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ロジデーストヴェンスキイの10枚組BOX(Brilliant)

  • ロジデーストヴェンスキイ・エディション 第1集 (Brilliant 9019)
5月28日6月4日および5日の記事の続き。

気がつけば、HMV ONLINEで買い物をする度に、BrilliantのBOXセットを注文している。廉価でたくさんの音楽を聴くことができるという貧乏根性の故でもあるが、何よりも演奏者や収録曲が僕にとって魅力的なセットが次々にリリースされているからであろう。

このロジデーストヴェンスキイのセットは、何と言っても収録曲がすこぶる面白い。内容の一覧を下に記す:
【CD 1】
ハイドン:カンタータ「合唱長の選挙」(ソヴィエト国立文化省SO他 1983.4.5)
モーツァルト:6つの前奏曲とフーガより(ソヴィエト国立文化省SO 1982.10.11)
グルック:歌劇「エコーとナルシス」序曲(モスクワ音楽院SO 1977.2.10)
アダン:喜歌劇「ダニロヴァ」序曲(ソヴィエト国立SO 1980.2.10)
ケルビーニ/ボワエルデュー:歌劇「女囚人」序曲(ソヴィエト国立SO 1980.2.10)
【CD 2】
ドヴォルザーク:交響曲第2番(ソヴィエト国立文化省SO 1985.2.26)
フォルクマン:序曲「リチャード三世」(モスクワ音楽院SO 1977.2.10)
シュポア:歌劇「ファウスト」序曲(モスクワ音楽院SO 1977.2.10)
【CD 3】
フレーイシマン(ショスタコーヴィチ補作):歌劇「ロスチャイルドのヴァイオリン」(ソヴィエト国立文化省SO他 1982.9.24)
J.シュトラウス2世(ショスタコーヴィチ編):ポルカ「観光列車」(ソヴィエト国立文化省SO 1982.4.10)
ショスタコーヴィチ:8つのイギリスとアメリカの民謡(ソヴィエト国立文化省SO他 1989.1.4)
【CD 4】
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番(ソヴィエト国立SO 1976.11.20)
ショスタコーヴィチ:祝典序曲(モスクワ放送SO 1972.4.11)
ショスタコーヴィチ:交響的哀悼前奏曲(モスクワ放送SO 1967.9.7)
ショスタコーヴィチ:歌劇「カテリーナ・イズマーイロヴァ」の5つの間奏曲(ソヴィエト国立文化省SO 1985.8.10)
ショスタコーヴィチ:E.ドレッセルの歌劇「コロンブス」のための2つの小品より「序曲」(モスクワ音楽院SO他 1977.2.10)
【CD 5】
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番(ソヴィエト国立文化省SO 1987.5.24)
【CD 6】
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番(モスクワ放送SO 1968.1.8)
【CD 7】
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番(ソヴィエト国立文化省SO 1982.12.21)
ショスタコーヴィチ:ミケランジェロの詩による組曲(ネステレーンコ (B)、モスクワ放送SO 1976.4.20)
【CD 8】
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番(ソヴィエト国立文化省SO 1982.4.10)
ショスタコーヴィチ:組曲「ボルト」(ソヴィエト国立文化省SO 1982.4.10)
【CD 9】
シェバリーン:交響曲第3番(ソヴィエト国立文化省SO 1984.12.6)
シャポーリン:民族楽器とオーケストラのための組曲「蚤」(ソヴィエト国立SO 1982.2.12)
ラーコフ:弦楽合奏のためのシンフォニエッタ(モスクワ放送SO 1968.4.5)
ラーコフ:弦楽合奏のための交響曲第3番(モスクワ放送SO 1964.7.28)
【CD 10】
アガジコフ:ヴァイオリンと管弦楽のための「コンチェルト・ポエム」(スプテル (Vn)、モスクワ放送SO 1985.11.5)
ヴォルコーンスキイ:ピアノと管弦楽のための「不動」(リュビーモフ (Pf)、ソヴィエト国立文化省SO 1988.12.28)
ベリモフ:水と死、生について(リマス (Ob)、ソヴィエト国立文化省SO 1988.12.28)
ポロヴィーンキン:テレスコープII(ソヴィエト国立SO 録音:1982.2.12)
モソローフ:鉄工場(ソヴィエト国立SO 録音:1982.2.12)

まさに、ロジデーストヴェンスキイならではの内容である。もちろん、全10枚中6枚がショスタコーヴィチ作品で、かつ初出音源が少なくないことだけでも、僕にとっては驚喜に値する。以下、ディスク順に。

