式感を“雑念抜きで”表現した音楽のように聴こえるのが面白い。

LPからの盤起こしらしいが、復刻状態は概ね良好。

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ニコラーエヴァのDVD

  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ ニコラーエヴァ (Pf) (medici arts 3085248 [DVD])
  • ヴァーインベルグ:ピアノ三重奏曲、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 ウィーン・レシェティツキー三重奏団 (Cascavelle VEL 3104)
11月にHMVにオーダーした音盤(12月16日17日1月9日の記事)の内、入荷が遅れていた2枚が年明け早々立て続けに届いた。まだガーウクの10枚組BOXが未聴のまま残っているのだが、まずは“小物”から処理してしまおうと、こちらを先に視聴する。

ニコラーエヴァによる「24の前奏曲とフーガ」の全曲録音は3種類あるが、4種類目が映像でリリースされるとは予想もしていなかった。なんとなく買いそびれていただけなのだが、オーダー後に在庫状況の欄が「入手困難」となった時は少々焦った。DVDはすぐに入手できなくなることも少なくないので、新譜情報を入手したら早めに確保しなければと反省した次第。まぁとにかく、無事に入手できてよかった。

全4種類の内、この映像が最も演奏時間が短い。カメラの前でライヴ的な集中力を発揮したことも大きいのかもしれないが、最晩年(死の1年前)に到達した枯淡の境地というべきか、重厚でありながらも不思議と軽さを感じさせる音楽づくりが、演奏時間にも反映しているのだと思う。技術的には心もとない瞬間もあるのだが、フーガの多彩な音色はさすが。全て暗譜で、息つく間も惜しむように次々と弾き続けていく様は、各曲の独立性よりは「24の前奏曲とフーガ」という一つの作品の巨大な姿を夢中で描き出しているようにも見える。ピアノが弾けない僕には映像があるメリットはあまり感じられなかったが、CDだったら2枚ないし3枚のディスクを交換せずに途中でやめてしまうことが多いが、DVDだと1枚である上に演奏姿まで見せつけられるので思わず一気に最後まで聴いてしまいそう。24の小品集としてではなく、一つの作品としてその全貌を感じ取るには、またとないメディアと言えるかもしれない。

この種のDVDに付き物のボーナス・トラックは、ニコラーエヴァがこの作品について語ったインタビュー映像。この作品が生まれるきっかけとなった1950年のバッハ没後200年祭関連の映像などもほんの少し挿入されるが、基本的にニコラーエヴァの語りと演奏風景(本編と同じ)が中心である。それほど目新しい話はないのだが、全24曲が一つの有機体を形成しているというニコラーエヴァの解釈は、確かに納得がいく。とはいえ、150分を一気に聴き通すのは骨が折れるのも事実。ニコラーエヴァは「交響曲でも弦楽四重奏曲でもなく、この曲集こそがショスタコーヴィチの内面が赤裸々に吐露された日記帳のようなものだ」というK. ザンデルリンクの言葉を紹介しているが、気の向くまま、その日記帳の気に入ったページを捲るような聴き方も、それはそれでまた悪くないのだろう。

最後に入荷したピアノ三重奏曲のアルバムは、いかにも売れてなさそうな雰囲気で、そろそろ入手しておかなければ新品だけではなく、中古市場にも出回らないかもしれないという危機感から注文したもの。が、意外にもどっしりとした手応えのある好演に、良い意味で期待を裏切られた気分。いわゆるロシア流儀の濃厚な節回しではなく、変に力まず、それでいてスケールの大きな音楽を奏でていて、とても気持ちが良い。共感に満ちたヴァーインベルグ、しっかりと弾き込んだ安心感のあるショスタコーヴィチ、どちらも優れた演奏である。ただ、最新録音にも関わらず、音質には感心しなかった。

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ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番(原典版)

YouTubeを眺めていたら、レーピンが弾くショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の全曲を見つけた。もしや、と思って第4楽章の冒頭をチェックしてみたら、案の定“原典版”を使用していた。この箇所、決定稿では「汗を拭く時間くらいは欲しい」というオーイストラフの求めに応じてオーケストラのTuttiに置き換えられているのだが、原典版ではカデンツァから休みなく延々と独奏Vnが弾き続ける形になっている。もちろん原典版が出版されたことはなく(42巻の旧選集の校訂報告には記されている)、レーピン以外がこの版を演奏したという話も聞いたことがない。一度聴いてみたいと思っていたので、実に嬉しい。提供者に感謝。

さて、初めて聴いた原典版の感想だが、聴き慣れたのとは違う響きに戸惑うのは事実だが、変更された箇所が非常に短いこともあって、楽曲の印象を左右するほどの違いはないと感じた。敢えて言うなら、カデンツァの盛り上がりをTuttiが引き継ぐ決定稿の方がより一層華やかといったところか。

