ケーゲル二題

  • ベートーヴェン:交響曲第7番、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番 トレチャコフ (Vn) ケーゲル/ドレスデン・シュターツカペレ (Weitblick SSS0058-2)
  • モーツァルト・エディション第11集(リタニア、ヴェスペレ、オラトリオ、カンタータ他) (Philips 464 870-2)
  • ショスタコーヴィチ:室内交響曲、スヴィリードフ:室内交響曲、ヴァインベルグ:室内交響曲第1番 バシメート/モスクワ・ソロイスツ (Onyx ONYX 4007)
  • アート・オブ・トイ・ピアノ レン・タン (Pf etc.) (Tower Records PROA-26)
  • ブラームス:ピアノ作品集(作品10、79、116) アファナシェフ (Pf) (Denon COCO-70529)
  • ブラームス:後期ピアノ作品集(作品117、118、119) アファナシェフ (Pf) (Denon COCO-70444)
今年はいつになく年度末業務に忙殺されている。買い込んだ音盤も無為に山積みされていく一方。本欄もすっかりご無沙汰してしまったが、その間に、今年もまた中古音盤堂奥座敷同人の2005年の5盤がアップされた。年を追うごとに個々の嗜好性が強く前面に押し出されてきて、なかなか刺激的。是非、ご一読を。

発売を心待ちにしていた新譜が入荷したとのことで、Tower Records難波店へ。お目当ての音盤は、ケーゲルとトレチャコフのアルバム。ベートーヴェンの凄いことといったら!久しぶりに鳥肌の立つような名演に出会えた。鋭く突き刺さるような音色感には好き嫌いがあるだろうが、楽曲の構成を丹念に表出しつつも尋常ならざる燃焼度が達成されている稀有の例。特に、第1楽章コーダのオスティナートや、第4楽章コーダの低音(これもオスティナートといってよいだろう)の凄みには言葉がない。リズムに取り憑かれた恐ろしさが端的に表現されているのに、それに昂奮させられてしまうことの怖さ。引き締まった集中力が全曲を貫いているのもさすが。管楽器のバランスなど、随所に凝った部分があるのもケーゲルらしい。圧倒的な音楽の奔流に言葉を失いつつ、終演後の拍手がないのを不思議に思ってジャケットを見ると、なんとスタジオ録音!

トレチャコフとのショスタコーヴィチは、このベートーヴェンに比べるとはるかに常識的。ソロ、オーケストラともに真摯で的確な楽曲把握が傑出している。派手さはないものの、思索的な雰囲気は抜群。ライヴ録音にも関わらず技術面での不満は全くなく、録音状態が冴えないことだけが惜しまれる。

