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リヴォーフ・プラーチの民謡集、他

  • Русские народные песни, собранные Николаем Львовым, положенные на музыку Иваном Прачем и опубликованные в 1790-1806 гг., Композитор・Санкт-Петербург, 2012.
  • バクスト, J.・森田 稔(訳):ロシア・ソヴィエト音楽史, 音楽之友社, 1971.
  • ヴィラ=ロボス:弦楽四重奏曲全集 ラテンアメリカQ (Brilliant 6634)
「リヴォーフ・プラーチのロシア民謡集」は、18世紀末から19世紀にかけて編纂・出版されたロシア民謡集の中でも最も有名な物。1987年にはファクシミリが出版されているものの、とても素人が手を出せるような値段ではなく、一度その内容を見てみたいと思いつつも全く機会がなかった。ところが先日、ふと思い立って色々と調べてみたところ、2012年に出版された入手容易な物があることを発見。ついに入手することができた。

第5版まであるようだが、今回入手したものは第2版のリプリントである。各版の違いだけでなく、このロシア民謡集の持つ意義については、下記の文献に詳しい(大学のリポジトリからPDFファイルをダウンロードできる)。
  • 安原雅之:19世紀のロシアで編纂されたロシア民謡集について, 愛知県立芸術大学音楽学部音楽学コース紀要, 12, pp.62-65, 2017.
  • 安原雅之:ロシア民謡集の研究 (1) : 18世紀末から19世紀にかけてロシアで刊行された民謡集について, 愛知県立芸術大学紀要, 45, pp.127-135, 2015.
ロシア民謡の形式や分類について詳しいことはわからないが、この民謡集では以下の章立てがなされている。
  1. Протяжные:延べ歌
  2. Плясовые:踊り(プリャースカ)
  3. Свадебные:婚礼歌
  4. Хороводные:輪舞
  5. Святочные:スヴャートキ
  6. Малороссийские:小ロシア

様々な作曲家がこの民謡集から題材を採ったようだが、中でも有名なのはベートーヴェンの「ラズモフスキー四重奏曲」である。
  • 【9番】Ах! талан ли мой(ああ私の運命は)=ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番の第4楽章第1主題
  • 【132番】Уж как слава Тебе Боже на небеси, слава!(いと高きところには栄光、神にあれ)=ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番の第3楽章中間部主題
ショスタコーヴィチの楽曲で直接関係するのは、「10のロシア民謡 Sans op. Q」の第7~9曲。
  • 【97番】Ельник, мой ельник(私のモミの林よ)=第7曲
  • 【5番】Как у батюшки в зеленом саду(お父様の緑の庭で)=第8曲
  • 【14番】Говорила я другу милому(愛しい人に私は言いました)=第9曲
Музыка社の旧選集の解説(全音出版社の楽譜には、この邦訳が掲載されている)では、この民謡集の出版年が「1896年」と記されているが、これは第4版の出版年(初版:1790年、第2版:1806年、第3版:1815年)である。ショスタコーヴィチが参照したのが第4版だったのか、単に解説者が最新版の出版年を記したのか、その辺りは不明。

“元ネタ”探しの資料として重宝するのはもちろんだが、旋律線だけでなく、その歌詞も参照できることが何よりありがたい。もっとも、民謡の歌詞を理解するのは決して容易なことではないが。


1月9日のエントリーの最後で言及した、ディスクユニオン お茶の水クラシック館で入手した書籍は、ロシア=ソ連の音楽史。ショスタコーヴィチ存命中(晩年ではあるが)の出版のため、ソ連の代表的な作曲家として取り上げられているのはミャスコーフスキイ、プロコーフィエフ、カバレーフスキイ、ハチャトゥリャーン、そしてショスタコーヴィチだけである。

日本語で読めるロシア音楽の通史は、そう多くはなく、私が読んだのはマースの『ロシア音楽史 《カマーリンスカヤ》から《バービイ・ヤール》まで』(春秋社, 2006)の他に、園部四郎の『ロシア・ソビエト音楽史話』(創芸社, 1976)くらいしかないのだが、このバクストの本は、古代ルーシ国家の成立まで遡ってソ連時代の途中まで一通り触れられているという点で、個々の記述には古臭さがあるものの、ロシア音楽史の概要を手軽に知ることのできる一冊である。社会主義リアリズムの思想についても紙数を割いて論じられている。ただ、著者がどの程度ソ連共産党の理論を理解し、共感しているかはよくわからない。というのも、この本の記述を読んでも、私には何をもって“理論”と言っているのかがさっぱり理解できなかったから。それより、ソ連のオペラについて論じられた最終章は、聴いたことのない作品や作曲家の名前が目白押しで、非常に興味を惹かれた。



アリアCDのセールで、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲全集を購入。学生時代、ベスレル=レイスQによる国内盤(テイクオフ)で全集がリリースされたのだが、私は初回発売の3枚を入手したのみで、その後、残りがリリースされたのかどうかも知らない。中古音盤屋で同団の全集(輸入盤)を見かけることはあるが、何となく買いそびれたまま今に至る。今回、ラテンアメリカQの演奏で初めて全17曲を聴いたが、ミヨーの17曲と似たような多彩さを有する創作群と感じた。耳を惹く面白さや、シリアスな説得力など、興味深く聴くことができたが、連続して聴き通す中で退屈な瞬間がなかったとまでは言い難い。第5番のように民謡素材を活用した作品は特に気に入ったが、演奏会で取り上げるには、どの曲も全楽章通しての完成度に物足りなさが否めない。

