「マニアを追い越せ!大作戦」


  • G. ハリスン(早川正昭編):サムシング、P. マッカートニー(早川正昭編):ミッシェル、P. マッカートニー(早川正昭編):抱きしめたい、P. マッカートニー(早川正昭編):ノルウェーの森、間宮芳生:合唱のためのコンポジション第4番「子供の領分」より第1曲「ゆかいなうた」第3曲「絵かきうた」、三善晃:「東京のわらべうた」より「おじぎのまえに」、小倉朗:「東北地方のわらべうたによる9つの無伴奏女声合唱曲」より「ほたるこい」、グノー:アヴェ・マリア、群馬県民謡(早川正昭編):八木節、長野県民謡(早川正昭編):小諸馬子唄 外山滋 (Vn) 山本邦山 (尺八) 早川正昭/新ヴィヴァルディ合奏団 渡邊顯麿/東京荒川少年少女合唱隊 (東芝EMI DOR-0092 [LP])
お盆直前に、札幌の実家へと帰省してきた。今回は、札幌で所用があったこともあり、単身での帰省であった。いつもは慌ただしく過ごしてしまうため、ここ10年近くは街をぶらつくこともなかったのだが、何の予定もない日を作ることができたので自宅から大通、札幌駅の辺りを徒歩で散策してみた。

すっかり変わったなぁ…と思う一方で、僕が生活していた20年ほど前そのままのところもあり、寂しさと懐かしさとが入り混じった、ちょっと不思議な散歩であった。20年前からほとんど変わっていなかったのは、狸小路のはずれ(7丁目)辺りのさびれた風景。6丁目にはかつて僕がヴァイオリンを習いに行っていたレッスン場があったのだが、その建物(当時既にヤバいくらい老朽化していた)がなくなったくらいで、当てもなく歩いていると、まるで高校時代にタイムスリップしたかのよう。

何の気なしに並んでいる店の一つに目をやると、中古レコード屋があった。新しい店には見えないし、おそらくは随分前からあったのだろう。もしかすると、僕が生活していた頃からあったかもしれないが、クラシック中心の品揃えでないために、見過ごしていたのかもしれない。「Fresh Air」というその店の前に無造作に広げられていた段ボールの中に、「クラシック」とマジックで書かれていたものを見つけ、さして期待もせずにそのエサ箱の中身をのぞいてみた。

狂喜乱舞するような得物はなかったのだが、廉価な物が多かったこともあり、普段なら手を出すことのなさそうなLPを4枚ほど購入。まずは、その中で最も廉価だった(200円)一枚を紹介する。

ジャケット表裏両面の左下隅にある「DAM」というロゴ。すぐに思い浮かぶのは第一興商の業務用通信カラオケ(Daiichikosho Amusement Multimedia)だが、それとは全く関係がない。これは、先年倒産した家電チェーンの第一家庭電器が1970~80年代にかけて作っていたオーディオ・メンバーズ・クラブ(Daiichi-kateidenki Audio Member's Club)のことである。ここでは「マニアを追い越せ!大作戦」と称して、アナログ・カートリッジの廉価でのまとめ売りのような、オーディオ・マニアに追いつくと同時に一気に追い越すような企画が展開されたらしい。この企画は1976年6月頃から年に2回(6月と11月)、要するにボーナスを狙ったものだったようだが、ここで商品を購入すると、第一家電がオリジナル制作した45回転30cmLPが特典として配布されたとのこと。

「MICHELLE 76/45」と題された本LPは1981年6月のものらしく、ライナーには「15回記念のDAMオリジナル録音第9作」という記述がある。早川正昭/新ヴィヴァルディ合奏団の演奏を中心に、よく知られたメロディを集めた内容となっている。本アルバムの収録と連動して「春一番!ジョイフルコンサート」という演奏会も行われたようで、ジャケットやライナーの多くにその写真が使われているのだが、LPに収録されているライヴ音源はビートルズの「抱きしめたい」1曲のみで、他はすべてスタジオ収録のものである。

内容は、素直に楽しいものである。特に編曲が立派で、独奏楽器としての尺八が活きている。東京荒川少年少女合唱隊の歌唱も秀逸。間宮の「子供の領分」は合唱とオーケストラのための作品なのだが、ここでは合唱部分だけを抜き出してア・カペラで歌われている。なぜか全音楽譜出版社の合唱パート譜がジャケットの中に入っていたのだが、これはおそらくこのLPの売り手のものだったのだろう。お得な買い物……と言ってよいのだろうか。かつてNHK教育テレビの「ヴァイオリンのおけいこ」などで馴染んでいた外山滋氏のヴァイオリンも楽しみだったのだが、「ノルウェーの森」1曲のみ、それもあまりフィーチャーされているようには感じられなかったのが残念。

販促のためとはいえ、決して低くない水準の、後々まで語り継がれるような企画を一つの企業が長年に渡って継続し得た時代が確かにあったのだということを、その時代を過ごした地でたまたま出会ったこの一枚のLPが思い起こさせてくれた。
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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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