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「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 (メッツマッハー指揮)他

  • ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 メッツマッハー/ウィーン国立歌劇場 (Orfeo C 812 1121)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1&2番、ラヴェル:ピアノ三重奏曲 フジタ・ピアノトリオ (Intim Musik IMCD 104)
12月15日のエントリーの続き。入荷が遅れて別便で発送されてきた2点を聴く。

ウィーン国立歌劇場の「マクベス夫人」は、当初ペトレンコが指揮する予定だったが、キャンセルのためにメッツマッハーが代役を務めたという経緯があるとのこと。しかし、演奏に破綻が生じている訳でも、逆に安全運転に終始する訳でもなく、メッツマッハーらしい透徹した雰囲気が醸し出されているのは素晴らしい。歌手陣も好演で、各登場人物の的確な性格描写は模範的な出来と言ってよいだろう。どこか退廃的な甘美さが漂う響きが、まるで「ヴォツェック」の姉妹作のように聴こえるのも面白い。一方で、録音のせいかもしれないが、凍てつくような鋭さは後退している。

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ロシア室内楽ファン倶楽部」というサイトの「今週の一枚」(2007年11月第2週紹介分)で随分前に見かけて気になっていたフジタ・トリオのショスタコーヴィチも、入手難になる前にオーダーしてみた。メーカー在庫切れという通知があったので諦めかけたが、思いの外早くに入荷した。

上述の記事から勝手に癒し系の演奏と思って聴き始めたのだが、それとは正反対の鋭利な肌合いの熱気溢れる演奏に意表を突かれた。とりわけ硬質なピアノの響きが全体を支配しており、抒情的な流れよりも力感に満ちた推進力の印象が強い。第1番は素直な音楽作りが悪くはないが、表情がやや直線的で伸びやかさに欠けるのが惜しい。第2番では意欲的な表現も聴かれるが、響きが明るいせいか迫真性が伴わないのが物足りない。収録曲の中では、ラヴェルがこの団体の特質に合っているように思われた。

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DSCH社の新全集第9、54、122巻


  • ショスタコーヴィチ:交響曲第9番変ホ長調 作品70, 新全集第9巻, DSCH, 2002.
  • ショスタコーヴィチ:劇音楽「条件つきの死者」作品31 & 31a、大きな稲妻 Sans op. D(iv), 新全集第54巻, DSCH, 2009.
  • ショスタコーヴィチ:映画音楽「新バビロン」作品18, 新全集第122巻, DSCH, 2004.
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第9番 作品117, スコア, DSCH, 2001.
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第9番 作品117, パート譜, DSCH, 2001.
  • ショスタコーヴィチ:反形式主義的ラヨーク Sans op. X(ii), DSCH, 1995.
いつも利用しているショップから、ショスタコーヴィチの楽譜のセールの案内が届いた。ユーロ安の今、注文しない手はない。今回はDSCH社の新全集の内、値引き率の高い物を適当に選択してみた。

交響曲第9番には版の問題があるが、新全集も旧選集と同様に改訂版が採用されている。実演を聴いた上でショスタコーヴィチ自身が行った改訂と思われるので、初版の軽やかさも捨て難いところではあるが、これが妥当な判断なのだろう。この第9巻の最も注目すべき点は、交響曲第9番の草稿のファクシミリが収録されていること。従来、バルシャーイの回想などで語られてきた「交響曲第9番の総譜を、ショスタコーヴィチはいきなりペン書きで書き上げた」という神話の真偽にも関わる資料で、入念な準備の上に交響曲が作曲されたことが示されている。この事実は「オーケストレイションを」いきなり清書書きしたこととは矛盾しないし、そもそもショスタコーヴィチの天才性を否定するものではない。

第54巻には、劇音楽「条件つきの死者」と「大きな稲妻」が収録されている。「条件つきの死者」では、ショスタコーヴィチ自身がオーケストレイションした楽曲は2曲にとどまり、残りはマクバーニーが編曲したものである。今まではCDの情報しかなかったために、楽曲の順番や表題などにはっきりしないことも多かったが、これで少なくとも楽譜に基づいて整理することができる。

