閉店間際に室内楽の棚だけチェック

  • ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲、アイネ・クライネ・シンフォニー、弦楽のための交響曲 ロス/ドミートリィ・アンサンブル (harmonia mundi HMU 907634)
  • ヴォルフ:弦楽四重奏曲、イタリアン・セレナード、間奏曲 ヴィハンQ (ArcoDiva UP 0029-2 131)
  • ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1~3番 デ・サラム (Vc) (Disques Montaigne MO 782081)
仕事の帰り、ディスクユニオン 大阪クラシック館にふらっと寄り道。

バルシャイによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の編曲は、第8番の演奏および録音頻度が圧倒的に多く、次いで第10番がぼちぼち、残りは珍しい部類に入るだろうが、特に第1番はバルシャイ自身による2種の録音しかなく、ロス盤はこの曲を収録している点でコレクターの蒐集対象足り得る。第8番は手堅いアンサンブルで滑らかに奏でられるが、各フレーズの深い訴求力はなかなかのもので、水準の高い演奏である。大いに好感と期待をもって聴き進めたのだが、残念ながら第1番は技術的に苦しい箇所が少なくなく、楽しむことができなかった。第10番は少しマシだが、無難にまとまっている以上の印象はない。


ヴォルフの3つの弦楽四重奏曲を1枚に収録したアルバムは、探してみると意外にありそうでなく、ヴィハンQのこの音盤は以前からチェックしていたもの。水準の高いアンサンブルであることは言うまでもないが、彼らの音色が、19世紀末の爛れた濃厚な味わいを持つヴォルフの音楽に何とも相応しい。最も知名度の低い「間奏曲」の、どこか不消化で未完成感の残る断片的な旋律のそれぞれが、渋く名状し難い魅力を放っているところに、私は強く惹きつけられた。


6月4日のエントリーで、デ・サラムによるブリテンの無伴奏チェロ組曲の音盤に不良があり、最後の1トラックだけ聴けなかったことを記した。わざわざ探して買い直すほどのモチヴェーションはなかったのだが、運良く棚に並んでいるのを見つけた。一件落着。

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genre : 音楽

徒然なる買い物録

  • モーツァルト:交響曲第40番、ブラームス:交響曲第1番 カラヤン/ウィーンPO (Electrecord ERT1027-2)
  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第20番、バルトーク:弦楽四重奏曲第3番、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第11番 ジュリアードQ (Orfeo C 927 161 B)
  • ストラヴィーンスキイ:火の鳥(1945年版)、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 スヴェトラーノフ/ロシア国立SO (Tobu TBRCD0025-2)
  • ショスタコーヴィチ:「モスクワよ、チェリョームシキよ」(コーネル編)、ジャズ組曲第1番、ステージ・オーケストラのための組曲、タヒチ・トロット スローン/ベルリン放送SO (Capriccio 71 096)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1、2、5番 ボロディーンQ (Praga PRD 250 323)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第4、6、9番 ボロディーンQ (Praga PRD 250 331)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第2、7、11、12、15番 アルバン・ベルクQ (EMI DVB 3 38586 9 [DVD])
HMV ONLINEのセール品を注文するついでに、目についたものを併せていくつかオーダー。

私が聴いたことのあるカラヤンのライヴ録音はごく限られているが、いずれももの凄いテンションの名演ばかり(ショスタコーヴィチの第10番やブルックナーの第9番など)だったこともあり、「壮年期のカラヤンが、ウィーンPOと、お得意のブラ1を」と3拍子揃っている、ルーマニアのエネスコ音楽祭でのライヴ録音を、期待を持って確保。

モーツァルトは、徹底したレガートがいかにもカラヤンらしい。私の好みでは全くないが、こういう癖の強い演奏自体は嫌いでない。ただ、流麗、と言うにはあまりにも淡泊な音楽で、拍子抜け。ブラームスも、冒頭からしばらくは似たような雰囲気。ただ、オーケストレイションの厚みゆえか、オーケストラの美音はモーツァルトよりも堪能できる。

このまま「若きカラヤンの颯爽とした演奏」で終わるかと思いきや、終楽章に入った途端に表現の密度も音楽の燃焼度も別次元に。ホルンだけでなく、全ての楽器が輝いている序奏部は、筆舌に尽くし難い素晴らしさ。指揮台上の昂奮が伝わるような主部を経て、舞台も客席も一体となって盛り上がりまくるコーダに至ると、ただただ恍惚として音楽に身を委ねるのみ。これを、例えば「終楽章の終わりだけ煽ってそれらしく盛り上げただけ」のように批判することは簡単だが、しかし全く同じようにテンポや強弱を設定したところで、こうはならないことも自明。カラヤンの凄さを改めて認識させてくれる演奏である。