版に対する興味だけではなく、演奏そのものも大変立派。やや整然とし過ぎて大人しいようにも感じられるが、カデンツァを頂点とするテンションの設計が見事で、徒に大騒ぎすることなく、淡々と、それでいて真摯に楽曲の内容を奏でていく様が素晴らしい。P. ヤルヴィは手堅くアンサンブルをまとめつつも、単なる伴奏に留まらない表現力をさりげなく発揮している。

第1楽章(1)第1楽章(2)
第2楽章第3楽章
カデンツァ~第4楽章
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
レーピン (Vn)、P. ヤルヴィ/ミラノ・スカラ座O

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パイアン三重奏団のCD/ロジデーストヴェンスキイのDVD

  • ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1&2番、ユオン:ピアノ三重奏曲、トリオ=ミニアチュア パイアン三重奏団 (Coviello Classics COV 50502)
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1&2番 シュタインバッハー (Vn) ネルソンス/バイエルン放送SO (Orfeo C 687 061 A)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第1番 バーンスタイン/シュレスヴィヒ=ホルシュタイン祝祭O (medici arts 2072158 [DVD])
  • モーツァルト:協奏交響曲、セレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」、ボーア:マックモーツァルトのアイネ・クライネ・ブリヒト・ムーンリヒト・ニヒト・ムジーク、ペルト:モーツァルト=アダージョ、シニートケ:ハイドン風モーツ=アルト クレーメル (Vn) クレメラータ・バルティカ (Euro Arts 2072228 [DVD])
  • リームスキイ=コールサコフ:「ロシアの復活祭」序曲、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番、ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 ポーストニコヴァ (Pf) ロジデーストヴェンスキイ/BBC SO (medici arts 3085278 [DVD])
12月もHMVで数点オーダーしたが、今回は2週間ほどで全てが揃った。年末年始は大掃除のやり過ぎで体調を崩し、届いた音盤も積んでおいただけだったので、せっかく迅速に入荷したのに何の甲斐もなかったが。

今回の買物のメインはDVDだったので、CDの方はさほど興味の持てないものを敢えてオーダー。まずはピアノ三重奏曲から。これとチェロ・ソナタはリリースされている音盤の枚数が多い上に、コンスタントに新譜が出され続けているので、いつもウィッシュリストの中にある作品だ。今回たまたま選んだパイアン三重奏団というのは若手の団体のようだが、寡聞にしてどういう人達なのかはライナーの経歴以上のことは知らない。……が、これがなかなかの秀演。端正に整えられたアンサンブルときれいな音だけでも十分に魅力的ではあるが、自然な高揚感を持った気持ちの良い音楽づくりが特に素晴らしい。カップリングのパウル・ユオンは、ブラームスの「ハンガリー舞曲集」の数曲を編曲している人としか知らないが(これも、調べて初めて気づいたくらい)、1940年没とは思えない、ひたすら冗長でロマンティックな作品で、妙に気に入ってしまった。演奏者の美質も、こちらの作品でより一層発揮されているように思える。

ヴァイオリン協奏曲は、きちんと弾きましたという以上のものではない。安全運転そのものを否定するつもりはないが、音楽の振幅が小さくて、何も表現できていない。それでいて、たとえば第1番の終楽章コーダのような部分では音が汚くなる。一方のオーケストラは独奏者とのバランスを考えてか、終始控え目。

バーンスタインのDVDはシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭でのリハーサルと本番の様子を収めたもので、随分前にクラシカ・ジャパンで放映されたものの録画を、知人のご厚意で観せてもらったことがある。最晩年の大巨匠が若者を相手に音楽とは何ぞやを諭していくような、いかにもバーンスタインらしいリハーサルは、正直、ちょっと説教臭くてしんどい。オーケストラの水準も、この種の臨時編成の団体であることを考慮に入れても、高いとは言い難いので、バーンスタインのモチヴェーションも上がらなかったのかもしれないが。本番も同様の出来。リハーサルには英語字幕があるものの、基本的に英語で進められているので、事実上、字幕はないに等しい。