第122巻は、映画音楽「新バビロン」の全曲である。現場でどのようなカットや繰り返しが行われたのかを正確に知るのは恐らく不可能であろうが、映画のどの場面にどの音楽が対応するのかを総譜中の指示から知ることができる意義は大きい。せっかくなので手元にあるCDとVHSの映像とを同期させてみたいと思っているのだが、iMovieの操作がよくわからず現在悪戦苦闘中。

ペーパーバックの普及版からは、近い内に演奏したいと切望している弦楽四重奏曲第9番と、DSCH社が最初に出版した「ラヨーク」を選択。「ラヨーク」とバレエ3部作(ピアノ・スコア)、映画音楽「愚かな小ねずみ」(ピアノ・スコア)といった辺りが第1回配本だったと記憶しているが、これらはいずれもわら半紙のような紙質である。厚手の上質紙が使われている近年の出版物との違いに、ロシアの歴史を感じる。

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少し前の話題盤などをまとめて

  • ドヴォルザーク:ミニアチュア、2つのワルツ、バガテル、弦楽四重奏楽章、弦楽四重奏のための「糸杉」より、弦楽のためのノットゥルノ パノハQ (Supraphon SU 3391-2 131)
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、カンチェーリ:ヴァイオリン、弦楽合奏とテープのための「V & V」、ショスタコーヴィチ(T. バティアシヴィリ編):「人形たちの踊り」より「抒情的ワルツ」、ペルト:鏡の中の鏡、ラフマニノフ:ヴォカリーズ バティアシヴィリ (Vn) グリモー (Pf) サロネン/バイエルン放送SO (DG 477 9299)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第14番 コルパチェヴァ (S) ミグノフ (B) クルレンツィス/ムジカエテルナ (Alpha ALPHA 159)
  • グリーンカ:歌劇「ルスラーンとリュドミーラ」序曲、チャイコーフスキイ:交響幻想曲「フランチェスカ・ダ・リーミニ」、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、スヴィリードフ:「吹雪」より「ワルツ」、ハチャトゥリャーン:「スパルターク」第2組曲より「スパルタークとフリーギアのアダージョ」、「ガヤネー」第3組曲より「剣の舞」、チャイコーフスキイ:スラヴ行進曲、交響曲第5番 スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SO (NHK NSDS-9488 [DVD])
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 テミルカーノフ/ヴェルビエ音楽祭O (EuroArts 3079138 [DVD])
  • ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番より第4楽章、ドヴォルザーク:交響曲第8番、スラヴ舞曲第15番 ハーン (Vn) M. ヤンソンス/ベルリンPO (EuroArts 2050448 [DVD])

自分で演奏する必要に迫られてCDを探していたところ、折りよくセールの案内メールが届いたので、久し振りにHMV ONLINEで買い物。マルチバイのセールだったので、予定よりも少し多めにオーダーしてしまった。全て揃うまでに2ヶ月弱ほどかかったが、思ったより早く届いたという印象である。

来年の春、ちょっとした演奏会に弦楽四重奏で出演を打診されたのだが、諸事情でチェロ抜きの編成となってしまった。こういう時はドヴォルザークかコダーイというのが定番だが、ドヴォルザークには同編成でもう1曲ある。「4つのロマンティックな小品」作品75の原曲である「ミニアチュア」作品75aが、それだ。編成に起因する演奏頻度の差のせいで、編曲まがいの作品番号を与えられてはいるが、ピアノでは得られない清澄な響きは見過ごすに忍びない。最終曲の終わり方ゆえに演奏会で取り上げ辛いのは確かだが、とりあえず練習だけはしておこうと、その参考に選んだのが、パノハQによるドヴォルザークの作品集。「ミニアチュア」以外はどれも聴いたことのある作品ばかりだが、派手さはないものの伸びやかな歌心が魅力的な佳品揃いで、お得感のある内容だ。パノハQの演奏は、スメタナQの系譜に連なる音色やイントネーションがどこか懐かしく、肩の力を抜いて身を音楽に委ねることができる。

