モーツァルトの不明?曲

  • モーツァルト:フルート四重奏曲第1~4番、前奏曲とフーガKV404aより第1曲、オーボエ四重奏曲より第3楽章、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a) ランパル (Fl) 新パスキエ・トリオ (Philips 412 618-2)
  • モーツァルト:オーボエ四重奏曲、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a)、ディヴェルティメント第11番 ホリガー (Ob/Ehr) バウマン、ガシアリーノ (Hr) オルランドQ フルデモンド (Cb) (Philips 412 618-2)
  • モーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ、アダージョ(KV 411/KV 484a)、アダージョ(KV Anh.94/KV 580a) ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル (Orfeo C 188 891 A)
この週末に、積年の疑問が解けた。といっても、モーツァルトのある作品の名前がようやく分かったというだけだし、そもそもモーツァルトに詳しい方々は星の数ほどいらっしゃるのでわざわざブログに書くほどの内容ではないのだが、「覚え書き」ということで。

ランパルと新パスキエ・トリオによるモーツァルトのフルート四重奏曲全曲のアルバム(1982年ライヴ)は、特にヴィオラのブルーノ・パスキエが大好きな奏者ということもあり、今なお、時々棚から出して聴くことがある。その最後に、おそらくは当日のアンコールで演奏されたものと思われる作品が収録されている。表記は「Adagio from Quartet in G Major KV 540」。当初は何の疑いもなく、そういう曲があるのだろうと思っていたのだが、ある時KV540は「アダージョ ロ短調」というピアノ曲だと知った。では、これは何なのだ?

ということで、「from Quartet」という言葉を頼りに色々探してみた(フルートという楽器にはこだわらなかった)のだが、全くわからない。伸びやかでとても美しい旋律なのだが、不思議なもので、素性がわからないというだけで落ち着いて聴く気にもなれない。

この曲を思い出しては、ネットでモーツァルトの作品一覧を眺めたり、YouTubeで色々と検索を試したりしたが、どうにもヒットせずに徒に時間だけが経った。このアルバムを購入したのは1999年なので、実に15年間かかったことになる。

週末、長年愛読している三省堂の『クラシック音楽作品名辞典』(手元にあるのは、学生時代に購入した初版)のページを徒然にめくっていると、「アダージョ ハ長調 KV580a (Anh.94)」という作品名が目に飛び込んできた。調性が違うのでダメ元で手持ちの音盤を探してみると、KV580aと表記されたホリガー&オルランドQ盤と、KV Anh.94と表記されたベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル盤が出てきた。

前者はハ長調、後者はヘ長調、不明盤はト長調。調性はどれも異なるのだが、スピーカーから流れてきたのは、長年私を悩ませ続けてきた、あの伸びやかで美しい旋律。自分の家に2種類も、しかもどちらもランパル盤よりも前に購入していた音盤があったという、間抜け極まりないオチではあったが、購入から15年目にして初めて、ランパルの明るく華麗な演奏を楽しむことができた。

さて、この作品、一応4声部のために書かれているものの、全声部が完成しているのは最初の28小節のみで、残りは旋律のみ。しかも、旋律を奏する楽器がコーラングレと指定されているだけで、残りのパートは2Vn&Vc(ケッヘル旧版)、2Hr&Fg(第6版)、そして新全集ではCl&Bst.Hr.×3という編成になっているという。

ランパル盤はケッヘル旧版に準じて、コーラングレとフルートとの違いを考慮して移調して演奏したということなのだろう(ちなみに、新全集に収録されている楽譜は、記譜上はト長調になっている)。フルートの華やかな音色も、コーラングレの鄙びた音色も、どちらも捨て難いが、ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル盤に収録された新全集の編成は、温かくも深い陰影の味わいが非常に印象的。

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tag : 作曲家_Mozart,W.A.

