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オネゲル:交響曲第3番「典礼風」の2台ピアノ用編曲(ショスタコーヴィチ)

  • オネゲル(ショスタコーヴィチ編):交響曲第3番「典礼風」(2台ピアノ版)、メシアン:アーメンの幻影 ソーシュ・ハーグ・ピアノ・デュオ (Guild GMCD 7331)
6月24日のエントリーで紹介した2枚と同時に2月末に注文していたのだが、この1枚だけが随分遅れて入荷した。長らく買いそびれてはいたものの、絶対に架蔵しておかなければならない音盤だったので、廃盤になっていなくて一安心。

少々前のことになるが、「典礼風」のショスタコーヴィチ編曲の日本初演となった演奏会のために、小文を書く機会があった。その時点で本盤を所持していなかったので、慌てて注文したものの、その演奏会が終わってから三ヶ月近く経ってようやく手元に届いたという次第。幸い、事前に聴いておくことだけは叶ったので、執筆には影響しなかったが。

さて、この編曲の背景等については上述の小文にまとめた通りだが、そもそもが公開演奏の目的ではなく、(当時の)新曲を紹介し、勉強する目的の編曲であるので、極めて機械的に管弦楽のスコアを2台ピアノの譜面に落としただけであろうことを前提に聴くべきものだと、私は考えている。その上で、全体として管弦楽の雰囲気が損なわれずに感じ取られるのは、ショスタコーヴィチがピアノを使いながらオーケストラの響きを如何にイメージしていたのか、その過程を窺わせるようにも思われて、なかなかに興味深い。この種の編曲によると和声とリズムの構造が明確になる一方で、楽器の音色そのものが持つ色彩や意味合いが失われることもあり、演奏にあたってはオリジナルのオーケストレイションに対する配慮も少なからず必要だが、この演奏はその点でやや単調なピアノ音楽の枠に納まっている感が否めないのは残念。とはいえ、ショスタコーヴィチの書いた音符を実際の音として聴かせてくれる貴重な録音としての価値は大きい。

「アーメンの幻影」でも、このデュオの演奏の印象は同じ。技術的な難所を感じさせない水準の高い合奏で、譜面は十二分に再現されている。ただ、音の強度や和声の色彩感の表現が少々単調で、結果として各曲の違いが聴き手にあまり伝わらないのが惜しいところ。
HMVジャパン
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

スークとベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集

  • スーク:弦楽四重奏曲第1番、バラード、舟歌、メヌエット(ピアノのための組曲より第2曲)、弦楽四重奏曲第2番、瞑想曲 スークQ (crd 3472)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集 東京Q、ズッカーマン (Va) (RCA 88691975782)
久し振りにHMV ONLINEで買い物。4月末に届いていたのだが、エントリーし忘れていた。

チェコ音楽の愛好家にとってスークは、スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクなどと並ぶ大物作曲家なのだろうが、少なくとも我が国においてはライヴはおろか、音盤でも聴くことのできる作品に限りがあるのは否めない。番号付きの作品のみならず、小品(編曲物も含む)までも収録した弦楽四重奏曲の“全集”である本アルバムは、何よりも資料として大きな価値がある。比較的有名な第1番に劣らぬ魅力的な旋律美を持つ初期の小品群や、いささか晦渋ではあるものの重厚で深い音楽的内容を持つ第2番など、いずれも「知られざる佳曲」にしておくのはもったいない楽曲揃い。スークQは地味ながらも手堅いアンサンブルでこれらの作品をまとめており、いかにも作品の雰囲気に相応しい演奏である。

HMVジャパン


5度に渡る第1Vnの交代があった東京Qだが、原田時代の若々しい鮮烈さも捨て難いものの、アンサンブルの完成度という点では、やはり続くウンジャン時代をその頂点とするのが妥当だろう。このベートーヴェン全集は、彼らの結成20周年を記念したセットである。ビーヴァー時代の2005~8年にもベートーヴェンの全曲録音を成し遂げているので、これは彼らの“旧”全集ということになる。

このセットがリリースされた当時は私の学生時代で、夢中になって音盤漁りをしていた時期だったこともあり、同時期にリリースされたアルバン・ベルクQやメロスQの録音と比較して論じられていたことを覚えている。貧乏学生だった私にはフルプライスのセットを購入することが叶わず、四半世紀を経てようやく、当時の国内盤新譜1枚よりも安い廉価セットで入手できたことには感慨深いものがある。

とりあえずは、全体的な印象についてのみ記しておきたい。まずは、とても良い感じで全体に“埋没”している第1Vnのバランスが特筆に値するだろう。これは4人の“対等”な音楽的関係性が生み出した、真に弦楽四重奏的な響きと言っても良い。この響きで緻密なアンサンブルが繰り広げられる初期の6曲の完成度は尋常ではない。中期、たとえばラズモフスキーの第1番などはまろやかに過ぎて私には物足りなかったりもするが、細部まで丁寧に美しく彫琢された演奏は、彼らならではのものに違いない。彼らの真骨頂は、当然ながら後期の5曲に余すところなく発揮されているが、とりわけ第15番の第3楽章は筆舌に尽くし難い素晴らしさ。この楽章単独なら、この演奏が私にとってのベスト。

なお、ピアノ・ソナタ第9番の弦楽四重奏編曲と、隠れた名曲である弦楽五重奏曲も収録されているのは嬉しい。後者のズッカーマンのヴィオラも流石の貫録。

HMVジャパン

theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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