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N響の第1637回定期公演(2009年5月9日および11月14日のエントリー)で見事な演奏を聴かせてくれたバティアシヴィリが、その時と同じショスタコーヴィチの協奏曲第1番を録音した音盤は、リリースされてから少し時間が経ってしまったが、このまま聴かずに済ます訳にもいかず、この機会にオーダー。

過剰な思い入れが溢れる訳でも、過度に感情を排する訳でもなく、まさに古典的な造形の中に整然とまとめられた演奏である。このバランスの良さは、ショスタコーヴィチの音楽が、今やその時代背景から自由になったことの証左であろう。凛として、かつ線の細さのないバティアシヴィリのヴァイオリンは、それだけで十分に魅力的であるだけに、こうした現代的な解釈に相応しい。サロネンの指揮も同様の印象だが、少し大人しいようにも感じる。

このアルバムに収録された他の作品でも、バティアシヴィリの美質は余すところなく発揮されている。特にペルトの「鏡の中の鏡」は、同曲の決定盤と言いたくなるような名演。ショスタコーヴィチの「抒情的ワルツ」は、編曲に不満が残った。

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第48回レコードアカデミー賞(2010年)で交響曲の部門賞を獲得したクルレンツィス指揮の交響曲第14番は、毀誉褒貶の激しい同賞には珍しく各所で絶賛されていたことから気にはなっていたのだが、これ以上入手する機を逸する訳にもいかず、今回オーダーしたもの。ライナーノーツの写真を見ると、古楽器を使用している団体のようだが、ここでは全てを古楽器で演奏しているのではなさそうだ。ただし、控えめなヴィブラートをはじめとして、明らかにモダン楽器の流儀とは異なった風合いを持った響きである。豊饒な響きではないがゆえに、個々の音が持つ鮮烈さが際立つ表現主義的な演奏に仕上がっており、作品の本質に深く合致した音楽が紡ぎ出されている。2人の歌手もオーケストラと一体となって、非常に訴求力のある歌唱を聴かせる。楽曲にのめり込んで同化するようなタイプの熱演とは正反対で、スコアから浮かび上がる多彩な表情を余すところなく自然に、しかし繊細に音化し切った名演である。世評の高さも当然で、時代の刻印と無縁のショスタコーヴィチ演奏としては、最上級のものと言ってよい。もっと早く聴いておくべきだった。

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DVDもマルチバイの対象だったので、目に付いたものを適当にオーダー。

まずは、価格が少し高めだったことから長らく買いそびれていたスヴェトラーノフの1987年5月25日(東京文化会館)と1997年4月21日(サントリーホール)の来日公演を。上述したバティアシヴィリやクルレンツィスとは異なり、時代のノイズをたっぷりと含んだスヴェトラーノフ/ソヴィエト国立SOの音は、やはり僕の耳に懐かしく響く。ただ、スヴェトラーノフは基本的に単純な音楽作りをするタイプだけに、このDVDのようにオーケストラの音に広がりが感じられない録音では、その魅力が半減してしまう。アンコールの「スパルタークとフリーギアのアダージョ」だけは録音のハンデを超えて彼らの真骨頂が発揮されているものの、他はいずれも物足りなさが残った。

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テミルカーノフ指揮の交響曲第10番は、第16回ヴェルビエ音楽祭(2009年)でのライヴ。若手演奏家で構成された祝祭管弦楽団を前に睨みをきかせる芝居がかった仕草は、率直に言って好ましく思わなかったが、最初の一音から異様な熱気と緊張感に満ちた音が絞り出されているのは確か。ソ連時代のテミルカーノフを彷彿とさせる壮絶な大熱演は、聴き手の本能に強く訴えかけてくる。細部の表現力には若干の物足りなさもあるが、一気呵成な音楽の運びはそうした不満を嘲笑うかのよう。非常に満足度の高い演奏である。

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M. ヤンソンス/ベルリンPOの日本公演(2000年11月26日)ではハーンの独奏でショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番が演奏され、NHKで放送もされた。恐らくはその放送と同一の映像がDVDとなってリリースされていた。VHSで録画していたのだが、せっかくなので確保。アンコールも含む全ての曲において、“世界一”の楽団の貫録が空間を支配する贅沢な演奏会といった風情である。