クレーメルとクレメラータ・バルティカが、「アフター・モーツァルト」と題してザルツブルク・モーツァルテウム大ホールで行った2夜に渡る演奏会の映像は、曲目の面白さに加えて、クレメラータ・バルティカの美人奏者達がどのようにクレーメルと渡り合っているのかに興味があってオーダー。クレーメル独特のボウイングや刺激的なアーティキュレーションが全員に浸透しているのは相変わらずで、クレーメル自身はそれなりに楽しんでいる様子がよく伝わってくる。ただ残念ながら、共演者達の水準が、独奏でクレーメルと立ち合うには完全に力不足。2007年の来日公演を映像で観た時には、これほどの不満は感じなかったのだが、この映像の収録年が2002年と随分前であることも影響しているのだろうか。特に協奏交響曲でのウリジョナにはがっかり。セクハラまがいのクレーメルの視線に目を背けているような立ち姿が、そのまま音楽になったよう。まぁ、緊張していたのでしょうが。「セレナータ・ノットゥルナ」の終楽章では、いかにもクレーメルらしいカデンツァの遊びが披露されるが、クレーメル以外の4人からは遊び心が感じられない。アンコールのボーアの作品は、演奏はともかく、あまり面白い曲だとは思えない。ペルトの作品はとても美しい音楽で、このDVD中で最も楽しんだ1曲。ただ、スドラバのチェロは一本調子。もっと気持ちの良い音楽をする人だと思っていたが、作品との相性?それとも、単に当日の調子?シニートケで独奏を務めているネマニテは、ここで挙げた奏者の中では一番ましか。でもこうやって聴くと、クレーメル&グリンデンコというデュオの凄さが改めてよくわかる。

同時に発注した中で、1枚だけ遅れて入荷したのがロジデーストヴェンスキイのDVD。彼の華麗な指揮姿を鑑賞できるのを楽しみにして観始めたのだが、意外にも(?)ごくまともな映像に少々拍子抜け。ただ、収録されている3曲とも、大変優れた演奏である。敢えて言うなら、ラフマニノフの協奏曲の出来が一番のように思うが、目当てのショスタコーヴィチももちろん素晴らしい。第3楽章などで、もっと表情豊かに“演技”するのかと思いきや、終始シリアスな表情で鮮やかにアンサンブルを捌いていくような指揮ぶりに、ロジデーストヴェンスキイがこの曲に持つ思い入れのようなものを感じた。オーケストラに不満がないわけではないが、映像作品としては大満足。それにしても、プロムスのヒッピーみたいな聴衆は、曲に対する関心、戸惑い(第2楽章の後では忍び笑いまで聞こえる)、熱狂、すべてを素直に表現していて、観ていて大変面白い。

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テミルカーノフの10枚組BOX(Brilliant)

  • Yuri Temirkanov Edition (Historical Russian Archives) (Brilliant 8818)
12月16日、および17日の記事で紹介した買い物の続き。

ちょうど1年ほど前にリリースされたBOXセットだが、遅ればせながらようやく確保。収録曲は以下の通り:
【CD 1】
チャイコーフスキイ:幻想的序曲「ロミオとジュリエット」(キーロフO 1983.6.4)
チャイコーフスキイ:交響曲第6番「悲愴」(キーロフO 1983.6.4)
【CD 2】
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番(ソヴィエト国立SO 1966.12.)
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(ソヴィエト国立SO 1981.6.14)
【CD 3】
ショスタコーヴィチ:交響曲第13番(レニングラードPO 1983.6.16)
シチェドリーン:管弦楽のための協奏曲第2番「鐘」(ソヴィエト国立SO 1976.2.25)
【CD 4】
プロコーフィエフ:交響曲第1番「古典」(ソヴィエト国立SO 1981.6.14)
プロコーフィエフ:組曲「ロミオとジュリエット」第1、2番より(ソヴィエト国立SO 1980.7.27)
プロコーフィエフ:組曲「キージェ中尉」(ソヴィエト国立SO 1980.7.27)
シチェドリーン:組曲「愛のみにあらず」第1番より(ソヴィエト国立SO 1980.5.17)
【CD 5】
ハチャトゥリャーン:交響曲第2番(レニングラードPO 1970.5.25)
スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」(モスクワPO 1970.5.25)
【CD 6】
ラフマニノフ:交響曲第2番(ソヴィエト国立SO 1977.4.10)
イベール:交響組曲「パリ」(レニングラードPO 1980.7.31)
【CD 7】
ベートーヴェン:交響曲第8番(レニングラードPO 1969.1.30)
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲(レニングラードPO 1982.2.20)
ロッシーニ:「セビリアの理髪師」序曲(ソヴィエト国立SO 1968.11.14)
ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」(ソヴィエト国立SO 1968.11.14)
【CD 8】
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(ソヴィエト国立SO 1968.5.9)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(レニングラードPO 1976.6.12)
ラヴェル:スペイン狂詩曲(レニングラードPO 1976.6.12)
【CD 9】
シベリウス:交響曲第2番(レニングラードPO 1985.11.17)
ブリテン:青少年のための管弦楽入門(ソヴィエト国立SO 1967.3.28)
【CD 10】
ドビュッシー:3つの夜想曲より「雲」、「祭り」(ソヴィエト国立SO 1980.5.17)
ドビュッシー:海―3つの交響的スケッチ(レニングラードPO 1976.6.12)
ドビュッシー(ビュセール編):小組曲(レニングラードPO 1976.6.12)
エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番(ソヴィエト国立SO 1968.5.9)
ただし、収録年月日やオーケストラなどの録音データが、どれほど信頼できるかは不明。ともかく、まずは一度全部を聴くことにする。以下、ディスク順に(実際に聴いたのは、逆の順番だったが)。

