ヴィクトル・トレチャコフ・エディション

brilliant-93005.jpg
  • ヴィクトル・トレチャコフ・エディション トレチャコフ (Vn)他 (Brilliant 93005)
6月2630日付の本欄で述べたHMVの通販で購入した音盤の残り一点は、この10枚組BOX。トレチャコフは大好きなヴァイオリニストなので、こうしてまとめて聴くことができるのは嬉しい。BOXの内容は、以下の通り:
【CD1】
A. チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲(カッツ/ソヴィエト国立SO Rec. 1990)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1984)
【CD2】
ブラームス:ホルン三重奏曲(B. アファナシェフ(Hr)、エローヒン(Pf) Rec. 1977)
シューベルト:二重奏曲イ長調(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
グルック:精霊の踊り(エローヒン(Pf) Rec. 1973)
プロコーフィエフ:5つのメロディー(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
【CD3】
ペイコ:前奏曲とトッカータ(ペイコ(Pf) Rec. 1967)
ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):24の前奏曲より(第15、24番)(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ワーグナー:Feuille d’album(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
サラサーテ:サパテアード(エローヒン(Pf) Rec. 1974)
ラヴェル:ハバネラ形式の小品(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
シェドリーン:フモレスケ(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
プリンシペ:El Campinello(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ブラームス:ハンガリー舞曲第7番(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ファリャ:スペイン民謡組曲(エローヒン(Pf) Rec. 1967)
ショパン:ノクターン ホ短調(エローヒン(Pf) Rec. 1965)
ブラームス:ハンガリー舞曲ヘ長調/ト長調/ニ短調(エローヒン(Pf) Rec. 1968)
イザイ:悲劇的な詩(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
【CD4】
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番(Rec. 1965)
J. S. バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲(カガン(Vn)、モスクワCO Rec. 1987)
ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ト長調(カガン(Vn)、モスクワCO Rec. 1987)
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲イ短調(モスクワCO Rec. 1988)
タルティーニ(クライスラー編):ヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」(エローヒン(Pf) Rec. 1973)
【CD5】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1984)
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調(テミルカーノフ/レニングラードPO?)
【CD6】
プロコーフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1983)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番(フェドセーエフ/モスクワ放送SO Rec. 1983)
メシアン:主題と変奏(エローヒン(Pf) Rec. 1974)
【CD7】
サン=サーンス:ハバネラ(キタエンコ/モスクワPO Rec. 1975)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ(モスクワCO Rec. 1989)
ベートーヴェン:ロマンス第1番(テミルカーノフ/レニングラードPO?)
ショーソン:詩曲(モスクワCO Rec. 1989)
ゴダール:カンツォネッタ(キタエンコ/モスクワPO Rec. 1975)
クライスラー:ウィーン奇想曲(N. ヤルヴィ/エストニア国立SO Rec. 1978)
クライスラー:愛のよろこび(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
クライスラー:愛のかなしみ(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
クライスラー:美しいロスマリン(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
パガニーニ:ラ・カンパネラ(エローヒン(Pf) Rec. 1978)
パガニーニ:奇想曲第17番(Rec. 1978)
【CD8】
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番(N. ヤルヴィ/エストニア国立SO Rec. 1978)
ハチャトゥリャーン:ヴァイオリン協奏曲(トゥーリン/モスクワPO Rec. 1967)
【CD9】
チャイコーフスキイ:瞑想曲(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:スケルツォ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:メロディー(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:憂鬱なセレナーデ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:ワルツ=スケルツォ(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
チャイコーフスキイ:ヴァイオリン協奏曲(M. ヤンソンス/ソヴィエト国立SO Rec. 1981)
【CD10】
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ(エローヒン(Pf) Rec. 1970)
プロコーフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番(エローヒン(Pf) Rec. 1972)
スーク:4つの小品(エローヒン(Pf) Rec. 1972)
ライヴ録音がほとんどだが、既出の音源がどの程度含まれているのかはわからない。少なくとも僕にとっては、パガニーニの協奏曲(名演!)以外は全て初めて聴くものばかり。ロシアの演奏家によるヴァイオリン名曲集といった趣で、マニアじゃなくても十分に楽しめる内容だろう。

