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『音楽現代』誌のショスタコーヴィチ特集


『音楽現代』は、中学生の頃から大学に入るくらいまで毎月購読していた、僕にとってはある種の郷愁を誘う雑誌である。当時は『レコード芸術』や『音楽の友』の他に『音楽芸術』などもあったのだが、活字が多いこと(その分、誤植も多いのだが)や価格が手頃だったことなどから『音楽現代』を選んだのだと思う。定期的にチェックしなくなってからもう15年以上経つが、ショスタコーヴィチをテーマに特集を組んでいるとなれば、買わないわけにはいかない。2006年の生誕100年時以来の特集である。

特集には「作曲家ベイシックシリーズ〈3〉」というシリーズ名が冠してあり、先にマーラーとブルックナーの交響曲が取り上げられていたようだ。彼らに続く3人目として、交響曲限定であるとはいえ、入門的な企画の主役としてショスタコーヴィチの名が挙げられるのには、ちょっとした感慨と同時に若干の違和感もあったりする。以下に、各項の表題と執筆者を列挙する:
  • 井上道義:ショスタコーヴィチの交響曲の魅力は?
  • 中村 靖:ショスタコーヴィチが交響曲で表現しようとしたこと
  • 大宅 緒:ショスタコーヴィチにおける交響曲の変遷
  • 交響曲の魅力、聴きどころ、エピソード
    1. 保延裕史:交響曲第1番
    2. 菅野浩和:交響曲第2番
    3. 谷口昭弘:交響曲第3番
    4. 水野みか子:交響曲第4番
    5. 出谷 啓:交響曲第5番
    6. 野崎正俊:交響曲第6番
    7. 門田展弥:交響曲第7番
    8. 茂木一衞:交響曲第8番
    9. 福本 健:交響曲第9番
    10. 倉林 靖:交響曲第10番
    11. 菅野泰彦:交響曲第11番
    12. 横島 浩:交響曲第12番
    13. 宮沢昭男:交響曲第13番
    14. 八木幸三:交響曲第14番
    15. 横原千史:交響曲第15番
  • 増田良介:SACD限定の「ショスタコーヴィチの名盤
執筆者の半数近くは初めて見かける名前だが、あくまでも“ベイシックシリーズ”であることを考えるならば、ロシア音楽の専門家よりはむしろ、ベートーヴェンやらブラームスやらマーラーやらと同じ感覚でショスタコーヴィチを聴いている人の方が相応しいともいえるだろう。

それゆえに各記事の内容も、ごく当たり前の、通り一遍というようなものとなっている。この場合、僕はそれを否定的には考えていない。それこそ、ハイドンやモーツァルトの有名曲の楽曲解説といった感じであり、ショスタコーヴィチがオタク的呪縛から解き放たれて、歴史上の大作曲家の一人となったことを実感する。これが、僕の感じた“感慨”。

一方、ショスタコーヴィチといえば「スターリン」「共産党」「政治体制との軋轢」というのがかつての決まり文句だったが、この特集の多くの記事(特に楽曲解説)で、意図的にそうした視点を回避しているのが興味深かった。聴衆、あるいは愛好家の多くがソ連を知らない世代となりつつある現在において、いつまでも1960年代や1970年代と同様の楽曲理解(1980年代の『証言』史観も結局は同じこと)に固執しているわけにいかないのは当然なのだが、しかし社会的な背景=公的な側面を回避して私生活=私的な側面を重視する的の単純な推移は、決して議論のパラダイムが変わったことを意味しない。この点が、僕の感じた“違和感”。ショスタコーヴィチの作品の多くには標題音楽的なプロットを見出すことも可能だが、その表面的な分かりやすさの奥にある抽象的な音楽哲学こそがショスタコーヴィチの真髄で、それゆえに難解な作曲家なのだ。

だから、僕が一番面白く読んだのは、音盤紹介に特化した増田氏の記事と、演奏家として感じたままを自由に書き記した井上氏のエッセイ。井上氏は15年前の『ショスタコーヴィチ大研究』(春秋社)の冒頭でも似たようなエッセイを書いているのだが、そこでは「若い彼にイタリア旅行をさせてあげたかった。」という(どこか上から目線の)一文で締めくくっている。それが今回は「このように生きたい。このように逝きたい。」という言葉に変わっている。交響曲全曲演奏会を成功させ、より深くショスタコーヴィチの音楽世界を経験してきたがゆえの変化なのだろう。とても印象的だった。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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