スウィトナーを偲ぶ

  • N響アワー「名誉指揮者・スウィトナーをしのぶ」 (ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲、ブラームス:交響曲第3番) スウィトナー/NHK交響楽団 (録画 [NHK-ETV (2010.2.7)])
  • 父の音楽 ~指揮者スウィトナーの人生~ (録画 [NHK-BS1 (2010.2.15)])
年明け早々の1月8日に、スウィトナーの訃報に接した。クラシック音楽を熱心に聴き始めた頃、N響への客演で彼の名前を知り、実に愚かなことだが、それゆえに彼の音楽家としての真価を長らく見誤っていた。サヴァリッシュについてもそうだったが、日本のオーケストラに頻繁に客演するというのは、“その程度”なんだと思い込んでいた。何とも冴えない彼の容姿も、その印象に拍車をかけたのだと思う。後に、愚かな僕も、スウィトナーが真に尊敬に値する音楽家であることを知った。しかし、その頃には既に彼は引退していた。

追悼番組で流れた1988年と翌89年の映像は、懐かしさと同時に、今まで気付くことのなかったスウィトナーの音楽の素晴らしさが極めて印象的なものだった。とりわけ、ブラームスの第3番。この交響曲は僕の大好きな作品で、とりわけ第2楽章の結尾部はブラームスの全作品中でも断トツに好きだったりする。スウィトナーの指揮ぶりは拍子抜けするほど淡々としているが、それでいて雄弁かつ熱い音楽がオーケストラから迸るのには、ただただ圧倒された。これぞ音楽、という手応えと充足感のある、偉大で素晴らしい演奏であった。N響も、特に金管陣が好調で、見事な出来。皆、若かったということか。

その一週間後、今度はスウィトナーの息子が制作したドキュメンタリーが放映された。これは、健康上の理由で引退してから随分と時を経た、スウィトナー最晩年の姿が記録された貴重なもの。いずれも断片ではあるが演奏シーンも数多く、昔かぶとやま交響楽団の第19回定期演奏会で演奏したデッサウの「交響的変態」には、思わず目が釘付けになったりもした。

しかし、このドキュメンタリーの凄さは、そうした名指揮者の足跡を辿る部分にあるのではない。監督であるスウィトナーの“息子”とは、スウィトナーが“愛人”に産ませた子供なのだ。スウィトナーは、生まれてからずっと西側で生活していたにもかかわらず東ドイツでキャリアを築き、プライヴェートでは妻と愛人のどちらも愛し続けた。この奇妙な、いや異常な歪みを理解することは、少なくともドキュメンタリーを見た程度では不可能だ。

結局のところ、このドキュメンタリー、ましてやスウィトナーの人生について、何かをコメントすることなど、僕のような凡人にはできやしないし、またするべきでもないのかもしれない。番組の最後で、スウィトナーは再び指揮台に立ち、モーツァルトの交響曲第39番と、J. シュトラウスのポルカ「とんぼ」を振る。その姿と音楽は、とても、とても感動的である。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Suitner,O.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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