さすがに各曲についてコメントはしないが、とにかくトレチャコフの巧いこと!正確無比な左手と完璧に同期した右手からは全ての音が輝かしい強さをもって響き渡り、ライヴゆえのもつれは皆無ではないものの、技術的な不安とは完全に無縁である。また、いかにもロシア人といった雰囲気の、どこか野暮ったい骨太で感傷的なスケールの大きい歌も魅力的。派手なスター性はないが、あらゆる意味でヴァイオリン演奏芸術の極致と言って過言ではない。

トレチャコフを堪能するという意味ではピアノ伴奏の独奏曲もいいが、面白いのは協奏曲。手加減というものを知らない、ソ連のオーケストラの節操の無さが何とも素敵である。たとえばCD5。普通に交響曲を演奏しているような感じでやりたい放題のフェドセーエフ(メンデルスゾーン)やテミルカーノフ(ブラームス)に笑ってしまう。それでいて一歩も退かずに協奏曲として成立させてしまうトレチャコフの凄みには、厳かさすら感じてしまう。

ただ、このセット、ピッチの不備が随分とある。たとえばCD2のホルン三重奏曲。完全に半音低く、調性が変わって聴こえるので、どうにも違和感が拭えない。CD4の無伴奏ソナタなんて、オリジナル楽器で弾いているのか?と思ってしまう。また、収録年が長期に渡っていることもあって、録音状態もまちまち。聴き辛いというほどのものはないが、ライヴ録音では、収録年のわりに…というものも少なくない。それでもなお、ヴァイオリン音楽の愛好家ならば必携のセットだと言いたい。この内容がBrilliant Classicsの激安価格で手に入る幸せを、むざむざ放棄する理由などない。

以下、ショスタコーヴィチ作品のみ個別にコメントしておく。協奏曲第1番(CD1)は、独奏・オーケストラ共に猛烈なテンションに貫かれた極めて素晴らしい演奏。充実しきったオーケストラと圧倒的な独奏との拮抗は、理想的なバランスである。トレチャコフとフェドセーエフの双方が持ち前の音楽性を遺憾なく発揮していて、非常に抒情的な仕上がりになっているところが特徴的と言えるだろう。第1楽章の美しさ、第2楽章の完璧で鬼気迫る推進力、第3楽章の切実な歌、第4楽章の狂気に満ちた昂奮、いずれも最高級の内容を持っている。ここまで凄い演奏は、久しぶりに聴いた。ただ第3楽章の半ばくらいからカデンツァ、第4楽章と、さすがに心身ともに消耗したのかミスが目立ってくるのが残念。とはいえ、それがこの演奏の価値を損なうものではない。協奏曲第2番(CD6)も、張り詰めた緊張感と作品の内面に真摯に立ち向かう精神の力強さが際立つ秀演である。それでいて、どこか陽性な推進力に満ちているのはフェドセーエフの伴奏によるものと思われる。細かい瑕はあるものの、トレチャコフの自在で男くさい歌は非常に魅力的。残念なことに、ソナタ(CD10)は収録されているピッチが完全に半音低い。聴いている内に慣れるようなものではなく、調性が狂って聴こえるので不快極まりない。演奏そのものは、真正面から作品と格闘しているかのような誠実なもの。技術的な精度も高く、時々一本調子になってしまうことを除けば模範的な演奏といえるだろう。エローヒンのピアノも立派な存在感を持っている。それだけに、録音の不備が残念でならない。24の前奏曲からの2曲(CD3)では、鮮やかな切れ味(少々荒っぽいが)をこれでもかと見せ付けられる。短い曲だけに仕方ない側面もあるが、勢いに任せすぎでやや単調な仕上がりなのが残念。
スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Tretyakov,V.V.

comment

Secre

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター