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【YouTube】フレーンニコフ色々

ショスタコーヴィチをはじめとするソ連の作曲家に関心を持つ者ならば、“悪役”として知らぬ者はいない“大物”作曲家が、フレーンニコフである。確かに、彼の政治力がソ連音楽界で抜きん出ていたことを示す記録や証言は、枚挙に暇がない。しかしその一方で、彼がどんな作曲家であったかということは、ほとんど知られていないと言ってよいだろう。少々マニアックな傾向がある(わが国の)クラシック音楽ファンでも、スヴェトラーノフが指揮した交響曲全集や、レーピンやヴェンゲーロフ、キーシンらの独奏による協奏曲、そして赤軍合唱団(アレクサーンドロフ・アンサンブル)の歌ういくつかの大衆歌曲、辺りを知っている程度ではないだろうか。実際、これらのCDですら、店頭にいつでも並んでいる訳ではなく、ましてや実演で聴く機会など皆無に近い。

結局のところ、作曲家を知るにはその作品を知るのが一番なわけで、こういう時にYouTubeというのは、とてもありがたい。国際的にはほとんど知られていなくても、ロシア国内ではそれなりに演奏されているようで、そうしたライヴ映像がいくつかアップされている。演奏頻度の違いには、もちろん楽曲の質や内容の問題もあるだろうが、何よりも楽譜の入手し易さというのが大きく影響しているのかもしれない。

まずは、その名前からフレーンニコフの孫ではないかと想像される演奏者による、ピアノ作品。指の体操的な無窮動風のパッセージは、フレーンニコフの器楽作品に典型的なもの。技術的に征服するという悦びが演奏者にはあるのかもしれないが、聴き手にはさして訴えかけるものがない。

フレーンニコフ:ピアノのための5つの小品
フレーンニコフJr.(2009年1月19日 中央音楽学校コンサート・ホール)


チェロ・ソナタは、1989年、すなわちフレーンコフ76歳の時の作品である。94歳まで生きたフレーンニコフにとっては、晩年というよりは円熟期とでもいった方が相応しい、大柄な歌心に満ちた、なかなか聴き映えのする作品である。

フレーンニコフ:チェロ・ソナタ
A. ピャザンツェフ (Vc)、T. ピャザンツェヴァ (Pf) (2008年6月15日 中央音楽学校コンサート・ホール)


木管楽器のための小品は、おそらくチェロ・ソナタ同時期の作品と思われるが、少し凝り過ぎているようにも感じられ、全体に中途半端などっちつかずの印象が強い。楽しかったり美しかったりする箇所も少なくないだけに、少し惜しいような気もする。

フレーンニコフ:フルート、オーボエ、ピアノのための三重奏曲
ヴェニョフツェフ (Fl)、パイソフ (Ob)、シチェルバコヴァ (Pf) (2008年6月15日 中央音楽学校コンサート・ホール)


第8回チャイコーフスキイ国際コンクール(1986年)のオープニング・ガラ・コンサートは、レーピン、ヴェンゲーロフ、キーシンといった3人の神童の凄演で話題になった。僕はレーピンとキーシンの2人と同い年なので、随分と関心を持ってニュース等を見ていた記憶がある。そこでレーピンが演奏したのが、フレーンニコフのヴァイオリン協奏曲第1番。その演奏は、かつてYouTubeにアップされていたのだが、かなり前に削除されてしまったようだ。このさらに数年前、レーピンが12歳だった頃のドキュメンタリー映像の一部に、同じフレーンニコフの協奏曲の終楽章(一部)の演奏姿が収録されている。トッカータ風の、ただひたすら忙しなく動き回るようなパッセージを、いとも容易く弾き切る様には圧倒される。もっとも、この動画で最も圧倒的なのは、若きブロン先生の鬼教師ぶりだが。この他に収録されている楽曲は、ヘンデルのトリオ・ソナタ ト短調 作品2-6とパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章。

レーピン(12歳)


こうしたシリアスな作品も悪くはないのだが、肩の力が抜けたお気楽な大衆歌謡の方に、フレーンニコフの魅力が発揮されているようにも思える。名バス歌手のギャウロフが十八番にしていた「酔っ払いの歌」は、とにかく愉しい。YouTubeには2種類の動画があるが、どちらもアンコールで歌われたもののようだ。フェドセーエフ率いるオーケストラが充実している2002年の映像は、最晩年のフレーンニコフの姿も見ることができる。一方の1995年の来日公演の映像は、何より歌詞の対訳が嬉しい。どちらも貫禄の歌唱である。

フェドセーエフ/モスクワ放送SO
(2002年10月5日 モスクワ音楽院大ホール)
V. ギャウロフ/東京PO
(1995年11月2日 昭和女子大学人見記念講堂)
フレーンニコフ:酔っ払いの歌(劇音楽「から騒ぎ」より)
N. ギャウロフ (B)


この手の歌謡曲を、6~70年代に人気のあったアゼルバイジャンの歌手、マゴマエフが歌った「フレーンニコフ作品の夕べ」の動画もある。オーケストレイションは恐らくフレーンニコフ自身によるものではないだろうが、さすがは作曲家同盟書記長。広く人民の心に訴えかける大衆性を持った、能天気で魅力的な歌ばかりである。交響曲や協奏曲といった作品群でショスタコーヴィチなどと比較しているだけでは、フレーンニコフという作曲家の姿を見誤ってしまうだろう。

映画音楽「ルスランとリュドミラ」より「レペレティエの歌」(劇音楽「遠い昔」より)
「真実の友人たちの歌」(映画音楽「真実の友人たち」より)「モスクワの窓」
「サワグルミのロマンス」(映画音楽「真実の友人たち」より)「夜は揺れて」(劇音楽「から騒ぎ」より)
「フレーンニコフ作品の夕べ」
マゴマエフ (歌)(1973年)


映画音楽は、やはり映画のシーンの中で聴きたいところ。以下の3つの動画は大祖国戦争前後の愛国的な映画からの抜粋だが、この独特の雰囲気がたまらない。音楽的以外の要因で楽しんでいるという自覚は、もちろん持っていますが。

「立ち上がれ、厳しき戦いに」(映画音楽「戦争の後の午後6時」より)
「友よ、歌おう!」(映画音楽「東方面に行く列車」より)「学生の歌」(映画音楽「東方面に行く列車」より)
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Khrennikov,T.N.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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