『ロジデーストヴェンスキイ:指揮者それとも魔術師?』

  • 『赤い指揮棒―スターリン時代のソ連における音楽生活』/『ロジデーストヴェンスキイ:指揮者それとも魔術師?』 (Ideale Audience 3073498 [DVD])
12月16日の記事で紹介した買い物の続き。

リヒテルやオーイストラフのドキュメンタリーなどで著名なB. モンサンジョンによる、ロジデーストヴェンスキイのドキュメンタリー。『赤い指揮棒』は、ロジデーストヴェンスキイの語りを中心に構成した、ソ連時代の楽壇と政治体制との関わりについての話。『指揮者それとも魔術師?』は、指揮者ロジデーストヴェンスキイの秘密に迫ろうという話。どちらも約55分の長さである。ロジデーストヴェンスキイがどんな風に生きてきて、現在はどんな音楽をしているのかを、一つのドキュメンタリーにまとめずに二つに分けていることそのものが、ロジデーストヴェンスキイという人を象徴しているように感じられる。

ショスタコーヴィチのファンとしては、『赤い指揮棒』の方に見どころが集中しているだろう。中でも映画音楽「黄金の丘」のワルツを、メーリク=パシャーエフの指揮でショスタコーヴィチがピアノを弾いて演奏している初出映像には、目が釘付けになった。ストーリーテラーとしてのロジデーストヴェンスキイは、アシケナージやゲールギエフなどとは異なり、本心を読み取ることのできない飄々とした語り口が、逆に“あの時代”を第一線で生き抜いてきた人間の凄みを感じさせる。ショスタコーヴィチの交響曲第4番について、第2楽章コーダの打楽器を「収容所の天井裏から聞こえる配管の音」に例える話を、あの表情で淡々と語られると、画面の前でただ固まることしかできない。

一方の『指揮者それとも魔術師?』は、ロジデーストヴェンスキイ流の指揮法に対する考え方、そしてその指揮の持つ多彩な表現力を明らかにしようとするもの。演奏シーンだけでなく、ショスタコーヴィチの交響曲第7番を振る弟子(?)に対する指導の様子や、チャイコーフスキイの「ロミオとジュリエット」を自身が振った映像に対して解説を加えるシーンなど、通常の音楽ドキュメンタリーの枠を超越していると言ってもよいほどの含蓄に富んでいる。

この2本だけでも満足なのだが、ボーナス・トラックがまた凄い。『赤い指揮棒』に対応するものとして、プロコーフィエフのカンタータ「スターリンへの祝詞(乾杯)」、『指揮者それとも魔術師?』に対応するものとして、シニートケの映画音楽をロジデーストヴェンスキイが編集した組曲「死せる魂」の、それぞれ全曲が収録されている。特に後者は抱腹絶倒のパフォーマンスも含めて、極めて素晴らしい演奏である。

日本語字幕はなく、ロシア語で語られている部分にのみ英語かフランス語の字幕があるのみ。ナレーションは英語。確かに不便ではあるのだが、だからといって見逃すのは絶対惜しい一枚である。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Rozhdestvensky,G.N.

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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