ガーウク指揮の「第九」他
- ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番、モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番 コシツェQ (Opus 9111 1026 [LP])
- ベートーヴェン:交響曲第9番、合唱幻想曲 ヴィシネーフスカヤ (S) ポスタフニチェヴァ (A) イヴァノーフスキイ (T) ペトローフ (B) リヒテル (Pf) ガーウク、K. ザンデルリンク/モスクワ放送SO、アカデミー・ロシアcho (Melodiya D 03652-0931 [LP])
ハンガリー領だった時代もあるスロバキアの都市「コシツェ」の名を冠したこの団体は、その名に相応しく、良い意味での田舎臭さを感じさせる懐かしい音色に惹かれる。いかにも大木正興氏あたりが「これぞ弦楽四重奏の響き」と絶賛しそうな音である。両曲共に解釈面でのこれといった特徴はないが、穏やかな佇まいで端正に紡がれる音楽は、一昔前の雰囲気を湛えつつ、魅力的である。

ガーウク指揮のベートーヴェンの第九は、終楽章がロシア語による歌唱という点で、よく知られた録音。かなり前にVeneziaレーベルが終楽章のみをCD化(ただし盤起こし)して復刻していたが、全曲がCD化されているかどうかは知らない。
率直に言ってゲテモノ狙いで聴き始めたのだが、意外なほど格調の高い真っ当なベートーヴェンで、聴き入ってしまった。もちろん、ロシア色の強い金管楽器の影響で、明らかに独墺圏の団体とは異質の響きではあるものの(ただし、ティンパニは非常に控えめで、やや肩透かし)、強靭な弦楽器を中心に据えたアンサンブルは、聴き応え十分。テンポはあまり大きく揺れることはないが、基本的に解釈は昔のものなので、現代の演奏解釈に慣れた耳にはロマンティックに過ぎるが、むしろそれを望む聴き手にとっては覇気や熱気が傑出した優れた演奏として好まれるに違いない。私は、特に第2楽章のスケルツォ的な雰囲気に感心した。なお、終楽章のロシア語は、さすがに何度も耳にしている曲だけに違和感は拭えないが、オーケストラの重厚にうねるような響きのせいか、聴き進めるにつれて、それほど気にはならなくなる。
カップリングの合唱幻想曲の方は、リヒテル独奏かつK. ザンデルリンク指揮ということもあってか、これまでにCD化されていたと記憶している。冒頭の圧倒的なピアノ・ソロから、終始、スケールの大きい情熱的な音楽が繰り広げられる。これもまた古いタイプの演奏だが、この楽曲を手に汗を握りつつ一気呵成に聴かせてくれる稀有の演奏と言ってよいだろう。
なお、このベートーヴェン2曲の録音状態は、かなり悪いことを付記しておく。

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