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社会主義リアリズム三昧

  • アレーンスキイ:交響曲第1番、組曲第1番 セローフ、イヴァーノフ/モスクワ放送SO (EMI ASD 3642 [LP])
  • フレーンニコフ:バレエ「軽騎兵のバラード」(組曲) フェドセーエフ/モスクワ放送SO (eurodisc 206 406-425 [LP])
  • カバレーフスキイ:カンタータ「わが祖国」、カンタータ「明日の歌 春と平和」、歌曲(学生時代、おやすみ、幸せ) キタエーンコ、カバレーフスキイ/モスクワPO 児童合唱団“春” (Melodiya C10 22421 000 [LP])
  • アルテュニャーン:トランペット協奏曲、クリューコフ:トランペットと管弦楽のための協奏的詩曲、ヴァーインベルク:トランペット協奏曲 ドクシーツェル (Tp) ロジデーストヴェンスキイ、ジュライティス/ボリショイ劇場O (Melodiya C10 02273 009 1968 [LP])
  • My Boundless Motherland(ドゥナエーフスキイ:祖国の歌、ホールミノフ:レーニンの歌、トゥリコフ:我ら、共産主義者、バスネル:労働者階級は行進する、ショスタコーヴィチ:E.ドルマトーフスキイの詩による4つの歌曲より「祖国は聞いている」、フレーンケリ:ロシアの曠野、ロシア民謡:カリーンカ、ノーヴィコフ:星に向かって、ロシア民謡:雪の山で、ポノマレーンコ:その歌は何処で聴けるの、ロシア民謡:行商人) (Melodiya 33CM-03745-6 [LP])
  • ディレーツキイ:Solemn Song「 Glorify the name of the Lord」、クレスチヤーニン:Befittingly、カラーシニコフ:12声部のコンツェルト「ヘルヴィームの歌」、ベレゾーフスキイ:Do not reject me in my old age、ボルトニャーンスキイ:ヘルヴィームの歌第7番、コンツェルト第24番「I lift up my eyes to the hills」、ヴェーデリ:コンツェルト第3番「How long, O Lord, how long wilt thou forget me?」 ユルローフ/ロシア共和国合唱団 (EMI ASD 3102 [LP])
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番、ボロディーン:弦楽四重奏曲第2番 ブルガリアQ (Harmonia Mundi HMO 34.709 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.からの、11月到着分。ここ数ヶ月、何かとばたばたしていたせいか、LPに針を落とすのは久し振りのような気がする。

アレーンスキイの甘美な音楽は、グラズノーフと並んで僕の愛好するところだが、交響曲第1番も期待に違わぬ憂愁の旋律美に満ちた素敵な作品である。セローフのやや直情的な演奏も、作品の若々しい魅力を率直に伝えてくれる。カップリングの組曲第1番も同様だが、イヴァーノフに剛毅でスケールの大きな演奏を期待していただけに、よくまとまった普通の演奏ではあるものの、どこか肩透かしをくらった感じ。もちろん悪くはないのだが、この曲に関してはスヴェトラーノフ盤の方が良い。


フレーンニコフの「軽騎兵のバラード」は、スヴェトラーノフお得意のアンコール・ピースでもある「アダージョ」しか聴いたことがなかった。できれば全曲盤が欲しいところではあったが、この組曲(編者は分からなかった)も20曲が抜粋されているので、とりあえずは良しとしよう。誰もが口ずさめるような分かりやすく平易な旋律に、大仰で華やかなオーケストレイション、程よく民族臭が散りばめられた和声とリズムなど、まさに「社会主義リアリズム」の極致と言っても構わないだろう。こういう曲をやらせたら、フェドセーエフは天下一品だ。


カバレーフスキイの児童合唱用の作品集も、「社会主義リアリズム」のお手本のようなアルバムだ。2曲のカンタータは、一聴しただけでは明確に区別できないほど曲調や構成などがよく似ている。音楽史上にその名を轟かせるような作品ではないが、ソ連音楽のある時代の特徴が凝集した作品と言うことはできるだろう。カバレーフスキイ自身が伴奏をした3つの歌曲は、映画音楽や劇音楽などからの抜粋なのか、元から児童合唱用に作曲されたものなのか定かではないが、伴奏のオーケストレイションも含めていずれも魅力的な小品である。


ドクシーツェルが独奏を務めた現代ソ連トランペット協奏曲集は、彼のアルバムがいつもそうであるように、ドクシーツェルの圧倒的な名技を堪能すべき内容。有名なアルテュニャーンの協奏曲は言うまでもなく、クリューコフの幾分地味な作品でも、ドクシーツェルの華麗な音楽が惜しげもなく繰り広げられる。とはいえ、このアルバムのメインはヴァーインベルクの協奏曲だろう。ショスタコーヴィチ風の瞑想から民族色が暴発し続ける狂喜乱舞まで、ヴァーインベルグの音楽の諸相を適切に音化しつつも、その全てをドクシーツェル色に染めてしまう音楽性と個性の強烈さが素晴らしい。


恐らくはソ連時代の愛国歌集と思われるアルバムが、リストの中にあった。そこにショスタコーヴィチの名前が挙がっていたので、既に架蔵済みの音源である可能性が高いと思いつつもオーダーしてみた。届いた現物を確認してみると、「My Boundless Motherland(広大なる我が祖国)」というタイトルで、アエロフロート社50周年を記念して制作・頒布されたアルバムであった。雰囲気から察するに国外からの旅行者を対象としているようだが、搭乗者全員に無償で渡されたのか、それとも機内販売のような形で希望者だけが購入したものなのかは判然としない。それはともかく、ソ連大衆歌曲の粋を集めた内容は、単なるお土産の域を超えている。イヴァーン・ペトローフの雄大極まりない「祖国の歌」の名唱に、「リェエーニィイーン」の甘美な連呼が次第に理性を蝕んでいく「レーニンの歌」と続く最初の2曲で、ソ連大衆歌曲の世界が畳みかけるように聴き手の心身を縛り付けてしまう。残念ながら目当てのショスタコーヴィチは、ガガーリンが宇宙で歌ったとされる「祖国は聞いている」の有名な録音で、予想通りの結末であったが、いかにもな愛国歌が並べられたA面の威力は相当なものである。一方のB面は、映画音楽などの大衆歌謡と古典的なロシア民謡とが交互に並べられた構成。とりわけ憂愁のロシア情緒が惜しげもなく垂れ流される歌謡曲は、抗い難いほど魅力的だ。映画「小悪魔たちの大冒険」(1969年)の挿入歌「ロシアの曠野」のグリャーェフ、「星に向かって」のズィーキナ、「その歌は何処で聴けるの」のヴォローネツといった、当時のソ連で人気のあった歌手達の雰囲気豊かな歌唱も素晴らしい。音源の選択が実に絶妙なアルバムだ。



映画「小悪魔たちの大冒険」より
Новые приключения неуловимых
フレーンケリ:ロシアの曠野
グリャーェフ(歌)
ノーヴィコフ:星に向かって
ズィーキナ(歌)
ポノマレーンコ:その歌は何処で聴けるの
ヴォローネツ(歌)


濃厚なロシアの香りを堪能した後のクールダウンに、17~8世紀のロシア聖歌集というのは、期せずして良い選択となった。ボルトニャーンスキイ以外は今まで名前しか知らなかった作曲家ばかりで、各々の個性を明確に把握するには至らないものの、資料として十分に価値がある。ただ、ユルローフ/ロシア共和国合唱団の演奏が楽曲の時代様式をどれほど踏まえているかには疑問が残る。もちろん、いわゆるヒーリング・ミュージック風の聴き易さに文句を言うつもりはない。


ブルガリアQのショスタコーヴィチは、ディモフQ名義の架蔵済みLP(Columbia OS-2901-HA)と同一音源。技術的な怪しさはあるものの、それほど悪くない演奏である。

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tag : USSR大衆歌曲 作曲家_Arensky,A.S. 作曲家_Khrennikov,T.N. 作曲家_Kabalevsky,D.B. 作曲家_Weinberg,M. 演奏家_Dokschitzer,T.A. その他_正教会

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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