ショスタコーヴィチ2題(買い物録その2)

  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1、8、14番 ボロディーンQ (Decca 478 8105)
  • ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタ(未完)、ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):アンダンティーノ(弦楽四重奏曲第4番より)、ストラヴィーンスキイ(ショスタコーヴィチ編):詩篇交響曲、ブラガ(ショスタコーヴィチ編):ラ・セレナータ S. ロジデーストヴェンスキイ (Vn) J. & M. メニューイン (Pf) ドムニフ (S) シェルマン (MS) (FHR FHR37)
6月16日のエントリーの続き。新譜というにはリリースされてから時間が経っているが、ショスタコーヴィチ関係のCDを2枚オーダー。

まずは、新生ボロディーンQのショスタコーヴィチ・アルバム。結成70年の記念企画とのことだが、創設メンバーのベルリーンスキイがいなくなってからの演奏は、録音でも実演でも初めて聴く(YouTubeでシューベルトの弦楽五重奏のライヴ動画を観たことはある)。第8番は言うまでもないが、第1番もこの団体お得意のレパートリーであり、それに新しいチェロのお披露目で第14番、といった感じの選曲だろうか。

緊密で隙のないアンサンブルは相変わらず流石で、アハロニャーンの個性的な音色も、どこかコーペリマンの冷ややかな音を想起させたりはするものの、チェロのベルリーンスキイの存在がこの団体の核であったことを改めて再認識させられた。技術的には十分に水準以上だとは思うのだが、肝心の音の魅力が全く変わってしまったことで、随所に伝統が継承されていることは感じられるものの、やはり別団体だと捉える方が自然だろう。

もっとも、これは当然のことで、このメンバーによるアンサンブルや音楽が劣っているということでは全くない。衰えの目立っていた第2Vnのアブラメンコフも代わったことで、アンサンブルの精度と活力は増したし、どちらかといえば哲学的、思索的な雰囲気を醸し出していたベルリーンスキイとは異なる感覚的で抒情的なチェロも、アハロニャーンのスタイルには合っているように思う。

第1番は、このメンバーの特質が最もよく出た演奏で、アハロニャーンの癖のある歌い回しも、ナイディンの不器用な存在感も、作品とよく共鳴している。第8番は、ボロディーンQお得意のレパートリーだけに、解釈の骨格はこれまでの多数の録音と一貫している。こうなると、チェロの軽さが少々気になるが、貫録の演奏であることは確か。第14番は、立派なアンサンブルではあるものの、作品の深い部分に到達し切れていないような、不消化な音楽の物足りなさが、いかにも歯痒い。今後の演奏活動を通じて、現在のメンバーが伝統の軛から解放され、真に深化することを期待したい。

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ショスタコーヴィチの「未完のヴァイオリン・ソナタ」については、本ブログでも2015年7月4日のエントリーで世界初録音のロス盤を紹介し、2015年8月29日のエントリーで楽曲の内容について簡単に触れた。早くも同曲2種類目の録音となる音盤は、有名演奏家の2世コンビによる意欲的な内容のアルバムである。

なお、「詩編交響曲」の四手用編曲とブラーガの「ラ・セレナータ」は“世界初録音”とクレジットされているが、CD化はされていないものの、LPにて1980年代に発売済。しかも、本盤の演奏者であるサーシャ・ロジデーストヴェンスキイの母親であるポストニコヴァが演奏したアルバムで。

それはさておき、いずれの曲においてもサーシャのヴァイオリンはよく歌う。好き嫌いはあるにせよ、これほど歌謡性に富んだ作品134の演奏は珍しく、この曲の新たな魅力を感じさせるに足る優れた演奏である。未完のソナタも同様で、油断していると、ふとこれがショスタコーヴィチの手によるものであることを忘れてしまいそうになる。弦楽四重奏曲第4番の第2楽章が、甘く美しく、ロシアン・ロマンスの世界を堪能させてくれるのも、当然の帰結だろう。