【CD1】セットの1枚目にハイドンやモーツァルトなどの古典派を持ってくるのはよくあるパターンだが、本人の作品かどうかその真贋がはっきりしない曲を並べているところが、大変面白い。ハイドンのカンタータは宗教的なものではなく、「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)には“カンタータ・ブッファ”と記されている。たとえハイドンの手によるものではないとしても十分に魅力的な楽曲であり、ごく自然に愉悦感を醸し出すロジデーストヴェンスキイの手腕も確かなもの。一方のモーツァルトのKV404aは、音楽の流れにどこか硬直した雰囲気があり、それほど印象には残らなかった。本来の編成は弦楽三重奏だが、ロジデーストヴェンスキイが弦楽合奏用に編曲している。グルックの序曲は、2004年7月28日の記事で紹介した序曲集と同一の音源。アダンとケルビーニ/ボワエルデューの序曲は初めて聴いたが、独創性は感じられないものの、それなりに洒落た音楽である。ただ、この時代の音楽にしては、オーケストラの音にロシアの刻印が強過ぎる。

【CD2】ドヴォルザークの交響曲も、最初期の作品である第2番をわざわざ選んでいるのが面白い。作品としては全体に冗長さは否めないものの、随所に顔を出す伸びやかな歌心を素直に生かした気持ちの好い演奏である。ただ、録音のせいか、管楽器の音色にちんどん屋臭がするのは、少し気になる。フォルクマンとシュポアの序曲は、上述した序曲集と同一の音源。

【CD3】既出のスタジオ録音音源に客席ノイズを被せて初出のライヴ音源と偽るのは、何もBrilliantに限った話ではない。このディスクに収録された3曲は、いずれもロジデーストヴェンスキイによる有名な録音があるので、全て手持ちの音源と同一だと思って聴き始めたら、さにあらず。全て別テイクであった。「ロスチャイルドのヴァイオリン」は、同時期のスタジオ録音と同様の音楽作りであるのは当然ながら、引き締まった熱気と高揚感が圧倒的で、同曲の録音中で文句無しのベストである。「観光列車」の勢いも凄まじい。これは、完全にショスタコーヴィチの音楽である。これも、同曲の録音中でベストの演奏。まさか、「8つのイギリスとアメリカの民謡」にライヴ録音が存在しようとは考えもしなかったが、同時期のスタジオ録音とは別人のようなイヴァーノヴァの表情豊かな歌唱には、楽曲の軽さとは裏腹の迫真性すら感じられる。ショスタコーヴィチ・ファンには聴き逃せない一枚であろう。

【CD4】交響曲第1番は、同じソヴィエト国立SOとのライヴ録音がYedangからリリースされていたが、そちらは第3楽章と第4楽章の間のスネアのロールがなかったので、それとは異なる演奏であることが分かる。ただし、演奏の印象はそう大きく異なるものではない。覇気に満ちた音楽の流れが心地よく、若干の荒さを感じさせる濃い目の表情が豊かな雰囲気を醸し出している。このディスクの注目は、何と言っても「交響的哀悼前奏曲」だろう。7~8年前に発売されたChandos社のDVD/CD-ROMに収録されていた音源と同一だが、ジャケットに表記されている録音データが正しいとすれば、スターリングラード戦の英雄達を追悼する記念碑の除幕式で用いられた音源そのものということになる。そうした歴史的価値を別にしても、テンポも音色もまさにこうでなければならないという理想が完璧に達成されている。この曲には唯一アシケナージの録音があるのみだったが、本盤さえあれば十分であろう。「祝典序曲」は、1948年録音(?!)と表記されていたRevelation盤と、「5つの間奏曲」はRevelation盤(本盤もRevelation盤も1985年録音と表記されているが、ヒュームのカタログには1965年と記されている)と、そして「あわれなコロンブス」は上述の序曲集と、それぞれ同一の演奏である。

【CD5】全集録音と演奏時間が似ているが、初出の別録音である。いずれにせよ、ロジデーストヴェンスキイによる第4番の演奏には、はずれがない。スケールの大きな音楽の振幅やあざといまでの表情付けはいかにもロジデーストヴェンスキイらしく、この作品の本質を鋭く抉り出している。長大な全曲を通して持続する緊張感も素晴らしい。技術的には怪しい箇所もあるが、それもまたこのコンビらしい。