ケーゲルでふと思い出し、長らく買いそびれていたセットを購入。モーツァルトの宗教曲を集めた13枚組BOX。収録曲は以下の通り:
【CD1】
リタニア 変ロ長調 K. 109
聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調 K. 243
主日のためのヴェスペレ ハ長調 K. 321
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho
【CD2】
聖体の祝日ためのリタニア 変ロ長調 K. 125
聖母マリアの祝日のためのリタニア ニ長調 K. 195
ディクシットとマニフィカート(晩課)ハ長調 K. 193
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho
【CD3】
証聖者の荘厳晩課 ハ長調(聴もん僧のおごそかな夕べの祈り)K. 339
キリエ ニ短調 K. 341
モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ニ長調 K. 618
モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K. 165
  C. デイヴィス/ロンドンSO & Cho他
【CD4】
モテット「神はわれらが避難所」ト短調 K. 20
キリエ ヘ長調 K. 33
聖ベネディクト祭の奉献歌「天の住居に昇れ」ハ長調 K. 34
アンティフォン「彼らを養いたまえり」K. 44
四声のための宗教曲「聖霊来たり給え」K. 47
聖ヨハネ祭の奉献歌「女として生まれた者の中で」K. 72
ミゼレーレ イ短調 K. 85
アンティフォン「まず神の国を求めよ」K. 86
キリエ ニ短調 K. 90
キリエ ニ長調(ロイター作) K. 91
レジナ・チェリ ハ長調 K. 108
奉献歌「主は賛美されよかし」ハ長調 K. 117
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho他
【CD5】
レジナ・チェリ 変ロ長調 K. 127
テ・デウム ハ長調 K. 141
アリア「故に問題は、高きものを求めて」K. 143
奉献歌「聖母の保護にすがり奉る」K. 198
聖節の奉献歌「主の御憐みを」ニ短調 K. 222
聖体の祝日のための奉献歌「来たれ、民よ」K. 260
聖母マリア祭の昇階誦「天主の御母なる聖マリア」ヘ長調 K. 273
レジナ・チェリ ハ長調 K. 276
聖母マリアのための奉献歌 ヘ長調「創造主の御母よ」K. 277
キリエ 変ホ長調(断片) K. 322
キリエ ハ長調(断片) K. 323
  ケーゲル/ライプツィヒ放送SO & Cho他
【CD6~7】
オラトリオ「第一戒律の責務」K. 35
アリア「来たれ汝ら恥知らずの罪人よ」K. 146
聖墓の音楽 K. 42
  マリナー/シュトゥットガルト放送SO他
【CD8~9】
オラトリオ「救われたベトゥーリア」K. 118
  ハーガー/ザルツブルク・モーツァルテウムO他
【CD10】
カンタータ「悔悟するダヴィデ」K. 469
  マリナー/シュトゥットガルト放送SO他
【CD11】
フリーメーソンのためのカンタータ「我らの喜びを高らかに告げよ」K. 623
弦楽四重奏曲のためのアダージョとフーガ ハ短調 K. 546
歌曲「結社員の道」K. 468
歌曲「おお聖なる絆」K. 148
カンタータ「宇宙の霊なる君」(未完)K. 429
結社員のための葬送曲 ハ短調 K. 477
結社員のための合唱つき歌曲「今日こそ、狂気し歓喜の歌を歌おう」変ロ長調 K. 483
結社員のための合唱曲「汝はわれらが新しき指導者」ト長調 K. 484
カンタータ「結社員の喜び」変ホ長調 K. 471
小カンタータ「無限の宇宙の創造者を崇敬する君らよ」ハ長調 K. 619
フリーメーソンの歌「固く手を結び合い」K. 623a
  シュライアー/ドレスデン・シュターツカペレ他
【CD12~13】
ラテン語喜劇「アポロとヒアキントス」K. 38
  ハーガー/ザルツブルク・モーツァルテウムO他
ケーゲルが振った声楽曲にはずれはないので、ずっと聴いてみたいと思ってはいたのだが、正直なところ、収録曲や他の演奏者に興味がないので、それにしては価格も分量も過大だったために購入を見送っていた。とても一気に聴き通すことはできないので、まずは順番通りにケーゲルの演奏が大半を占める(CD1、2、4、5)最初の5枚を聴いてみる。もう、さすがモーツァルト、さすがケーゲルとしか言いようがない。BGM的にリラックスして聴き始めたのだが、音楽の神々しさと張り詰めた演奏の素晴らしさがそんな安易な姿勢を許してくれない。この手の作品を形容するのに相応しいとは思えないが、とんでもなくデモーニッシュな音楽世界にノックアウトされた。有名曲が収録されたC. デイヴィスの演奏(CD3)にはこうした新たな発見はなかったが、音楽そのものはたまらなく美しい。

バシメート指揮の室内交響曲集は、少し前にリリースされていたものの、店頭にたくさん並んでいたので購入をとりあえず見送っていたもの。ショスタコーヴィチ以外は初めて聴く曲ばかりだったが、いずれも抒情的な美しさが印象的な、バシメートによく合う作品のように思えた。世界初録音と記されているスヴィリードフ作品が、とてもきれい。ショスタコーヴィチでは、自身のヴィオラ演奏と同種の粘っこさを感じさせる歌いまわしが特徴的。個人的にはもう少し辛口の引き締まった音楽が好みではあるが、音楽の訴求力は強く、これはこれで優れた演奏。モスクワ・ソロイスツの洗練された高度な技量にも感心する。

これらを購入したらポイントカードが満点になったので、1000円の音盤を3枚追加購入。まずは、Tower Recordsのフリーペーパー「intoxicate」58号(2005年10月)で絶賛されていたこともあって気になっていたトイ・ピアノのアルバム。何という豊かな音世界なんだろう。個々の楽曲については、あまり得意ではないジャンルなので好き嫌いも含めてはっきりとは評価しかねるのだが、全編を貫く響きが魅力的なことだけは疑う余地がない。

アファナシェフのブラームス作品集は、もう10年ほど前に大学の後輩の家で聴かせてもらって以来になる。演奏内容については色んなところで大絶賛されてきた名盤だけに、ここで改めて何かを言う必要性は全く感じられないが、とりあえずこの値段では申し訳ないような気がしてしまう。それにしても、ブラームス後期のピアノ作品は素晴らしい。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Kegel,H. 演奏家_Tretyakov,V.V. 作曲家_Mozart,W.A. 作曲家_Shostakovich,D.D. 作曲家_Sviridov,G.V. 作曲家_Brahms,J.

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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