ジェレミーのピアノもロマンティックな雰囲気で、詩編交響曲の後期ロマン派のような世界観は、熱心なストラヴィーンスキイのファンにどう思われるかはわからないが、少なくとも聴きやすいことに違いはなく、私は好き。

ブラーガの「ラ・セレナータ」に関連する事柄については2011年1月13日のエントリーで紹介したことがあるが、ややこしいことを抜きにして、とにかく甘美な小品である。ヴァイオリンのオブリガートも美しく、文句のない仕上がり。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

ハイドン、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲など(買い物録その1)

  • ハイドン:ヴァイオリン協奏曲第1、4番、M. ハイドン:ヴァイオリン協奏曲 MH 207 グリュミオー (Vn) レパード/イギリスCO、ニュー・フィルハーモニアO デ・ワールト/ロイヤル・コンセルトヘボウO (Decca UCCD-9844)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第72~74番 クイケンQ (Denon COCO-73204)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番、ルトスワフスキ:弦楽四重奏曲 ウィーン・アルバン・ベルクQ (hänssler CD 93.722)
HMV ONLINEのタイムセールで大物が出ていたので、ついでにいくつかまとめ買い。目当ての大物はまだ手つかずだが、聴いたものから順に記していく。

まずは、子供が発表会で弾くことになっているハイドンの協奏曲を。私自身は弾いたことはないのだが、弟が第1番を弾いたことがあり、その際にデビュー間もないファン・クーレンのLPを聴いていた記憶はあるものの、私はLP、CD通して一切架蔵していなかった。最初の一枚なので、定番のグリュミオー盤を選択。今となってはあまりにオールド・ファッションな演奏ではあるが、ヴァイオリンの初学者にとっては、グリュミオーの美音に得ることも多いだろう。ヴァイオリン協奏曲の割に旋律美はそれほど際立たず、それでいて同じフレーズが意表を突く変化をする辺り、ハイドンの面目躍如であると同時に、有名曲と言うには微妙な立ち位置であるのも納得するが、グリュミオーの独奏は高貴な歌心でヴァイオリンの魅力を存分に聴かせてくれる。ただし、オーケストラはいずれの曲も冴えない。第4番などはコンチェルト・グロッソ的な色彩が濃いだけに、いくら“伴奏”とはいえ、もう少ししっかりと演奏してほしいところ。M. ハイドンの曲は、ヨーゼフの2曲に明らかに劣り、グリュミオーのヴァイオリンをもってしても残念ながら退屈した。

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クイケンQのハイドン・シリーズ中、唯一未架蔵であった作品74の3曲は、彼らの他の録音と同様に、美しい響きと洗練された歌心に感心させられた。ただ、この楽曲群にはもっとシンフォニックなスケール感や、野趣あふれる勢いが欲しいところ。とはいえ演奏の水準は高いので、全集、とまでは言わないが、一曲でも多くハイドンの弦楽四重奏曲の録音を続けて欲しいものだ。

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hänsslerレーベルからリリースされている、往年の(と言っても、私よりも上の世代にとっては同時代の団体なのだが)弦楽四重奏団のライヴ録音シリーズも、チェックはしていたのだが買いそびれていた。収録曲に新鮮味はないものの、私にとって永遠の憧れであるABQの1978年シュヴェツィンゲン音楽祭ライヴをオーダー。

第2Vn交代後の第2期メンバーによる演奏だが、特にベートーヴェンはEMIの第1回目の録音と同じ顔触れであり、元来ライヴとスタジオで演奏の傾向が大きく変わる団体でもないので、耳朶の奥深くに刷り込まれたあの颯爽とした音楽がこの録音でも繰り広げられている。現在の水準で聴けば必ずしも精確無比な完璧な演奏、とまでは言えないのだが、隅々まで徹底的に目配りの届いたアンサンブルは、やはり恰好よい。後年の秘儀を繰り出すような自在さに比べるとかなり生真面目で直線的な演奏だが、私自身が繰り返し聴き込んだ彼らの演奏の多くが80年代中盤以前の録音だったせいか、むしろ、これぞABQという感じで幾分の懐かしさを持って楽しんだ。

