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中古屋で安物買い

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 タバコフ/ブルガリア国立放送SO(Gega New GD 380)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ティルソン=トーマス/サンフランシスコSO(San Francisco Symphony SFS 0035)
  • ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」よりパッサカリア(第2幕)、交響曲第10番 ネルソンス/ボストンSO(DG 479 5059)
  • ショスタコーヴィチ:映画音楽「馬あぶ」、映画音楽「呼応計画」より フィッツ=ジェラルド/ラインラント=プファルツ州立PO 他(Naxos 8.573747)
  • シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 潮田益子 (Vn) 小澤征爾/日本PO(Cento classics CAPO-2009)
  • ブリテン:弦楽四重奏曲 ニ長調(1931)、シンプル・シンフォニー、弦楽四重奏曲第1番 ブリテンQ(Collins 11152)
  • グリーンカ:弦楽四重奏曲、シューベルト:弦楽四重奏曲第8番、ヒンデミット:ミニマックス ウルブリヒトQ、ハンツシュクQ、ベルリン・シュターツオーパーQ(Pilz 44 2083-2)
  • 「ハッピー・バースデイ」(シニートケ(ドレズニン編):ポルカ、ハイドリッヒ:「ハッピー・バースデイ」変奏曲、カヒーゼ:「ブリッツ」幻想曲、ギス/セルヴェ:「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」の旋律による華麗にして協奏的な変奏曲、チャイコーフスキイ:サマーリンの栄誉のための悲歌「感謝のしるし」、ボーア:マックモーツァルトのアイネ・クライネ・ブリヒト・ムーンリヒト・ニヒト・ムジーク、ワックスマン:「蛍の光」変奏曲、クプコヴィチ:スーヴェニア) クレーメル (Vn) クレメラータ・バルティカ(Nonesuch WPCR-19068)
  • 「南国のバラ」 ウィーン・ビーダーマイヤー・アンサンブル(Denon 33CO-2587)
  • 「わが人生は愛と喜び」 ウィーン・ビーダーマイヤー・アンサンブル(Denon COCO-7052)
所用で土曜日の昼間に梅田へ出向いたが、運よくフリーの時間ができたので、いつもは閉店間際に駆け込んでばかりのディスクユニオン 大阪クラシック館へ。残念ながら掘り出し物には巡り会えなかったが、店の隅々まで一通りチェックできたのは楽しかった。今回は徹底して価格重視。10枚で6千円ちょっとというのは、まあまあの成果ではなかろうか。

さて、まずは交響曲の棚から。タバコフ/ブルガリア国立放送響によるショスタコーヴィチの全集シリーズはもうかなりの数がリリースされているが、第4番はその第1弾であった。煌びやかなサウンドや精緻なアンサンブルには不足するものの、洗練されていない野暮ったい音には懐かしい温もりがあり、第4番の持つ前衛性よりは第5番に繋がるわかりやすいチープな音楽素材の面白さが前面に出ているように聴こえる。


サンフランシスコ響が展開しているクラシック音楽の啓蒙プロジェクト「KEEPING SCORE」にてショスタコーヴィチの第5番が取り上げられた際のライヴ録音は、いささか軽く弾き飛ばしている感がなくもないが、十分に贅沢でまろやかな響きと余裕のあるアンサンブルは、1世紀前の作品の演奏としてはそう悪くもない。

なお、このプロジェクトについては、潮 博恵氏のサイトが詳しい。ショスタコーヴィチ編の具体的な内容も詳述されている。


ネルソンスによるショスタコーヴィチの交響曲全曲プロジェクトの第1弾となった第10番は、最良の意味において“普通”の演奏。テンポ設定をはじめとする解釈は極めてオーソドックスで、端正なアンサンブルで紡がれる美しい響きには無理が一切なく、それでいて楽曲が有する壮麗さが余すところなく表出されている。凄絶な思い入れの類とは無縁だが、作曲時から半世紀以上も経ち、同時代を生きた演奏家達の大半が鬼籍に入った現代の演奏として規範となり得る仕上がりといってよいだろう。カップリングのパッサカリアも、独特の騒々しさが壮麗さに昇華された聴き応えのある演奏。