ラテンアメリカQの演奏は、技術的には野暮ったさが残るものの、決して弾きやすいとは言えないスコアを手堅くまとめあげており、この膨大な曲集のリファレンスとして十分な水準に達している。個々の楽曲の雰囲気においてはベスレル=レイスQの方が相応しいと思えるが、演奏技量の差が大きく、一般的にはラテンアメリカQ盤を採るべきだろう。

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お茶の水でのささやかな収穫

  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ(第13~24番) パパドプーロス (Pf) (Oxford Philomusica OP006/7)
  • ショスタコーヴィチ:人形たちの踊り、格言集、ピアノ・ソナタ第1&2番 メルヴィン・チェン (Pf) (Bridge 9238)
  • ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集 スメタナQ (Denon 90CO-1975→77)
  • ピアノ・ソナタ第2番, Edition Peters, 4726.
所用で東京入りした際、30分弱の空き時間に無理やりディスクユニオン お茶の水クラシック館へ。中古音盤屋でのルーティンのみをこなし、確保したのはCD3点+楽譜1点+書籍1点。

「Shostakovich」の棚に、Kingdomレーベルからリリースされた「第1~12番」までのセットのみを架蔵している、パパドプーロスの「24の前奏曲とフーガ」の残りを発見。別レーベルからのリイシューではあるが、特にオリジナル盤にこだわるような蒐集をしているわけではないので、直ちに確保。この音盤がリリースされた1990年頃は、この作品の全曲盤自体が稀少で、ニコラーエヴァの初録音(Victor盤)と最新録音(Hyperion盤)の他にはキース・ジャレット盤(ECM)くらいしか入手容易な物はなかった。ヴァイケルト盤(Accord)やペトルシャンスキイ盤(Dynamic)などは、当時はまだ“どこにでも並んでいる”音盤ではなかったように記憶している。それゆえ、パパドプーロス盤の第1巻を入手できただけでもラッキーで、第2巻は本当にリリースされたの?程度の認識で今日に至ってしまった。

改めて第1巻から聴き直してみたが、極めて端正に楽譜が再現された、とても気持ちの良い演奏である。一方で、曲毎の特徴やショスタコーヴィチ固有の語法などは取り立てて強調されておらず、“現代”“ロシア/ソ連”といった要素を感じることはほとんどない。この点で評価は分かれるだろう。幅広い聴き手に受けるという意味では、今なお存在意義のある演奏と言ってよい。


パパドプーロス盤の隣にあった、チェンによるピアノ・ソナタ集が価格的にも手頃だったので、続けざまに確保。いささか堅苦しさを感じるほどに生真面目な演奏である。冒頭の「人形たちの踊り」は、まるでピアノのお稽古で使うお手本の録音のような雰囲気。悪いとは言わないが、愉しくはない。この生真面目さで隅々まで丹念に弾き込まれた「格言集」は、良い意味での模範的な仕上がりだが、もう少し八方破れな勢いが欲しいところ。ピアノ・ソナタ第1番も同様。一方、ピアノ・ソナタ第2番はチェンの生真面目な演奏スタイルとの相性が抜群で、雰囲気豊かな名演。


中古音盤屋での私のルーティンは専ら、不揃いのままになっているセット物の探索なのだが、最近ではさらに大きな単位でまとめられたセットが安価で出ていることがほとんどで、私が1990年代に買いそびれた組み合わせのセットを見かけることはまず滅多にない。

スメタナQによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、一気に全てを購入するのは学生の懐には厳しく、“とりあえず”後期のセット(これだけでも8千円近くしたと思う)だけ購入したところで、他を買い揃えるには至らなかった。今回、中期のセットが棚に並んでいるのを見つけ(しかも2組あった)、迷わず確保した次第。

スメタナQは決して嫌いな団体ではないのだが、DenonのPCM録音で聴く彼らの音色は、あまり好みではない。晩年の技術的な劣化も影響しているとは思うが、それ以上に、生々し過ぎる録音の質が苦手である。同じ後期の四重奏曲でも、Supraphonの旧盤を好んで聴くのは、まさにこの理由から。この中期の曲集においてもその印象が大きく変わることはない。ただ、ラズモフスキー第2番の第2楽章はとりわけ神々しく、諸々の否定的な要因を超えて、圧倒的に心に迫る傑出した素晴らしい名演として、特記しておきたい。


入り口付近の音楽書&楽譜の棚からは、まずショスタコーヴィチのピアノ・ソナタ第2番の最初期の出版譜を確保。ペータース版だが、標題や作曲者名などを除き、モスクワで出版された初版譜のリプリントである。作品番号が「64」と記されているのが目を惹くが、これは自筆譜の記載に準拠しており、「61」の誤記ではないと思われる。この作品番号の混乱について検証した論文等を見たことはないが、おそらく「61」は歌劇「賭博師」(未完)のために予定されていた番号で、作曲順で「64」が予定されていたソナタが、「賭博師」の“穴埋め”に「61」となったのではないかと推察される。


残る書籍1点については、一度目を通してからまた後日。

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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