ルトスワフスキはVaがカクシュカの録音しかないので、バイエルレの骨太なVaがまた異なるバランスで主張しているのを興味深く聴いた。既に彼らの解釈自体は確立しているのだが、情緒的な後年の正規録音に比べると、どこか現代音楽然とした肌触りに、彼らの音楽的な発展の過程と、時代の流れを感じる。

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theme : クラシック
genre : 音楽

スヴィリードフの全作品リスト

  • Свиридовский институт, Георгий Свиридов: Полный список произведений (Нотографический справочник), Национальный Свиридовский Фонд, 2001.
私はスヴィリードフの音楽が大好きなのだが、「吹雪」のように有名な器楽曲はともかく、彼の創作の大半を成す声楽曲については、言語の壁ゆえかまとまった情報が非常に少なく、音盤に収録されている楽曲の素性を調べるにもかなり苦労する。
  1. まず、同じ詩人の歌詞につけた楽曲群を、どのような単位で捉えるべきなのかがわからない。たとえばエセーニンの詩による歌曲は多数あるのだが、「さまようロシア」のように連作歌曲のようにまとまって演奏されるものではないのに、「エセーニンの詩による4つの歌曲」みたいなタイトルがついているものもあり、しかもそれが音盤や楽譜によって様々に異なっていたりする。
  2. 次に合唱曲なのか独唱曲なのか、あるいは独唱&合唱なのか、ピアノ伴奏なのか管弦楽伴奏なのか、編成がいまひとつはっきりとしない。いわゆる歌謡曲的な捉え方をするならば伴奏の形態にこだわる必要はないのかもしれないが。
  3. そして何よりこれが一番の問題なのだが、楽曲のタイトルが日本語はもちろんのこと、英語訳すら限られたものしか分からず、しかも詩である以上、単に直訳しただけでは意味を成さないものばかりで、流通している訳が正しいのかどうか判断に苦しむ。
そんな悩みのいくらかでも解消してくれるだろうことを期待して、スヴィリードフの全作品リストなるものを一年ほど前に入手したのだが、軽く眺めただけでずっと放置していた。せっかくの情報なのにそれではあまりにもったいなく、気の赴くままに整理してみた(こちら)。
  • 作品リストでは編成(ジャンル)別に番号が振られているが、スヴィリードフの創作の過程を編年的に追うことを目的に、年代順に並べ直した。
  • 楽曲群のまとまりは、出版時の都合で様々なようなので、ひとまず作品リストに従い、その収録曲のタイトルも併記した。
  • スヴィリードフの情報はロシア語に偏っているので、ロシア語タイトルはキリル文字で表記し、コピペで検索しやすいようにした。
  • 日本語タイトルは、ごく常識的に直訳して問題のないもの以外は、ネットでの検索結果を基本に訳を検討し、問題のなさそうなもののみを記載した(まだ途中)。
  • 英語タイトルも同様だが、Melodiya盤のライナーに表記されている英語訳も利用した(まだまだ途中)。
  • 作品リストでは同一曲ながら伴奏等の編成が異なるものには別番号を振っているので、同様に別作品扱いした。編成についての記述は、とりあえず省いている(今後、必要に応じて追加するかも)。
  • 手持ちの音盤の情報を併記した。
  • YouTubeにある動画へのリンクもまとめた(まだ途中)。ただし、既発の音源をアップしただけのものは除外した。
楽曲名の問題は依然として残るものの、「スヴィリードフにはどんな作品があるのか」ということについて私自身が知りたい情報は、とりあえずではあるが、これで整理することができた。

今回、YouTubeなどで集中的にスヴィリードフの音楽を聴いたが、とりわけブロークやエセーニンの詩による歌曲群の、たまらなくロシア的な世界に、改めて魅了された。往年の有名演奏家達によるスヴィリードフ作品の演奏会の動画を以下にまとめておく。いずれも珠玉の名演である。
オブラスツォーヴァ (MS) スヴィリードフ (Pf)
19761977
ヴェデルニコフ (B) スヴィリードフ (Pf)生誕100年記念演奏会
スヴィリードフの夕べ
(1)(2)
Время Георгия Свиридова - documentary
(1)(2)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Sviridov,G.V.