ジュリアードQのザルツブルク音楽祭でのライヴ録音は、渋い曲目が実に魅力的。私の世代くらいまではジュリアードQと言えば、現代音楽を得意とする厳格で鋭利な演奏スタイルの団体、みたいなイメージが強いのだが、今こうして聴いてみると、モーツァルトの緩徐楽章に聴かれるような隠しきれないロマン情緒がまるで心をくすぐるように滲み出ていることに気付く。それはバルトークでも同じで、なぜ彼らの演奏が「冷たい」と思われていたのか、そして自分も思っていたのか、不思議な気がする。

ドヴォルザークの第11番は、魅力的な楽想に溢れた逸品だが、ドヴォルザークの他の弦楽四重奏曲と同様に、いささか冗長に過ぎる。ジュリアードQは多彩な表現技術を繰り出して聴き手を飽きさせないが、それでもなお、この欠点を完全には克服できていない。演奏頻度の低い作品には、やはりそれなりの理由があるということなのだろう。


スヴェトラーノフのショスタコーヴィチ演奏には微妙な物も少なくないが、第7番に次いで相性の良さを感じさせるのが、第5番。ソ連崩壊後間もなく、旧ソ連のオーケストラの多くが奏者引き抜きなどで混乱していた時代の来日ライヴである。スヴェトラーノフという絶対的存在がいたせいか、ソ連時代と変わらぬ水準を維持し続けていたロシア国立響の音は、これぞロシアというローカル色豊かで説得力に満ちたもの。各地で幾度となく取り上げてきたであろうレパートリーだけに、アンサンブルも万全で、指揮者・奏者共にツボを心得た音楽作りが素晴らしい。ショスタコーヴィチは、他の録音と比して目立った違いはなく、最晩年にはかなり遅いテンポを採ることもあったスヴェトラーノフだが、ここではごくオーソドックスな解釈がなされている。「火の鳥」は、珍しい1945年版。「最後に出版された状態が作曲家の望んだ決定稿」という考え方のようにも思うが、単純に版権の問題だったのかもしれない。いずれにせよ、単に珍しいというだけでない、活力と貫録に満ちた秀演である。


ショスタコーヴィチの“軽い”管弦楽曲を集めたアルバムは、作曲家の生誕100年の時期にリリースされたもの。当時は、結構な量の新譜が出たことに加え、自主制作盤が増えたりしたこともあり、以降は私の蒐集ペースが極端に落ちて今に至る。21世紀に入ってからの楽器の演奏様式の変化もあってか、ショスタコーヴィチ作品の解釈も同時代的な思い入れたっぷりなものから古典作品的な扱いに変遷し始めたのも、ちょうどこの頃。本盤は、過渡期的な演奏ではあるが、整った音響とツボを押さえた盛り上がりなど、これらの楽曲のそう多くはない他の録音と比較しても十分にスタンダードたる内容である。


Pragaレーベルから、「モスクワ放送でオンエアされた1966年の録音」としてリリースされたボロディンQのショスタコーヴィチ録音は、このレーベルなので分かってはいたことだが、もしかしたらどれか1曲くらいは未発表音源が含まれているかも……という淡い期待が叶うことはなかった。第13番まで録音したところでドゥビーンスキイの亡命で完成することのなかった、彼らの“旧全集”と全て同一の音源である。無音部分を付加して、一部のトラックの収録時間を操作しているのが、何ともいやらしい。言うまでもなく、演奏そのものは異次元の素晴らしさ。




今回の目当てのセール品は、ABQによるベートーヴェンのDVD。私は彼らの熱烈なファンだが、実はこの映像の全集だけはコンプリートしていない。レーザーディスクでリリースされた2枚は、それこそ弦の種類まで真似たくらいに何度も見たが、その後続編が出ることはなく、相当な時間が経ってからDVDで一気にリリースされた時は、どうせいつでも買えるだろうと思って買いそびれていた。気がつけば、どうやら販売終了のようで、とりあえずセール品の第2巻を確保。いずれもどこかで視聴済みで、音だけのCDも持っているので、新たに何か言うべきことはないが、この映像による全集が彼らの偉業であることを再認識した。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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