ショスタコーヴィチの室内楽曲三題

  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第2番 ザグレブQ (Jugoton LSY-66178 [LP])
  • ツェムリンスキー:ピアノ三重奏曲、グリーグ:アンダンテ・コン・モート、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番 ウィーン・シューベルト・トリオ (PAN PAN 170 012 [LP])
  • メートネル:ヴァイオリン・ソナタ第1番、4つのおとぎ話 Op.34より第2曲(ヤンポーリスキイ編)、スクリャービン:2つの夜想曲 Op.5より第1曲(モギレーフスキイ編)、ワルツ Op.38(ヴラヂーミルスキイ編)、3つの小品 Op.45より第1曲「アルバムの綴り」(山田耕筰編)、9つのマズルカ Op.25より第1曲(ツィガーノフ編)、ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):10の前奏曲 マリーニン (Vn) シテルン (Pf) (Melodiya D-016139-40 [LP])
Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Coからの10月入荷分。

ザグレブQは、輝かしく洗練された音とは対極の、骨太な野趣のある、それでいてしっとりとした渋みのある落ち着いた音を持った団体という印象。(録音当時は)若い団体のようで、微細な表現に凝るというよりは、大局的な音楽の流れに身を任せるような伸びやかな演奏である。モーツァルトはいささか一本調子に感じられるが、ショスタコーヴィチは一転してこの団体の特徴が全てプラスに働いたような快演に仕上がっている。


ウィーン・シューベルト・トリオのアルバムは、典型的な後期ロマン派の濃密さと、聴き手の心に直接訴えかける感傷的な情緒とが際立つ選曲も魅力的だが、何よりも演奏の美しさが素晴らしい。いずれもピアノ三重奏曲特有のソリスティックな側面よりは三者が織り成す内向的ながらも熱い情感が印象的な作品だけに、彼らのごく自然に一致した音色の感覚と緊密なアンサンブルによって、決して有名曲とは言えないこれらの作品の魅力と美しさが余すところなく表出されている。ショスタコーヴィチはもちろんのこと、私は初めて聴いたツェムリンスキーとグリーグについても、決定盤と言ってしまって構わないと思う。


マリーニンによるロシア・アヴァンギャルドのヴァイオリン曲集は、秘曲メートネルのソナタもさることながら、多彩な編曲者達によるピアノ曲の編曲が聴き物である。いずれも原曲の雰囲気を損なうことなく、あたかもオリジナルがヴァイオリン曲であるかのように錯覚させる見事なアレンジ揃い。スクリャービンに傾倒していたという山田耕筰の編曲が収録されているのも興味深い。実力派のヴァイオリニストだけに、技術的にも音楽的にも、文字通り模範的な演奏である。


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スコチッチ氏のショスタコーヴィチ&プロコーフィエフ

  • ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ、2つの小品(アトヴミャーン編)、プロコーフィエフ:チェロ・ソナタ、子供のための音楽より「マーチ」「ワルツ」(ピアティゴルスキー編) スコチッチ (Vc) 丹生谷佳惠 (Pf) (ART UNION ART-3106)
歳と共に年末の慌ただしさが増し、12月はまるで暦にそもそも存在しなかったかのように過ぎ去ってしまった。正月休みが最短だったこともあってか新年を迎えたという感慨はそれほどないものの、自分にとっての2015年を振り返ると、やはりA.スコチッチ氏との共演が最大のイベントだったことは言うまでもない。この素晴らしい機会に恵まれたことについては、関係各位、そして演奏会を盛り上げてくださった来場者の方々にただただ感謝あるのみ。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

ということで本年最初のエントリーは、その思い出を噛みしめつつ、スコチッチ氏のロシアン・アルバムを取り上げたい。2006年に日本で録音された本盤は、恐らくはショスタコーヴィチの生誕100年にちなんだものだろう。ショスタコーヴィチとプロコーフィエフのカップリング自体に目新しさはないが、両者共に2曲ずつ洒落た小品も収録されているのが嬉しい。

今から10年近く前とはいえ、特に左手の技術的な切れ味はあまりない。また、ロシア流儀の張りのあるボウイングとも明確に異なり、控え目なピアノのせいもあってか、ロストロポーヴィチ的なロシア情緒は全くと言ってよいほどない。端正に整った佇まいを終始崩すことなく、自然なイントネーションを通して自ずからロマンチックな香りが立ち上ってくる演奏は、私自身が脳裏に思い描くショスタコーヴィチあるいはプロコーフィエフ像とは異質ながらも、これらの作品の魅力の一端をさりげなく伝えてくれる。

こうした美質は、ショスタコーヴィチの2つの小品の「アダージョ」(バレエ「明るい小川」より)で最大限に発揮されている。ソリスティックな押しの強さが皆無なので、聴く前は原曲をイメージして物足りないのではないかと危惧していたのだが、これほど美しい「小品」の演奏をすぐには思いつかない。

穏やかな新年の幕開けに相応しい音楽である。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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