ヴラフ四重奏団のドヴォルザーク

  • ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第10、13番 ヴラフQ (Supraphon 25CO-2318)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第番「ひばり」、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 スメタナQ ヴラフQ (EMI EAC-55078 [LP])
子供に付き合って、近所のBOOKOFFへ。漫然とクラシックの棚を眺めていたら、90年代初めに買い漁ったスプラフォン(国内盤)の2,500円の室内楽シリーズ(スプラフォン・レーベル発売25周年記念 室内楽名盤選)の1枚がふと目に付いた。せっかくなので、気の向くままに確保。

初めて聴いたヴラフQの演奏は、高校生の頃に買った「アメリカ」の録音だった。これはスメタナQによるハイドンの「ひばり」とのカップリングで、家に帰ってLPのライナーをよく見てみたら「アメリカ」の方は聞いたことのない別団体の演奏で、騙されたような、がっかりした気分になったことを記憶している。その後、上述した2,500円のシリーズでベートーヴェンを何枚か買ったりしたものの、私の中ではどこか野暮ったいチェコの一流半の団体といった認識であり続けた。有名か否か、という子供っぽい先入観をずっと引き摺っていたわけで、ただただ恥ずかしいことだ。

そんな訳で、特に期待するでもなく気楽に再生してみたのだが、第10番の冒頭が始まるや否や、これまでの先入観が一瞬にして吹き飛んでしまった。4人が一体となった温かみのある、極めて自然な情感が淀みなく流れるのを耳にして、たちまちスピーカーから聴こえてくる音楽の虜になってしまった。たとえば第2楽章の旋律を聴けば、「ヴィルトゥオーゾ」の類の形容は全く似合わないのだが、それでいて名人芸としか言いようのないヴラフ(第1Vn)の素晴らしさのみならず、その音楽性が他のメンバーと完全に共有されていることが分かる。まさに、弦楽四重奏の極致と言ってよい。時にヴラフを煽るかのように一層抒情的に歌い上げるスニーティル(第2Vn)のスタイルも、私の好み。これこそ「有機的なアンサンブル」と称するに値する。幾分冗長さを感じさせる曲ではあるが、些細な経過句に至るまで生き生きとした音楽の息吹に満ちているせいか、退屈に感じる瞬間が皆無。この曲の理想的な名演である。

第13番には、若き日のウィーン・アルバン・ベルクQ(初代メンバー)による名演があり、その精緻なアンサンブルと入念に作り込まれた歌い回しに対抗できる演奏は、少なくとも音盤においてはあり得ないだろうと思っていたが、のどかな情緒を漂わせつつも、内に活力を秘めたヴラフQの巧まざるアンサンブルは、ABQが切り拓いた現代的な洗練とは趣を異にしつつも、この名曲の名盤としてABQ盤と並び称せられるに相応しい傑出した仕上がりである。敢えて言えばABQの人工的な感触に対してヴラフQは自然な佇まいが特徴ということになるのだろうが、ABQに自然な歌心が不足している訳でも、ヴラフQにアンサンブルの精度が不足している訳でもない。

あまりに感激したので、古い「アメリカ」のLPも引っ張り出してみた。大ホールに響き渡るような派手さはないが、4人全員が心の底から歌い上げる第2楽章が実に感動的で心奪われたが、その他の楽章においても内から湧き出るような活力のある音楽に、「アメリカ」の、そして弦楽四重奏という編成の魅力を堪能した。

最近は買いたい音盤を決めて(検索して)ネットで購入してばかりだが、こうして店頭の棚を漫然と眺めて購入する昔ながらのスタイルも、やはりたまにはしておかないと……と思った次第。

なお本盤は、「スプラフォン・ヴィンテージ・コレクション」という廉価盤の一枚(COCQ-83821)として再発されている。


theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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