【CD6】Revelation盤と同一の演奏。ただし、音質は聴きやすくなっているように感じる。いわゆる爆演であるが、ホールで体験するならともかく録音で繰返し聴くには、瑕が多過ぎる。演奏のテンションに身を委ねることができれば楽しめるだろうが、冷静に聴くと眉を顰めてしまうかもしれない。

【CD7】2曲共に初出音源。ただ、ミケランジェロ組曲についてはChandos社のDVD/CD-ROMに第8曲だけが収録されていたものと同一かもしれない(未確認)。さて、この第9番は素晴らしい。全曲を貫く猛烈なテンションと、溢れんばかりの表現意欲が凄絶ですらあり、細部まで血の通った彫りの深い音楽となっている。奇数楽章に聴かれる狂乱の躁状態と、偶数楽章の深遠な慟哭との対照が実に見事である。このコンビならではの荒っぽさはあるが、それすらも作品の本質であるかのように聴こえてしまうほどの、大変魅力的な名演である。ミケランジェロ組曲も立派な演奏。ネステレーンコは鬼気迫るというよりはむしろ、余裕を感じさせる貫禄の歌唱。ロジデーストヴェンスキイも意欲的な表現で楽曲を彫琢しているのだが、それだけに、冴えない録音で音に迫真性が感じられないのが何とも残念。

【CD8】ロジデーストヴェンスキイ指揮の交響曲第10番には、全集収録のデジタル録音とは別に、1982年のアナログ録音が存在する(未CD化)。本盤の録音も1982年とあるので、てっきりこの音源かと思ったら、そうではなかった。たとえば本盤では第2楽章開始早々にスネア・ドラムが落ちており、こういう大きなミスがあるお陰で確認がしやすい。演奏は、スタジオ録音の2種と比較しても、格段に素晴らしい。アクの強い節回しや強烈な色彩感を持った響きが、輝かしく強靭な推進力を持った音楽の奔流の中で一瞬たりとも浮くことなく、極めて大きな魅力を放っている。録音マイクの能力を超えた、なりふり構わぬ熱狂も、たまらなく素敵だ。同日の録音である「ボルト」も、大変良い。ロジデーストヴェンスキイによる同曲の録音には、なぜか手兵とのものがなかっただけに、“あの音”でこの作品を聴くことができるだけでも嬉しい。下品さと紙一重のチューバやトロンボーン、遠慮という言葉を知らない打楽器、いずれもこのコンビならではの音楽であり、この作品の最良の演奏の一つである。ただ、他の録音と同様、本盤でも組曲の抜粋しか演奏されていないのが残念。

【CD9】続くCD10と共に、ロジデーストヴェンスキイの面目躍如といった感のある選曲になっている。シェバリーンの作品は、そのほとんどが入手困難である中、交響曲をこれだけの水準の演奏で聴くことができるだけでも有難い。ショスタコーヴィチに献呈された作品だが、ショスタコーヴィチの作風を直截的に反映しているわけではなく、ロシアの土臭さが漂うシェバリーンの個性が存分に発揮された力作である。共感に満ちた熱い演奏が心に響く。シャポーリンの作品も歌曲以外はほとんど聴いたことがないのだが、民族楽器を使ったこの作品は、実に楽しい。こういう“安っぽい”音楽をやらせたら、ロジデーストヴェンスキイの右に出る者はいない。ラーコフはショスタコーヴィチと同世代の作曲家だが、ここに収録されている2曲を聴く限りは保守的な作風のようだ。モスクワ音楽院では楽器法を指導していたようだが、その生徒にデニーソフやB. チャイコーフスキイ、シニートケらの名が並んでいるのが面白い。自身が優れたヴァイオリン奏者だったこともあってか、弦楽の響きが美しい魅力的な作品である。

【CD10】同じ現代ソヴィエトの作品でも、こちらはCD9とは異なって前衛的な作風の作品が収録されている。中では、アガジコフの作品が聴きやすい。ただ、ヴァイオリン独奏の線が細いのが惜しい。ソ連における前衛音楽の祖ともいえるヴォルコーンスキイの作品は、ヴェーベルン風の点描的な音楽ながら、暴力的なまでのクライマックスに圧倒される。ベリモフの作品は、より一層現代音楽らしい仕上がりであるが、どこか歌謡的な音の流れがあるのがロシア的と言うべきか。ポロヴィーンキンの作品にも、もちろん個性は違うものの、似たような印象を持った。「鉄工場」は、こうあって欲しいという聴き手の願望を存分に満たしてくれる快演。

HMVジャパン
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_Rozhdestvensky,G.N. 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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