ショスタコーヴィチの交響曲三題(ペトレンコ、ロストロポーヴィチ、ゲールギエフ)

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプールPO (Naxos 8.572082)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5&14番 ヴィシネーフスカヤ (S) レシェティン (B) ロストロポーヴィチ/ナショナルSO、モスクワCO (Venezia CDVE 04283)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第1&15番 ゲールギエフ/マリイーンスキイO (Mariinsky MAR0502 [SACD])
11月27日の記事の続き。ショスタコーヴィチの新譜といえば、やはり圧倒的に交響曲がその大部分を占めているが、どこか食傷気味であることも否めず、発売と同時に喜び勇んで入手することがめっきりと減った。今回注文した3枚は、いずれも新譜というには時間の経った、やや今さら感の強いものばかり。

まずは、Naxosレーベルで新たに始まったショスタコーヴィチの交響曲全曲録音の第1弾である。現在のカタログにもスロヴァークによる全集はあるが、その質は非常に低く、価格と入手しやすさ以外にセールスポイントがなかっただけに、この企画は歓迎したいところ。指揮には近年売り出し中の若手、ペトレンコが起用されている。この第11番は、壮麗な佇まいと丁寧な仕上げに好感が持てる演奏である。第1楽章は少々彫りが浅いものの、第2楽章や第3楽章の盛り上げは模範的かつ相応の魅力を持っている。ただし、第4楽章は中途半端な出来であるのが惜しい。「単なる革命賛美の交響曲ではない」というお題目に捕らわれ過ぎたのだろう、楽曲が本来持っている暴力的な推進力が必要以上に削がれてしまい、音楽作品としての魅力や説得力が損なわれている。残曲が非常に強調された最後の鐘の意図はよくわかるが、録音でしか実現できないようなことをやるのには、疑問が残る。

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ロストロポーヴィチ指揮の交響曲第5番には、スタジオ盤(2種類)とライヴ盤(1種類)、そしてライヴ映像(1種類)の計4種類の演奏がリリースされている。このVenezia盤は、そのいずれとも異なる初出の音源である。10月30日の記事で紹介した書籍の中でも触れられている、1990年のソ連への里帰り公演のライヴであり、歴史的な価値の高い録音と言えるだろう。しかしながら、極限まで高められた集中力で、普段以上にのめり込んだロストロポーヴィチの音楽を音化したナショナルSOの凄絶な演奏は、単なるドキュメントとしての価値だけではなく、純粋に鑑賞用の音楽としても極上の価値を有している。とにかく、全ての音がロストロポーヴィチの体躯のような質量を持ち、全身全霊を傾けた音圧で聴衆の耳に襲い掛かってくる。僕個人は、我を忘れた没入型の熱演というものをあまり好まないが、そうした好き嫌いを超えるだけの力が、この音楽にはある。ロストロポーヴィチによる終楽章コーダの解釈は、いわゆる『証言』的な暗さを前面に押し出したものだが、この録音には“勝利”の晴れやかさも感じられるところも、この演奏会におけるロストロポーヴィチの心境を反映しているようで、大変興味深い。

ボーナス・ディスクは、交響曲第14番のライヴ録音である。こちらは、かつてRevelationレーベルからリリースされてものと同一の音源である。客席のノイズが少なくないのが気になるとはいえ、演奏自体は鬼気迫る圧倒的なもの。歌手もオーケストラも、信じられないくらい巧い。

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ゲールギエフによるショスタコーヴィチの交響曲シリーズは、第4~9番(Philips)のセットがリリースされて以降、続編の気配がなかったのだが、マリイーンスキイOの自主レーベルで録音が継続されることになったようだ。リリースされてからずいぶんと時間が経ってしまったが、ようやく入手した。これまでの録音にはあまり感心しなかったのだが、今回の2曲は、しなやかに流れつつも彫りの深い表現力を持った、いかにもゲールギエフらしい快演である。妙な小細工を排した正攻法で推進力のある音楽作りが、作品の美質を十分に描き出している。オーケストラも非常に巧く、特に第1番の方は、いわゆる“スタンダード”となり得る演奏だろう。一方、第15番では、どこか人工臭のする響きが、表現の迫真性をわずかながら削いでいるようにも感じる。

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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