【CD 1】BOXの冒頭を飾るに相応しい、2曲ともずっしりと手ごたえのある秀演である。隅々まで緻密に作り上げられながらも、空虚な音が一つもないといった感じ。知情意のバランスがよくとれた、とても素晴らしいチャイコーフスキイだと思う。

【CD 2】ショスタコーヴィチの第1番は、初出音源。気合いの入った燃焼度の高い音に生理的な快感を禁じえないが、知的な造形力の確かさも特筆に値する。表現はやや一面的に過ぎるような気もするが、若きショスタコーヴィチの筆先から迸った音符がそのまま鳴り響いているような音楽の奔流は、非常に魅力的。第3~4楽章のアタッカは、後年のスタジオ録音とは異なって楽譜通り。第5番は、かつてRevelationからリリースされていたものと同一のライヴ演奏。大分荒っぽい演奏だが、音楽の作りそのものは模範的である。何だかんだ言っても、こういう“熱い”演奏には抗しがたい魅力がある。

【CD 3】本BOX中、最も楽しみにしていた一枚だったが…… ショスタコーヴィチのただならぬ緊迫感や、抑えきれずに暴発してしまうような昂奮は非常に印象的だが、全体の仕上がりはさすがに荒過ぎる。ギリギリのところで踏みとどまって格好よくきめる第2楽章や、いかにも魂の叫びといった風情の第3楽章は悪くないが、第4楽章以降がどうにも納得しかねる。全曲を貫くテミルカーノフの想いには共感できるのだが、ここまで破綻している演奏を無条件に賛美するわけにはいかないだろう。シチェドリーンもかなり勢いに任せた演奏ではあるが、図らずもクラスターなどの刺々しい響きに切実さが加わっていて、そんなに悪くもない。

【CD 4】知的な造形と異様な昂奮とが、非常に高い次元で音楽的に結実した、いかにもテミルカーノフらしい名演。特に古典交響曲の愉しさは、この曲のベスト盤に推したいほど素晴らしい。シチェドリーンの組曲も凄い。9枚目と並んで、このBOXの白眉と言ってよいだろう。

【CD 5】爆演指揮者テミルカーノフの本領発揮か?!と期待が高まる曲目であるが、力技だけでねじ伏せるのではなく色々やろうと考えたせいか、終始燃え尽きているわけではなく、その意味ではやや中途半端な印象も残る。もっとも、録音が荒れ狂う音響のすべてを捉え切れてないので、どちらかといえばその影響が強いのかもしれない。

【CD 6】ラフマニノフでは、オーケストラは気持ちよく鳴っているものの、全楽章通して音楽がせかせかと落ち着かない。それに対してイベールは、歯車の噛み合った爆演。フランスのエスプリ……は見当たらないが、とても楽しい音楽に仕上がっている。

【CD 7】古典派の作品がまとめられた1枚だが、若い頃の演奏であるせいか、感情が先走っていて平凡な爆演(?)に留まっている。唯一80年代の演奏である「コリオラン」序曲では、ティンパニの爆裂に圧倒されつつも、理性的な造形が音楽の格調を保っているところにテミルカーノフの個性が発揮されている。

【CD 8】「新世界より」は、やみくもに興奮し、これ見よがしにオーケストラをドライブしようとする“若気の至り”だろう。終楽章の盛大な崩壊ぶりは、自業自得。ラヴェルの2曲は、拍子抜けするほど穏やかで普通な演奏。最近の演奏に通じるような気もする。

【CD 9】シベリウスは、燃焼度の高い素晴らしい演奏である。冒頭から異様なまでにテンションが高く、隅々まで熱い共感が満ちている。北欧音楽というにはあまりにもロシアンな金管楽器が炸裂しているが、第2番ということもあって違和感はない。ブリテンは、これより遡ること20年近くも前の演奏だけに、細部の彫琢はそれほどでもないが、多少の泥臭さを漂わせながら、ぐいぐいと前に進んでいく勢いに、思わず惹き込まれてしまう。

【CD 10】ドビュッシーは、いずれも手堅い印象。若きテミルカーノフの爆裂演奏を期待すると肩透かしかも。その不満は、最後のエネスコで解消される。


緻密さを求める向きには薦められないが、アンサンブルの破綻や録音の質にそれほどこだわらないのであれば、なかなか面白いBOXだとは思う。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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