グリーンカの主題による変奏曲

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  • ショスタコーヴィチ:ピアノ作品集第2巻(3つの小品、格言集、24の前奏曲、子供のノート、ムルズィルカ、グリーンカの主題による変奏曲、バレエ「黄金時代」より) M. ジョーンズ (Pf) (AVM AVZ-3020)
  • Retrospectives(回顧)(グランサム:J. S. ダンス、ヒンデミット:室内音楽第5番、ゴドフリー:大騒ぎ、ショスタコーヴィチ(Bibergan編):映画音楽「司祭とその下男バルダの物語」、ヒンデミット:交響曲変ロ調 コーポロン/北テキサス・ウィンド・シンフォニー (Klavier K 11145)
  • ショスタコーヴィチ(Bibergan編):映画音楽「司祭とその下男バルダの物語」、交響組曲 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 T. ザンデルリンク/ロシアPO他 (DG 00289 477 6112)
  • ショスタコーヴィチ(ティーシチェンコ編):レビャートキン大尉の4つの詩、チョールヌイの詩による5つの風刺、雑誌「クロコディール」の詩による5つの歌曲、ショスタコーヴィチ(デジャトニコフ編):自作全集への序文とその序文に関する考察、映画音楽からの8つのワルツ(「マクシームの帰還」「黄金の山脈」「ミチューリン」「ピロゴーフ」「馬あぶ」「第1軍用列車」「偉大な川の歌」「人間喜劇」) レイフェルクス (Br) T. ザンデルリンク/ロシアPO (DG 00289 477 6111)
5月23日付の本欄で、録音が存在するショスタコーヴィチ作品の中で、まだ聴いたことがないものが3つあると記した。まだそれから大して時間が経っていないのに、いつも貴重な情報を提供してくださる知人が、「グリーンカの主題による変奏曲」が収録されたアルバムが米AmazonのMarketplaceに出品されていると教えてくれた。送料込みで36ドル弱の価格は正直言って安くはないが、躊躇する理由などあるはずもなく、即発注。M. ジョーンズは、「24の前奏曲とフーガ」以外のピアノ独奏作品を全て録音しているが(編曲は除く)、本アルバムは実演ではまず演奏されることがないだろう作品も収録された、まさにマニアのためのアルバム。

「グリーンカの主題による変奏曲」は、歌劇『イヴァーン・スサーニン』第3幕の「ヴァーニャの歌」を主題として、複数の作曲家が分担して子供のために変奏曲を作曲したものである。ショスタコーヴィチは第8、9、11変奏を担当した。本アルバムには、主題とショスタコーヴィチが担当した3つの変奏が収録されている。もちろん世界初録音。程よく感傷的な主題とそれに続く古典的な変奏は、とても美しい。第11変奏は全曲のフィナーレに相応しい立派な佇まいを持っている。ショスタコーヴィチらしさはそれほど感じられないものの、子供向けという目的を十分に満足する職人ショスタコーヴィチの作品といえるだろう。演奏も丁寧で模範的なもの。

音楽院時代の習作「3つの小品」は第3曲が未完だが、本アルバムにはその第3曲を補完したものと、未完のままのものと2つのヴァージョンが収録されている。「世界初録音」と表記されているのは、もちろん補完版である(オリジナルにはポストニコヴァ盤がある)。作品自体が音楽的にも技術的にも平易なものだけに、演奏内容に問題や不満は一切ない。ただ、第3曲の補完部分は少々冗長に感じられる。「格言集」は丁寧な演奏ではあるが、妙にあっけらかんとした明るさに違和感がある。「24の前奏曲」も同様の音楽作りなのだが、この曲ではその明るさが音楽に覇気と推進力を与えている。ただし陰影があまりないので、作品が持つ独特の雰囲気はそれほど濃厚ではない。「子供のノート」は、可も無く不可も無く…といったところ。丁寧に演奏されていることには好感が持てる。「ムルズィルカ」も貴重な録音で、勢いのある演奏が楽しい。「黄金時代」からの抜粋は、組曲の第3曲と第4曲。有名な「ポルカ」はショスタコーヴィチの編曲と記されているが、ショスタコーヴィチ自身の演奏とは若干異なっているようにも聴こえる。楽譜を確認していないのではっきりしたことはいえないが。第4曲のピアノ用編曲は初めて聴いたが、派手な編曲でなかなか面白い。一気呵成な弾きっぷりが作品の雰囲気をうまく引き出している。

次に、6月26日付の本欄で述べたHMVの通販で購入した音盤の続きを。

サイトでは“世界の吹奏楽シーンをリードする”と紹介されていたクラヴィア・ウィンド・プロジェクトの一枚である「Retrospectives」というアルバムは、20世紀初期の名作曲家を集めた内容。「司祭とその下男バルダの物語」は、Biberganが編集した版の中から数曲を抜粋し、吹奏楽用に編曲したもの。もともとフルオーケストラ用の作品ではないこともあって、編曲にはとりたてて違和感はない。才気走った強烈な色彩感はないものの、整然とまとめられた演奏なので、作品を楽しむには十分な内容といえるだろう。指揮のコーポロンはヒンデミット作品が好き(?)なようだが、確かに「交響曲変ロ調」は磨き抜かれた充実の演奏に仕上がっている。「室内音楽第5番」も悪くないのだが、ヴィオラ独奏の水準が大分と低いのが残念。グランサムとゴドフリーという2人の作曲家は初めて聴いた名前だが、どちらの作品も僕には少々退屈に聴こえた。

T. ザンデルリンク/ロシアPOによる2枚のアルバムは、リリースの情報が流れた時からその意欲的な選曲に注目していたのだが、ついつい後回しになってしまい、ようやく入手した次第。まずは、上述したアルバムと同じBibergan版「司祭とその下男バルダの物語」が収録された方から聴いてみる。こちらは当然オリジナルの編成である上に全曲が演奏されているので、資料的価値は抜群。ヘーントヴァのオペラ版とはオーケストレイションが異なっているように聴こえる曲も多いが、詳しい由来は楽譜がないのでよくわからない。ロシア風のけばけばしい響きながらも、整然と洗練された流麗な音楽は極めて模範的なもの。これはT. ザンデルリンクの手腕によるものと思われるが、同時にロシアの野趣溢れる個性が薄まりつつある時代の流れも感じさせて、一抹の寂しさを覚える。カップリングの「マクベス夫人」組曲はショスタコーヴィチ自身によるものということだが、どの時点でこの形にまとめられたのか、ショスタコーヴィチの生前に演奏されたことがあるのか、といったことは解説を読んでもよくわからなかった。もっとも、3つの間奏曲をまとめただけなので、「世界初録音」には違いないものの、音楽自体は耳慣れたものである。演奏は、「バルダ」同様に優れたもの。煌びやかで輝かしい響きが印象的である。

もう一枚は、ティーシチェンコがオーケストレイションした歌曲をメインに据えたアルバム。4曲の歌曲のいずれもが風刺的な作品であり、選曲にも一貫性がある好企画である。「レビャートキン大尉」は、原曲の雰囲気とは随分と異なる印象で、聴いていて少々とまどってしまう。簡潔ながらも色彩感豊かで鋭いピアノ伴奏に対して、かなり豪奢なオーケストレイションが施されているために、原曲の醜悪なまでの風刺性が薄まっている。これは、独唱者のレイフェルクスがバスではなくバリトンであることも影響しているのかもしれない。「風刺」は、既にボガチェーヴァがこの編曲で録音をしているが、この編曲は音楽的な違和感があまりない。しかし、この曲でもレイフェルクスの声質がミスマッチ。耳障りなくらいに鋭い女声が、この曲には相応しい。オーケストラは華麗な響きで、編曲の意図を十分に再現している。「クロコディール」のオーケストラ伴奏版も、モチャローフ盤(ただし第1曲と第3曲のみ)があるが、解説を読むと今回の録音のためにイリーナ未亡人がティーシチェンコに編曲を依頼したとあるので、その編曲とは別物だと思われる(聴き比べてはいないので、はっきりとしたことは言えないが)。このアルバムに収録された3曲のティーシチェンコによる編曲の中では、最も原曲の雰囲気に近い仕上がり。レイフェルクスの歌唱も、鋭さよりは甘さを感じさせるとはいえ、素晴らしく洗練されたもの。オーケストラとのバランスも良い。「序文」だけは、デジャトニコフによる編曲。合唱まで付加した意欲的なものだが、この作品が持つ独特の美しさが強調されていて面白い。レイフェルクスの格調高く美しい声質も相応しい。これらの歌曲に対し、最後はメロディメーカーとしてのショスタコーヴィチの魅力を凝縮したワルツ集が配置されているのが、このアルバムの素敵なところだろう。伸びやかに旋律を歌い上げ、ためらうことなく壮麗で感傷的な響きに溺れているような、素直で自然な演奏が好ましい。

HMVでの買い物は、あと1点あるのだが、これは10枚組のBOXセットなので、まだ聴き終えていない。ということで、また後日。
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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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