長年探していたCD
- アレーンスキイ:歌劇「ラファエロ」、ショスタコーヴィチ:組曲「馬あぶ」より スミルノフ/モスクワ放送SO & cho.他、ソヴィエト国立映画省O(Marans)
- グラズノーフ/ソコローフ/リャードフ:ポルカ「金曜日」(「金曜日の曲集」より)、リームスキイ=コールサコフ他:ロシアの主題による変奏曲、グラズノーフ/リャードフ/リームスキイ=コールサコフ:命名祝日四重奏曲、リームスキイ=コールサコフ/リャードフ/ボロディーン/グラズノーフ:「B-la-F」の名による弦楽四重奏曲 ショスタコーヴィチQ(Olympia OCD575)
ジャケット等から判断するに、指揮者の子供が自主制作に近い形でCD化したものなのだろう。ディスクの品番は記載されていないし、そもそも「МАРАНС」というレーベル自体を見かけたことがない。何らかの事情でその存在が忘れ去られた指揮者なのだろうが、本盤に収録されているアレーンスキイの歌劇は、LPが中古市場で流通している(2012年5月11日のエントリー)。
「馬あぶ」の方は、おそらく完全初出音源と思われる。アトヴミャーンによる組曲(全12曲)から9曲が抜粋され、曲順が入れ替えられている。組曲版の全曲録音は既に複数あるので、このことがマイナス・ポイントとなることはないだろう。いや、この演奏を聴いた後では、残る3曲も(長さも内容もそれほど重要な曲ではないが)録音して欲しかった!と思うことはあるかもしれない。録音状態はすぐれないし、オーケストラは技術的にめっぽう荒い。しかしそうした欠点は、隅々まで甘美で悲劇的な情感と力感に満ちた、大柄で壮大な音楽の前では問題にすらならない。どこか肩の力が抜けた感じで始まる第1曲「序曲」が数小節進んだ時には、もうこの演奏の虜である。ショスタコーヴィチというより、ロシア音楽を代表する映画音楽を聴いた、とでも言いたくなるような充足感が得られる。現時点では、E. ハチャトゥリャーンの全曲盤を抜いて、本盤を決定盤としてよいだろう。

もう1点、ベリャーエフ・グループの作曲家達が仲間内で合作した弦楽四重奏曲集のアルバムも、ふと思い出してAmazonで検索したところ、安くはなかったが、中古屋巡りのルーティーンに入れて気長に探すのも面倒なので、勢いでオーダー。
このアルバムは、率直に言って、史料的な意味合いが強い。ショスタコーヴィチQによる演奏は手堅くもロシア情緒に満ちた立派なもので、これらの作品を知る上でとりあえずは、本盤が手元にあれば十分だ。リームスキイ=コールサコフ、グラズノーフ、リャードフの3人は、収録曲のほぼ全てにおいて参加しているが、いずれも力作ではあるものの、小品なのか弦楽四重奏曲(の1つの楽章)なのか、中途半端な感は否めない。「ロシアの主題による変奏曲」は、いかにもやる気のないスクリャービンの変奏を含む10の変奏から成るものの、作曲家が全て異なる割りには変奏の多彩さには欠ける。唯一、ボロディーンによる「B-la-F」四重奏曲の第3楽章「スペイン風セレナード」だけが、本盤の中で傑出した名曲である。
ちなみに、「ロシアの主題による変奏曲」の主題は、ロシア民謡なのかリームスキイ=コールサコフの創作なのかが解説によってまちまちだが、正しくは「Надоели ночи надоскучили」というニジニ・ノヴゴロド地方のロシア民謡である。
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tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.