7月17日のエントリーで「馬あぶ」組曲を紹介したばかりだが、本アルバムは映画のために書かれたスコアの全てを収録した「全曲版」である。DSCH社の新全集第138巻に基づいている。基本的に資料的価値の方が勝るアルバムであり、全てを通して鑑賞するのはいささか退屈な瞬間もあるものの、各曲の旋律的な美しさや楽しさを十分に味わうに不足しない、よく整った演奏である。「呼応計画」も、地味ではあるが耳馴染みの旋律が節度を持ちつつ楽しく歌われる様が心地好い。


実家にあった河出書房新社の世界音楽大全集の第10巻は「リスト/パガニーニ」だったが、そこに収録されていたトレチャコフによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番は私が中高生だった頃のヘビーローテーションだった。その余白に収められていた潮田益子が弾いたカプリース第11番もまた凛とした気品のある演奏で、彼女の名と共に今なお私の深い部分に記憶されている。シベリウスとブルッフという名曲を収めたこのアルバムは、第3回チャイコーフスキイ国際コンクール(1966)で第2位を獲得した後に企画された純国産の録音である。当時の協奏曲の録音では珍しいほど力の入ったオーケストラの“伴奏”はいかにも小澤らしく、それとがっぷり四つに組んだ潮田の若々しさが爽やかな演奏である。技術的な精度という点では、彼女の教え子の世代に当たる現代の演奏家達に劣るのは否めないし、腕力が不足しているかのような音圧の物足りなさなど、否定的な点もあるものの、底光りのする深い音色の美しさには何とも魅力がある。


ブリテンQによるブリテンの弦楽四重奏曲集は、かつて学生時代に第2番と第3番を収録した方を入手していて、第1番の方は未入手のまま特に探してもいなかったのだが、ふと目に付いたので確保。この2枚はBrilliantレーベルでまとめて再発されているので、とりたてて貴重な音源というわけではないが、端正でありながらも若々しい力感に満ちた演奏は、決して有名とまではいえないブリテンの弦楽四重奏の魅力を伝えてくれる。シンプル・シンフォニーも、編成の物足りなさを感じさせるどころか、まるで弦楽四重奏のために書かれた作品のように響く。


旧東ドイツの演奏家による音源を多数リリースしていた廉価盤レーベルPilzの弦楽四重奏曲集も、目に付いてしまったので確保。3つの団体による3曲が収録されているが、どの団体も初めて聴く上に、収録曲もマイナー曲ばかりという不思議なアルバム。やや生真面目な雰囲気で奏でられる渋い響きはどの演奏にも共通しており、いずれも驚くような名演ではないが、弦楽四重奏を聴く愉しみを十分に満たしてくれる。


クレーメルとクレメラータ・バルティカが、気の利いたパロディ音楽を集めた『ハッピー・バースデイ』というアルバムは、何となく買いそびれたままになっていた一枚。というのも、アルバムのタイトルになっているハイドリッヒの「ハッピー・バースデイ変奏曲」は、クレーメルがこの曲を取り上げる10年ほど前に、大学のサークルの先輩が楽譜を仕入れてきて何度も遊んだ思い出の曲だから。徹底してクレーメル節で奏でられるモーツァルトの「不協和音」第2楽章のパロディなど、こうじゃない感が強すぎて、クレーメルの極めて個性的で鋭利な鮮烈さに感心しつつも心からは楽しめない。とはいえ、収録曲はどれも面白く、それでいて単なるキワモノに陥らないクレーメルの傑出した音楽性と自在な名技は、まさに異端の才能である。


ウィンナ・ワルツはちょっとしたアンコール・ピースとしてレパートリーに入れておきたいものの、同工異曲とまでは言わないものの、どの曲を選ぶかが悩ましい。元来マイナー志向の私としては、ヨハン・シュトラウス2世よりもランナーや父ヨハン、弟ヨーゼフの辺りを狙いたいところだが、ちょうどそういう選曲のアルバムがあったので、資料として確保。ウィーン・フィルの団員によるウィーン・ビーダーマイヤー・アンサンブルの2枚だが、ランナーと父ヨハン、そして彼らの師匠パーマーの作品が中心に収録されている。ウィンナ・ワルツの黎明期を彷彿とさせるような選曲が愉しい。演奏自体に特筆すべき点はないが、この種のアルバムにそれを求めるのは野暮というものだろう。

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theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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